カテゴリー
ウェルネスツーリズム

【伊賀の国】能の大成者・観阿弥の「創座の地」

はじめに

伊賀の国」は、かつての日本の地方行政区分で、現在の三重県西部、上野盆地一帯に該当する令制国の一つであり、東海道に属していた。「伊賀」は、現在でも三重県の伊賀地方を指す呼称として使われており、伊賀市と名張市を中心に構成されている。伊賀は、伊賀流忍者の発祥地として知られ、伊賀焼(陶器・炻器)や伊賀組紐の産地としても有名である。

観阿弥【かんあみ】は、南北朝時代から室町時代にかけて活躍した猿楽師で、息子の世阿弥【ぜあみ】とともに日本の伝統芸能の一つである「」を大成した人物として知られている。

観阿弥は、1333年に伊賀国で生まれたと伝えられている。しかしながら、具体的な出生地についての明確な記録がなく、伊賀国のどこで生まれたのかははっきりとは分かっていない。

そのような観阿弥が初めて座を起こしたとされる史跡として、「観阿弥創座の地」が名張市の小波田地区に残されている。

目次
はじめに
観阿弥創座の地
あとがき

観阿弥創座の地

能の大成者である観阿弥が初めて座を起こしたとされる地が現在の三重県名張市小波田地区にある。

現在、この地区には観阿弥が座を起こしたことを記念して能舞台が設置されており、「観阿弥ふるさと公園」として整備されている。

そしてこの能舞台で例年11月の第一日曜日に観阿弥祭が開催されている。私は偶然にも名張市の広報誌で2022年11月6日に観阿弥祭が開催されることを知り、その観阿弥祭を観劇できる機会を得ることができた。

コロナ禍で観阿弥祭の中止が続いていたらしいが、3年ぶりに開催されたという2022年の観阿弥祭は、第53回目を迎えていた。2022年の観阿弥祭では名張子ども狂言の会(大蔵流)による狂言(「しびり」)や連吟(「宇治の晒」)と、地元の能楽愛好団体による謡曲【ようきょく】や仕舞【しまい】が披露された。

さらに2022年の観阿弥祭は、名張能楽祭が同時開催されたことから大蔵流狂言師の茂山宗彦【しげやまもとひこ】氏と山下守之【やましたもりゆき】氏による狂言「清水【しみず】」を鑑賞することもできた。狂言「清水」は、大蔵流では鬼狂言と呼ばれ、太郎冠者(シテ=主役)と主人との掛け合いが楽しい話である。

主人に先回りするために家と清水との間を疾走する太郎冠者の様子と苦しい言い訳が演じられており実に楽しい。この狂言の話は、かつて学校の何かの教科書で学んだ記憶があり、非常に懐かしい思いがした。

名 称観阿弥創座の地観阿弥ふるさと公園
所在地三重県名張市上小波田
駐車場あり(無料)
Link観阿弥|名張市

あとがき

狂言は、どちらも日本の伝統芸能であり、どちらも猿楽【さるがく】から派生した芸能である。共通点としては、双方ともヒノキで作られた簡素な舞台で演じられる。そして、双方ともに主役を「シテ」と呼び、足の使い方や発声の方法など、基本的な動作はほとんど同じである。

相違点としては、は主に神や幽霊歴史上の人物が主役となり、能面をつけて演じる仮面劇である。ストーリーは、悲劇的な内容が多い。そのため、観客に緊張感を与え、人生を考えさせる内容となることが多い。

能の観世流は、能のシテ方(主役)五流の一つで、観阿弥と世阿弥の親子によって確立された芸風である。室町時代から江戸時代にかけて幕府の保護を受けて発展し、現在でも能の最大流派であり、所属する能楽師数が最も多い。観世流の特徴は、優美かつ繊細な芸風であると言われている。

一方、狂言の方は、登場人物が武士や家来、庶民であることが多く、面をつけずに(狂言面をつけて演じる演目もある)会話劇として演じられる。庶民の日常の出来事をおもしろおかしく脚色した喜劇であるため、観客を大いに笑わせ、リラックスさせることが目的である。

大蔵流は、狂言の流派の一つで、江戸時代には奈良に住み、尾州徳川家に仕えた歴史があることで知られる。大蔵流の特徴は、古い手組(リズム・パターン)や掛声を残している点であると言われており、音楽構造が比較的単純であるとされる。

このように能と狂言は、異なる性質を持ちながらも、同日の舞台で補完し合う関係にある。そのため能と狂言が同日の公演で演じられることも多い。つまり、能の観世流と狂言の大蔵流の芸を目にすることが多いのは、このような理由が存在するからである。


【関連記事】
【伊賀の国】芭蕉翁のふるさとの地で芭蕉塚を訪ねる
【伊賀の国】芭蕉の生家と服部土芳の蓑虫庵を訪ねる
【伊賀の国】自然と歴史が交差する場の「上野公園」
【伊賀の国】伊賀上野城が朝霧に浮かぶ写真を撮る!
【伊賀の国】朝霧に浮かぶ伊賀上野城の絶景を撮る!
【伊賀の国】街歩き「伊賀上野城下町のおひなさん」
【伊賀の国】伊賀市の秋の風物詩となった「芭蕉祭」
【伊賀の国】ユネスコ無形文化遺産の「上野天神祭」
【伊賀の国】伊賀一宮の敢国神社に伝わる獅子神楽
【伊賀の国】伊賀上野NINJAフェスタに参加!
【伊賀の国】名張の夜を彩る「名張川納涼花火大会」
【伊賀の国】名張の夜を照らす「愛宕神社の火祭り」
【伊賀の国】大イチョウの黄葉が綺麗な「植木神社」
【伊賀の国】くねり御輿と楼車「植木神社の祇園祭」
【伊賀の国】陽夫多神社の「祇園祭・願之山踊り」
【伊賀の国】伝統の夏祭りをはしごして夏を満喫!
【伊賀の国】関西の耶馬渓「香落渓」は紅葉の名所
【伊賀の国】美しい水の舞「滝山渓谷・白藤滝」
【伊賀の国】紅葉の名所「滝山渓谷・白藤滝」
【伊賀の国】秋の風と共に「名張秋祭り」を楽しむ!
【伊賀の国】大イチョウの黄葉が綺麗な「積田神社」
【伊賀の国】大イチョウの黄葉が綺麗な「霊山寺」
【低山登山】旧霊山寺の遺跡が残る「霊山」に登頂!
【低山登山】伊賀の最高峰「尼ヶ岳」に登頂!
「伊賀の国」イチョウの黄葉が綺麗な絶景名所3選
【伊賀の国】伊賀流忍者の発祥の地で学ぶ忍者の実像
【伊賀の国】伊賀流忍者の修行の里「赤目四十八滝」
【伊賀の国】石燈篭と樹齢350年超の枝垂桜の延寿院
【伊賀の国】真っ青な湖面が印象的な「青蓮寺湖」
【伊賀の国】四季の変化があざやかな「青山高原」
【伊賀の国】鈴鹿国定公園内の余野公園「つつじ祭」
【伊賀の国】御墓山古墳、美旗古墳群や石山古墳の地に眠る被葬者たちは誰か?
【伊賀の国】ミエゾウの足跡化石のレプリカに会える大山田せせらぎ運動公園
【伊賀の国】徒然草作者の吉田兼好終焉の地「兼好塚と兼好法師遺跡公園」
【伊賀の国】観菩提寺正月堂の古儀式「修正会」での火と水の荒行・達陀行法!
【伊賀の国】夏越の大祓神事「茅の輪くぐり」とは?
【伊賀の国】日本三大仇討ち「鍵屋の辻の決闘」史跡
【伊賀の国】藤原千方と四鬼伝説の千方窟・逆柳甌穴
【伊賀の国】飛鳥・奈良時代の寺院跡「夏見廃寺跡」
【伊賀の国】地震守護の神「大村神社」
【伊賀の国】地震守護の神「大村神社」秋の例祭
【伊賀の国】神輿が石段を登る「うの宮神社の秋祭」
【伊賀の国】船形だんじりと共に「種生神社の秋祭」
【伊賀の国】火の忍術を感じる「手力神社の秋祭」
【伊賀の国】カッコ踊りが彩る「勝手神社の秋祭り」
【伊賀の国】伝統の秋祭りをはしごして秋を満喫!
【伊賀の国】名張藤堂家邸跡と旧細川邸やなせ宿
【伊賀の国】宇流冨志禰神社と名張藤堂家寄贈の能面
【伊賀の国】能の大成者・観阿弥の「創座の地」
【伊賀の国】観阿弥を偲ぶ伊賀上野城前での「薪能」
【伊賀の国】本堂の美しい彫刻が魅力の寺「常福寺」
【伊賀の国】西国四十九薬師霊場札所の「弥勒寺」
【伊賀の国】アウトドア派の癒しの楽園「岩倉峡」
【伊賀の国】青山高原に鎮座する「奥山愛宕神社」
【伊賀の国】神話に登場する神々の社「比々岐神社」 
【伊賀の国】奥山愛宕神社と比々岐神社の「両詣り」
【伊賀の国】鯛ヶ瀬峡と島ヶ原温泉・やぶっちゃの湯
【伊賀の国】かえで渓谷と大山田温泉・さるびの
【伊賀の国】菜の花フェアと大山田温泉さるびの
【伊賀の国】さくら祭りも開催される伊賀の桜の名所
【伊賀の国】静寂の中に佇む癒しの聖地「新大佛寺」
【伊賀の国】伊賀の里モクモク手づくりファーム
【伊賀の国】伊賀組紐、その伝統と魅力を伝える施設
【伊賀の国】伊賀焼、その伝統と魅力を発信する施設