はじめに
私は好奇心が強い方なのであらゆることに興味を抱く。だから人のことは言えた義理ではないが、私の妻もいろいろなものに興味を抱く。なかでも雲海を見るのが好きみたいである。峡谷に架かった吊橋が好きな彼女はどうしても高い所に関心を抱くようだ。高い場所が苦手な私は彼女に付き合っていると寿命が縮まり、私の方が先にもっと高いところに行ってしまいそうである。
冗談はさておき、低血圧のため早朝が苦手な妻も雲海を見るためならと早起きをする。そう、雲海を見るためには、太陽が昇る前に目的地に到着していなければならない。太陽が昇り、気温が上昇すると雲海はすぐに消えてしまうからである。だから雲海を見たいなら早起きは必須である。
しかしながら、雲海を見るのは結構、難しい。雲海が発生する条件には「気候的条件」と「地理的条件」が大切であるからだ。
気候的条件としては、夜間によく晴れて放射冷却が起こり、気温が下がることが大切である。だからよく晴れて星がきれいな夜は放射冷却で冷え込み、翌日早朝に雲海が見える可能性が高まる。
日中と夜間の気温差が大きい時に発生するので、寒暖差が10℃以上あると雲海ができる可能性が高まる。秋から春先にかけて雲海を見る機会が増えるのはこの昼間と夜間の寒暖差が大きくなるからである。
また高気圧に覆われていると上空に安定した空気の層が出来て雲を押さえつけるために雲海が発生しやすくなると言われている。
前日に雨が降って湿度が高い時に放射冷却が起こると雲海の発生率が高まる。このような幸運は地元に住んでいないとなかなか遭遇できない。何度も無駄足を運んで上で、限られた幸運を手にするしかない。雲海の発生は確率の問題であるから仕方がない。
一方、地理的条件としては、内陸部の盆地や山間部に雲海が発生しやすくなる。その理由は、発生した霧が溜まりやすい地形をしているからである。また蒸気が発生しやすい川や湖などからの湿った空気が溜まりやすい地形でも雲海の発生率は高まる。
このように雲海を見るためには、気候的条件と地理的条件が揃わないといけないので、なかなか見る機会が増えない。雲海景勝地と言われる場所に行っても到着時刻が遅ければ雲海は既に消えた後になっている場合も多い。
何度となくチャレンジしては失望するのが常であると考えた方が精神衛生上はストレスが溜まらない。だから期待どおりに雲海が見えた時の嬉しさは格別である。本稿は、そんな数少ない成功例を記事にしたものである。
大山展望台【岡山県】
大山展望台は、湯郷温泉街から車で5分ほど行った場所に位置する展望台である。
この展望台に立つと、湯郷温泉街と吉野川、遠くには岡山県最高峰の後山【うしろやま】(標高)、那岐山【なぎさん】(標高)や津山盆地の向こうの山々まで見渡すことができる。
10月から2月頃のよく冷えて晴れた日の早朝(6時半~8時頃)には、大山展望台は雲海が見える人気のスポットとなる。
実は、大山展望台は私が妻に最初に誘われた雲海景勝地であるのでよく覚えている。湯郷温泉に泊まっていて、早朝に急に起こされ、朝食前に出かけて行った想い出があるからである。
展望台の眼下には雲海が広がり、神秘的な眺望が広がる。元旦には初日の出を見物する人で賑わうという。
コンクリート製展望台
名 称 | 大山展望台 |
所在地 | 岡山県美作市巨勢656-1 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 大山展望台(おおやまてんぼうだい)/美作市HP |
備中松山城【岡山県】
備中松山城は岡山県高梁市に位置する。備中松山城と雲海を眺められる場所として備中松山城展望台が知られている。
雲海が発生してくれたら備中松山城の天守と共に、幻想的な風景を眺めることができる。
雲海の発生率は、9月下旬頃から4月上旬頃に高くなり、特に11月頃が発生率が最も高くなると言われている。
また、雲海が発生する時間帯は夜明けから午前8時頃まででのわずかな時間である。
名 称 | 備中松山城展望台 |
所在地 | 岡山県高梁市奥万田町 |
駐車場 | あり(無料、4台分) |
Link | 展望台 – 備中松山城 |
備中松山城は、臥牛山山頂(標高430m)にあり、日本三大山城の一つである。天守、二重櫓、土塀が現存する名城である。
名 称 | 備中松山城 |
所在地 | 岡山県高梁市内山下 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 備中松山城 – 天空の山城 |
竹田城址【兵庫県】
竹田城跡は戦国時代以前の山城跡で、兵庫県朝来市にある古城山【こじょうざん】(標高354m)の山頂に位置する。
堅牢な石垣や縄張【なわばり】がほぼ完全な形で残されている。自然石を巧みに配置した豪壮な石垣の城郭は全国屈指の威容を誇る竹田城は、「天空の城」あるいは「日本のマチュピチュ」と呼ばれ、人気の城址である。
古城山の麓を円山川【まるやまがわ】が流れるため秋のよく晴れた朝にはしばしば濃い霧が発生するという。その霧が雲海となるらしい。
竹田城跡が雲海の中に浮かんでいる姿は、まさしく「天空の城」といえよう。
雲海が発生するのは9月下旬から4月上旬までであり、特に晩秋によく発生するという。
また、雲海は午前4時頃には発生し、8時半頃には姿を消してしまう。10~11月の兵庫県近郊における日の出時刻は午前6時~6時30分ぐらいなので、わずかに2時間ほどしか絶景を観る時間がないことになる。
城跡に最も近い駐車場(現在は中腹バス亭)からでも徒歩20分ほど要するので明るくなってから行動すれば、実質的にはもっと短い時間しか絶景を観ることができない。
太陽がのぼって大気が温められると、雲海は徐々に薄くなり、やがて消えてしまう。文字どおり霧散する。だから本気モードの人たちは懐中電灯を片手に山を登る人も多い。雲海シーズン(9月1日~11月30日)には登城改札所が午前4時にオープンするのもそのような人たちのためである。
竹田城跡を撮影するなら、一番高い場所に位置する「天守台」から、南に張り出した「南千畳」方向のアングルを撮影するのがよいと思う。
勿論、二の丸や三の丸の跡地からの眺めもよいが、少し低い位置になるので雲海に浮かぶ様子が撮影しにくい。
立ち位置を工夫しながら、自分好みのアングルを探すのも竹田城跡の魅力である。
名 称 | 竹田城跡 |
所在地 | 兵庫県朝来市和田山町竹田 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 竹田城跡 – 竹田城跡のあるまち|朝来市観光協会 |
あとがき
学生時代に山に登っていた頃は、山小屋や山頂付近で雲海を見る機会が多かったので雲海は簡単に見えるものと思ってしまっていたが、登山以外で雲海を見る機会を得るのは結構、難しいことを再認識させられた。だからこそ雲海を見ることができた時の嬉しさが格別であることを知った。飛行機の窓から見える雲海とは違った感動がある。
妻に誘われて雲海を見に行くようになった私もいつしか私自身の楽しみの一つになっているのは確かなようだ。妻が次に行きたいという雲海景勝地の一つに奈良県野迫川村にある雲海景勝地・高野辻休憩所(県道高野天川線沿い)がある。場所の下見は既に済んでいるので、課題はいつ実行するかであるが、それは私の妻のみぞ知るである。