はじめに
妻のお供で神社仏閣に参拝する機会が増えた。そして、神社や寺院の境内で「御神木」【ごしんぼく】と称される巨樹を見る機会も自然と増えていった。
神社仏閣の境内にある老齢の巨木は、そこに神が降臨すると信じられており、神聖視された「御神木」として注連縄【しめなわ】が張られ、崇められている。
私は、神社仏閣にも当然興味はあるが、御神木の方により強い興味を抱くことが増えてきた。特に、最近はそう強く感じている。理由は定かではないが、植物とは言え、生物としての生命力に対してのリスペクトがあるのは確かである。
本稿は、御神木の種類について調べてみたものである。大方のご想像のとおりスギ(杉)が御神木になっているケースが圧倒的に多いのは確かであるが、意外な種類の樹木が御神木となっているケースもある。今後はそれらの珍しい御神木に会うためにも神社仏閣を参拝する機会も増えていくことだろう。
御神木には、人間個人の寿命よりもはるかに長い年月と風雪に耐えてきた歴史と、古くから人々が神が宿ると信じるに足りるだけの風格も備わっている。境内に珍しい御神木を有して神社仏閣はワンダーランドである。魅力的な御神木の存在を知らずして神社仏閣を参拝するのは勿体ない話である。そう思いませんか?
御神木
御神木【ごしんぼく】は、一般的には、神社の境内などにある老齢の巨木であって、そこに神が降臨すると信じられ、神聖視されている樹木である。つまり、御神木は、神が依りつくとして神聖視される樹木のことである。
注連縄が張られていたり、柵が設置されていたりするなど他の樹木とは区別されているので、それが御神木であると誰もがすぐに分かるようになっている。
古くから、神は何か物に依りついて具現化すると考えられていたので、御神木を神の表徴とみなしたり、樹木に神霊が宿ると考え、畏怖し、神聖視してきた。
神社では、大木などに注連縄【しめなわ】を張って御神木とする風習がある。さらに神社の森そのものを御神木とみなすこともあり、樹木が信仰生活と密接な関係にあったことを例証している。
御神木になる木には、杉(スギ)、楠木 (クスノキ)、銀杏 (イチョウ) などが多く、また二股の木などのように、外見上の形質が特異なものもある。
なお、御神木は、樹木そのものを信仰対象とする樹木崇拝とは区別される。(引用:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
杉(スギ)が御神木なった例は多い
スギは、ヒノキ科スギ亜科スギ属の日本原産の常緑針葉樹である。 日本各地に広く分布する。
日本全国の神社や寺院のすべてを漏れなく調べたわけではないので断定はできないが、御神木になる樹木には杉(スギ)が最も多いのではないかと思ってしまうほど、私が調べた中では多くのケースで杉が御神木になっていた。
また、二本杉が「夫婦杉」と呼ばれ、御神木になっているケースも多い。私はそんな印象をもっている。
スギの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
杉の大杉 | 3000 | 八坂神社(高知県大豊町) |
将軍杉 | 1400+ | 平等寺(阿賀町) |
禅昌寺大スギ | 1300+ | 禅昌寺(下呂市) |
大杉 | 1300 | 須佐神社(出雲市) |
御神木 | 1300 | 鹿島神宮(鹿嶋市) |
三本杉 | 1300 | 建部大社(大津市) |
矢立の杉 | 1200 | 箱根神社(箱根町) |
御神木 | 1000+ | 清神社(安芸高田市) |
冨士太郎杉 | 1000+ | 北口本宮冨士浅間神社 (富士吉田市) |
天狗杉 | 1000 | 園城寺(三井寺)(大津市) |
御神木大杉 | 1000 | 佐麻久嶺神社(いわき市) |
御神木 | 1000 | 太平山神社(栃木市) |
御神木 | 1000 | 香取神宮(香取市) |
平安杉 | 1000 | 吉備津彦神社(岡山市) |
千年杉 | 1000 | 鷲子神社(常陸大宮市) |
周防杉 | 900+ | 羽黒神社(五泉市) |
社頭の大杉 | 800~1000 | 春日大社(奈良市) |
大杵社の大杉 | 800~1000 | 大杵社(由布市湯布院町) |
御神木 | 800 | 高千穂神社(高千穂町) |
御神木 | 800 | 鹽竈神社(塩竈市) |
大スギ | 800 | 筑波山神社(つくば市) |
御神木 | 800 | 白山比咩神社(白山市) |
願掛け杉 | 800 | 由岐神社(京都市) |
御神木 | 800 | 霧島神宮(霧島市) |
根入りの杉 | 800 | 諏訪大社・下社秋宮(下諏訪町) |
観音杉 | 700 | 水沢観音(渋川市) |
御神木 | 700 | 二荒山神社(日光市) |
大杉 | 700 | 筑波山神社(つくば市) |
根入りの杉 | 700 | 諏訪大社下社秋宮(諏訪市) |
矢立杉 | 600 | 榛名神社(高崎市) |
大スギ | 550 | 雲厳寺(大田原市) |
三本杉 | 500 | 御岩神社(日立市) |
御神木(三本杉) | 500 | 妙義神社(富岡市) |
三本杉 | 500 | 花園神社(北茨城市) |
大スギ | 500 | 清水寺(桜川市) |
御神木 | 450+ | 御座石神社(仙北市) |
巳の神杉 | 400 | 大神神社(奈良県桜井市) |
夫婦杉 | 400 | 八重垣神社(松江市) |
三本杉 | 400 | 多賀大社(滋賀県多賀町) |
験の杉 | 400 | 伏見稲荷大社(京都市) |
大杉 | 400 | 戸春名神社(高崎市) |
六本杉 | 400 | 金剛三昧院(和歌山県高野山) |
結びの杉 | 300+ | 諏訪大社・下社春宮(下諏訪町) |
たわら杉 | 300+ | 赤城神社(前橋市) |
冨士次郎杉 | 不明 | 北口本宮冨士浅間神社 (富士吉田市) |
縁結びの御神木 | 不明 | 二荒山神社(日光市) |
夫婦杉 | 不明 | 二荒山神社(日光市) |
親子杉 | 不明 | 二荒山神社(日光市) |
御神木 | 不明 | 三峯神社(秩父市) |
御神木 | 不明 | 聖神社(秩父市) |
二本杉 | 不明 | 寒川神社(寒川町) |
三本杉 | 不明 | 多賀大社(滋賀県多賀町) |
綾杉 | 不明 | 香椎宮(福岡市) |
夫婦杉 | 不明 | 室生龍穴神社(奈良県宇陀市) |
御神木 | 不明 | 天祖神社(大分県由布市) |
巳の神木 | 不明 | 大村神社(三重県伊賀市) |
杉の大杉・八坂神社(高知県大豊町)
今回、御神木になっている杉の木の樹齢を調べていて初めて知ったことがある。それは有名な屋久島の「縄文杉」よりもっとすごい杉の巨木が四国・高知県に存在しているということである。
八坂神社(高知県大豊町)の御神木で 「杉の大杉」と称するらしい。推定樹齢は縄文杉の方が場合によっては3000年を超えるのかも知れないが、樹高が約2倍と驚異的な高さだ。しかも二本杉(夫婦杉)であるのは非常に興味深い。
比較データを下記に示したので参考にしてもらいたい。これは是非一度、参拝に行きたいと思う。
項目 | 杉の大杉 (南大杉) | 杉の大杉 (北大杉) | 屋久杉・縄文杉 |
---|---|---|---|
推定樹齢(年) | 3000 | 3000 | 2000~7200 |
幹周(m) | 20 | 16.5 | 16.4 |
樹高(m) | 60 | 57 | 25.3 |
名 称 | 八坂神社 |
所在地 | 高知県大豊町杉794 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 八坂神社(高知県大豊町)|杉の大杉は樹齢3千年 杉の大杉 | 大豊ナビ |
ヒノキが御神木なった例は少ない
ヒノキ(檜木・檜・桧)は、ヒノキ科ヒノキ属の針葉樹で、日本の固有種で、日本を代表する針葉樹である。日本の山地に生え、人工林として多く植栽されている。
ヒノキには特有の芳香があり、リラックス効果や消臭効果があるとされる。ヒノキ風呂は、その香りとリラックス効果から、日本の伝統的な風呂文化の一部として愛されている。
この香りの主成分は「ヒノキオール」という不飽和七員環化合物(C₁₀H₁₂O₂成分)で、リラックス効果や消臭効果の他、防虫効果や抗菌・抗炎症作用もあることが知られている。
ヒノキは、その耐久性と美しさから、神社仏閣や住宅の建築材として広く使用されている。特に柱や構造材としての利用が多い。
しかしながら、ヒノキが御神木になっているケースは、意外に少ない。スギとヒノキは、日本を代表する二大針葉樹である。スギが御神木になっているケースが多いので、これは予想外の結果である。
ヒノキは、スギに比べて一般に高価であり、建築材としての利用価値も高い。そのため、巨樹になる前に建築材として利用されてしまったのであろうか。本当に経済的要因があるのだろうか?
ヒノキの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
冨士夫婦桧 | 1000+ | 北口本宮冨士浅間神社 (富士吉田市) |
椹(サワラ)が御神木なった例も少ない
サワラ(椹)は、日本特産の常緑針葉樹で、ヒノキ科に属する。サワラは、高さが30~50mに達し、幹の直径も1~2.8mほどになる。見た目はヒノキに似ており、葉の形や樹皮も似ている。しかし、よく観察すると、ヒノキの葉は先端が丸く、大小の2タイプの葉が交互についている。一方、サワラの葉は先端が鋭く、大小の葉の違いが明確ではない。ヒノキの樹皮は赤褐色で縦に割れているのに対して、サワラの樹皮は灰色で滑らかである。
サワラの木材は軽くて柔らかく、加工がしやすいので建築用材として利用される。また、匂いがないため、匂いをつけたくない用途(例えば、米びつや飯台)に適しているとされる。
理由はよく分からないが、サワラ(椹)はヒノキと同様に御神木になっているケースが非常に珍しい。
サワラの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
御神木 | 450 | 植木神社(伊賀市) |
クスノキが御神木なった例も多い
クスノキ(楠木)は、クスノキ科ニッケイ属の常緑高木である。古くから各地の神社などにも植えられて巨木になる個体が多い。
樟脳が採れる香木としても知られ、飛鳥時代には仏像の材に使われたという。一方、タブノキは、クスノキ科タブノキ属の常緑高木である。
大鳥大社の御祭神は、日本武尊【ヤマトタケル】と大鳥連祖神【おおとりのむらじのおやがみ】である。
クスノキの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
生樹の御門 | 3000 | 大山祇神社(今治市) |
武雄の大楠 | 3000 | 武雄神社(武雄市) |
乎千命御手植の楠 | 2600 | 大山祇神社(今治市) |
大クス | 2000+ | 来宮神社(熱海市) |
大楠 | 1500+ | 善通寺(善通寺市) |
五社明神大楠 | 1500+ | 善通寺(善通寺市) |
蒲生の大楠 | 1500+ | 蒲生八幡神社(姶良市) |
府馬の大クス | 1300~1500 | 宇賀神社(香取市) |
大楠木 | 1100+ | 有田神社(串本町) |
夫婦楠 | 1000+ | 氷川神社(さいたま市) |
大楠 | 1000+ | 熱田神宮(名古屋市) |
御神木 | 1000+ | 大麻比古神社(鳴門市) |
千年楠 | 1000 | 住吉大社(大阪市) |
夫婦大楠 | 900 | 伊弉諾神宮(淡路島) |
御神木 | 900 | 新熊野神社(京都市) |
大楠 | 800+ | 長田神社(神戸市) |
大楠 | 800 | 宇佐神宮(宇佐市) |
夫婦楠 | 800 | 住吉大社(大阪市) |
波崎の大タブ | 700~1000 | 神善寺(神栖市) |
庚申楠 | 700+ | 猿田彦神社(伊勢市) |
御文庫の楠 | 700 | 石清水八幡宮(京都市) |
大楠 | 700 | 田村神社(高松市) |
根上がりの大楠 | 600+ | 大鳥大社(堺市) |
夫婦楠 | 400 | 大宮氷川神社(さいたま市) |
御神木 | 400 | 平野神社(京都市) |
大楠 | 300+ | 三嶋大社(三島市) |
御神木 | 300+ | 伊勢原大神宮(伊勢原市) |
夫婦楠 | 不明 | 明治神宮(東京/渋谷) |
御神木(2本) | 不明 | 大鳥大社(堺市) |
イチョウが御神木なった例も多い
イチョウ(銀杏)は、裸子植物で落葉性の高木である。街路樹や公園樹として観賞用に、また寺院や神社の境内にも多く植えられる。また、食用、漢方や材用 としても栽培されることがある。
樹木名としてギンキョウ(銀杏)やギンナンノキと呼ばれることもある。
イチョウの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
乳銀杏 | 1300+ | 高塚愛宕地蔵尊(日田市) |
乳銀杏 | 1200+ | 葛城一言主神社(御所市) |
来迎院の大イチョウ | 1200+ | 天河大弁財天社(奈良県天川村) |
北金ヶ沢のイチョウ | 1000+ | 神社跡(深浦町) |
大イチョウ | 1000+ | 大國魂神社(府中市) |
臥龍銀杏 | 600~1000 | 住吉神社(いわき市) |
大イチョウ | 800 | 浅草寺(東京都台東区) |
大イチョウ | 740 | 西金砂神社(常陸太田市) |
大イチョウ | 600 | 吉備津神社(岡山市) |
大銀杏 | 400 | 秩父神社 (秩父市) |
御神木 | 400 | 津島神社 (津島市) |
大銀杏 | 400 | 秋保神社(仙台市) |
円空銀杏 | 320+ | 栃尾観音堂(奈良県天川村) |
オハツキイチョウ | 300 | 霊山寺(伊賀市) |
大イチョウ | 200~300 | 山王日枝神社 (東京都千代田区) |
御神木 | 200 | 植木神社(伊賀市) |
大銀杏 | 不明 | 熊野神社(山形市) |
山寺の大イチョウ | 不明 | 立石寺(山形市) |
御神木 | 不明 | 神田明神(東京都千代田区) |
欅(ケヤキ)が御神木なった例
ケヤキは、ニレ科ケヤキ属の落葉高木である。通常は樹高25 m、直径2 m程だが、大きな木では樹高30 m、直径5 mにもなる。
欅(ケヤキ)の大木は非常に風格のある木であるので御神木にはピッタリな樹木であると思うが、実際に御神木になっているケースは私の予想よりも少ない。
ケヤキの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
野間の大ケヤキ | 1000+ | 蟻無宮(大阪府能勢町) |
龍神木 | 1000 | 秩父今宮神社(秩父市) |
贄掛けの大ケヤキ | 1000 | 諏訪大社上社(諏訪市) |
蔵王の大欅 | 800 | 金峯神社(長岡市) |
大欅 | 450 | 穂高神社(長野県) |
大欅 | 400 | 竹駒神社(岩沼市) |
大ケヤキ | 不明 | 専修寺(真岡市) |
柏槙(ビャクシン)が御神木なった例
ビャクシンは、ヒノキ科の常緑針葉樹である。宮城県から沖縄までの太平洋岸沿いや瀬戸内海地方に分布する。葉の形状は、鱗状(ヒノキ型)になるもの、針状(スギ型)になるものがあり、場所や樹齢によって異なる。成長の落ち着いた大部分の葉は鱗状で、苗木、徒長枝、老木の下枝は針状になりやすいという。
ヒノキ(檜)が御神木になるケースは、スギ(杉)の場合に比べて圧倒的に少ない。そのため、ヒノキ科の柏槙(ビャクシン)が御神木になっていることを期待していたが、期待を全く裏切られてしまった。柏槙(ビャクシン)が御神木になっているのは非常に珍しい。
ビャクシンの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
御神木 | 1370 | 枚岡神社(東大阪市) |
相生の柏槙 | 不明 | 出羽神社(いわき市) |
槙(マキ)が御神木なった例
マキは、マツ目マキ科マキ属の 針葉樹である。種はイヌマキで、一般的にはこのイヌマキを「槙」と呼ぶ。針葉樹であるが、やや幅の広い葉が特徴的で、庭木としてよく活用される。
また、高野槙【こうやまき】の枝は、仏花と共に仏前に供えられるので、槙(マキ)の巨木が御神木になるのは当然だと思っていた。しかし、実際には御神木になっているケースが驚くほど少ない。想定外の驚きである。
油日神社(滋賀県甲賀市)には推定樹齢が約750年と言われるコウヤマキ(高野槇)が本殿横に生育している。幹周りが6.5mで、樹高が約35mもある巨樹である。
この油日神社の高野槇は、その巨大さが全国的にも珍しいことから滋賀県指定の天然記念物となっている。
マキの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
高野槙 | 1000+ | 二荒山神社(日光市) |
御神木 | 750 | 油日神社(甲賀市) |
御神木 | 500 | 安房神社(館山市) |
椎(シイ)が御神木なった例
シイは、ブナ科クリ亜科シイ属の常緑高木で、ツブラジイ・スダジイの総称。関東以西の暖地に自生し、大木・古木となる。
シイの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
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宿椎 | 1000 | 雨引観音(桜川市) |
睦の木 | 300+ | 上賀茂神社(京都市) |
連理の賢木 | 200~600 | 下鴨神社(京都市) |
御神木 | 不明 | 弥彦神社(弥彦村) |
スダジイ | 不明 | 志多備神社(松江市) |
梛(ナギ)が御神木なった例
ナギは、マキ科ナギ属の常緑高木である。樹高20m以上に成長する高木種である。世界に約100種あるマキ科マキ属のなかで最も有名で、最も美しいといわれる木が梛であるという。針葉樹でありながら広葉樹のような幅の広い葉を持つユニークな木なので独立してマキ科ナギ属とされるようだ。
梛(ナギ)の葉は日本神話「天の岩戸伝説」にも登場するので御神木になっているケースは多いと思っていたが以外に少ない。
梛(ナギ)は熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)の御神木と決まっているためであろうか。
ナギの御神木がある神社仏閣一覧
桂(カツラ)が御神木なった例
カツラは、カツラ科カツラ属の 日本原産の落葉高木である。日本全国の高地に自生しており、北海道では平地でも生長する。樹高は30 mほどにもなる。カツラの葉は丸く愛らしいハート型をしている。
カツラの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
千本かつら | 1000 | 加蘇山神社(鹿沼市) |
御神木 | 400 | 貴船神社(京都市) |
愛染桂 | 不明 | 日吉大社(大津市) |
桜(サクラ)が御神木なった例
サクラは、バラ科サクラ亜科サクラ属の落葉広葉樹の総称である。サクラ属はサクラ、ウワミズザクラ、スモモ、モモ、ウメ、ニワウメの6亜属に分けられる。
一般にサクラとして鑑賞されている花の美しいものは、サクラ亜属に含まれている。日本にはヤマザクラ、オオシマザクラなど9種を基本にして、変種をあわせると100以上のサクラが自生しているという。
桜(サクラ)や梅(ウメ)のような花木が御神木になっているケースは少ないように思う。
サクラの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
金剛桜 | 500 | 日光輪王寺(日光市) |
菩提しだれ桜 | 350~400 | 延寿院(名張市) |
種蒔桜 | 不明 | 熊野神社(山形市) |
薄墨桜 | 不明 | 伊佐須美神社(会津若松市) |
白旗桜 | 不明 | 白山神社(東京都文京区) |
梅(ウメ)が御神木なった例
ウメは、バラ科サクラ属の落葉高木で、古くから日本で親しまれてきた花木である。原産地は、中国中部と言われており、1月から3月頃に開花する。花の色には、白、淡紅、紅色など園芸種を含めると多種多様なものがある。6月から7月頃に結実し、丸い形をした実で、表面に細かい毛が密生している。
ウメは、花を楽しむための「花ウメ」と、実を収穫して楽しむ「実ウメ」の2種類に大別される。花ウメは観賞用で、実ウメは梅干しや梅酒などに利用される。
ウメは、その美しい花と香りで春を告げる風物詩として、多くの人々に愛されている。
理由は分からないが、梅(ウメ)が御神木になっているケースは桜(サクラ)よりもさらに少ないように思う。
梅と言えば、「飛梅」。「学問の神様」の菅原道真を祀る天満宮には梅の御神木があった!
ウメの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
飛梅 | 1000+ | 太宰府天満宮(福岡市) |
飛梅 | 300+ | 北野天満宮(京都市) |
御神木 | 200+ | 大阪天満宮(大阪市) |
榧(カヤ)が御神木なった例
カヤは、イチイ科カヤ属の常緑針葉樹である。
榧(カヤ)が御神木になるケースはもっと多いと思っていたが、意外に少ない。むしろ少ないことに驚いた。
カヤの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
榧大樹 | 1100+ | 真山神社(男鹿市) |
共生の木 | 不明 | 大宮八幡宮(東京都杉並区) |
御神木 | 不明 | 諏訪大社(諏訪市) |
キンモクセイが神木なった例
キンモクセイ(金木犀)は、モクセイ科モクセイ属の常緑小高木樹で、モクセイ(ギンモクセイ)の 変種である。
キンモクセイ(金木犀)は庭木としてよく植栽されている樹木であるが、御神木になるとは予想すらしたことがなかった。非常に珍しいケースである。
キンモクセイの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
御神木 | 1200 | 三嶋大社(三島市) |
柏(カシワ)が御神木なった例
カシワは、ブナ目ブナ科の落葉中高木である。
柏(カシワ)が御神木になるケースは非常に少ない。
カシワの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
御神木 | 430+ | 北海道神宮(札幌市) |
霊水の大木(逆木) | 不明 | 三皇熊野神社(秋田市) |
榎(エノキ)が御神木なった例
エノキは、アサ科エノキ属の落葉高木である。榎(エノキ)が御神木に選ばれるのは非常にまれなケースの一つである。
エノキの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
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御神木 | 850 | 武信稲荷神社(京都市) |
椋木(ムクノキ)が御神木なった例
ムクノキは、アサ科ムクノキ属の落葉高木である。エノキに似るためムクエノキ(椋榎)とも言う。成長が比較的早く、大木になるため、日本では天然記念物に指定される巨木がある。
椋木(ムクノキ)が御神木になるケースはもっと多いと思っていたが、意外に少ない。
ムクノキの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
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御神木 | 1000 | 出雲大社(島根県出雲市) |
楢(ナラ)が御神木なった例
ナラは、ブナ科コナラ亜科コナラ属コナラ亜属のうち、落葉性の広葉樹の総称。英語名はオーク。秋には葉が茶色くなる。
楢(ナラ)の木が御神木になっているケースは非常に珍しい。
ナラの御神木がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
---|---|---|
御神木 | 550 | 宗像大社(宗像市) |
柿の木(カキノキ)が御神木なった例
カキノキ(柿の木、Diospyros kaki)は、カキノキ科カキノキ属の落葉樹である。学術上の植物名はカキノキで、果実はカキであるが、一般的に両方を含めてカキ(柿)と呼ぶことが多い。
個人的偏見かも知れないが、果樹が御神木になっているケースは非常に珍しいのではないかと思う。
雲仙温泉の温泉街には温泉神社【うんぜんじんじゃ】があり、その拝殿奥に「夫婦柿」と呼ばれる樹齢200年超の柿の御神木がある。この御神木は恋愛成就のパワースポットとして知られる。
カキノキの御神木がある神社仏閣一覧
無患子(ムクロジ)が御神木なった例
ムクロジ(無患子、Sapindus mukorossi)は、ムクロジ科ムクロジ属の落葉高木である。東アジアから東南アジア・インドの温帯域に分布する。日本では庭木としても植えられ、寺社に植栽されて巨木に育つ例も見られる。
果皮にサポニンを含み、サポニンには水に溶かすと泡立つ成分があるので、果実は石鹸代わり用いられたという。種子はかたく、数珠や羽根突きの羽根の元にある黒い玉の材料にされたという。
無患子(ムクロジ)が御神木なるケースはもっと多いのではないかと思っていたが、予想に反してほとんどない。葛城一言主神社(御所市)の境内には無患子(ムクロジ)の大木が大事に育てられているが、それ以外の例を私は知らない。
御神木(ムクロジ)がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
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無患子 | 650+ | 葛城一言主神社(御所市) |
榊(サカキ)が御神木なった例
サカキ(榊、楊桐、賢木、栄木、Cleyera japonica)は、モッコク科サカキ属の常緑広葉樹で、小高木である。
日本では、神道においては神棚や祭壇に供えるなど神事に用いられる植物である。枝葉は神社での神事において、神へ奉納する玉串として使われるため、神社の境内に植えられることも多い。
しかしながら、榊(ササキ)の樹木自体が御神木になっているケースはあまり見かけない。神社境内で榊(ササキ)の低木を見ることはあるが、元々が小高木であるため巨樹にはならないからであろうか。
御神木(サカキ)がある神社仏閣一覧
神木名 | 樹齢 | 神社仏閣 |
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御神木 | 不明 | 室生龍穴神社(奈良県宇陀市) |
松(マツ)が御神木なった例
マツ(松)は、マツ科マツ属の針葉樹で、針のような形態の葉と、松かさ(松ぼっくり)とよばれる実がなるのが特徴である。
世界中に約100種が北半球の各地域に分布し、日本でも非常に親しまれている樹木で、庭木や砂防林として使用される。日本でのマツの種類には、主としてクロマツ(黒松)、アカマツ(赤松)、ゴヨウマツ(五葉松)の3種類がよく知られている。特に丈夫なクロマツは海岸で砂防林として使用されるので、海岸で見かける松林はクロマツであることが多い。
松は、日本庭園には定番に庭木であり、神社や寺院の境内にも植栽されていることが多い。そのためマツが御神木になっているケースは多いと推測していたが、予想外に少ない。理由がよく分からないが、これは意外な結果である。
元善光寺の境内には「智惠・縁結びの松」と呼ばれる大きなクロマツが生育している。この松は、枝が分かれた先で再び結合していることから、知恵の輪のように見えるために「智惠の松」と呼ばれたり、夫婦和合の象徴のようにも見えることから「縁結びの松」とも呼ばれている。この松の樹齢は約300年と推定され、樹高は約15mもあるらしい。学業成就や良縁成就にご利益があるとされている縁起の良い松である。
御神木(マツ)がある神社仏閣一覧
あとがき
まず驚いたのは「御神木」と呼ばれる巨樹の品種の多さである。御神木は、杉、銀杏、楠木ぐらいだと思っていたので本当に「目から鱗【うろこ】」を実感した。
今後は、神社仏閣を参拝した際には「御神木」の樹齢や大きさだけでなく、樹木の品種にも関心を持ちたいと思うようになった。
また、樹齢も300年以上はざらにあり、樹齢1,000年以上という巨樹にも驚くが、樹齢2,000~3,000年以上の御神木の存在を知ると驚愕以外に表現のしようがない。紀元前から生命を繋いでいる生物がこの世にいると思うと「神」が宿っても不思議はないように感じてしまう。
【参考資料】
高千穂神社 | 高千穂町観光協会 |
高塚愛宕地蔵尊【公式サイト】 |
葛城一言主神社 | 奈良県御所市 |
各神社仏閣の【公式サイト】 |
屋久杉巨樹・著名木 | 屋久島町屋久杉自然館【公式サイト】 |