はじめに
白山【はくさん】国立公園は、白山を中心とした、富山・石川・福井・岐阜の4県にまたがる国立公園である。
白山国立公園の指定区域は、白山の最高峰である標高2,702 mの御前峰【ごぜんがみね】(標高2,702 m)を中心に東西約20 km、南北40 kmに及ぶ両白山地【りょうはくさんち】の主要な山域である。
白山国立公園の区域内には、鳩ヶ湯温泉、中宮温泉、岩間温泉や新岩間温泉など「秘湯」的な温泉地もあり、魅力的である。
<目次> はじめに 白山 白山白川郷ホワイトロード 白山国立公園内の滝 ふくべの大滝 水法の滝 姥ヶ滝 かもしかの滝 岩底の滝 赤石の滝 後高滝 百四丈滝 白水滝 不動滝 綿ヶ滝 白山国立公園内の湖沼 刈込池 白水湖 白山国立公園内の天然記念物 白山神社のカツラ 滝石徹白の大杉 岩間の噴泉塔群 白山国立公園内の温泉 鳩ヶ湯温泉 中宮温泉 新岩間温泉 岩間温泉 あとがき |
白山
白山【はくさん】は、古来から信仰の山とされ、立山、富士山と共に日本三霊山の一つに数えられている。白山は、修験道の僧であった泰澄【たいちょう】によって、奈良時代の717年に開山されたと伝えられている。
驚くべくことに既に832年には越前・加賀・美濃の三方から白山への登拝道(禅定道【ぜんじょうどう】)が開かれている。禅定道とは、禅頂(霊山の頂上)への登山道のことである。
各禅定道の起点は、平泉寺白山神社、白山比咩神社【しらやまひめじんじゃ】、長滝白山神社【ながたきはくさんじんじゃ】である。白山の山頂には、718年に建立された白山比咩神社の奥宮がある。
活火山である白山の山頂部には、翠ヶ池【みどりがいけ】や紺屋ヶ池【こんやがいけ】など7つの火口湖がある。
白山白川郷ホワイトロード
昭和52年(1977年)8月26日に開通した白山スーパー林道(正式には白山林道)は、白山国立公園の特別区域を横断する唯一の自動車専用道路で、石川県白山市尾添と岐阜県大野郡白川村鳩谷を結ぶ。
当時の森林開発公団が特定森林地域開発林道事業により開設したスーパー林道の一つで、国道360号の不通区間を結ぶ形となっている。また、石川県内では県(石川県農林業公社)が管理する唯一の有料道路でもある。林道の総延長は33.3kmで、石川県側は18.6kmで、岐阜県側は14.7kmとなっている。
その白山スーパー林道(旧愛称)は、2015年4月1日に愛称を「白山白川郷ホワイトロード」に変更している。「林道」が未舗装や運転が難しい難路を連想させるとして、両県がよく整備された舗装道路に相応しい新愛称を公募して決定したという。
白山白川郷ホワイトロードは、有料の観光道路で、ブナ原生林の樹海や高山植物などの景観に恵まれた標高600~1450mの山岳地帯(白山の北側)を走る。
蛇谷渓谷の深いV字谷の断崖絶壁に沿って走っており、県境の国見山や三方岩岳越えの区間は高度を稼ぐために、大きく回り込むようにつづら折れの道路である。
白山白川郷ホワイトロードの石川県側には「ふくべの大滝」をはじめ、変化に富んだ多くの滝が沿道周辺に点在しているという。
岐阜県側には、白川郷がある。白川郷は、世界文化遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」にも登録されている合掌集落で知られる。
ふくべの大滝
白山白川郷ホワイトロードを通行中にふくべの大滝を間近くで見ることができた。落差が86mもある大滝は、「日本の瀧百選」には選ばれていないが、十分に名瀑だと思う。
この滝の上にももう一つの大きな滝があることから、「ふくべ」(瓢箪【ひょうたん】の意味)と名付けられたという。
ふくべの大滝の近くには駐車場が完備されており、そこから滝がよく見える。絶好の「滝見台(観瀑台)」となっているので、沿道随一の名所となっている。
名 称 | ふくべの大滝 |
所在地 | 石川県白山市中宮 (白山白川郷ホワイトロード内) |
駐車場 | あり(無料) |
Link | ふくべの大滝|ほっと石川旅ねっと |
水法の滝
水法の滝【みずのりのたき】は、白山を源流にする尾添川の上流に位置する蛇谷に注ぎ込む谷に懸かる滝で、落差が約80mもある分岐瀑である。
姥ケ滝駐車場近くのトンネルに流れ込む滝であるため岐阜方向から来ると見落とすことは無いらしいが、石川方向から行くと見落としてしまうという。近くに駐車しやすい場所がないのも見逃しやすい原因であるかも知れない。
名 称 | 水法の滝【みずのりのたき】 |
Link | 水法の滝 :金沢観光情報 【 きまっし金沢 】 |
姥ヶ滝
姥ヶ滝【うばがたき】は、ふくべの大滝の近くにあり、落差は111m(幅41m)もあり、ふくべの大滝(落差86m)よりも大きい。「日本の瀧百選」にも選出されている滝である。
姥ヶ滝は、岩肌に沿ってなめらかに流れ落ちる滝である。白く細い流れを老婆の白髪に見立ててこの名が付いたと言われている。
白山白川郷ホワイトロードの途中にある蛇谷園地駐車場から遊歩道を歩いて行くと、「親谷の湯」(野天風呂・足湯)から滝が眺望できるという。
名 称 | 姥ヶ滝 |
所在地 | 石川県白山市中宮 (白山白川郷ホワイトロード内) |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 姥ヶ滝|白山白川郷ホワイトロード 姥ヶ滝|ほっと石川旅ねっと |
かもしかの滝
かもしかの滝は、石川県側から白山白川郷ホワイトロードを走行していると4番目(岩底の滝の次)に見える、落差40mの5段になって流れ落ちる滝である。蛇谷大橋を渡ってすぐにある滝である。
この滝の近辺は天然記念物であるニホンカモシカの生息密度が高いことが滝の名の由来になっているという。
名 称 | かもしかの滝 |
所在地 | 石川県白山市中宮蛇谷大橋 (白山白川郷ホワイトロード内) |
駐車場 | あり(無料) |
Link | かもしか滝【石川県白山市】 |
岩底の滝
岩底の滝【かまそこのたき】は、石川県側から白山白川郷ホワイトロードを走行していると3番目(赤石の滝の次)に見える滝である。
滝の上部に直径2mの釜型の大木を沈めてしまうような「底無しの淵」があることが滝の名の由来になっているという。滝の近くへは行けないらしい。
名 称 | 岩底の滝【かまそこのたき】 |
所在地 | 石川県白山市中宮 (白山白川郷ホワイトロード内) |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 岩底の滝:金沢観光情報 【 きまっし金沢 】 岩底の滝【石川県白山市】 |
赤石の滝
赤石の滝【あかちのたき】は、石川県側から白山白川郷ホワイトロードを走行していると2番目(しりたかの滝の次)に見える落差30mの滝である。かつて金を採掘した所で、ベニ石(赤石)がイボ状に岩に付いていたことが滝の名の由来だという。
赤石の滝は、斜めに落ちてくる滝で、水量の多い時には途中から水流が三本に別れるので「三味線の滝」とも呼ばれている。
名 称 | 赤石の滝【あかちのたき】 |
所在地 | 石川県白山市中宮 (白山白川郷ホワイトロード内) |
駐車場 | なし |
Link | 赤石の滝:金沢観光情報 【 きまっし金沢 】 赤石(あかち)の滝・石川県白山市 |
後高滝
後高滝【しりたかのたき】は、石川県側から白山白川郷ホワイトロードを走行していると最初に見える、後高山【しりたかやま】を源流とする滝である。
急峻な山の間に見える白い絹のような流れが特徴の3段の滝である。落差は約50mで、白山白川郷ホワイトロードの沿道から眺めても素晴らしい滝である。
名 称 | 後高滝【しりたかのたき】 |
所在地 | 石川県白山市中宮 (白山白川郷ホワイトロード内) |
駐車場 | なし |
Link | しりたか滝 |
百四丈滝
百四丈滝【ひゃくよじょうのたき】は、石川県白山市を流れる尾添川【おぞがわ】にかかる滝で、白山有数の巨瀑であると言われている。落差は90m、幅は10mもあるという。七倉山【ななくらやま】の北側に広がる雄大な清浄ヶ原の斜面から流れ落ちる滝の様子はダイナミックな景観で人気が高いらしい。加賀禅定道の尾根から眺めることができるという。
百四丈滝は、完全な直瀑で、水流は滝壺に至るまで岩壁に一切触れることがない。そのため滝の裏側に周り込むことができる、いわゆる「裏見の滝」となっているらしい。裏見の滝としては、国内最大級の規模を誇ると言われている。
1987年に加賀禅定道が復元されるまでは、 一般登山者の目に触れることのない「幻の滝」とされていた。「日本の瀧百選」のリストには載っていないが、名瀑であることに変わりはない。
名 称 | 百四丈滝 |
所在地 | 石川県白山市尾添 百四丈滝 |
Link | 百四丈滝|ほっと石川旅ねっと |
白水滝
白水滝【しらみずのたき】は、原生林に囲まれた絶壁から流れ落ちる勇壮な滝(落差72m、幅8m)で、大白水谷に位置する。流水が乳白色に見えることが滝名の由来らしい。
滝展望台までは白水滝駐車場らら遊歩道で徒歩5分程度である。「日本の瀧百選」には選出されていないが、名瀑であることに変わりがない。岐阜県の名勝には指定されている。
名 称 | 白水滝【しらみずのたき】 |
所在地 | 岐阜県大野郡白川村平瀬大白川 |
駐車場 | あり(無料)白水滝駐車場 |
Link | 白水の滝/白川郷 | 白川村役場 |
不動滝
不動滝は、井田の三穂の峰より流れ落ちる落差約20mの滝で、滝つぼ横に不動尊が安置されていることが滝名の由来とされる。
不動滝の近くには不動堂も建てられており、眼の病気や頭痛に霊験があるとされる。
名 称 | 不動滝 |
所在地 | 石川県鹿島郡中能登町井田 |
Link | 不動滝|ほっと石川旅ねっと |
綿ヶ滝
綿ヶ滝【わたがたき】は、手取峡谷にある落差32mの滝である。綿が舞っているように滝の流れの飛沫が見えることが滝名の由来であるという。
駐車場から遊歩道を150mほど歩いたところにある展望台から綿ヶ滝を見ることができる。
名 称 | 綿ヶ滝 |
所在地 | 石川県白山市下吉谷町ホ1-4 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 綿ヶ滝 | 白山手取川ジオパーク 綿ヶ滝|【公式】白山市観光・旅行情報サイト |
刈込池
刈込池【かりこみいけ】は、九頭竜川の支流である打波川の上流に位置する、願経寺山(標高1,690m)の麓の幅ヶ平にある湖沼である。昔、泰澄大師が白山に棲んでいた大蛇を刈込池にとじ込め(刈り込め)たという伝説が名前の由来となっているらしい。
刈込池の周囲は約400mで、水深は最大4.5mであるという。刈込池に流れ込む小川はあるが、流れ出る河川がなく一定の水位が保たれている、不思議な池である。池の周囲はブナやミズナラなどの広葉樹に覆われている。そのため福井県を代表する紅葉スポットの一つとなっており、多くの観光客が訪れるという。
名 称 | 刈込池 |
所在地 | 福井県大野市上打波 |
駐車場 | あり(無料)小池公園 |
Link | 刈込池 大野市公式ウェブサイト |
白水湖
白水湖【しらみずこ】は、県道451号線(県道白山公園線)の終点に位置する、大白川ダムによるダム湖である。硫黄分を含む湖水の湖面は神秘的なエメラルドグリーンに輝いて見えるという。
例年10月初旬頃から下旬頃にかけて美しい紅葉が楽しめるという。但し、白水湖へ通じる県道白山公園線は10月末頃から翌年6月上旬頃まで冬期閉鎖されるので、道路情報を事前に確認する必要がある。
名 称 | 白水湖 |
所在地 | 岐阜県大野郡白川村平瀬大白川 |
Link | 白水湖 /白川村 |
白山神社のカツラ
白山神社のカツラは、根回りが15mで、樹高が約29mの巨樹である。樹齢は1200年超と推定されており、福井県の天然記念物として指定されている。
養老元年(717年)に泰澄大師が白山登頂の途中、この地で食事に使った箸を大地に挿したのが芽を出し、現在のような巨樹になったと伝えられている。このカツラの巨樹は、白山神社の御神木として保護されている。
名 称 | 白山神社のカツラ |
所在地 | 福井県大野市下打波 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 白山神社の大カツラ 白山神社のカツラの大木 – 福井県大野市観光情報 |
石徹白の大杉
石徹白の大杉【いとしろのおおすぎ】は、 美濃禅定道沿いにあるスギ(杉)の巨樹である。幹回りは13.4mで、樹高は24mもある。 樹齢は1,800余年と推定されており、国の特別天然記念物に指定されている。
泰澄上人(大師)が白山を開山した際、使用していた杖がこの大杉になったという伝説が残る。幹の半分は枯れてしまっているが、残りの半分は現在も健在である。
名 称 | 石徹白の大杉 |
所在地 | 岐阜県郡上市白鳥町石徹白 |
Link | 石徹白大杉|岐阜県観光公式サイト 「岐阜の旅ガイド」 |
岩間の噴泉塔群
岩間の噴泉塔群【ふんせんとうぐん】は、岩間温泉の上流部にある噴泉塔群のことで、国の特別天然記念物に指定されている。
噴泉塔【ふんせんとう】とは石灰華【せっかいか】が塔状になったものを指す。温泉成分が空気に触れ、沈殿物(主要成分として炭酸カルシウム・水酸化マグネシウム)となり、それが固まって長い年月の間に塔のような形状になったものが噴泉塔である。
名 称 | 岩間の噴泉塔群 |
所在地 | 石川県白山市尾添 |
Link | 岩間の噴泉塔群|ほっと石川旅ねっと |
鳩ヶ湯温泉
鳩ヶ湯温泉【はとがゆおんせん】は、九頭龍渓谷の打波川の山道の終点付近にある1軒宿の温泉地である。泉質は、ナトリウム炭酸塩泉という。冷泉のため加温されている。営業は、例年4月下旬から11月下旬までの期間で、冬季は休業している。日本秘湯を守る会会員の宿でもある。
鳩ヶ湯温泉は、福井県道173号上小池勝原線の沿線にある。北陸自動車道福井ICから国道158号を経由して県道173号に入る。所要時間は、北陸自動車道福井ICから約1時間20分かかるらしい。
鳩ヶ湯温泉の北側には両白山地の別山【べっさん】(標高2,399 m)と三ノ峰【さんのみね】(標高2,128 m)を望むことができる。
刈込池【かりこみいけ】、赤兎山【あかうさぎやま】(標高1,629 m)や荒島岳【あらしまだけ】(別名、大野富士;標高1,523 m)などへの登山口となっている。また、イワナやアマゴなどの渓流釣りのベースにもなっているという。
名 称 | 鳩ヶ湯温泉 |
所在地 | 福井県大野市上打波6-2 鳩ヶ湯温泉 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 鳩ヶ湯温泉 (hatogayu.jp) |
中宮温泉
中宮温泉【ちゅうぐうおんせん】は、開湯から1200年の歴史がある温泉地である。霊泉とされ、1574年には初めて浴室が設けられるなどの長い歴史を有する。
泉質は、ナトリウム – 塩化物・炭酸水素塩泉(低張性中性高温泉)である。源泉温度は61℃で十分に熱い。お湯の色は湧出当初は無色透明だが酸化して黄褐色になる、とろみのある湯である。飲泉可能で、胃腸に効能があるとされる。
旅館は2軒(にしやま旅館と湯宿くろゆり)で、共同の露天風呂「薬師の湯」が利用できるという。
白山白川郷ホワイトロードの無料区間内にある温泉地であるため、道路が閉鎖される冬季(12月~4月)は休業となる。
名 称 | 中宮温泉 |
所在地 | 石川県白山市中宮ク5-1-12(にしやま旅館) 石川県白山市中宮ク5-32(湯宿くろゆり) |
駐車場 | あり(無料) |
Link | にしやま旅館|【公式】白山市観光・旅行情報サイト 温泉 | にしやま旅館 (nishiyamaryokan.jp) 湯宿くろゆり|【公式】白山市観光・旅行情報サイト 白山中宮温泉 湯宿 くろゆり (spa-kuroyuri.jp) |
新岩間温泉
新岩間温泉【しんいわまおんせん】は、石川県白山市尾添にある温泉で、上流の岩間温泉の引湯である。1軒宿の山崎旅館が営業しているが、冬季(11月~5月中旬)は休業(11月 – 5月中旬)する 。 露天風呂は現在では珍しくなった混浴であるという。日本秘湯を守る会会員の宿でもある。
名 称 | 新岩間温泉 |
所在地 | 石川県白山市尾添ム4-1 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 石川県白山麓の秘湯 岩間温泉 山崎旅館 |
岩間温泉
岩間温泉【いわまおんせん】は、新岩間温泉の山崎旅館付近の駐車場から徒歩約50分の場所に位置する温泉である。岩間温泉にもかつては宿があったようであるが、残念ながら現在は存在しない。露天風呂(野湯)があるのみである。泉質は、塩化ナトリウム物泉である。下流の新岩間温泉の元湯になっている。
岩間温泉からさらに上流に1時間ほど歩くと、国の特別天然記念物の「岩間の噴泉塔群」があるという。一度、実際に見てみたいものだ。
あとがき
白山国立公園には実に多くの滝があることを本稿を書きながら知った。旅に出る前に知っていれば、名瀑と呼ばれる滝を見に行けたかも知れないと思うと実に残念である。次の機会には見逃すことのないようにしたいものである。
滝の他にも湖沼や天然記念物といった見所もある。国立公園に指定されているだけの価値があるということがよく理解できた。これらの景勝地も自分の目で確かめてみたいものである。
最後に温泉地についてであるが、白山国立公園の指定区域内に鳩ヶ湯温泉、中宮温泉、岩間温泉や新岩間温泉などの「秘湯」的な温泉地があるとは全く知らなかった。知ったからには行かない手はない。「秘湯」という響きを聞くだけでも行ってみたくなる魅力を感じる。是非、旅のプランに入れたいと思う。