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最強パワースポットの龍穴「室生龍穴神社」

はじめに

風水では、大きな山や山脈から大地のエネルギー(気)が放出すると考え、その強大なエネルギーの流れを龍に例えて「龍脈」と呼び、その龍脈上でエネルギーが留まる地形になっている場所を「龍穴」と呼ぶらしい。つまり「龍穴」というのは、風水でいう大地の気が吹き上がる場所であるということだ。

大地の気がみなぎる場所=パワースポットということで、この場所に建立された神社仏閣のような建造物は、それ自体がパワースポットになる。 龍穴のある場所では、樹木の生長も促進されるようで、古い神社仏閣の境内では、「御神木」と呼ばれる杉、楠やイチョウなどの大木が悠久の年月をそこで生き続けているケースが多いとされる。

以前からパワースポットとしての龍穴【りゅうけつ】に興味を抱いていたが、その龍穴を御神体とする神社があることを知った。その神社が室生龍穴神社で、有名な室生寺にも近い。室生寺は、かつて室生龍穴神社の神宮寺であった時代もある。

本稿は、そんな室生龍穴神社とその奥宮である吉祥龍穴の魅力を伝えたいとの思いで書いたものである。


<目次>
はじめに
室生龍穴神社
  • 龍穴神社(本殿・拝殿)
  • 奥宮(吉祥龍穴)
あとがき

室生龍穴神社

室生龍穴神社【むろうりゅうけつじんじゃ】は、「龍穴」との関係が非常に深い神社である。室生龍穴神社のご神体は、神社背後の渓谷に位置する奥宮にある「吉祥龍穴」【きっしょうりゅうけつ】とよばれる龍穴である。

室生龍穴神社は、女人高野で知られる室生寺よりも古い歴史をもつ神社である。事実、創建された年代が不明のままである。

室生龍穴神社の奥宮である吉祥龍穴には、水の神「龍神」が祀られており、すでに奈良時代から平安時代にかけて朝廷からの勅使によって雨乞いの神事が営まれて来たという歴史をもつ。

室生龍穴神社は、室生寺の東側に位置し、室生川に沿って約1㎞ほど遡った所に鎮座する。室生寺が龍穴神社の神宮寺(神社に付属した寺院で、寺の別当が神社の祭祀を執り行う)であった時代もある。その当時の室生寺は「龍王寺」と称していたという。

室生龍穴神社の鳥居前の両脇には樹齢600年超の杉の巨木が聳えており、拝殿や本殿も巨大な杉木立のなかに鎮座する。境内は広さよりも高さを感じる不思議さと静けさが相まって神聖な雰囲気が漂う。


室生龍穴神社・本殿

現在の室生龍穴神社本殿は、寛文11年(1671年)建立とされ、朱塗りの春日造りの一間社である。この本殿は、春日大社若宮社の旧社殿を譲られたものであると言われており、奈良県指定文化財にもなっている。

本殿前方の左右両脇には道主貴神社【みちぬしのむちじんじゃ】と手力男神社【たぢからおじんじゃ】が鎮座し、それぞれ市杵島姫命【いつきしまひめのみこと】と手力男命【たぢからおのみこと】を祀っている。

手力男命は、天照大御神が天の岩戸へ隠れた際に腕を引っ張って外に連れ出したとされている神である。室生龍穴神社・奥宮への道中に「天の岩戸」と呼ばれる場所があり(後述)、「天岩戸神話」に関連した伝説が残されている。


室生龍穴神社・拝殿

本殿の前方には拝殿があり、拝殿の神額には善女龍王社【ぜんにょりゅうおうしゃ】と書かれている。善女龍王【ぜんにょりゅうおう】とは、雨乞いの際に祈祷される「雨や水を司る龍王」のうちの一尊とされ、「善如龍王」とも表記される龍神である。

八大龍王【はちだいりゅうおう】の一尊、沙掲羅龍王【しゃかつらりゅうおう】の三女であるとされ、京都の神泉苑【しんせんえん】や高野山金剛峯寺の鎮守社(善女龍王社)にも祀られている。

その理由は、善女龍王は仏教における龍を統率する女神で、弘法大師・空海が神仙苑で雨乞いを行った時に現れたとされる龍王であるからである(引用:ウィキペディア)。

尚、室生龍穴神社の主祭神は高龗神【たかおかみのかみ】となっているが、これは高龗神が「水を司る神」なので龍神と同一視されたためだと思われる。

現在、室生龍穴神社の御祭神は次の6柱の神々となっている。

  • 高龗神【たかおかみのかみ】: 水を司る神
  • 天兒屋根命【あめのこやねのみこと】
  • 大山祇命【おおやまつみのみこと】
  • 水波能賣命【みづはのめのみこと】
  • 須佐之男命【すさのうのみこと】
  • 埴山姫命【はにやまひめのみこと】

特に水に関連する神々が祀られており、雨乞いや水の浄化などのご利益があるとされている。

名 称室生龍穴神社
所在地奈良県宇陀市室生1297
駐車場なし(路上駐車)
Link龍穴神社|奈良県観光[公式サイト]

奥宮(吉祥龍穴)

室生龍穴神社の奥宮は、吉祥龍穴【きっしょうりゅうけつ】と呼ばれ、古来からパワースポット中のパワースポットとして知られる場所である。

吉祥龍穴の周辺の地は、古代から神聖な磐境【いわさか】(神が鎮座する場所、あるいは祭祀に際し神が降臨する場所を中心にした神域)とされてきた。実際に訪れると厳粛な雰囲気があたりに漂う。

吉祥龍穴に向かう林道を歩いていると鳥居が見えてくる。この鳥居をくぐり、川のせせらぎを聞きながら参道の山道を数分ほど下っていくと「遥拝所」が見えてくる。

この拝殿は土足厳禁であるので、用意されているスリッパに履きかえてあがる。そして遥拝所から見える、注連縄【しめなわ】が張られた龍穴に向かって祈願する。吉祥龍穴は、岩盤に口を開けたような洞穴である。

吉祥龍穴の右側の大きな一枚岩には招雨瀑【しょううばく】と称される滝が流れており、この流れの水はやがて木津川(奈良県)や淀川(大阪府)にも注ぎ込まれることから源流の一つに数えられる。

古くから雨乞いの神事が多く執り行われてきたのも納得できる場所である。

室生龍穴神社から奥宮・吉祥龍穴に参拝するには、車で行くこともできるが、参道となっている林道は1車線で道幅も狭く、対向車が来た場合には道幅がある場所までどちらかが下がって道を譲らないといけない。対向車がいつ来るかも分からないので、運転に神経を使う。林道であるので路面も決して良いわけではない。さらに吉祥龍穴周辺には駐車場自体がない。道幅が広めになっているので、車道端に車を停めて(路上駐車)参拝することになるが、何台も停められる広さではない。だから健脚者の方には徒歩での参拝を推奨したい。

道順は、室生龍穴神社から県道28号を室生川上流に沿って500mほど行くと、左側に案内板が出てくるので迷うことはない。その案内板の所を左折して林道を登っていく。この林道を500mほど登って行くと先述した「天の岩戸」が右側にある。

「天の岩戸」は、2つに割れたかの様な高さ5mくらいもある一対の巨岩で、注連縄【しめなわ】が張られて鎮座している。

「天の岩戸」の前には鳥居があり、その鳥居の近くには祠【ほこら】もある。

この「天の岩戸」からさらに300mほど先に進むと左側に「吉祥龍穴」と書いた看板と白い鳥居が見えてくるので場所を迷うことはない。


あとがき

室生龍穴神社とその奥宮である吉祥龍穴を訪ねて思ったことは、「龍穴」を「龍神」が住んだ洞穴のように記載されているがそれは誤りであろうということである。私がイメージする「龍神」が住んだにしては規模が小さすぎるからである。

やはり「龍穴」は風水でいうところの大きな山や山脈から大地のエネルギー(気)が放出される場所と考えるのが妥当である。

その強大なエネルギーの流れを龍に例えて「龍脈」と呼び、その龍脈上でエネルギーが留まる地形になっている場所を「龍穴」と呼ぶが、吉祥龍穴もそのような「龍穴」の一つであり、決して龍神様が身を潜めていた場所ではないだろう。どの時代に伝承が混乱したのだろうか。

もっとも強大なエネルギーの流れを龍に例えて「龍脈」と呼んだとするならば、その強大なエネルギーの流れ自体を古の人々は「龍神」として感じており、崇拝したのかも知れない。

龍穴は、風水でいう大地の気が吹き上がる場所であるから、大地の気がみなぎった場所であるのでパワースポットであることに相違ない。そこに龍神信仰が加わり、室生龍穴神社は龍神様を祀る神社になったのではないかと推察する。

奈良時代から平安時代にかけて雨乞い神事のために奈良や京都の都からわざわざ勅使が来ていたことを考えると霊験あらたかな神社であったことが容易に推察できる。

一方、室生寺は「女人高野」で全国に知られるように真言宗の寺院である印象が強いが(実際にそうではあるが)、室生寺が室生龍穴神社の神宮寺であった時代があることからも室生寺を参拝した際には是非、室生龍穴神社にも足を運ぶべきだと思う。私の場合は、室生龍穴神社を参拝した後に、室生寺に参拝した。

室生寺には国宝級の伽藍が立ち並び、境内も広い。奥の院への山道は結構きついがすがすがしい気分にもなれる。シャクナゲが咲く春の終り頃(見頃は4月中旬~5月上旬)も良いが、境内のモミジが色づく秋の紅葉も一見の価値がある。


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