はじめに
かつての伊賀流忍者の修行の里として知られる赤目四十八滝は、三重県名張市の代表的な観光スポットの一つで、美しい滝が連なる自然景観が魅力的な景勝地である。また、オオサンショウウオの生息地としても有名である。
<目次> はじめに 赤目四十八滝 行者滝 霊蛇滝 不動滝(赤目五瀑) 乙女滝 八畳岩 千手滝(赤目五瀑) 布曳滝(赤目五瀑) 竜ヶ壺 斧が渕 陰陽滝 百畳岩 七色岩 姉妹滝 柿窪滝 笠滝 雨降滝 骸骨滝 斜滝 荷担滝(赤目五瀑) 夫婦滝 雛壇滝 琴滝 琵琶滝(赤目五瀑) 巌窟滝 日本サンショウウオセンター (赤目滝水族館としてリニューアルオープン) 延寿院 赤目温泉 あとがき |
赤目四十八滝
赤目四十八滝【あかめしじゅうはちたき】は、三重県名張市赤目町を流れる滝川の渓谷(赤目四十八滝渓谷)にある、一連の滝の総称であって、名のある大きな滝が48滝もあるわけではない。
この地は古より山岳信仰の聖地であり、地元には「滝参り」という呼び方が今も残る。奈良時代には修験道の開祖である役行者(役小角)の修行場にもなったと伝わる。地名「赤目」の由来は、役行者が修行中に赤い目の牛に乗った不動明王に出会ったとの伝承によるものとされる。
渓谷の周辺地域は野生動物と植生の宝庫である。特に渓谷は、世界最大級の両生類の一つといわれるオオサンショウウオの棲息地として知られ、滝への入り口付近には飼育・展示施設の日本サンショウウオセンターが設置されている。
滝のある渓谷は約4kmにわたって続き、四季折々の景観が楽しめるハイキングコースとなっている。紅葉の名所としても知られているので、特に秋には多くの観光客が訪れて、賑わいを見せる。
また、伊賀忍者の祖と言われる百地三太夫【ももちさんだゆう】が修行の場としてこの地を選び、多くの忍者を輩出したとも伝えられている。そのため、夏場には忍者にちなんだイベントも開催されている。
名 称 | 赤目四十八滝 |
所在地 | 三重県名張市赤目町長坂671-1 |
駐車場 | あり(有料) |
Link | 忍者修行の里 赤目四十八滝 |
赤目四十八滝のうち比較的大きくて、見所とされる5つの滝を、赤目五瀑【あかめ ごばく】と呼ぶ。勿論、「赤目五瀑」以外にも名がついた滝がいくつもある。中には落差が数メートルしかないので、本当に滝と呼べるのだろうかと思ったり、気をつけないと見落としてしまうものすらある。入山口から順に現われる滝を紹介してみよう。同時に名前が付いた岩石や渕についても紹介したい。
行者滝
行者滝【ぎょうじゃだき】は、落差が3mの滝で、岩を挟んでふたつに別れて流れ落ちる滝で、赤目四十八滝では最初に現れる滝である。標識がなければ見落としてしまうような滝である。
修験者の祖と言われる役の行者【えんのぎょうじゃ】にちなんだ名が付けられている。
霊蛇滝
霊蛇滝【れいじゃだき】は、落差が6mの滝である。滝自体の美しさにもまして碧く澄んだ滝つぼが美しい滝である。滝つぼの深さは約7mもある。
名の由来は、白蛇が岩をよじ登る趣があり、滝の流れの中に顔を出す岩が竜の爪痕を連想させることから名付けられたという。
不動滝
不動滝【ふどうだき】は、落差15mの滝で、不動明王にちなんで名付けられた滝である。
「滝参り」はこの滝への参拝を意味する。明治中期以前はこの滝より奥は深山幽谷の原生林で、修験者だけが立ち入ることを許されていた聖地だったという。
不動滝は、最初に姿を見せる赤目五瀑の一つである。
乙女滝
乙女滝【おとめだき】は、落差が3mの分かりづらい小さな滝である。さらに分かりづらいが、滝の中に深さ1mくらいの滝壺があるという。
水量によっては、なまめかわしいほどの姿に見えることから乙女滝と名付けられたという。
八畳岩
渓流の中に、ひときわ大きな岩が転がっていて、広さが八畳敷ほどあるので、八畳岩【はちじょういわ】と呼ばれている。
弘法大師・空海が修行をした時、たくさんの天童がこの上で舞楽したという伝説があり、「天童舞台石」という名も付いている。
千手滝
千手滝【せんじゅだき】は、落差15mの滝である。名の由来には、岩を伝って千手のように落水するところから命名されたとする説と、千手観音に因むとする説の二つがある。
黒い岩肌を流れ落ちる滝の白い水しぶきと深緑色の滝つぼ、そして近くのイロハモミジの木が絵画のように調和して見事な景観を作ると言われている。秋の紅葉時に訪れると良いだろう。私が訪れた日は紅葉の見頃時期には少し早かったようだ。
千手滝は、二番目に姿を見せる赤目五瀑の一つである。
布曳滝
布曳滝【ぬのびきだき】は、落差30mの滝で、一条の布を掛けたように見えるところから名付けられたという。
「布引滝」と呼ばれる滝は全国にあるが、30mの高さから流れ落ちるこの滝はその代表格であるとも言われている。
布曳滝は、三番目に姿を見せる赤目五瀑の一つである。
竜ヶ壺
竜ヶ壺【りゅうがつぼ】は、落差が2mの滝である。布曳滝【ぬのびきだき】のすぐ上流に位置する滝である。
水の力が岩盤を石臼のように掘り抜いて、底無しと言われるほど深い滝壺になっている。写真では分かりづらいが、確かに恐怖を感じさせるくらいに深そうだ。この滝壺には決して落ちたくないものである。
この滝壺には竜が棲むという伝説があり、それにちなんで竜ヶ壺と名付けられたという。
斧が渕
渕の形が斧に似ているので、斧が渕【おのがぶち】の名が付いているらしいが、近くからではその形は分かりづらい。しかし、渕は深そうである。
渕は、鏡のように澄み、両側の崖の上にはカエデの枝が張りだしていて美しい景観を見せている
陰陽滝
陰陽滝【いんようだき】は、落差が7mの滝である。「陽」とは滝の流れを指していて、岩石に沿って斜めに20mほど流れている。
一方、滝つぼは「陰」をあらわしている。滝つぼの真ん中に岩の頭が突き出ている様子は奇観である。滝全体と滝壺を一枚の写真として撮影できないのは残念である。
百畳岩
茶店のある前の河原には一枚岩の大きな岩盤が広がっている。百畳敷ほどの広さがあるので、百畳岩【ひゃくじょういわ】と呼ばれている。
この辺りの紅葉は比較的早いようだ。休息するにも眺めが良い。紅葉は、日光が当たればさらに美しく輝いて見える。
七色岩
百畳岩の近くの渓流の中に大きな転石がある。その小さな島のような岩の上に、マツ・モミ・カエデ・サクラ・アカギ・ウメモドキ・ツツジの7種類の植物が自生しているので七色岩【なないろいわ】と名付けられたという。
姉妹滝
姉妹滝【しまいだき】は、落差が3mの滝である。七色岩を眺めて渓流を登ると見えてくる。
姉妹滝は、大小ふたつにわかれて落ちる滝である。右側を姉滝、左側を妹滝と呼ぶ。
柿窪滝
柿窪滝【かきくぼだき】は、落差が5mの滝である。岩盤を丸く掘り抜いたような滝壺が特徴的で美しい。
清流を枝とすれば、滝壺が柿の実のように見えたので、この名前が付いたという。
笄滝
笄滝【こうがいだき】は、落差が2mの滝である。滝の名の由来は、巨岩にはさまれて落ちる滝の形が笄【こうがい】に似ているからであるという。笄とは日本髪に刺す飾りのことである。
笄滝の滝壺は横渕【よこぶち】と呼ばれる。滝壺は、長さ5m、幅15m、深さが10mもある。横に長いので「横渕」と呼ばれている。
赤目四十八滝の中で唯一、滝(「笄滝」)と滝壺(「横渕」)にそれぞれ別の名前が付けられている。
雨降滝
雨降滝【あめふりだき】は、落差が10mの滝である。
この滝は渓流ではなく、遊歩道の左手の崖(右手は渓流)の上に見える滝である。
岩を伝って雨が降るように飛沫が落ちてくるので名付けられた。
天候にもよるが、虹が見えることもあるという。
骸骨滝
骸骨滝【がいこつだき】は、落差が2mの滝である。
渓流にかかる小さな滝であるが、落ち口に骸骨に似た岩が横たわっているために名付けられたという。
斜滝
斜滝【ななめだき】は、落差が2mの小さな滝である。
川の流れが斜めに変わって落ちている滝である。
正面から見ると、山も岩も木も斜めに見えて奇妙な景色であるという。
荷担滝
荷担滝【にないだき】は、落差が8mの滝である。荷担滝は四番目に姿を現す赤目五瀑の一つである。
滝の中央に位置する大岩を挟んで流れが二手に分かれる様子が、荷物を綺麗に振り分けて担っているように見えることから、「担いの滝」あるいは「荷担い滝」と名づけられたという。
滝を高所から眺めるとすぐ上にも深さ約10mほどの滝壺とそこに流れ落ちる滝があり、三滝二渕になっている。
荷担滝は、四季を通じて渓谷随一の景観であり、赤目四十八滝を代表する景観であるとされている。
夫婦滝
夫婦滝【めおとだき】は、落差が3mの滝である。荷坦滝の上流で、二つの渓流が合流する付近に位置する。夫婦滝は本流ではなく、右側の支流「山椒谷川」にかかる滝である。本流の滝ではないので、標識がないと見落としてしまう。
流れ出る場所は二か所に分かれているが、途中で一つに合わさって滝つぼに注ぐことから夫婦滝の名前が付いたという。
雛壇滝
雛壇滝【ひなだんだき】は、落差が2mの滝である。一面の岩が幾段にもなっていて、その上を清流が流れている。
まるで雛壇のように見えるところからこのような名が付いたという。増水時には幾段もの白い滝の流れが見られ、美しい滝になるという。
琴滝
琴滝【ことだき】は、落差が3mの小さな滝である。
静かに耳をすませて聞くと、滝の音がまるで琴の音が深山にこだましているように聞こえたことから、この名が付いたという。
琵琶滝
琵琶滝【びわだき】は、落差15mの滝で、赤目五瀑の最後に姿を見せる滝である。
滝と滝壺を合わせた形状が楽器の琵琶【びわ】に似ていることから名付けられたという。
巌窟滝
巌窟滝【がんくつだき】は、落差が7mの滝で、赤目四十八滝の最奥に位置する。
滝の中腹に深い石穴があるので巌窟滝と呼ばれている。 滝壺は小さく、深さは3mほどであるという。
日本サンショウウオセンター
日本サンショウウオセンターは、赤目四十八滝の入口にあり、ここが滝巡りのスタート地点となる。入館料は、赤目四十八滝入山料(500円)に含まれる。
オオサンショウウオは、赤目町を流れる滝川にも生息し、「生きた化石」と呼ばれる稀少動物で、特別天然記念物に指定されている。
日本サンショウウオセンターでは、オオサンショウウオが飼育されており、赤目生まれのオオサンショウウオをはじめ9種類50匹以上が展示されている。日本の珍しいサンショウウオも見ることができる。
尚、日本サンショウウオセンターは、2024年4月20日に「赤目滝水族館」としてリニューアルオープンしている。
名 称 | 赤目滝水族館(旧日本サンショウウオセンター) |
所在地 | 三重県名張市赤目町長坂861-1 |
駐車場 | あり(有料) |
Link | 赤目滝水族館 | 観光三重 (kankomie.or.jp) |
護摩の窟
護摩の窟【ごまのくつ】は、赤目五瀑の一つである千手滝の近くに位置し、弘法大師・空海が護摩を修したところと伝えられている。現在は洞窟内に弘法大師像が安置されているという。
延寿院
延寿院【えんじゅいん】は、天台宗山門派(延暦寺派)の寺院で、山号を黄竜山と称する。御本尊は不動明王である。本堂は、赤目四十八滝の入山口に近く、坂を登った先に位置する。地元では、別名で「滝寺」とも呼ばれている。
寺の創建は、役行者【えんのぎょうじゃ】によるものとされているが、平安時代の中頃に役行者ゆかりの赤目滝が僧・正縁によって発見され、河内国の僧である延僧によって本堂が1122年に建立されたと伝わる。
本堂には、霊験あらたかな赤目不動尊像が安置されている。赤目不動尊は、目黒不動尊や目白不動尊と共に、日本不動三体仏の一つに数えられている不動尊である。
延寿院の前身は、青黄竜寺と呼ばれており、伊賀一国の納経所となっていた。そのため多くの参詣者が集まり、賑わっていたという。
境内にある石燈篭は、鎌倉時代の傑作と言われ、旧国宝であり、現在は国の重要文化財に指定されている。
また、境内にある枝垂桜の推定樹齢は300年以上であり、名張市の文化財に指定されている。
名 称 | 黄竜山 延寿院【えんじゅいん】 |
所在地 | 三重県名張市赤目町長坂755 |
駐車場 | なし |
Link | 延寿院 | 観光三重 |
赤目温泉
赤目温泉【あかめおんせん】は、三重県名張市の赤目四十八滝の入口辺りで湧く温泉である。1967年に最初の温泉施設が開湯したのが歴史の始まりでとされる比較的新しい温泉である。
赤目四十八滝遊歩道の入り口付近に建つ3軒の温泉施設兼宿泊施設(対泉閣・滝本屋・トマルカフェSANKAKU)の泉質はアルカリ性単純温泉で、無色透明のお湯である。
一方、少し離れた山中にある沢沿いの一軒宿(山水園)の泉質は単純弱アルカリ性放射能泉である。ラドン含有率は近畿で随一とされている。
異なる源泉が湧いているのは興味深い。また各旅館は、いずれも趣向を凝らした浴場を備えた和風旅館であり、山里の料理が名物となっている。
温泉旅館
対泉閣
名 称 | 伊賀かくれ宿 赤目温泉隠れの湯 対泉閣 |
泉 質 | アルカリ性単純温泉 |
所在地 | 三重県名張市赤目町長坂682 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 対泉閣公式HP |
滝本屋
名 称 | 四季の宿 滝本屋 |
泉 質 | アルカリ性単純温泉 |
所在地 | 三重県名張市赤目町長坂716 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 滝本屋公式HP |
トマルカフェSANKAKU
名 称 | トマルカフェSANKAKU |
泉 質 | アルカリ性単純温泉 |
所在地 | 三重県名張市赤目町長坂720-1 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | トマルカフェSANKAKU |
山水園
名 称 | 山の湯 湯元 山水園 |
泉 質 | 単純弱アルカリ性放射能泉 |
所在地 | 三重県名張市赤目町柏原1203 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 山水園公式HP |
あとがき
赤目四十八滝は、私が今、シニア生活の拠点にしている名張市にある景勝地である。近くてハイキングには最適な場所であるので何度も行っているし、写真も沢山撮っていたつもりであった。
しかし、撮った写真の大半が娘達の「どアップ」の人物写真となっていて子育て時代の写真ばかりであった。本ブログには適さないので、改めて写真撮影のためだけを目的に赤目四十八滝に行ってみた。
本稿を書くのに際して名の付けられた滝の写真をしっかりと撮影したつもりであったが、今一つ迫力に欠けている写真が目立つ。滝の写真撮影は難しいことを痛感させられた。やはり三脚を用いて、シャッタースピードを遅くしてみる試みも必要がありそうだ。迫力のある滝の写真が撮れるよう腕をあげたいものである。