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安産祈願の聖地へ―やさしき観音さまに出会う中山寺への旅

はじめに

中山寺は、聖徳太子の創建によるわが国最初の観音霊場とされる。奈良時代には大小多数の堂塔伽藍を備えた高野山や比叡山に匹敵する大寺院であったと伝わっている。幾度の兵火や天災に見舞われながらも、源氏や、豊臣家、徳川家など時代の有力者たちの熱心な信仰と寄進によって現在の伽藍が形成され、1400年超の長い歴史を誇る名刹である。

中山寺の御本尊は、十一面観世音菩薩立像であるが、さまざまな由縁が現在まで語り継がれているという。古代インドのアユジャ国王妃・勝鬘夫人【しょうまんぶにん/シュリーマーラー】は、在家の身ながらもお釈迦さま(仏陀)にその聡明さを認められていたという。勝鬘夫人が女人救済の誓願を立て、自らを模して彫られた伝わる尊像が中山寺の十一面観世音菩薩立像であるとされる。後に、聖徳太子が『勝鬘経義疏』【しょうまんぎょうぎしょ】を記し『勝鬘経』の功徳を説かれたと伝わり、中山寺の観音さまの霊徳を窺い知ることができる伝承とされる。

中山寺の境内マップ

中山寺は、古くから武家・庶民を問わず、安産祈願のお寺として知られていた。豊臣秀吉は、かねてより中山寺を信仰しており、朝鮮討伐の際に寄進されたと伝わる宝塔が残っている。寺伝によれば、秀吉は五十歳を過ぎても世継ぎができなかったが、中山寺で熱心に祈願したところ秀頼を授かり、その崇拝をますます篤くしたという。

秀吉の死後、息子の秀頼は母の淀君と共に、秀吉の供養と自身誕生のお礼参りに中山寺を訪れたという。その参拝の際に、秀頼が秀吉に下賜された神号「豊国大明神」を書にして奉納したとされる。その掛軸が現在も中山寺に保管されているらしい。

中山寺の境内マップ

また、秀頼は、1603年に片桐且元に命じ、戦火によって荒廃していた伽藍の再建を行ったという。これが現在の伽藍であり、当時の棟札が現存しているらしい。

幕末の頃、明治天皇の御生母である中山一位局が、中山寺の「鐘の緒」を受けて明治天皇を御平産されてからは、日本で唯一の「明治天皇勅願所」となった。以来、中山寺の霊徳はますます高まり、安産を祈る人々が全国から参拝するようなっている。

目次
はじめに
中山寺
あとがき

中山寺

中山寺【なかやまでら】は、兵庫県宝塚市にある真言宗中山寺派の大本山の寺院で、山号を紫雲山【しうんざん】と称する。御本尊は十一面観世音菩薩で、西国三十三所の第24番札所になっている。十一面観世音菩薩像は秘仏で、毎月18日に開扉される。

中山寺は、聖徳太子によって創建されたと伝えられている。その後、平安時代には徳道上人が観音信仰を広めるために御宝印を納めたとされ、観音巡礼の霊場として栄えたという。また、豊臣秀吉が祈願して豊臣秀頼を授かったとされるなど、安産祈願の寺としても有名である。

本堂は、1603年に豊臣秀頼によって再建されたという。境内には深い青色で塗装された五重塔があり、「青龍塔」と呼ばれている。また、護摩堂阿弥陀堂などもある。

中山寺では、年間を通じて様々な行事が行われているが、特に有名な行事は、毎月の戌の日に行われる安産祈祷会である。この行事には、多くの妊婦さんが参拝に訪れている。

名 称紫雲山 中山寺
御本尊十一面観音菩薩
所在地宝塚市中山寺2丁目11-1
TEL0797-87-0024
駐車場あり(有料)
Link大本山 中山寺|安産祈願

あとがき

中山寺は、近畿二府四県と岐阜県にわたる観音巡礼の霊場、西国三十三所の札所の一つであるが、単なる札所以上に深い関係がある。

養老二年(718年)、大和国の長谷寺の徳道上人が病で仮死状態になった際に冥土で閻魔大王にお会いになり、「生前の悪行によって地獄へ送られる者が多い。観音霊場へ参り功徳を得られるよう、人々に観音菩薩の慈悲の心を説け」とのお告げを受けたという。その証拠となるよう閻魔大王の御宝印と起請文を授かり現世へ戻り、観音信仰の流布に努めたが、当時は世に浸透せず、巡礼は発展しなかったという。徳道上人は巡礼の機が熟するのを待つため、御宝印を中山寺の石の櫃【からと】に納めたとされる。

その後、第六十五代花山天皇が退位後に仏門に入り、その石の櫃から御宝印を取り出し、西国三十三所を再興したとされる。その際、中山寺を二十四番札所に定めたという。


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