はじめに
北山村は、和歌山県にありながら、奈良県と三重県に囲まれた「飛び地」の自治体として知られる。
この日本で唯一の「飛び地の村」には平家の落人伝説も残っている。北山川周辺沿いには、平家の落人たちが舟で逃れ、村にたどり着いたという伝説が残こされている。
源平の戦い、特に「壇ノ浦の戦い」で敗れた平家の武士たちが、紀伊半島の秘境である北山村に逃げ込んだという伝承が残されている。
江戸時代の地誌『紀伊続風土記』にも「壇ノ浦の戦い」後に逃れてきた平家の武士たちがこの地に住み着いたという記録が残されているという。
北山村は、全国唯一の自治体飛び地というユニークな地理に加え、豊かな自然と伝統文化が息づく、まさに「秘境」の村である。
北山村の不思議な地理
北山村は、和歌山県の本体から約30km離れた場所にあり、周囲を奈良県と三重県に囲まれている。この特異な地理は、江戸時代の藩政の名残りによるものであるとされている。地図を眺めるだけでも面白い発見がある。
北山村へのアクセスとしては、最寄り駅の熊野市駅(三重県)から車での移動が便利である。
北山村は、行政としては和歌山県に属するが、生活圏は奈良県と三重県の両県と密接な関係があると言われている。
平家ゆかりの寺院
北山村には静かな山里にたたずむ寺院がいくつかあって、平家の落人伝説と結びついていると伝えられている。
なかでも、見福寺、宝蔵寺および東光寺がよく知られている寺院である。
これらの寺院は、村の人々の信仰を集めていて、雑念を洗い落とす場所としても知られているという。
見福寺
見福寺【けんぷくじ】は、北山村の中心部(下尾井地区)にあって、地域の歴史と深く関わってる寺院とされている。
曹洞宗のお寺で、境内の西南には約600年前の宝篋印塔【ほうきょういんとう】が残っている。この宝篋印塔は、平家の落人たちの供養塔とも言われている。歴史の重みを感じながら、静かに手を合わせたくなる場所である。
| 名 称 | 見福寺 |
| 所在地 | 和歌山県北山村下尾井437 |
| 駐車場 | あり |
| アクセス | 国道169号線を利用し、 道の駅おくとろから約5分 |
| Link | 北山村のお寺巡り 見福寺 | 北山村観光協会 |
宝蔵寺
宝蔵寺【ほうぞうじ】は、北山村の山あいにひっそりと佇むお寺である。
平家の落人たちがこの地に逃れ、心の拠り所としたと伝えられている。
境内は素朴で静か、まるで時が止まったような空間である。瞑想や心を整えるのにぴったりな場所と言えるだろう。
| 名 称 | 宝蔵寺 |
| 所在地 | 和歌山県北山村大沼45 |
| 駐車場 | あり |
| アクセス | 道の駅おくとろから 国道169号を東へ進む |
| Link | 北山村のお寺巡り |
東光寺
東光寺【とうこうじ】は、竹原地区にある曹洞宗の寺院で、山号は吉詳山と称する。
ご本尊は薬師如来で、江戸時代前期に再建され、国指定の有形文化財である本堂と山門が見どころである。
欅(ケヤキ)を使った内陣や、地方色豊かな建築様式も見どころである。このお寺も、平家の落人が信仰を寄せた場所とされている。
| 名 称 | 東光寺 |
| 所在地 | 和歌山県北山村竹原296 |
| 駐車場 | あり |
| アクセス | 宝蔵寺からさらに 国道169号を東へ進む |
| Link | 北山村のお寺巡り |
平家ゆかりの柱松祭り
柱松【はしらまつ】祭りは、毎年8月中旬に行われる、北山村の伝統的な夏祭りである。
高さ20メートルの柱の上に麦藁で編んだ「カゴ巣」を設置し、たいまつの火を投げ入れて花火を点火するという。運動会の玉入れ競技ならぬ、「火の玉入れ」みたいなダイナミックな儀式である!
火柱が立ち上がると、先祖の霊が昇っていく姿とされ、平家の霊を慰める意味も込められているという。
そして、点火の合図で盆踊りが始まり、地元の節回しと方言による唄に合わせて踊る姿は、まさに「伝承の舞」と呼ぶに相応しいと言われている。
この祭りは、見てるだけでも心が震えるだろうし、参加するとまるで歴史の一部になった気分になるはずである。機会を見つけて、是非、一度は見物してみたいものである。
伝統体験・北山川の筏下り
北山村は、昔から良質の杉に恵まれ林業で栄え、伐採された木材の輸送は川を利用して筏によって木材集積地の新宮まで運ばれていまたという。
北山村の名物として知られる筏下り【いかだくだり】は、かつて木材を運ぶために使われていた筏を観光体験として復活させたものである。
北山村の筏下りでは、急流を滑るスリルと、川の美しさを同時に楽しめるのは勿論のこと、川を下りながら、まるで歴史の流れに身を委ねているような感覚に浸れるはずである。
北山川 観光筏下りは、ガイド付きで安心、安全に楽しめる!
| 名 称 | 北山川 観光筏下り |
| 所在地 | 北山村観光センター (道の駅おくとろ内) |
| 連絡先 | TEL 0735-49-2324 (9:00~17:00) FAX 0735-49-2588 ikada@kitayamamura.net |
| 開催期間 | 5月〜9月 |
| 所要時間 | 約1時間の川旅 |
| Link | 北山川 観光筏下り |
邪気を払う柑橘・じゃばら
北山村でしか栽培されていない希少な柑橘「じゃばら」は「幻の柑橘」と呼ばれることがある。じゃばらの名は「邪気を払う」に由来し、花粉症対策としても注目されているようだ。
じゃばら製品としては、ジュース、飴、サプリなど多彩である。地元グルメやお土産が充実している道の駅「おくとろ」でも購入できる。
| 名 称 | 道の駅「おくとろ」 |
| 所在地 | 和歌山県北山村下尾井335 |
| 道 路 | 国道169号 |
| 営業時間 | 9:00~20:00 |
| Link | 道の駅 おくとろ 道の駅 おくとろ |
おくとろ温泉
おくとろ温泉は、北山村にある村営の温泉施設で、自然と一体になれる癒しのスポットとなっている。
北山川の渓谷美を望む露天風呂
岩造りの露天風呂からは、エメラルドグリーンに輝く北山川を一望できる。夜には満天の星空が広がって、まるで宇宙に浮かんでるようである。
源泉かけ流しの壺湯
加温・循環なしの「無垢な源泉」が楽しめる壺湯もある。泉質はアルカリ性単純硫黄温泉で、つるつる感が気持ち良い。
自然の中で、心も体もほぐれる温泉体験は、まさに「秘境の湯」って感じがするはずである。
湯上りにはビールも良いが、「じゃばらジュース」で、のどの渇きを癒すのもありだと思う。
清潔で快適な設備
シャンプーやボディソープは完備されており、手ぶらで行ってもOKである。
畳の休憩スペースやマッサージチェアもあって、湯上がりもゆったり過ごせる。
宿泊も可能!
隣接する「やまのやど」はコテージ風の宿泊施設で、アウトドア気分も満喫できる。
| 名 称 | おくとろ温泉/やまのやど |
| 所在地 | 和歌山県北山村下尾井476 |
| 連絡先 | 0735-49-2575 |
| 駐車場 | あり |
| アクセス | 道の駅おくとろの敷地内、 ほぼ隣接している |
| Link | おくとろ温泉 / やまのやど |
あとがき
北山村は、平家の落人伝説とともに生きる村であることが理解できた。険しい山々に囲まれていて、まさに「隠れ里」という感じがする。平家の落人伝説が残っている場所と言われれば、素直に信じてしまう雰囲気が十分にある。空気までちょっと神秘的に感じてしまうから不思議である。
旅をして感じたのは、平家落人伝説がただの伝承ではなく、土地の文化や人々の暮らしと心に深く根ざしているということである。
深い山々に守られた村は、静かだけど力強く、歴史の記憶を今に伝えてくれている。
都会の喧騒から離れて心を澄ませたいなら、是非この「隠れ里」を訪れてみることをお薦めしたい。
水のように静かで、しかしながら、確かに流れている時間が、きっとあなたの心も包み込んでくれるはずである。
道の駅おくとろには、温泉、宿泊施設、レストラン、キャンプ場などがぎゅっと集まっていて、まるで「北山村の観光拠点」のような雰囲気がある。