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神話の敗者が祀られる社:諏訪大社で辿る建御名方神の物語

はじめに

諏訪大社【すわたいしゃ】は、主祭神として次の二柱の神を祀っている。

  • 建御名方神【たけみなかたのかみ】
    • 大国主大神(出雲大社の主祭神)の御子神
    • 諏訪大明神
    • 武勇の神
  • 八坂刀売神【やさかとめのかみ】
    • 建御名方神の妃

建御名方神は、国津神の中でも最強の力を持つ神とされ、「国譲り」の日本神話に深く関わっている。建御名方神は、天照大御神が地上界を治めるために大国主大神(出雲大社の主祭神)に国を譲るように迫った際に登場してくる。

天照大御神は、最初に天穂日命【あめのほひのみこと】と天若日子【あめわかひこ】を使者として送ったが、どちらの神も大国主大神に心酔してしまい、使命を果たさなかった。

そこで、次に派遣されたのが、武神である武甕槌大神【たけみかづちのおおかみ】(鹿島神宮の主祭神)と経津主大神【ふつぬしのおおかみ】(香取神宮の主祭神)である。

武甕槌大神は威圧的に国譲りを大国主大神に迫った。大国主大神は、子である事代主神【ことしろぬしのかみ】(美保神社の主祭神)にその判断を委ねた。事代主神は天照大御神の提案(=国譲り)を承服することにした。

しかし、建御名方神は国譲りには承服できなかったので、武甕槌大神に挑むことにした。彼は、巨大な岩を軽々と持ち上げるほどの怪力を持っていたが、武甕槌大神との力比べには敗れてしまった。

敗北した建御名方神は、信濃の諏訪湖まで逃げ、その地で武甕槌大神に降伏した。建御名方神は「二度と諏訪の地を出ない」という誓いを立て、命を救われた。このような話が「国譲り」神話のくだりに出てくる。

この神話により、建御名方神は諏訪大社の主祭神として祀られることになる。以来、建御名方神は「武勇の神」として武運長久や狩猟守護、「農業の豊作を祈る神」として五穀豊穣などのご利益をもたらす神として信仰されるほか、風雨や洪水から守ってくれる「雨風や水の守護神」として多くの人々に信仰されている。

目次
はじめに
諏訪大社
上社本宮
上社前宮
下社秋宮
下社春宮
あとがき

諏訪大社

諏訪大社【すわたいしゃ】は、長野県の諏訪湖周辺に四社に分かれて鎮座する神社で、信濃國一之宮として知られている。全国に約25,000社ある諏訪神社の総本社である。

諏訪大社の創建については、詳細は不明であるが、少なくとも1500年から2000年前に遡るとされ、日本最古の神社の一つであることには間違いはない。源頼朝や武田信玄などの武将たちも諏訪大社を守護神として崇敬し、社領の寄進や祭祀の復興を行っている。

元々は諏訪湖を挟んで別々の神社であった上諏訪神社(上社)と下諏訪神社(下社)が、明治時代に一つの神社となったという。現在、諏訪大社は次の四社から構成されている(二社四宮)。

  1. 上社本宮(長野県諏訪市中洲宮山1)
  2. 上社前宮(長野県茅野市宮川2030)
  3. 下社秋宮(長野県諏訪郡下諏訪町武居5828)
  4. 下社春宮(長野県諏訪郡下諏訪町下ノ原193)

各神社には異なる魅力があるため、四社を巡る「四社めぐり」は人気が高い。この四社めぐりには、特に決まった参拝の順番はなく、移動ロスを最小限にして、効率よく巡ればよい。

例えば、東京方面からなら、①上社前宮、②上社本宮、③下社秋宮、④下社春宮の順番で参拝するのが効率的であろう。一方、名古屋方面からなら、①下社春宮、②下社秋宮、③上社本宮、④上社前宮の順番で参拝するのが効率的であるかも知れない。


上社本宮

諏訪大社の中心的な神社で、諏訪造りの代表的な建物が多く残っている。社殿の四隅に「御柱」と呼ばれる大木が建てられており、独特の配置が特徴的である。

神体山を拝するという大きな特徴があり、本殿がない。祭祀研究の上からも注目されている。また、建造物の多く、歴史的な価値が高いと評価されている。

名 称上社本宮
所在地諏訪市中洲宮山1
TEL0266-52-1919
駐車場あり(無料)
4ヶ所の駐車場
諏訪大社上社本宮
参拝者用駐車場
Link信濃國一之宮 諏訪大社

上社前宮

諏訪信仰の発祥の地とされ、諏訪大明神が最初に居を構えた場所とされている。御柱祭の際には、四隅に建てられる御柱が見どころとなる。

自然の気に満ち溢れた本殿や御柱の存在が魅力的である。清流の水眼【すいが】のご神水を飲むことができ、パワースポットとしても人気が高い。

名 称上社前宮
所在地長野県茅野市宮川2030
TEL0266-72-1606
駐車場あり(無料)
諏訪大社上社前宮駐車場、
諏訪大社上社前宮
社務所前駐車場
Link信濃國一之宮 諏訪大社

下社秋宮

下諏訪温泉街に位置し、立派な社殿が楽しめる神社である。社殿を取り囲む4本の御柱や精巧な彫刻、巨大な注連縄が見どころである。

温泉が湧き出す手水や青銅の狛犬など、見どころが豊富である。

市街地や駅にも近く、参拝しやすい場所にあることも魅力の一つであるかも知れない。

名 称下社秋宮
所在地長野県下諏訪町武居5828
TEL0266-27-8035
駐車場あり(無料)
諏訪大社下社秋宮
普通車駐車場、
諏訪大社下社秋宮
参拝者・専女八幡駐車場
Link信濃國一之宮 諏訪大社

下社春宮

砥川沿いに建ち、小規模ながらも存在感のある神社である。秋宮と同じ絵図面で造られたため、構造が似ている。

「結びの杉」や「万治の石仏」などのパワースポットが多く、静かな空気が流れる境内で、歴史ある建築を楽しむことができる。

名 称下社春宮
所在地長野県下諏訪町下ノ原193
TEL0266-27-8316
駐車場あり(無料)
諏訪大社春宮駐車場
Link信濃國一之宮 諏訪大社

諏訪大社の最大の神事である御柱祭【おんばしらさい】は、7年に1度行われる。この祭りは、巨大な木柱(御柱)を山から神社まで運び建てる壮大な行事である。諏訪地方一円の氏子が参加するというこの祭りは、地域の人々の結束と伝統を感じることができるはずである。


あとがき

諏訪大社は、自然崇拝という日本古来の形を今に伝えている神社で、神体山や御神木を祀っている。例えば、上社本宮では守屋山を神奈備【かんなび】(=神体山)としている。そのため、上社本宮には本殿がなく、守屋山が神体山として崇敬されている。

また、下社春宮では御神木としての木を祀っている。このスギの御神木は、樹齢が約300年以上と推定され、樹高約30m、幹周りが約3.8mもある巨樹である。この御神木は、地上10m付近で二股に分かれているが、根元は一緒になっているため「結びの杉」と呼ばれている。そのため、「縁結び」のパワースポットとしても知られている。

一方、下社秋宮では御神木として「一位の木」と呼ばれるイチイの木を祀っている。語呂合わせのような名前であるが、このイチイの御神木は、樹齢が約800年と推定されている。樹高や幹周りについての情報は不明である。

さらに、下社秋宮にはスギ御神木もある。「根入りの杉」と呼ばれるこの御神木は、樹齢約800年と推定されている。この杉の木は、枝が垂れ下って眠っているように見えることからその名が付けられたという。名付け親にセンスを感じる。この御神木の樹高は約35mで、幹周りは約5mもあるという。

これらの御神木は、古代から神聖な存在として崇められ、神々が宿る場所と信じられている。

さらに、上社前宮では、清流の水を引き入れた親水公園があり、自然との一体感を感じられるようにしている。日本古来の自然崇拝(古代信仰)では、自然そのものを神聖視し、山や川、木々などが神々の宿る場所とされてきた。上社前宮の親水公園は、清流の水(水眼【すいが】)を引き入れることで、自然の力を感じることができる場所として設けられているという。

このような場所は、参拝者が自然と一体となり、神聖なエネルギーを感じることができる場として重要視されている。自然崇拝においては、清らかな水や緑豊かな環境が神聖なものとされ、その場において神々とのつながりを私たちは感じることができる。


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