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【伊賀の国】名張の夜を照らす「愛宕神社の火祭り」

はじめに

伊賀の国」は、かつての日本の地方行政区分で、現在の三重県西部、上野盆地一帯に該当する令制国の一つであり、東海道に属していた。「伊賀」は、現在でも三重県の伊賀地方を指す呼称として使われており、伊賀市と名張市を中心に構成されている。伊賀は、伊賀流忍者の発祥地として知られ、伊賀焼(陶器・炻器)や伊賀組紐の産地としても有名である。

愛宕神社【あたごじんじゃ】の歴史は、非常に古く、「火の神」である火之迦具士命【ひのかぐつちのみこと】を祀る神社として知られる。

愛宕神社は、京都の愛宕神社を総本社にして全国に約900社もあるという。愛宕神社の起源は、大宝年間(701年~704年)に修験道の祖である役行者【えんのぎょうじゃ】と白山の開山者である泰澄【たいちょう】が朝廷の許しを得て、愛宕山に神廟を建立したことに始まるという。

「松明の川渡り」を無事に終え、名張市にある愛宕神社に向かう松明行列愛宕の火祭り

総本社である京都の愛宕神社には、「千日詣り」と称される火祭りがよく知られている。この千日詣りでは、山麓の清滝から山頂の愛宕神社までの約4kmの登山道(表参道)に灯されたあかりの中を、参拝者が夜通しで登山を行うことで有名である。

この千日詣りは、7月31日の夜から8月1日の早朝にかけて行われ、「千日分の火伏せ(防火)のご利益」があるとされる。この行事は、火災からの守護を願う重要な神事として、京都の人々に広く信仰されている。

「松明の川渡り」を無事に終え、名張市にある愛宕神社に向かう松明行列愛宕の火祭り

京都の愛宕神社をはじめ、「火伏せの神」としての信仰は多くの地域にも広がっている。「伊賀の国」の名張にある愛宕神社でも「火伏せの神」としての信仰は、江戸時代から現代に至るまで続いており、例年「火祭り」が催されている。

私は、「名張川納涼花火大会」を見学しに行った先で、幸運にもこの愛宕神社の「愛宕の火祭り」を目撃することができた。本稿では、その「愛宕の火祭り」の様子をレポートしたいと思う。


<目次>
はじめに
愛宕神社
愛宕の火祭り
あとがき

愛宕神社

三重県名張市南町に位置する愛宕神社への信仰は、名張の町を焼き尽くした1707年の「宝永の大火」から高まったとされる。

愛宕神社の主祭神である火之迦具士命【ひのかぐつちのみこと】は、「火の神」であると同時に「火伏せの神」でもある。

名 称愛宕神社
所在地三重県名張市南町506

愛宕の火祭り

愛宕の火祭りは、三重県名張市新町にある愛宕神社で「火伏せの神事」として行われる伝統的な祭りである。

この愛宕神社の「火祭り」の起源は、大正時代末期にまで遡るらしい。愛宕神社の主祭神である火之迦具士命【ひのかぐつちのかみ】は、「火の神」であると同時に「火伏せの神」であるところから、火災から名張の町を守るために「火伏せの神事」として始まったとされる。

名張の町は、1707年の「宝永の大火」(江戸時代)で焼き尽くされたのがきっかけで、「火伏せの神」である愛宕神社への信仰が高まったと言われている。

愛宕神社の火祭りは、火災から町を守るための重要な神事として行われるようになり、長い歴史を持っている。

愛宕神社の火祭り「愛宕の火祭り」は、毎年7月24日以降の直近の土曜日に行われる「名張川納涼花火大会」と同時開催なので盛大に行われ、多くの人々で賑わう。

祭りのクライマックスは、白装束をまとった氏子たちが愛宕神社の神輿を先頭に火のついた松明を持って街中を練り歩いた後に、名張川の浅瀬を渡って愛宕神社に向かう「松明の川渡り」である。

愛宕神社の「火伏せの祈願」は、「火の神」である火之迦具士命を祀り、火災から町を守るために行われる重要な神事で、下記のように進行する。

  1. 松明の川渡り
    • 白装束をまとった氏子たちが愛宕神社の神輿を先頭に火のついた松明を持って街を練り歩き、名張川を渡って愛宕神社に向かう。この行列は、「火の神」に対する祈願の一環であるとされる。
  2. 神社での祈願
    • 愛宕神社に到着した後、「火伏せの祈願」が行われる
    • 神職が祝詞をあげ、火災から町を守るよう祈願する
  3. お炊き上げ
    • 古いお札や正月のお飾り、供物などをお炊き上げする
    • 「火の神」に感謝と祈願を捧げる

このように「愛宕の火祭り」は、火災からの守護と地域の結束を象徴する重要な行事であり、愛宕神社の「火伏せの祈願」は地域の安全と繁栄を願う重要な神事となっている。

愛宕神社の火祭りの後には名張川納涼花火大会が開催され、例年約5000発の花火が打ち上げられる。「愛宕の火祭り」および名張川納涼花火大会は、毎年7月24日以降の直近の土曜日に開催されることが多く、多くの人々が集まる一大イベントとなっているようだ。

私は、「愛宕の火祭り」を見学するのは初めてであり、「松明の川渡り」には見入ってしまうと同時に、一種の感動を覚えた。

松明行列を見学するのも初めてであったので、松明の炎の迫力を感じることができた。

松明を近くで見学すると結構な温度である。この松明の炎をかざして行列するのは大変であろうことは容易に察しがつく。


あとがき

私は「名張川納涼花火大会」を見学するのは初めてであり、同日に「愛宕の火祭り」の神事が愛宕神社で執り行われていたことを初めてしったわけである。偶然にこの火祭りに遭遇したのは幸運であったというしかない。

名張の花火大会は、比較的離れた場所からでも見ることができる。そのため、地元の人の中には混雑を嫌って花火大会の会場近くに足を運ばない人も多い。

そのため「愛宕の火祭り」を知らない地元民もいるという。私と一緒にこの火祭りを初めて見学したという地元の家族連れも感動しているようであった。


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