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「伊賀の国」イチョウの黄葉が綺麗な絶景名所3選

はじめに

秋の紅葉と言えば、文字通りにモミジの紅葉をイメージしてしまうことが多いが、銀杏(イチョウ)の黄葉も秋の風物詩であることに間違いはない。大イチョウの葉が黄葉している様は絵になるし、そのイチョウの落葉して地面に敷き詰められ、まるで黄色の絨毯のようになった様も見事というしかない。

そのような黄葉したイチョウの写真が撮りたくなり、名張市と伊賀市でイチョウの大木がある場所を探してみたところ、幸いにも三か所も見つけることができた。本稿では、それらの場所で撮影した写真をご覧頂きたいと思う。

目次
はじめに
積田神社
植木神社
霊山寺
あとがき

積田神社

積田神社【せきたじんじゃ】は、「南都春日大社奥宮」【なんとかすがたいしゃおくみや】とも呼ばれる神社で、名張市の景勝地の一つである。

今から約1350年ほど前にあたる西暦676年に、鹿島大神【かしまおおみかみ】が常陸国【ひたちのくに】の鹿島神宮から大和国【やまとのくに】の春日大社へと遷幸【せんこう】した際、途中で立ち寄られて鎮座された場所とされている宮である。したがって、仮の宮とは言え、春日大社の前身にあたる神社である。

鹿島大神は、鹿島神宮の御祭神である武甕槌大神【たけみかづちのおおかみ】のことである。記紀に記された日本神話では、天照大御神の命を受け、経津主大神【ふつぬしのおおかみ】と共に、葦原の中つ国の王である大国主大神【おおくにぬしのおおかみ】に「国譲り」を交渉をした神さまとして知られる。ちなみに経津主大神は香取神宮の御祭神である。

積田神社には、下記の3柱の神さまが祀られている。

  • 武甕槌大神【たけみかづちのおおかみ】
  • 経津主大神【ふつぬしのおおかみ】
  • 天児屋根命【あめのこやねのみこと】

天児屋根命は、日本神話の「天岩戸神話」において天照大御神が岩戸を少し開いたときに布刀玉命【ふとたまのみこと】とともに鏡を差し出した神さまで、春日神の一柱として春日大社で祀られている。

積田神社の参道は、例年11月下旬~12月上旬に紅葉の見頃を迎え、イチョウとカエデが色づき、絶景を作り出す。

紅葉の名所の一つであることは、地元ではよく知られているが、世間一般にはまだ無名と言わざるを得ない。

積田神社がこのまま静かな隠れた紅葉の名所でいてもらいたい気持ちと、より多くの人にも知ってもらいたい気持ちが正直、半々である。

名 称積田神社
所在地三重県名張市夏見2162
駐車場あり(無料)
Link積田神社 | 観光三重

植木神社

植木神社は、三重県伊賀市平田に位置する神社で、主祭神として健速須佐之男命【タケハヤスサノオノミコト】、すなわちスサノオ(素戔嗚尊)と、櫛名田比売【クシナダヒメ】を祀っている。

この二柱は、日本神話のヤマタノオロチ退治に登場する神さまである。スサノオがヤマタノオロチを退治して櫛名田比売の命を救ったのがきっかけで夫婦となっている。

植木神社の創建は、伝承によれば、寛弘元年(1004年)に、出雲国意宇郡日御碕の住人桃木某の三男・政守が夢でお告げを受けて、播磨国広峰山から牛頭天王【ごずてんのう】(=スサノオ)を勧請し、王手村清水谷の鳥坂神社の相殿に祀ったが、文永二年(1263年)の洪水で流出したため当地へ遷座して植木牛頭天王と称したのが始まりとされる。

植木神社の拝殿前の左右にはヒノキ科 ヒノキ属の針葉樹である【サワラ】(推定樹齢450年)と銀杏【イチョウ】(推定樹齢200年)の巨樹が生育しており、見事である。

毎年7月の最終土日に行われる祇園祭は、宵宮祭と本祭りの2つからなる祭りで、神輿を大胆に傾ける「くねり神輿」と豪華絢爛な「だんじり」が有名であり、三重県の無形民俗文化財にも指定されている。

祇園祭の起源には諸説あって、そのうちの一つが、その昔、この地に疫病が流行った時にスサノオが現れて、薬として牡丹を授けたことが始まりとも言われている。そのため、祇園花の朱い縁取りの花はを、白い花は牡丹と表しているとされる。

現在の植木神社には、明治以降に周辺の多くの神社の御祭神が合祀されている。

植木神社は、初めての場合、案内板が全くないので見つけにくい場所に鎮座しているが、近くに大山田せせらぎ公園があるので、その付近を目指して行くと必ず到着できるはずである。

名 称植木神社
所在地三重県伊賀市平田699
電 話0595-47-0431
駐車場あり(無料)
Link植木神社

霊山寺

霊山寺【れいざんじ】は、黄檗宗【おうばくしゅう】の寺院である。黄檗宗は、日本三禅宗のうち一つで、中国臨済宗の僧の隠元隆琦(江戸時代初期に来日)によって創始された禅宗である。

霊山寺の創建は、平安時代初期の弘仁年間(810~824年)とされ、開基は伝教大師・最澄によると伝えられる。

霊山寺は、元々は霊山の山頂に位置した、七堂伽藍を有する巨大な寺院で、多くの人々の信仰を集めたという。しかしながら、不幸にも天正伊賀の乱(伊賀国で起こった織田信長と伊賀惣国一揆との戦いの総称)で伽藍がすべて焼失してしまったという。

霊山の山頂に残る広大な寺院跡地は、「霊山山頂遺跡」として三重県の史跡に指定されている。

江戸時代の延宝年間(1673~1681年)に鉄牛禅師によって中興開基されたが、その際に霊山寺は山頂から山腹(現在地)に境内が変更になっているようだ。

尚、霊山【れいざん】(標高766m)は、布引山地【ぬのびきさんち】の北端に位置する山で、現在ではハイカーたちに人気の山となっている。山名の由来は、勿論、かつて霊山寺が建立されていたことによる。霊山には、天然林が生育しており、アセビやイヌツゲなどの県指定の天然記念物が群生しているという。

霊山寺の境内にはサクラの樹木が多く植栽されており、桜の名所となっているようだ。毎年4月中旬には霊山寺の境内にて「さくら祭り」が開催されているという。

名 称霊山寺
所在地三重県伊賀市下柘植3252
駐車場あり(無料)
Link霊山寺 | 観光三重

あとがき

イチョウ(銀杏)は、落葉性の高木樹で、秋になる黄葉して実に美しい。大木に育つため神社や寺院の境内で御神木になっている場合もある。また丈夫な樹木であるため街路樹として植栽されている場合もある。

だからイチョウが「生きている化石」として国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されていると知ったときには率直に驚いたものである。

また、イチョウの種類には一種類しかないと思っていたのであるが、いくつかの変種があるらしいことを最近になって学んだ。

実は霊山寺の大イチョウは、その変種のオハツキイチョウ(学名は Ginkgo biloba var. epiphylla Makino)であり、牧野富太郎博士によって発見されたもののようである。

イチョウは代表的な裸子植物ではあるが、オハツキイチョウは、葉に種子が付く(または葉上に葯【やく】を付ける)珍しい変種であるらしい。どれくらい珍しいかというと、日本全国にわずか20本程度しかその存在を知られていないらしい。

そんな珍重なオハツキイチョウ霊山寺で直接見ることができるなんてなんて贅沢なことだろうか。三重県の天然記念物に指定されているのも納得である。

このことだけでも霊山寺に何度、参拝に出かけて行っても苦にはならないと言えば言い過ぎだろうか。次に参拝する際には「お葉付き」の実が観察できる季節であればよいのだが。

いずれにせよ、オハツキイチョウのおかげでイチョウを見る私の目が変わったのは事実である。


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