はじめに
天地開闢【てんちかいびゃく】は、世界の始まりを描いた神話で、天と地が分かれ、最初の神々が誕生してくる様子が描かれている。
天之御中主神【アメノミナカヌシノカミ】は、古事記や日本書紀に描かれる日本神話の天地開闢の際に登場する神である。
天之御中主神は、天地開闢の際に最初に現れた神として古事記には記されている。天之御中主神は、宇宙や自然界の根源的な力を象徴し、世界の創造と秩序の始まりを示す存在である。つまり、宇宙の法則や秩序、生成のプロセスを司るとされている。
天之御中主神は、具体的な神話や伝説に登場することは少なく、形を持たない、目に見えない存在として語られることが多い。しかしながら、この神は、天祖神として日本神道における最も高位の神として尊崇されている。
そんな天之御中主神(=天祖神)を祀っている神社が、大分県由布市湯布院町川上に位置する金鱗湖のほとりに鎮座する天祖神社である。
天地開闢
悠久の昔、天と地は交じり合い混沌としていたが、やがて天と地が分かれるときが訪れ(天地開闢)、そのときを境に世界が始まったという。天は神々が住む、高天原【たかまがはら】という天上世界となった。
その高天原【たかまがはら】に順に登場してきたのは、万物の祖とされる「造化三神」と呼ばれる次の三柱の神々であった。
- 天之御中主神【アメノミナカヌシノカミ】
- 高御産巣日神【タカミムスビノカミ】
- 神産巣日神【カミムスビノカミ】
天地開闢の後の国土は、まだまだ若く、固まらず、水に浮いている油のような状態であったという。クラゲのようにフワフワと漂っているような状態であった時代に葦【あし】の芽が成長するように産まれたのが次の二柱の神である。
- 宇摩志阿斯訶備比古遲神【ウマシアシカビヒコヂノカミ】
- 天之常立神【アメノトコタチノカミ】
先述の造化三神にこの二柱を加えた五柱の神々は、別天津神【ことあまつかみ】と呼ばれる特別な五柱の神々である。但し、姿形はないという。
● 天之御中主神【アメノミナカヌシノカミ】 ● 高御産巣日神【タカミムスビノカミ】 ● 神産巣日神【カミムスビノカミ】 ● 宇摩志阿斯訶備比古遲神【ウマシアシカビヒコヂノカミ】 ● 天之常立神【アメノトコタチノカミ】 |
尚、天津神【あまつかみ】は、高天原出身の神を指し、国津神【くにつかみ】と区別されることがある。
天祖神社
天祖神社【てんそじんじゃ】は、金鱗湖のほとりに鎮座しており、池の中に建つ鳥居がランドマークとなっている。境内には、スギ(杉)の巨樹が御神木として生育しており、大分県内でも最大級の大きさであることから、天然記念物に指定されている。
この天祖神社は、ヤマトタケルの父、景行天皇の時代に創建されたと伝えられているから、非常に歴史が古い。
天祖神社の御祭神は次の4柱である。
- 天之御中主神【あめのみなかぬしのかみ】(天祖神)
- 素盞鳴男命【たけはやすさのおのみこと】
- 軻遇突智命【ひのかぐつちのみこと】
- 事代主命【ことしろぬしのみこと】
大昔から伝わる伝説によれば、この地にあった大きな湖から水が流れ出て盆地となった際、湖底に棲んでいた一匹の龍が住処を失い神通力を無くして困り果てていた。この地に辿り着いた龍は、天祖神に湖全部とは言わないが安住の地を少しばかり与えてほしいと懇願したらしい。天祖神は、そんな龍の願いを聞き入れて「岳本の池」を残したという。
龍は、その池で神通力を取り戻し昇天したという。その残された池が現在の金鱗湖であるとの伝承が残されている。
金鱗湖は観光地としても人気が高く、早朝や夕暮れ時には幻想的な光景が広がり、散策や写真撮影には最適である。
名 称 | 天祖神社 |
御祭神 | 天之御中主神【あめのみなかぬしのかみ】(天祖神) 素盞鳴男命【たけはやすさのおのみこと】 軻遇突智命【ひのかぐつちのみこと】 事代主命【ことしろぬしのみこと】 |
所在地 | 大分県由布市湯布院町川上 |
Link | 天祖神社・金鱗湖 | 龍神伝説アーカイブス |
あとがき
率直に話せば、私は天祖神社の存在は金鱗湖の湖畔を散策していて初めて知った。それも妻に教えられてのことである。なんとも主体性のない話であり、情けないことである。しかし、それが事実であるから、仕方がない。
私には、妻のように御朱印を収集する趣味もなければ、昔から馴染みのある神社仏閣以外の神社や寺院にはあまり興味が数年まで全くなかった。だから、事前に神社仏閣の情報を集めるようなことは全くなかった。言い訳がましいが、それが事実であり、これ以上の釈明はできない。そんなわけで、天祖神社についても、率直に言えば、関心がなかったと言ってよい。
そんな私がこのブログで天祖神社について記事を書いているのだから人生は分からないものである。私が天祖神社について、関心を持つようになったきっかけは、サラリーマン生活をリタイアして、余った時間を使って、古事記や日本書紀に描かれている日本神話に興味をもって読みふけった結果と言ってよい。
日本神話に登場する、なんとも人間味のある神々の物語を知るにつれて、そんな人間味溢れる神々を祀る神社にも興味を持つようになったわけである。
【関連記事】
【古事記版日本神話】天地創造からヤマタノオロチ退治までの物語 |
【古事記版日本神話】大国主神の誕生から天孫ニニギの降臨までの物語 |
【古事記版日本神話】天孫ニニギとその御子・海幸彦と山幸彦の物語 |
【日本書紀版日本神話】天地創造からヤマタノオロチ退治までの物語 |
【日本書紀版日本神話】大国主神の登場から天孫ニニギ降臨までの物語 |
【日本書紀版日本神話】天孫ニニギとその御子・海幸彦と山幸彦の物語 |