はじめに
秋の紅葉は、自然が織り成す一大イベントであり、季節の変わり目を実感する季節でもある。夏の暑さから完全に癒え、冬の訪れを感じるなど、季節の移ろいを感じる瞬間でもある。
秋になると、カエデ、イチョウ、ナラなどの葉が鮮やかな赤色、黄色、オレンジ色に染まる。このカラフルな風景はまるで絵画のような美しい色彩で私たちを楽しませてくれる。日本では秋になると北から南へと順に全国的に紅葉が楽しめるが、その魅力は地域や紅葉の名所によって特徴が異なる。
個人的には静かな森や山中で紅葉を楽しみたいと思う。その理由は、自然の中でリフレッシュでき、心が洗われるような感覚が味わえるからである。一方で、有名な神社仏閣の境内での紅葉は、観光客が多いという問題を除けば、紅葉自体は素晴らしい。観光客が多いということは、その場所が紅葉の名所であることを物語っている。人混みを覚悟で、そんな紅葉の名所に押しかけてしまうのも人情というものであろう。
三重県には美しい紅葉スポットがたくさんある。例えば、伊勢神宮(内宮)などは紅葉の名所としてよく知られている。また、鈴鹿山脈の山々も紅葉の名所として知られている。特に、御在所岳や布引高原などが有名である。そんな三重県内のおススメの紅葉名所を私の撮った写真と共に紹介したいと思う。
赤目四十八滝
赤目四十八滝【あかめしじゅうはちたき】は、三重県名張市赤目町を流れる滝川の渓谷(赤目四十八滝渓谷)にある、一連の滝の総称であって、名のある大きな滝が48滝もあるわけではない。
この地は古より山岳信仰の聖地であり、地元には「滝参り」という呼び方が今も残る。奈良時代には修験道の開祖である役行者(役小角)の修行場にもなったと伝わる。地名「赤目」の由来は、役行者が修行中に赤い目の牛に乗った不動明王に出会ったとの伝承によるものとされる。
また、伊賀忍者の祖と言われる百地三太夫【ももちさんだゆう】が修行の場としてこの地を選び、かつて多くの忍者を輩出したとも伝えられている。
渓谷の周辺地域は野生動物と植生の宝庫である。特に渓谷は、世界最大級の両生類の一つといわれるオオサンショウウオの棲息地として知られ、滝への入り口付近には飼育・展示施設の日本サンショウウオセンター(2024年4月20日に「赤目滝水族館」としてリニューアルオープン)が設置されている。
滝のある渓谷は約4kmにわたって続き、四季折々の景観が楽しめるハイキングコースとなっている。紅葉の名所としても知られるので、特に秋には多くの観光客が訪れて、賑わいを見せる。
名 称 | 赤目四十八滝 |
所在地 | 三重県名張市赤目町長坂671-1 |
駐車場 | あり(有料) |
Link | 忍者修行の里 赤目四十八滝 |
香落渓
香落渓【かおちだに】は、三重県名張市にある渓谷で、木津川水系の名張川の支流である青蓮寺川の上流域に位置する、長さ8kmにも及ぶ渓谷である。室生赤目青山国定公園の一部に指定されている地域であり、その景観は一見の価値がある。特に秋の紅葉の季節がおススメである。
青蓮寺川に沿って県道81号線を車で走っていると柱状節理による斧で刻んだような壮大な断崖が聳え立っている場所がある。屏風岩、天狗柱岩、鬼面岩、鹿落岩などと名づけられた奇岩群が目に飛び込んでくる。これらは1500万年前に起こった火山の噴火によって堆積した安山岩が幾年もの歳月を掛けて侵食され続けたことで形作られたものである。
香落渓一帯は野生動物と植生の宝庫でもあり、秋には山が紅葉で色づくことから多くの観光客で賑わう。
名 称 | 香落渓 |
所在地 | 三重県名張市 |
Link | 香落渓 | 観光スポット | 観光三重 |
積田神社
積田神社【せきたじんじゃ】は、「南都春日大社奥宮」【なんとかすがたいしゃおくみや】とも呼ばれる神社で、名張市の景勝地の一つである。
今から約1350年ほど前にあたる西暦676年に、鹿島大神【かしまおおみかみ】が常陸国【ひたちのくに】の鹿島神宮から大和国【やまとのくに】の春日大社へと遷幸【せんこう】した際、途中で立ち寄られて鎮座された場所とされている宮である。したがって、仮の宮とは言え、春日大社の前身にあたる神社である。
この積田神社は、秋の紅葉の季節には参道沿いにある大イチョウが黄葉し、その葉が参道に落ちると黄色の絨毯が敷き詰められたようになる。毎年、この光景を目当てに多くの参拝客や観光客が訪れ、参道が賑わうが京都の観光地ほどではない。しかし、写真を撮るなら人が少ない早朝がおススメである。
積田神社がこのまま静かな隠れた紅葉の名所であってもらいたい気持ちと、この素晴らしい光景をより多くの人にも知ってもらいたい気持ちが正直、私のなかでは半々である。
名 称 | 積田神社 |
所在地 | 三重県名張市夏見2162 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 積田神社 | 観光三重 |
上野公園
上野公園【うえのこうえん】は、伊賀上野城跡に整備された市民公園である。伊賀上野城【いがうえのじょう】は、筒井定次が平楽寺や薬師寺のあった台地に築いた近世城郭の城跡である。つまり、伊賀上野城は、筒井氏が築城し、藤堂高虎が改修した平山城で、白鳳城とも呼ばれたらしい。
上野公園内の一角に位置する俳聖殿【はいせいでん】は、松尾芭蕉生誕300年を記念して建てられた木造建築物である。伊賀市は俳聖と呼ばれる松尾芭蕉の生まれ故郷である。毎年、秋にはこの俳聖殿前で芭蕉祭の式典も開催されている。
上野公園内には、伊賀上野城や俳聖殿をはじめ、芭蕉翁記念館や伊賀流忍者博物館などがあり、多くの観光客で賑わう。
名 称 | 上野公園 |
所在地 | 三重県伊賀市上野丸之内122-1 |
駐車場 | あり(有料) |
Link | 上野公園 – 伊賀上野観光協会 |
ふるさと芭蕉の森公園
ふるさと芭蕉の森公園は、松尾芭蕉の生まれ故郷である伊賀市の市街を一望できる景観に恵まれた山腹に位置し、市民の憩いの場になっている。公園内には、散策のための遊歩道が整備されており、遊歩道脇にはカエデなどのような四季を彩る樹木や草花が植栽されている。そのため秋の紅葉の季節になれば、綺麗に色づいたカエデが私たちを静かに迎えてくれる。
公園の遊歩道沿いには俳聖と称される松尾芭蕉の句碑が設置されている。その句碑の数は10基もある。私がこの公園を訪れた目的は、それらの句碑を眺めながら紅葉の見頃となった公園を散策することであった。
いずれも芭蕉翁の有名な俳諧(俳句)ばかりであるので、在りし日の芭蕉翁の面影を想像しながら散策を楽しむことができる。
(ふるさと芭蕉の森公園・展望広場にある芭蕉翁の句碑)
このふるさと芭蕉の森公園は、紅葉が非常に美しいのにも関わらず、上野公園とは異なり、訪れる人が意外に少ない。そのため人混みに悩まされずに、好きな構図で写真が存分に撮れる。
芭蕉翁の生まれ故郷である伊賀市には芭蕉翁の句碑が市内に点在するが、ふるさと芭蕉の森公園には10基の句碑があり、そのいずれの句も芭蕉翁の代表作と言っても過言ではない有名な句ばかりである。そんな芭蕉翁の俳句に感じ入りながら、遊歩道沿いの紅葉を眺めつつゆっくりと散策できるのは贅沢な時間と言えるのではないだろうか。
名 称 | ふるさと芭蕉の森公園 |
所在地 | 三重県伊賀市長田2384 |
アクセス | 名阪国道・大内ICから約10分程度 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | ふるさと芭蕉の森公園 | 観光三重 |
岩倉峡
岩倉峡は、三重県伊賀市に位置する美しい渓谷で、木津川沿いに広がる自然豊かなエリアである。岩倉峡周辺は、岩倉峡公園として整備されており、春には桜、秋には紅葉が楽しめる。
公園内にはキャンプ場、体験学習の丘、見晴らしの丘なども整備されているが、お薦めは木津川沿いに整備された「川辺の道」と呼ばれる遊歩道の散策である。変化に富んだ岩倉峡の景色を見ながらの遊歩道を歩くのは全く飽きない。
気づけばかなり歩いていることになるが、不思議と疲れてはいない。それだけ景色が良いということの証左であろう。岩倉峡には所々に深い淵があり、そして各渕には「渕の主」【ふちのぬし】と思しき大きな黒いコイ(鯉)が泳いでいるのが遊歩道沿いから見えることがある。そんな楽しみもある散策路なので、是非、足を運んでみてほしい。
名 称 | 岩倉峡 |
所在地 | 三重県伊賀市西高倉6358-1 |
駐車場 | あり(無料) |
アクセス | 名阪国道・大内ICから車10分 |
Link | 岩倉峡公園キャンプ場 | 伊賀市文化都市協会 |
滝山渓谷・白藤滝
白藤滝【しらふじのたき】は、滝山渓谷にある落差約15mの直瀑の滝である。三重県伊賀市の景勝地の一つである。白藤滝は、かつては落差約30mもある直瀑であったらしいが、地震によって滝口が崩落してしまい、現在のような約半分の落差になってしまったと伝えられている。
地元では紅葉の名所と知られ、例年11月3日(祝)には「滝山渓谷紅葉まつり」が行われているらしい。しかしながら、年々紅葉の見頃に時期は後にずれてきている感じがする。例えば、2023年の例で行けば、白藤滝の紅葉の見頃は11月23日(祝)の数日後であった可能性が高い。そして11月28日に訪れた際には既に紅葉の見頃は過ぎていて、落葉がかなり進んでいた。
白藤滝は、紅葉の季節に関係なく、カエデが若葉や青葉の季節であっても良い。むしろ水量が多い季節の方が滝自体の迫力が増すというものだろう。今回は「紅葉の名所」としての白藤滝に着目したため、この滝本来の魅力に欠けている可能性もある。
名 称 | 滝山渓谷・白藤滝 |
所在地 | 三重県伊賀市大字山畑 |
駐車場 | あり(無料) |
アクセス | 名阪国道下柘植ICから約10分 |
Link | 白藤滝 – 伊賀上野観光協会 |
宮の谷渓谷
宮の谷渓谷【みやのたにけいこく】は、奥香肌峡と呼ばれる一帯に属し、蓮ダム【はちすダム】のさらに上流に位置する。秋の紅葉の季節になるとこの一帯の広葉樹は秋の装いを身に付ける。
渓谷に来ると、当り前かもしれないが水が綺麗である。浅瀬は川底がくっきり見えるほどの透明感があり、深い淵はエメラルドグリーンの美しい色を創出している。また、周囲の樹木も綺麗である。特に秋は紅葉が美しい。
陽光に照らされて紅葉のグラデーションが何とも言えないくらい美しい。腕の未熟さのために写真で表現できないのが口惜しい。
自然はなんと美しいものなのだろうか実感せざるを得ない。紅葉と滝のコントラストは本当に綺麗である。時を忘れて、じっと眺めていたいものである。
渓谷沿いの山道を登った先のゴールにあるのは、落差約60mの名瀑、高滝【たかたき】である。直瀑で、迫力もあり、綺麗な滝である。滝壺まで行けなくはないが、行っても写真が撮れずに、滝のしぶきでびしょ濡れになるだけであろう。大自然による造形は、さながら芸術品である。この自然の芸術品を楽しんだ後は、足元に気をつけながら帰路に着くことにする。
宮の谷渓谷の入口から高滝までの距離は約2.2kmである。ゆっくりと休憩しながら歩くと往復約3時間ほど道のりとなる。往路では全く気付かなかったが、紅葉した木々が彩を添えた六曲屏風岩を復路では簡単に見つけることもできる。
宮の谷渓谷・高滝へは遊歩道も整備されているので、ハイキング気分で道中に現れる名もない滝と紅葉の美しさを存分に眺めながら秋の行楽日を散策してみてはどうだろう。
名 称 | 宮の谷渓谷・高滝 |
所在地 | 三重県松阪市飯高町蓮 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 宮の谷渓谷 | 観光三重 |
三重県内の紅葉名所一覧
紅葉の名所 | 所在地 |
---|---|
赤目四十八滝 | 三重県名張市 |
香落渓 | 三重県名張市 |
宮の谷渓谷 | 三重県松阪市 |
伊勢神宮(内宮) | 三重県伊勢市 |
水沢もみじ谷 | 三重県四日市市 |
御在所岳(山上公園) | 三重県東近江市 |
御在所岳(ロープウェイ中腹) | 三重県菰野町 |
御在所岳(湯の山温泉) | 三重県菰野町 |
三重県民の森 | 三重県菰野町 |
岩倉峡 | 三重県伊賀市 |
上野公園 | 三重県伊賀市 |
お城公園 | 三重県津市 |
宇賀渓 | 三重県いなべ市 |
聖宝寺 | 三重県いなべ市 |
亀山公園 | 三重県亀山市 |
(太字は、私が実際に紅葉の季節に訪ねたことがあるお勧めの紅葉名所)
参考:ウエザーニュース・紅葉
あとがき
私は、会社員をリタイアした後は三重県名張市で一人暮らしを始めている。そのため、隣町の伊賀市を含む「伊賀の国」を地元のつもりで精力的に取材している。元来、出不精の私ではあるが、天候が良い日には運動不足を補うためにできるだけ外出するように努めている。その際には愛機のカメラも忘れずに持って出かけるようにしている。
この「三重県の紅葉名所」では知名度的にはマイナーな所が多いかも知れない。しかし、その分観光客が比較的少ないので私たち写真愛好家は他の観光客に気兼ねすることなく存分に写真が撮れる。自分好みの構図で写真を撮りまくり、お互いに撮影技術を磨こうではありませんか。