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真言教学の正統を今に伝える―智山派総本山・智積院の魅力

はじめに

智積院【ちしゃくいん】は、京都市東山七条に位置する真言宗智山派総本山である。智積院は、弘法大師から脈々と伝わってきた真言教学の正統な学風を伝える寺院でもある。また、江戸時代前期には運敞【うんしょう】僧正が宗学をきわめ、智山教学を確立したことから、智積院には学侶が多く集まるようになり、学山智山と称され、多くの学僧を生み出す寺院としても知られる。

智積院の境内マップ

真言宗智山派の大本山には成田山新勝寺、川崎大師平間寺、髙尾山藥王院があるほか、別格本山には高幡山金剛寺(東京都)や大須観音寶生院(名古屋市)などの関連寺院を擁する。

目次
はじめに
智積院
あとがき

智積院

智積院【ちしゃくいん】は、京都市東山区にある真言宗智山派の総本山の寺院である。山号は五百佛山【いおぶさん】と称し、御本尊は金剛界大日如来である。

智積院は、1601年に玄宥【げんゆう】によって創建された寺院で、桃山時代の障壁画などの重要文化財が多くあり、特に長谷川等伯一派による障壁画は国宝に指定されている。

智積院は歴史的な価値が高い寺院であると共に、美しい庭園でも有名である。

名 称五百佛山 根来寺 智積院
所在地京都市東山区東瓦町964
TEL075-541-5361
駐車場あり(無料)
Link真言宗智山派総本山智積院

あとがき

真言宗の宗祖・弘法大師空海が高野山で入定【にゅうじょう】したのは、835年3月21日である。その後、荒廃した高野山の復興と真言宗教学の振興において大いに活躍したのが「中興の祖」とされる興教大師【こうぎょうだいし】覚鑁【かくばん】である。

興教大師覚鑁は、真言宗の教えを伝えるための最も重要なお堂である大伝法院【だいでんぼういん】を1132年に高野山に建てるが、排斥運動に会い、1140年に修行の場を高野山から根来山【ねごろさん】(和歌山県)へと移し、そこを根本道場とした。

しかしながら、興教大師覚鑁は、その2年後に多くの弟子が見守る中、49歳で生涯を閉じた。

鎌倉時代の中頃になり、頼瑜【らいゆ】僧正が出て、大伝法院を高野山から根来山へ移したことから、根来山は学問の面でも大いに栄え、最盛時には2900もの坊舎(僧侶の寮)と、約6000人の学僧を擁していたという。智積院は、その数多く建てられた塔頭寺院のなかの学頭寺院(僧侶に学問を授ける最高指導者の寺院)であった。

根来山の大伝法院は、巨大な勢力を誇っていたため、豊臣秀吉と対立することになり、1585年に秀吉の軍勢による攻撃を受け、根来山内の堂塔の大半が焼失してしまった。その時、智積院の住職であった玄宥【げんゆう】僧正は難を逃れて高野山で隠遁し、豊臣秀吉が死去した1598年に、智積院の再興の第一歩を京都東山で行った。

そして、1601年に、徳川家康の恩命により、玄宥僧正に東山の豊国神社境内の坊舎と土地が与えられ、名実ともに智積院が再興された。その後、祥雲禅寺も拝領し、さらに境内伽藍が拡充された。再興された智積院の正式名称は、五百佛山【いおぶさん】根来寺智積院と称する。

智積院は、弘法大師から脈々と伝わってきた真言教学の正統な学風を伝える寺院となるとともに、江戸時代前期には運敞【うんしょう】僧正が宗学をきわめ、智山教学を確立した。こうして、智積院には学侶が多く集まるようになり、学山智山と称され、多くの学僧を生み出す寺院として知られるようになる。

しかしながら、明治維新後、廃仏毀釈(神仏分離令による仏教排斥運動)の波を受け、困難な時代を迎えた。明治2年(1869年)には教学研鑚の根本道場の勧学院が爆発炎上した。そして1882年には、一山の象徴である金堂を焼失してしまった。そんな不遇な時代を経て、1900年に智積院を中心に活動していた全国の約3000の寺院が結集して、智積院を真言宗智山派総本山と定めた。

終戦後の世相の混乱を乗り越え、1966年には智山派全檀信徒の浄財を得て、宿泊施設として智積院会館が建設された。そして、1975年には、真言宗の宗祖である弘法大師ご誕生1200年の記念事業として新金堂を建立し、本尊の大日如来像も造顕された。こうして、焼失以来の悲願を達成したという。

さらに、1995年には興教大師覚鑁の850年御遠忌記念事業として、講堂(方丈殿)が再建された。

智積院は、真言宗の教えのよりどころとして老若男女を問わず多くの信仰を集め、今日に至っているという。


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