カテゴリー
ウェルネスツーリズム 神社仏閣

海に浮かぶ神域:青島神社がつむぐ山幸彦と豊玉姫の物語

はじめに

天の神々は、地上に降り立ち、「国作り」を通じて、地上に様々な産業を起こした。その末裔が皇祖として、地上を治めるようになっていく。そして、「国譲り」を経て、ヤマト王国が創建され、天皇を中心とした統一国家が誕生していくことになる。

ヤマト王国の成立によって、神々の信仰も体系化されていく。ヤマト王国の権力基盤が強固になっていく過程と天皇家の正当性が描かれているのが日本最古の史記と言われる古事記と日本書紀である。

日本神話の最終章に相当する「海幸彦と山幸彦の物語」に登場する神々ゆかりの神社には青島神社【あおしまじんじゃ】、潮嶽神社【うしおだけじんじゃ】と鵜戸神宮【うどじんぐう】が知られている。いずれの神社も宮崎県に鎮座している。

なかでも青島神社は、宮崎市青島に位置し、青島全島を境内地に持ち、島のほぼ中央に鎮座している。青島は、周囲1.5kmの小さな島で、「海幸彦・山幸彦の物語」の舞台であり、山幸彦と豊玉姫が結ばれた地とされている。

青島神社の歴史は非常に古く、平安時代(794~1185年)にまで遡ると伝えられている。青島神社には、彦火火出見命【ひこほほでみのみこと】(山幸彦)とその妃神である豊玉姫命【とよたまひめのみこと】、そして塩筒大神【しおづつのおおかみ】が祀られている。

目次
はじめに
海幸彦と山幸彦
青島神社
あとがき

海幸彦と山幸彦

天孫・ニニギが笠沙御崎で美しいサクヤヒメ木花佐久夜毘売)に出会い、結婚して三人の子供が生まれる。火照命は、海幸彦であり、後に隼人阿多君の祖神となる。一方、火遠理命は、山幸彦であり、後の天津日高日子穂穂出見命【あまつひだかひこほほでみのみこと】であり、神武天皇の祖父にあたる。

熟練した漁師であった兄の海幸彦と狩人の弟の山幸彦は、弟が兄の「釣り針」を海で失くしたことが原因で何年にもわたって仲違いすることになる。途方に暮れる山幸彦は、塩椎神の助けを借りて海神の宮殿を訪問する。

そこで海神の娘・豊玉毘売と出会い、結婚する。そして、誕生した息子も海神の娘・玉依毘売命と結婚し、山幸彦にとっては孫にあたる子(後の神武天皇=伝説の初代天皇)が誕生したところで古事記・上巻が終了している。


青島神社

青島神社【あおしまじんじゃ】は、宮崎市にある青島全島を境内地とする神社で、社殿は青島のほぼ中央に鎮座している。

青島神社は、「海幸彦と山幸彦」の神話に登場する山幸彦、つまり天津日高彦火火出見命【あまつひだかひこほほでみのみこと】を祀っている。

また、山幸彦の妃神である豊玉姫命【とよたまひめのみこと】と、山幸彦を海神宮【わたつみのみや】へ行かせた塩筒大神【しおづつのおおかみ】を合祀している。

元来は海洋に対する信仰によって創祀されたと考えられ、古くから青島自体が霊域として崇められていたという。社伝によれば、山幸彦が海神宮から帰還した際に青島に上陸して宮を建てたとされ、青島神社はその宮跡に創建されたと伝わる。

現在では、青島神社は縁結び、安産、航海安全に御利益がある神社して信仰を集めているという。

名 称青島神社
所在地宮崎市青島2丁目13番1号
参拝時間6:00から日没まで(季節により日没時刻は変動)
御朱印授与8:00から17:00
Link青島神社

あとがき

青島神社は、有名な神話「海幸彦・山幸彦の物語」の舞台であり、山幸彦と豊玉姫が結ばれた地とされていることから、「縁結びの神様」として知られており、恋愛成就を願う多くの参拝者が訪れる。ハート形の絵馬や恋みくじなど、恋愛成就にあやかれそうなアイテムが多数用意されている。

青島には、「鬼の洗濯板」と呼ばれる奇岩の景色が広がり、隆起海床と奇形波蝕痕をなしていることから、国の天然記念物に指定されている。また、熱帯・亜熱帯植物の群生地として国の特別天然記念物に指定されている。

青島神社は、古代から神聖な場所とされ、自然の美しさと神代からの歴史が融合した魅力的なスポットとなっている。そのため、現在も多くの参拝者が訪れ、途絶えることはない。


【関連記事】
日本神話の扉をひらく古社:天祖神社が語るはじまりの物語
日本神話のはじまりを辿る旅:大元神社で感じる神々の気配
天津神が住む高天原への入り口へ:神話が息づく高天彦神社で出会う古代の記憶
神話「国産み」の舞台へ:自凝神社で辿る日本列島の始まり
イザナギとイザナミが降り立った聖地:自凝島神社でたどる日本列島のはじまり
国産み・神産みの二神を祀る伊弉諾神宮で感じる神話の源流
宗像三女神が守る航海の聖地:宗像大社に息づく神話の記憶
蘇りの聖地へ:神話が息づく熊野本宮大社で知る再生の物語
神々が降り立つ祈りの地:熊野速玉大社で辿る神話の始まり
那智瀧に導かれて:熊野那智大社で出会う自然崇拝の世界
苔むす石灯籠と異界の参道に神の気配:上色見熊野座神社で出会う神話の世界
雷神と笛吹の伝説が響く社:葛木坐火雷神社(笛吹神社)で出会う神話の世界
賀茂氏の神話にふれられる社:高鴨神社でたどる祖神の記憶
賀茂の氏神に出会う京都の杜:上賀茂・下鴨神社でたどる玉依姫命の神話と伝説
賀茂一族の源流を訪ねて:鴨都波神社でたどる神話の記憶
天岩戸神話の舞台:天岩戸神社で出会う神話の核心と伝承
天照大御神を祀る神宮へ:伊勢神宮が導く神話と信仰の世界
神話の剣が祀られる聖地へ:熱田神宮で辿る草薙神剣の伝説
光と闇を司る神々の社:日御碕神社で辿る神話と伝説の風景
八岐大蛇退治のその後へ:須我神社で始まる神話の新たな章
櫛名田比売命と須佐之男命の恋の舞台:八重垣神社の由緒
須佐之男命の御魂が鎮まる社:須佐神社でたどる神話の終章
厄除けと再生の神を祀る社:八坂神社の神話と信仰の歴史
素戔嗚尊を祀るもうひとつの聖地:出雲大社・素鵞社の神秘
神話「因幡の白兎」が導くご縁の社:白兎神社の神秘と伝承
神々が集う神話の聖地へ:出雲大社で辿る“縁”と神話の核心
神話と美の力が宿る社:玉作湯神社で出会う“願い石”の神秘
本殿なき神の社へ:大神神社が語る古代神話と祈りのかたち
海の神に出会う神話の社:美保神社でたどる恵比寿様の物語
布都御魂剣に宿る神威:石上神宮で辿る武の神の神話と伝説
白鹿に導かれし四柱の神々の社:春日大社が語る神話と信仰
天孫降臨の聖地へ:高千穂神社がつむぐ神話と信仰の物語
神話の海幸彦を祀る山の社:潮嶽神社が語る兄弟神話の真実
神話の誕生譚が息づく洞窟の社:鵜戸神宮でたどる命の物語
神代と現世をつなぐ社:宝満宮竈門神社で紡ぐ玉依姫の物語
八幡信仰のはじまりへ:宇佐神宮が紡ぐ神話と歴史の交差点
武神が鎮まる東国の聖地:鹿島神宮で辿る武甕槌大神の神話
国譲り神話で活躍の神:香取神宮で出会う経津主大神の物語
神話の敗者が祀られる社:諏訪大社で辿る建御名方神の物語
神道祭祀のはじまりへ:枚岡神社がつむぐ天児屋根命の物語
天岩戸神話の舞台裏へ:天太玉命神社が語る神事と創造の力
神戸のまちに息づく神話:事代主神を祀る長田神社の魅力
山と海をつなぐ神話の社:三嶋大社で辿る信仰と再興の物語
山と海と戦の神を祀る聖地へ:大山祇神社で辿る信仰の源流
酒と命をつかさどる神々の社:梅宮大社で出会う神話の恵み
霊峰を仰ぐ神話の聖地:富士山本宮浅間大社で出会う木花咲耶姫の祈りのかたち
霊峰登拝の玄関口:北口本宮冨士浅間神社でつむぐ木花咲耶姫の神話と富士信仰
海の神を祀る浪速の古社:住吉大社でたどる住吉三神の神話
道をひらく神に出会う社:椿大神社が紡ぐ猿田彦大神の神話
伊勢に鎮まる道開きの神:猿田彦神社がつむぐ神話と導き
酒と水の神を祀る京都の古社:松尾大社が紡ぐ水と命の神話
伊邪那岐・伊邪那美を祀る聖地:多賀大社で辿る神話の源流
スサノオを祀る出雲国一宮:熊野大社がつむぐ神話の鼓動
神話の英雄を祀る武蔵国総鎮守:氷川神社が導く信仰の継承
近江国一宮に宿る英雄神:建部大社がつむぐ日本武尊の物語
天孫降臨の舞台へ:霧島神宮がつむぐ天界と地上を結ぶ物語
日本建国の地に鎮まる神宮:橿原神宮が紡ぐ神武天皇の神話
“京の伊勢”と呼ばれる社:日向大神宮が紡ぐ天照大神の神話
武運と国家の守護神を祀る社:石清水八幡宮が紡ぐ応神天皇の神話と八幡神信仰
千本鳥居の先の朱の社:伏見稲荷大社で出会う宇迦之御魂神
【古事記版日本神話】天地創造からヤマタノオロチ退治までの物語
【古事記版日本神話】大国主神の誕生から天孫ニニギの降臨までの物語
【古事記版日本神話】天孫ニニギとその御子・海幸彦と山幸彦の物語
【日本書紀版日本神話】天地創造からヤマタノオロチ退治までの物語
【日本書紀版日本神話】大国主神の登場から天孫ニニギ降臨までの物語
【日本書紀版日本神話】天孫ニニギとその御子・海幸彦と山幸彦の物語