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【伊賀の国】名張藤堂家邸跡と旧細川邸やなせ宿

はじめに

伊賀の国」は、かつての日本の地方行政区分で、現在の三重県西部、上野盆地一帯に該当する令制国の一つであり、東海道に属していた。「伊賀」は、現在でも三重県の伊賀地方を指す呼称として使われており、伊賀市と名張市を中心に構成されている。伊賀は、伊賀流忍者の発祥地として知られ、伊賀焼(陶器・炻器)や伊賀組紐の産地としても有名である。

三重県名張市の景勝地としては、赤目四十八滝青蓮寺湖香落渓がよく知られている。確かにこれらの景勝地は何度でも行きたくなる景勝地ではある。しかしながら、これらの景勝地以外にも一度は行ってみたくなるような観光名所は名張市にはある。

私は、シニア世代となり、会社をリタイアした後は名張市で暮らす日が多くなった。そして天候の良い日にはあまり混雑しないような景勝地を訪ねるようにしている。そのような生活を続けていると今まで知らなかった意外な場所に私の興味をそそる史跡があることが分かってきた。それらの一つが、名張藤堂家邸跡であったり、旧細川邸やなせ宿であったりする。


<目次>
はじめに
名張藤堂家邸跡
名張市旧細川邸やなせ宿
あとがき

名張藤堂家邸跡

名張藤堂家邸跡【なばりとうどうけやしきあと】は、名張藤堂家の陣屋【じんや】(藩庁が置かれた屋敷)であった現存建築物の一部を公開しているものである。

名張藤堂家初代の藤堂高吉は、丹羽長秀の三男で、羽柴秀長、次いで藤堂高虎の養子となった人物である。

藤堂高吉は、伊賀国名張の旧領主筒井氏の家臣邸跡地に陣屋を構え、旧領今治より連れてきた商人、職人も城下に居住させ、名張の町の発展の礎を築いた領主であったらしい。

藤堂家の当初の名張陣屋【なばりじんや】の屋敷は、1710年の名張大火で焼失したため、その後に徐々に再建・増築されたきたものと推定されている。

明治元年にその陣屋屋敷の大部分が破却されたが、屋敷の一部は居住部分(中奥や茶室)を中心に残こされている。上級武士の屋敷として、生活の場の中奥部分が残されているのは全国的にも珍しく、貴重な存在となっている。そのため三重県の文化財に指定されている。

また、桃山式枯山水の庭園も残こされている。

名張藤堂家は、江戸時代には津藩(藤堂本家)の一門家臣であった。元々は丹羽家を遠祖とするため、藤堂本家からの独立を試みるが、それに失敗して以降は藤堂本家からの監視が厳しく、不遇であったとされる。

名 称名張藤堂家邸跡
所在地三重県名張市丸之内54-3
入館料大人200円(夏見廃寺展示館との共通券:大人300円)
営 業営業時間:9:00~17:00(閉門)
定休日:月・木曜、祝日の場合は翌日休
駐車場あり(無料)
Link名張藤堂家邸|名張市

名張市旧細川邸やなせ宿

名張市旧細川邸やなせ宿は、江戸時代末期から明治初年に、薬商細川家の支店として建てられた旧細川邸を観光交流施設として位置づけされた施設である。観光交流センターと呼ぶに相応しい施設である。名張の情報発信にも寄与している。

旧細川邸は、虫籠窓【むしこまど】や袖卯達【そでうだつ】、つし二階を備える典型的な町屋である。そのため旧細川邸の川蔵、主屋、中蔵や門が国の有形文化財に指定されている。

旧細川邸の母屋部分は、当時の面影をそのまま残しているという。したがって、初瀬街道(大和長谷寺と伊勢神宮を結ぶ街道)沿いに名張らしい風情をかたちづくっているとされる。

施設の愛称、やなせ宿【やなせしゅく】の由来は、明治維新以前の名張の地が簗瀬【やなせ】と称されていたからだという。そして、「宿」には江戸時代の「初瀬街道」の宿場として栄え、名張八宿と呼ばれた賑わいを再生して、人々が集う場所となることを目指したいとの願いが込められているようだ。

尚、名張の地が、簗瀬と呼ばれていた理由は、古来より名張川は鮎【あゆ】の名所で、この付近には鮎を捕るためにの簗【やな】がたくさん設けられ、いつしか地名も「簗瀬」と称されるようになったからだという。

この「旧細川邸やなせ宿」は、歴史的町並みの保存整備に関する拠点施設とするため、名張市の目指す「名張地区既成市街地再生計画・名張まちなか再生プラン」のプロジェクト概要に沿って改修工事を行ったものであるという。

この施設は、平成20年(2008年)6月7日にオープンしたというから、かれこれ15年の年月が過ぎたことになる。

今では、ワンデイシェフ(日替わりシェフ)の「ワンデイレストラン」のランチも楽しめる。私もデザート付きのハンバーグランチを美味しく頂いた経験がある。

その他には各種教室の開催、さらにはギャラリーとしての展示スペースなどとしても活用されているという。私が訪ねた日も地元写真愛好家による写真展が開催されていた。

この「旧細川邸やなせ宿」は、名張地区を訪れる観光客へ観光案内所および地域住民の交流施設として、観光客が随時利用でき、観光情報の提供や地場物産品等の紹介が日々行われている。

さらには、名張市の文化や伝統を紹介したり、来館者が再訪したくなるような憩いのスペースになることを目指しているという。

いずれにせよ、江戸時代から明治初年に薬商細川家の支店として建てられた町家が、観光交流施設として名張の情報発信基地に再生されたのは興味深いことである。

ちなみに薬商細川家の本店(奈良県宇陀市大宇陀区)の方は、宇陀市の文化財に指定され、現在は歴史文化館薬の宿」として公開されているという。

名 称名張市旧細川邸やなせ宿
所在地三重県名張市新町136
入館料無料
営 業営業時間:9:00~17:00
定休日:月曜、祝日の場合は翌日休
駐車場あり(無料)
Link名張市旧細川邸やなせ宿
やなせ宿の概要について|名張市

あとがき

「灯台下暗し」という言葉があるが、まさしく今の私に当てはまる言葉である。名張市には今から20年も前に住んでいたが、当時はただ暮らしていただけで、名張の文化や歴史のことはあまり知らないでいた。

20年ぶりに名張の地で過ごす時間が増えて、少しずつではあるが、ようやく名張の良さが分かるようになった気がしている。

一方で、自分自身もシニアになったという年齢の影響が多分にあるような気がしている。いずれにせよ、折角の機会なので名張での生活を満喫したいと思っている。


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