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文人たちが愛した風景―須磨寺でたどる源平と文化の足跡

はじめに

須磨寺【すまでら】の正式名称は、上野山福祥寺【じょうやさんふくしょうじ】であるが、古くから「須磨寺」の通称で親しまれてきた。

須磨寺は、兵庫県神戸市須磨区に位置する真言宗須磨寺派の大本山である。

須磨寺の境内マップ

須磨寺は、平敦盛が愛用したとされる「青葉の笛」や弁慶の鐘、さらに敦盛首塚や、源義経が腰掛けたとされる「義経腰掛の松」などの歴史的な遺物や史跡があり「源平ゆかりの古刹」として全国的にも知られている。

そんな須磨寺へは古来より源平の浪漫を偲んで訪れる文人墨客も数多く、広い境内には彼らの句碑や歌碑が点在している。有名なものとしては、正岡子規や松尾芭蕉の句碑がある。

須磨寺

須磨寺【すまでら】は、兵庫県神戸市須磨区須磨寺町にある真言宗須磨寺派大本山の寺院である。正式名称は、上野山福祥寺【じょうやさんふくしょうじ】である。御本尊は聖観音菩薩で、新西国三十三箇所の第24番札所でもある。

須磨寺は、平安時代の886年に光孝天皇の勅命により、聞鏡上人によって創建された寺院である。元々は平安時代の初め、漁師が和田岬の沖で聖観音像を引き上げたことがきっかけで、その像を安置するために建立されたと伝わっている。

境内には国指定の重要文化財である本堂や十三重石塔など多くの歴史的建造物がある。また、仏壇、木造十一面観音立像、絹本著色普賢十羅刹女像なども重要文化財に指定されている。

また、平敦盛遺愛の「青葉の笛」や弁慶の鐘など、源平合戦に関連する宝物も所蔵されている。

須磨寺は、毎月20日と21日に「お大師様の縁日」が開かれ、多くの参拝者で賑わう。また、秋季彼岸会や須磨の火祭りなど、年間を通じて様々な行事が行われている。

名 称 須磨寺(上野山 福祥寺)
所在地神戸市須磨区須磨寺町4-6-8
TEL078-731-0416
駐車場
Link大本山 須磨寺

あとがき

須磨寺略歴縁起(寺蔵)によれば、平安時代の初めに、漁師が和田岬(神戸市兵庫区和田岬)の沖合から聖観世音菩薩像を引き上げ、その仏像を安置するために、淳和天皇の勅命により、兵庫区会下山に、恵偈山北峰寺が建立されたことになっている。

そして886年に、光孝天皇の勅命により、聞鏡上人が現在の地に上野山福祥寺を建立し、北峰寺から聖観世音菩薩像を遷し、本尊として祀ったのが、須磨寺の開基とされる。およそ1140年の歴史がある古刹である。

一方、南北朝時代から江戸時代にかけて歴代の住職が書き継いだとされる「当山歴代」(県指定文化財)によれば、御本尊の聖観世音菩薩像は1169年に源頼政が安置したと記されているらしいが、それでも850年以上も前のことである。

須磨寺は、悠久の歴史浪漫が満ち溢れた古刹であることに相違ない。


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