はじめに
下栗の里は、長野県飯田市上村に位置する美しい地域である。南アルプスから伸びる尾根に拓かれた高原の地で、標高は800mから1100mもある。最大斜度38度という急斜面に民家や畑が寄り添うように存在し、つづら折りの坂道が走る独特の風景が広がっている。かつて宅配便会社のテレビコマーシャルにも登場したことがあり、その美しい風景から「日本のチロル」とも称されることがある。2009年に「にほんの里100選」に選定されている。
下栗の里から車で約30分ほど走った道のりの先にあるのが旧木沢小学校である。旧木沢小学校は、長野県飯田市南信濃木沢に位置する。昔ながらの懐かしい木造校舎であり、現在は資料館やイベントスペースとして活用されている。旧木沢小学校は、この地域の歴史と文化を伝えているだけでなく、訪れる人々に不思議とノスタルジーに似た深い印象を与えてくれる。
本稿では、妻に誘われて訪ねた「下栗の里」と「旧木沢小学校」について記したいと思う。
下栗の里・展望台
下栗の里は、長野県飯田市上村遠山郷に位置し、「日本のチロル」と称されることもある美しい集落として有名である。
最大斜度38度の急斜面に民家や畑が寄り添うように存在しており、その間を縫うようにつづら折りの坂道が走る独特の風景は絶景とされている。一度見たら忘れることのできない絶景とされ、「にほんの里100選」にも選ばれているほどである。
この天空の秘境「下栗の里」の絶景を求めて多くの観光客が訪れる場所がある。そこは「天空の里ビューポイント」と呼ばれるおおぎびら展望台である。その展望台へ行くには下栗の里の駐車場から遊歩道を20分ほど歩く必要があが、この展望台からは下栗の里を上から眺めることができ、圧巻の絶景を写真に撮ることができる。
下栗の里には、伝統野菜や伝統文化が豊富に存在する。特に「下栗芋」と呼ばれる小粒のジャガイモが有名である。下栗芋を竹串に刺し、エゴマ味噌などを塗って炭火で炙った「いも田楽」は長野県の「選択無形民俗文化財」に指定されているという。
そのほかには、ソバ、ヒエ、キビ、アワなどの雑穀、豆、お茶などの多くの作物が栽培されているようだ。これらの食材がこの地域特有の食文化を育んでいるのだろう。
また、「下栗の霜月祭り」などの伝統的な祭りも行われている。このように下栗の里は、自然と共生する人々の暮らしや伝統、食文化を体験できる場所でもある。訪れる人々に深い印象を与えるに違いない。そのため、自然を愛する人々にとって、訪れる価値のある場所であると言えよう。
唯一の難点と言えば、下栗の里へは車でしか訪れることができない点である。交通の便があまり良くないことだけは心得ておく必要がある。尤も不便だからこそ一度は行ってみる価値があると言えなくもない。
名 称 | 下栗の里(食事処はんば亭) |
所在地 | 長野県飯田市上村1250−1 |
TEL | 0260-36-1005 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 下栗の里 長野県公式観光サイト (go-nagano.net) 長野県の秘境「下栗の里」の展望台で撮影する時の注意 |
旧木沢小学校・資料館
下栗の里付近にある旧木沢小学校は、昔ながらの木造二階建て校舎で、昭和7年(1932年)に建てられ、平成12年(2000年)に廃校となっている。
廃校後の旧小学校校舎は、地域の資料館として再オープンし、現在では住民手作りの展示施設(資料館)や交流拠点として活用されている。
旧木沢小学校の資料館では、各教室で下記のような様々な展示を見ることができる。
- 山の資料館(2年生教室)
南アルプスに関する資料を展示 - 山の図書室(図書室)
小学校の旧蔵書や寄贈本など4千冊以上が閲覧できる - 林鉄資料館(4年生教室)
森林鉄道の資料を展示 - 祭りの資料館(5年生教室)
木沢地区の「霜月祭り」を紹介
このように地域の資料館である旧木沢小学校には、この地域の歴史と文化をよく伝えており、訪れる人々に深い印象を与える。
旧木沢小学校には、在りし日の「教室の風景」が残されていてノスタルジックな雰囲気を強く感じることができる。
かつてはこの旧木沢小学校に「ねこ校長」と呼ばれていた老齢の猫(たかね)が赴任(?)していたようであるが、今は逝去していて会うことができない。
皆から慕われていたことが容易に推察される「ねこ校長・たかね」の写真が旧校舎の廊下に多数展示されていた。
名 称 | 旧木沢小学校 |
所在地 | 長野県飯田市南信濃木沢811 |
TEL | 0260-34-1071 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 旧木沢小学校 なつかしい木造校舎資料館 | 信州遠山郷 |
あとがき
長野県飯田市にある「下栗の里」は、その美しい景観がヨーロッパのチロル地方に似ていることから「日本のチロル」と呼ばれることがある。確かにその美しい景観を実際に目にして納得した。
下栗の里は、最大斜度38度の急斜面に、民家や畑が張り付くように並んでおり、その不思議な景観が観光客の目にはなんとも魅力的なものに映る。この地で実際に生活されている方には大変な苦労もあるとは思うが、この自然豊かな人里が「限界集落」にならずに後世に残ってほしいと願う。
「しらびそ高原」にも近い「下栗の里」は、標高800~1,000mで、南アルプスを望む場所に位置している。そのため下栗の里は「天空の村」とも称されることがある。確かに雲海が谷間を埋めれば、下栗の里はまるで空に浮かぶ大地のような絶景を私たちに見せてくれるはずである。
下栗の里を訪れると、大自然と人々の生活が一体となった幻想的でどこか懐かしい風景に出会ったような感傷的な不思議な気分になる。
一方、ノスタルジックな雰囲気を残す旧校舎は、日本全国に点在しているが、その一つが「下栗の里」の近くにある「旧木沢小学校」である。
「旧木沢小学校」は、旧校舎を再利用し、ノスタルジックな雰囲気を残しながら新たな価値を生み出している。つまり、この地域の歴史や文化を学びながら、懐かしい雰囲気を楽しむことができると共に、この資料館は地域の活性化にも寄与している。
「下栗の里」と「旧木沢小学校」への旅は、私の妻の発案であり、私一人では決して訪ねることはなかったであろう。私を誘ってくれた妻に感謝したい。
【参考資料】
下栗の里 最大傾斜38度 暮らしが息づく天空の秘境 | Go! NAGANO 長野県公式観光サイト (go-nagano.net) |
【カメラマン】長野県の秘境「下栗の里」の展望台で撮影する時の注意 | 旅おたく.com (tabiotaku.com) |
旧木沢小学校 なつかしい木造校舎資料館 | 信州遠山郷 (tohyamago.com) |