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苔むす石灯籠と異界の参道に神の気配:上色見熊野座神社で出会う神話の世界

はじめに

上色見熊野座神社【かみしきみくまのいますじんじゃ】は、熊本県の高森町に位置する神秘的な神社である。最近では「異世界への入り口」とも呼ばれ、SNSでも話題になっている人気の神社である。

社殿に向かう参道の両側には全部で97基もの石灯籠が立ち並んでいる。森林に覆われ、うっそうとした参道には苔むした緑色の世界が広がっている。その緑色の世界にわずかに陽光が差し込む光景はとても幻想的であり、神秘的でもある。

社殿を抜けて、急な坂をさらに登ると、穿戸岩【うげといわ】と呼ばれる巨大な風穴にたどり着く。縦横10mもある大風穴は、パワースポットとして知られている。

率直に話せば、私は妻に誘われて、このパワースポットとして知られる穿戸岩を見学しに行ったのであって、上色見熊野座神社は国内に数多ある熊野神社の一社ぐらいにしか認識していなかったのは、今にして思えば滑稽である。そして、恥ずかしながら、熊野神社に祀られている神様の名前すら知らなかったのである。

ところが、上色見熊野座神社には日本神話でも重要なイザナギとイザナミの二神が祀られていることを知り、熊野本宮大社にもイザナギとイザナミの二神が祀られていることを知るきっかけになったわけである。そういう意味では、上色見熊野座神社は、私にとっては特別な神社である。

目次
はじめに
上色見熊野座神社
あとがき

上色見熊野座神社

上色見熊野座神社【かみしきみくまのいますじんじゃ】の御祭神は、伊邪那岐神伊邪那美神の二神である。

阿蘇大明神健磐龍命【たけいわたつのみこと】の荒魂石君大将軍【いわぎみたいしょうぐん】も祀られている。

上色見熊野座神社参道第二鳥居には「熊野宮」の銘がある

創設は相当古く、紀州熊野の熊野本宮大社から移したものと伝えられている。南郷の総鎮守として祀られてきたが、従前の建物は天正年間の兵火により焼失したという。

現在の社殿は、約300年前の享保七年(1723年)に建立されたものであるという。

上色見熊野座神社・社殿の背後の山腹にはパワースポットとして知られる穿戸岩【うげといわ】がある。

名 称上色見熊野座神社
御祭神伊邪那岐神(=イザナギ)
伊邪那美神(=イザナミ)
阿蘇大明神(健磐龍命)の
荒魂
石君大将軍
所在地熊本県高森町上色見2619
駐車場あり(無料)
Link上色見熊野座神社

あとがき

上色見熊野座神社の社殿の背後の山腹には、穿戸岩【うげといわ】と呼ばれる大風穴があり、大人気のパワースポットである。

この穿戸岩には、鬼八法師【きはちほうし】という妖怪にまつわる伝説が残されている。

鬼八法師は、九州地方に伝わる伝説的な妖怪で、非常に力強く、首を切り落とされても再生するほどの蘇生力を持つ存在であったとされる。鬼八法師は、霜を自在に操り、農作物に被害を及ぼす存在としても恐れられていたという。その一方で、鬼八法師は、霜宮【しもみや】としても知られ、「霜を司る神」として信仰されていたという。

鬼八法師は、阿蘇大明神とも呼ばれる健磐龍命【たけいわたつのみこと】の従者であり、健磐龍命が放った弓矢を拾いに行く役割を担っていた。

ところが、ある日、健磐龍命が放った弓を拾うことに疲れ果てた鬼八法師は、弓を足の指に挟んで健磐龍命に向かって投げ返したという。それに激怒した健磐龍命から逃げるため、鬼八法師は岩壁を蹴破って逃げたとされている。鬼八法師が蹴破ってできたのが「穿戸岩」であると伝承されてきた。

これらの伝説から、穿戸岩は、困難な目標でも必ず達成できる象徴として、合格・必勝のご利益があるとされている。


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