はじめに
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、190以上の国・機関が参加する大阪・関西万博が開催されている。
開催前のマスコミによるネガティブ報道とは裏腹に、多くの人々が訪れ、盛況が続いている。人気パビリオンには酷暑の中、長蛇の列が長く伸び、なかなか入館できない。事前予約もなかなか当選しないので、並ぶ必要のない万博を目指していたのではないのかと不満の一言も言いたくなるのが人情というものである。
しかし、人気パビリオンだけが万博の見所ではない。見方を変えれば、万博の魅力が体感できる。つまり、190を超える参加国や機関が出展しているわけであるから、私たちが普段、耳にすることが少ない、あるいはどこにある国かさえも知らない国々も参加・出展してくれているので、万博はそんな国々について学べる機会でもある。
彼らの国のパビリオンやブースでは、国の歴史や暮らしぶりが紹介され、伝統的な衣装、文化財や特産品が所狭しと展示されているので、彼らについて学ぼうとすれば、非常にコスパの高い旅となる。
そのなかでも、ペルシア湾の最前線に立つ富裕国・カタールのパビリオンは、海洋文化と最先端技術を融合させた展示でひときわ注目を集めている。
カタールの概要
カタールは、アラビア半島北東部に位置し、南はサウジアラビアと国境を接し、三方をペルシア湾に囲まれている。南東部には英語で“Inland Sea”と呼ばれる潮汐による入江「コーアール・アル・ウダイド」が広がる。

現在は金融や観光が主要産業となり、マナーマは「金融と観光のハブ」として多国籍コミュニティが共存しているらしい。公用語はアラビア語で、英語もビジネスや観光で広く通用しているという。
- 正式国名:カタール国(State of Qatar)
- 首都:ドーハ
- 面積:11,427 km²
- 人口:約266万人(2021年10月)
- 言語:アラビア語(英語も広く通用)
- 主要産業:LNG(液化天然ガス)の輸出、金融、観光
- 通貨:カタール・リヤル(QR)
カタールの歴史
ハーリーファ家が18世紀末に統治を始め、英国の保護領を経て1971年8月15日に独立を宣言した。独立後は石油収入を基盤に教育や社会インフラを急速に整備し、「Economic Vision 2030」を掲げて経済多角化を推進している。
歴史的には古代の交易拠点として栄え、日本との外交関係は1971年の独立以来友好を深めている。
カタールの政治体制
カタールは、絶対君主制を採用し、現エミールはタミーム・ビン・ハマド・アール=サーニー氏が務める。
2021年にはシューラ評議会(諮問評議会)議席の3割を国民投票で選出する仕組みが初めて導入された。
カタールの経済
カタールは、世界有数のLNG(液化天然ガス)の輸出国であり、2019年の名目GDPは約4,919億ドル、一人当たりGDPは約6万9,000ドルと世界トップクラスの水準にある。
石油・天然ガスに依存する従来型経済から、金融センターや教育都市「エデュケーションシティ」の整備、観光インフラの強化など多角化政策を推進している。
カタールの伝統文化
伝統的なアラブ衣装やダウ船(帆船)などに象徴される豊かな文化資産と、国際的なビジネス都市としての多様性が共存する社会構造が特徴的である。
カタールの宗教
国民の約95%がイスラム教を信仰し、その大半はスンニ派で占められている。
パビリオンのコンセプト
バーレーン王国のパビリオンは、伝統的な木造帆船「ダウ船」をイメージした外観の4階建ての建造物で、木製の支柱を組み上げたような構造になっている。
バーレーンの海洋遺産と日本の木工芸からインスピレーションを得たデザインであるという。
古くから海洋交易の要衝としての役割を果たしてきたという歴史の中で積み上げてきたバーレーンの豊かな海洋文化を木造船や香料などの展示で紹介している。
パビリオンの見どころ
内部に入ると来訪者を迎える大きな吹き抜けがあり、天井の開口部から柔らかな光を取り込むデザインになっている。そして、展示フロア間の垂直的な繋がりが容易にわかるようになっている。
2階への階段の前でスタッフから簡単なガイダンスを受けた後は、階段を上った踊り場に展示された小型木造船やそれの建造に使用されている材料やロープの説明を受ける。
展示物を「五感で楽しむ」ことがテーマになっており、香料だけでなく鉱物などの「香り」も体験できるようになっている。バーレーンの歴史や文化を紹介する展示物に加え、真珠産業・船造りの工具など国立博物館の所蔵物を含め全ての展示物に触れることができるのにはちょっと驚くと共に興味深く、大いに楽しむことができた。
あとがき
バーレーン王国のパビリオンは、小国ながらも、独自の歴史や文化、環境保全への挑戦、最新技術との融合をよく伝えている。
親日的なホスピタリティも際立ち、万博という国際交流の舞台で深い印象を与えてくれる。より多くの人々に、バーレーン王国が描く「未来への架け橋」を体感して頂きたいと思う。