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神仏習合の面影を今に伝える――清荒神清澄寺の信仰と風景

はじめに

清荒神清澄寺【きよしこうじんせいちょうじ】は、兵庫県宝塚市にある真言三宝宗の大本山で、平安時代に宇多天皇によって建立された約1130年の歴史を有する古刹である。清荒神清澄寺の境内には歴史的な建物が点在している。

清荒神清澄寺の境内マップ

清荒神清澄寺は、神仏習合の形態が色濃く残っており、境内には三宝荒神社もある。この寺が「清荒神清澄寺」と呼ばれる所以でもある。

また、境内には鉄斎美術館があり、富岡鉄斎の作品が展示されている。そのため、富岡鉄斎の芸術に触れることができる場所としても広く知られている。

目次
はじめに
清荒神清澄寺
あとがき

清荒神清澄寺

清荒神清澄寺【きよしこうじんせいちょうじ】は、兵庫県宝塚市にある真言三宝宗の総本山の寺院である。山号は蓬莱山【ほうらいさん】で、御本尊は大日如来である。

清荒神清澄寺は、平安時代の896年に宇多天皇の勅願により静観僧正によって創建された古刹で、約1130年の歴史を有する。

境内には鉄斎美術館があり、画家である富岡鉄斎の作品が展示されている。そのため、富岡鉄斎の芸術に触れることができる場所としても広く知られている。

この寺院は、火の神や台所の神として信仰されており、家内安全や商売繁盛、厄除開運などの現世利益をもたらすとされてる。毎年多くの参拝者が訪れ、特に年末年始や1月の土日祝日には多くの人々で賑わう。

名 称蓬莱山 清荒神清澄寺
所在地宝塚市米谷字清シ1番地
TEL0797-86-6641
駐車場
Link真言三宝宗 清荒神清澄寺

あとがき

富岡鉄斎【とみおか てっさい】(1837~1924)は、明治・大正期に活躍して「最後の文人画家」と謳われた人物である。

京都の法衣商十一屋伝兵衛富岡維叙の次男として生まれた富岡鉄斎は、幼少の頃から勉学に励み、若くして学者を志したという。

30歳から40代半まで大和国の石上神宮や和泉国の大鳥神社の神官(宮司)を務めたという。また、大和国の荒廃した神社(加夜奈留美命神社)の復興にも尽力している。

教育者としても活躍し、明治2年(1869年)、私塾立命館で教員になっている。明治26年(1893年)、京都市美術学校で教員に就任し、明治37年(1904年)まで修身を教えたらしい。

絵画は、ほとんど独学で学んだという。満88歳で没するまでに数多くの作品を描き、晩年には帝室技芸員や帝国美術院会員になるなど、日本の美術史に大きな足跡を遺した。

富岡鉄斎は、自身が座右の銘とした、文人の理想である「万巻の書を読み万里の路を行く」ことを実践し、高い意味内容を含んだ味わい深い作品をつくりあげた画家としての評価が高い。

富岡鉄斎は、東洋のあらゆる画法を研究し、それが鉄斎ならではの独創的な表現を生み、時には繊細に、時には大胆に、何ものにもとらわれない自由闊達さが、彩色画にも水墨画にも縦横に発揮されていると評価されている。

富岡鉄斎の絵の主題は、中国や日本の歴史、故事、逸話などから引いた物語や人物、あるいは東洋画の伝統的な山水画に至るまで実に多くを描き、やがてそれらは「仙境図」と呼ばれる独自の世界を表現するに至ったとされる。現代においても、鉄斎の評価はますます世界的にも高まっていると言われている。

富岡鉄斎と清荒神清澄寺の関わりは、第37世法主であった光浄和上(1875~1969)と富岡鉄斎の出会いに始まるとされる。二人の初めての出会いは、大正11年(1922年)夏頃で、鉄斎が87歳、光浄和上が48歳の時であったらしい。鉄斎は88歳で他界しているから逝去する前年のことである。

それ以来、光浄和上は鉄斎の芸術に深く傾倒し、作品の蒐集とその研究に生涯を捧げたという。光浄和上は、元来、宗教と芸術文化の花を咲かせる理想の聖域を創造したいという念願をもっていたため、鉄斎の芸術に深く感銘したのであろうが、二人が共に京都に生まれであったことも鉄斎に関心をもった理由であるかも知れない。

光浄和上は、自ら海外の展覧会場を訪れ、鉄斎の平和精神と「三宝三福」の真理を説くなど世界の人々と広く交流を持ち、さらには国内外でコレクションによる「鉄斎展」を開催したという。そのため、清荒神清澄寺はいつしか「鉄斎寺」として世界的に知られるようになったという。

光浄和上の遺志は、第38世法主の光聰和上(1927~1995)にも受け継がれた。光聰和上は、鉄斎の賛文を解読する研究誌「鉄斎研究」(1~71号)を発刊し、さらに昭和50年(1975年)に境内に鉄斎美術館を開館した。

そして、現法主の第39世光謙和上も鉄斎の作品の収蔵・保管するために平成11年(1999年)に美術館に併設する収蔵庫を建設している。このように、富岡鉄斎清荒神清澄寺の関わりは深く、現在に至っているという。清荒神清澄寺を参拝した際には、是非とも富岡鉄斎の作品も鑑賞してみたいものである。


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