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【神話に登場する神の社】天太玉命神社

はじめに

天太玉命神社【あめのふとたまのみことじんじゃ】は、その名のとおり天太玉命【あめのふとたまのみこと】を主祭神として祀る神社である。日本神話にも登場する神様であるが、彼には下記のような別名があるので、理解の際に混乱することがある。

  • 布刀玉命【ふとだまのみこと】
  • 太玉命【ふとだまのみこと】
  • 太玉神【ふとだまのかみ】
  • 忌部神【いんべのかみ】

天太玉命は、天照大御神の「天岩戸神話」の際に重要な役割を果たした神として知られている。彼は、天児屋根命【あめのこやねのみこと】(春日大社枚岡神社の主祭神)と共に神事を行い、天照大御神を天岩戸から引き出すための儀式を執り行ったとされる神様である。

思兼神【おもいかねのかみ】(高皇産霊尊【たかみむすびのみこと】の子で、天太玉命とは兄弟神か?)が考えた天照大御神を天岩戸から出すための策で良いかどうかを占うため、天児屋根命とともに太占【ふとまに】を行った神様である。 そして、八尺瓊勾玉や八咫鏡などを下げた天の香山の五百箇真賢木【いおつまさかき】を捧げ持ち、天照大御神が天岩戸から顔をのぞかせると、天児屋根命とともにその前に鏡を差し出したという。

また、天孫降臨の際には、瓊瓊杵尊【ににぎのみこと】(高千穂神社の主祭神)に従って天降るよう命じられ、五伴緒(五部神)の一柱として瓊瓊杵尊に随伴して降臨した神様でもある。

尚、天太玉命神社には天太玉命の他に、次の3柱の神々が主祭神として祀られている。これら3柱の神々は、いずれも天太玉命の御子神である。

  • 大宮売命【おおみやのめのみこと】
  • 豊石窓命【とよいわまどのみこと】
  • 櫛石窓命【くしいわまどのみこと】

天太玉命は、忌部氏の祖神とされているが、彼の子の3柱にもそれぞれ下記のような役割が与えられている。

  • 大宮売命(接客業や商売繁盛の守護神)
  • 豊石窓命(宮殿の門を守る神で、門の守護神)
  • 櫛石窓命(宮殿の門を守る神で、門の守護神)

天太玉命は、占いや祭具、楮や麻の神さまとしても信仰されており、特に産業の神としてのご利益が広く知られている。そのため、天太玉命神社のご利益は多岐に及び。例えば、諸産業守護、災難除け、厄除け、方位除け、縁結び、商売繁盛、金運向上、占術向上などである。占いや予言の技術を向上させるご利益があるとはユニークである。


<目次>
はじめに
天太玉命神社
あとがき

天太玉命神社

天太玉命神社【あめのふとたまのみことじんじゃ】は、主祭神として下記の4柱の神々を祀る神社で、奈良県橿原市忌部町に位置する。

  • 天太玉命【あめのふとたまのみこと】
  • 大宮売命【おおみやのめのみこと】
  • 豊石窓命【とよいわまどのみこと】
  • 櫛石窓命【くしいわまどのみこと】

天太玉命神社は、古代氏族の忌部氏(斎部氏)の氏神として知られている。創建時期は不詳であるが、古代から忌部氏の本拠地とされる忌部町に鎮座している。

天太玉命神社の境内には、主祭神を祀る本殿を中心に、春日神社玉依姫命神社などの重要な神殿もある。

本殿は、天太玉命をはじめとする4柱の主祭神を祀る神殿で、千鳥破風付きの流れ造りである。檜皮葺【ひわだぶき】の屋根が特徴的である。

拝殿は、桟瓦葺【さんがわらぶき】の平入切妻造りである。拝殿前には狛犬が配置されている。

春日神社は、天児屋根命【あめのこやねのみこと】(春日大社枚岡神社の主祭神)を祀る神社で、本殿の左側(西側)に位置している。神話「天岩戸」では天太玉命の相棒となって活躍した神であるから、天太玉命神社の境内に鎮座しても不思議ではない。

玉依姫命神社は、玉依姫命【たまよりひめのみこと】(宝満宮竈門神社下鴨神社の主祭神)を祀る神社で、本殿の右側(東側)に位置している。玉依姫命は、天太玉命の子孫とされる神であり、忌部氏の祖神の神々の一柱として信仰されている。玉依姫命の親神は伝承によって異なるのは興味深いことである。

境内の南側には「一の鳥居」があり、参道を進むと「二の鳥居」が見える。手水舎もあり、参拝者が参拝前に清めを行う場所としての役割を果たしている。

天太玉命神社は、歴史と神話が交錯する神秘的な神社で、参拝する際には、是非、これらの歴史や神話にも想いを馳せたい。

名 称天太玉命神社
所在地奈良県橿原市忌部町153 
駐車場あり(無料)
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あとがき

記紀には記載はないが、一説によると、天太玉命は高皇産霊尊【たかみむすびのみこと】の子であるとの伝承もある。

高皇産霊尊は、天地開闢の際に現れた造化三神の一柱で、天地の創造を司る神として、日本神話において重要な局面で登場する非常に重要な神様である。

例えば、高皇産霊尊は、葦原中津国【あしはらのなかつくに】の平定にも関与している。具体的には、天照大御神と共に、地上の国々を平定し、秩序をもたらすための指示を出したとされる。いわゆる「国譲り」神話の際に天照大御神と共に指示を出した神様である。

神話「天孫降臨」プロローグとして、高皇産霊尊は、天若日子【あめのわかひこ】が地上に降りた際にも登場する。天若日子が高天原に反逆する意志があるかどうかを試すために、高皇産霊尊は矢を投げ返し、その結果として天若日子が討たれ、亡くなることになる。

そして、高皇産霊尊は、天孫降臨の際にも重要な役割を果たす。天照大御神の命を受けて、瓊瓊杵命【ににぎのみこと】を地上界に送り出す際に、高皇産霊尊はその指導と監督を行った神様とされる。

このように高皇産霊尊は、創造と生成の神格を持ち、天照大御神と共に高天原の最高意志を示す神として、日本神話において非常に重要な役割を果たしている。そして、高皇産霊尊には、伝承上では、下記の6柱の子がいることになっている。

  • 思兼神【おもいかねのかみ】
  • 栲幡千千姫命【たくはたちぢひめのみこと】
  • 天忍日命【あめのおしひのみこと】
  • 三穂津姫【みほつひめ】(美保神社の主祭神)
  • 天太玉命【あめのふとたまのみこと】
  • 天活玉命【あめのいくたまのみこと】

高皇産霊尊は、高天彦神社(奈良県御所市)で主祭神として祀られている。天太玉命について調べていくうちに高皇産霊尊に繋がっていくとは当初は想像だにしなかったので驚きである。


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