◆ はじめに
旅というものは、一般的には事前にある程度計画して臨むものだ。 ミステリーツアーのように行き先が伏せられている場合でも、知らされていないのは参加者だけで、主催者側は綿密に旅程を組んでいる。 ところが、個人旅行では 途中で行き先を変えることで思いがけない面白さが生まれる──そんな体験を私は実際に味わった。
蒜山高原に立ち寄ったあと、大山環状道路の最高地点・鍵掛峠まで行き、南壁の雄姿を眺めて引き返す──それが当初の予定だった。 ところが、峠での景色に気分が高揚し、そのまま鳥取砂丘まで足を延ばすことにしたのである。
神戸から鳥取砂丘へ向かう一般的なルートは、第二神明道路・国道2号・播但連絡道路を経て中国自動車道へ入り、佐用JCTから鳥取自動車道に乗り換えて鳥取ICへ向かうものだろう。 走行距離は約176km、所要時間はおよそ2時間半ほどで到着できる。
しかし、鍵掛峠を経由する今回のルートは 317km・約5時間。 距離も時間もほぼ2倍で、効率だけを考えれば“ばかげている”と言われても仕方がない。 だが、旅の途中で目的地が変わることもまた旅の醍醐味であり、このときはまさにその典型だった。
振り返ってみれば、むしろ 最初からこの遠回りの絶景ドライブを計画しても良かった と思えるほどだ。 蒜山から大山へ続く道の景色は素晴らしく、最終目的地の鳥取砂丘では、思いがけず圧巻の「砂の彫刻」や美しいイルミネーションに出会うことができた。 予定外の寄り道が、旅をより豊かにしてくれた瞬間だった。
蒜山大山スカイライン
蒜山大山スカイラインは、岡山県の蒜山高原から鳥取県の大山へと続く、山陰屈指の絶景ドライブコースである。標高800〜900メートル前後の高原地帯を走り抜ける道は、四季折々の自然が織りなす雄大なパノラマが魅力で、特に大山南壁を望む眺望は圧巻のひと言に尽きる。
ルートのハイライトは、大山環状道路の最高地点に位置する鍵掛峠。ここから望む大山南壁は、切り立った岩肌と深い森が織りなす迫力ある景観で、訪れるたびに異なる表情を見せてくれる。晴れた日には、稜線がくっきりと浮かび上がり、まさに“天空の稜線”と呼ぶにふさわしい美しさである。
春は新緑、夏は深い緑陰、秋は紅葉、冬は雪化粧と、季節ごとにまったく違う景色が楽しめるのもこの道の魅力だ。交通量も比較的少なく、ゆったりとしたペースで走れるため、シニア世代のドライブにも適している。

蒜山高原の牧歌的な風景から大山の雄大な山岳景観へと移り変わるこのスカイラインは、単なる移動手段ではなく、走ることそのものが旅の目的になる道である。山陰を訪れるなら、一度は走っておきたい絶景ルートと言えるだろう。

蒜山大山スカイラインは、蒜山【ひるぜん】(岡山県)から大山【だいせん】(鳥取県)を結ぶ道路である。かつては有料道路であったが、現在では県道114号大山上福田線(岡山県真庭市から鳥取県江府町を結ぶ)という一般道路である。

大山や烏ヶ山などの山並みを眺めることができる快適なドライブルートでもある。通年、開通しているわけではなく、冬期には凍結や積雪のために閉鎖される。
| 名 称 | 蒜山大山スカイライン・ 鬼女台展望休憩所 |
| 所在地 | 真庭市蒜山下徳山 |
| Link | 鬼女台展望休憩所 蒜山大山スカイライン 蒜山大山・鬼女台展望休憩所 |
蒜山大山スカイラインを大山に向かって走行しているという実感が、大山が近づいてくるにつれて湧いてくる。

蒜山大山スカイラインは、やがて大山環状道路に繋がる。
大山環状道路
大山環状道路【だいせんかんじょうどうろ】は、中国地方の最高峰である大山【だいせん】(標高1,729m)の中腹、一周約64 kmを周遊するルートの通称である。
一本の環状道路名の別称あるいか愛称ではなく、下記の県道各路線の一部で構成される(引用:ウィキペディア)というユニークな環状道路である。
- 鳥取県道30号赤碕大山線
(鳥取県大山町羽田井~大山町大山) - 鳥取県道34号倉吉赤碕中山線
(鳥取県琴浦町中津原~大山町羽田井) - 鳥取県道44号東伯野添線
(倉吉市関金町野添~琴浦町別宮) - 鳥取県道45号倉吉江府溝口線
(鳥取県伯耆町大内~倉吉市関金町野添) - 鳥取県道158号大山口停車場大山線
(鳥取県大山町大山~伯耆町大内)
蒜山大山スカイラインから乗り継いで鳥取砂丘に向かうには大山環状道路の一部、県道45号倉吉江府溝口線を利用することになる。

県道45号倉吉江府溝口線の区間は、大山の南麓を回り込み、東麓の尾根沿いの遠くまで道路が延びる。西日本屈指のブナの原生林を貫ぬく多彩なカーブをもつワインディングロードで、深緑や秋の紅葉を楽しむことのできるルートである。(引用:ウィキペディア)

鍵掛峠
大山環状道路は、大山の真南に位置する鍵掛峠(標高912m)を通過しており、そこの展望台からは、山頂部が横長に伸び、奥の正面に断崖絶壁がそそり立つ大山(標高1729m)の南壁が眺望できるビューポイントとして人気がある。

鍵掛峠は、大山環状道路の最高地点に位置し、大山南壁を最も迫力ある角度から望める絶景スポットとして知られている。標高約900メートルの峠から見上げる大山は、切り立った岩肌と深い森が織りなす雄大な姿を見せ、訪れる季節や天候によってまったく異なる表情を見せてくれる。

晴れた日には、南壁の稜線がくっきりと浮かび上がり、まさに“山の威厳”を感じさせる景観が広がる。紅葉時には大山南壁の断崖とブナ林とのコントラストが映え、大山環状道路随一と言われる絶景を生み出す最高の展望台となる。

峠には駐車スペースと展望台が整備されており、車を降りてゆっくりと景色を楽しめるのも魅力だ。蒜山高原から大山へ向かうドライブの途中に立ち寄るには最適の場所で、山陰を代表する“天空のビュースポット”と言ってよいだろう。
鍵掛峠は、ただ通り過ぎるには惜しい場所である。大山の雄姿を心ゆくまで眺め、自然のスケールの大きさを感じられる、旅のハイライトとなる峠である。
| 名 称 | 大山環状道路・鍵掛峠 |
| 所在地 | 江府町大河原字鍵掛1531-29 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 鍵掛峠 | 奥大山物語 |
大山・三の沢がよく見えるスポット
大山環状道路の中でも、三の沢の深い谷筋を真正面から望める貴重なビューポイント。切れ込んだ沢の奥に広がる大山南壁は、荒々しい岩肌と深い緑が織りなす迫力ある景観で、まさに“大山の野性味”を感じさせる。

大山の東壁が見えるビュースポット
大山の東側に切り立つ岩壁を間近に眺められる、環状道路屈指の絶景ポイント。南壁とは異なる、鋭くそびえる“山の輪郭”が印象的で、光の当たり方によって陰影が美しく浮かび上がる。朝の柔らかな光に照らされた東壁は特に美しく、静けさの中に大山の威厳が漂うといわれている。

烏ヶ山がよく見えるビュースポット
大山の南東に位置する烏ヶ山は、鋭い三角形の山容から“伯耆富士の弟分”とも呼ばれる端正な山。環状道路の途中にあるこのビュースポットでは、烏ヶ山の美しいシルエットを真正面から望むことができる。大山とは異なる独特の存在感があり、写真愛好家にも人気の高いポイントである。

大山を背景に紅葉が美しいスポット
秋になると、手前の広葉樹が鮮やかな赤や黄色に染まり、その背後に大山の雄大な姿が重なる“絵画のような風景”が広がる場所。紅葉の色づきと大山の稜線が絶妙に調和し、環状道路の中でも特に秋の人気が高いビュースポットである。晴れた日の澄んだ空気の中で眺める紅葉と大山のコントラストは、旅のハイライトとなる。

鳥取砂丘
鳥取砂丘【とっとりさきゅう】は、鳥取市の日本海海岸に広がる広大で、美しい海岸砂丘である。この南北2.4km、東西16kmに広がる海岸砂丘は、山陰海岸国立公園の特別保護地区に指定されており、昭和30年(1955年)には国の天然記念物に指定されている。
近年では、隣接する「砂の美術館」で展示される精巧な砂像が人気を集めており、季節ごとにテーマが変わるため、リピーターも多い。夜間にはイルミネーションが施される時期もあり、昼とはまったく異なる幻想的な砂丘を楽しむことができる。
鳥取砂丘は、ただの観光地ではなく、自然が長い年月をかけてつくり上げた“動く地形”である。風が吹くたびに姿を変える砂丘は、訪れるたびに新しい発見を与えてくれる。 静かに歩くだけでも心が整い、海と砂と風が織りなす大らかな景観に包まれる、そんな特別な場所である。

鳥取砂丘は観光できる砂丘として日本最大級の広さを誇り、大山と並んで鳥取県を象徴する景勝地である。東西約16キロ、南北約2キロにわたって続く砂の大地は、まるで異国の砂漠を思わせる雄大さで、訪れる人を非日常の世界へと誘ってくれる。

起伏の大きさを象徴する「馬の背」は、高さ約47mの砂の壁となって立ちはだかる。できるだけ傾斜の緩やかな所を選んで登ることにするが、それでも登るのが結構、大変である。「馬の背」に登ると日本海を見渡すことができる。

砂丘の中央にそびえる“馬の背”は、標高約47メートルの砂の丘で、頂上からは日本海と砂丘全体を一望できる。海風を受けながら眺める景色は、何度訪れても飽きることがない。


砂丘の魅力は、何と言ってもその“表情の豊かさ”にある。 風が刻む風紋は日ごとに姿を変え、朝夕の斜光が砂面に陰影をつけると、まるで自然が描いた抽象画のような美しさが広がる。晴れた日には日本海の青と砂の淡いベージュが鮮やかなコントラストを生み、曇天の日にはしっとりと落ち着いた砂丘の表情が楽しめるという。

日本海の風が作り出す風紋は大変美しいと言われている。風紋は風の強さと時間の経過によってその形状を変えるという。風紋の写真を撮るには早朝に砂丘に来る必要がありそうだ。

雲が多くて残念ながら夕陽を見ることはできなかったが、鳥取砂丘は印象に残る想い出を私たちに残したのは確かな事実だ。
| 名 称 | 鳥取砂丘 |
| 所在地 | 鳥取市福部町湯山 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 鳥取砂丘|鳥取市観光サイト |
鳥取砂丘・砂の美術館
近年では、隣接する「砂の美術館」で展示される精巧な砂像が人気を集めており、季節ごとにテーマが変わるため、リピーターも多い。夜間にはイルミネーションが施される時期もあり、昼とはまったく異なる幻想的な砂丘を楽しむことができる。
砂の美術館は、2006年11月18日に「砂」を素材にした彫刻作品である「砂像」を展示する「砂の美術館」として開館したのがはじまりとされている。

2006年以降も鳥取砂丘では砂の彫刻(砂像)展示イベントが定期的に開催されている。ほぼ1年に一度、テーマを変えて展示を実施しており、年明けから春の期間は次回作の準備・制作期間のため休館となる。また、第四期までは野外・仮設テントで行われてきたが、2012年4月の第五期より屋内での展示がメインとなった。

砂像彫刻家兼プロデューサーとして国内外で活躍している茶圓勝彦氏が総合プロデュースを務め、海外各国から砂像彫刻家を招き、毎年世界最高レベルの砂像を展示している。

砂の美術館では「砂で世界旅行」をコンセプトとして、定期的にテーマを変えて展示を行なっている。会期が終われば作品を全て崩してもとの砂に戻し、再びその砂を使用して新たな作品を制作するという。

限られた期間しか存在しない砂像の儚くも美しい造形を創り上げるために、砂像彫刻家たちは情熱を注ぎ込んでいるのであろう。

永遠に残らないがゆえの美しさとはかなさが砂像のもつ大きな魅力となっている。

「砂の美術館」の屋外にはイルミネーションがあり、幻想的な空間を形づくっていた。私たちはその美しさにしばし見惚れていたものである。

暗闇に浮かぶ造形物の精巧さに感動したことを写真を見ては昨日のことのように思い出す。


夜間にはイルミネーションが施される時期もあり、昼とはまったく異なる幻想的な砂丘を楽しむことができる。


予期しなかった感動を与えてくれた「砂の美術館」のスタッフの皆さんに感謝したい。

| 名 称 | 鳥取市鳥取砂丘砂の美術館 |
| 所在地 | 鳥取市福部町湯山2083-17 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 鳥取砂丘 砂の美術館 |
◆ あとがき
鳥取砂丘にはこれまで四度ほど訪れているが、そのうち二度は「鍵掛峠で大山南壁を眺めたついで」に足を延ばしたものだ。 大山と鳥取砂丘は鳥取県を代表する二大シンボルとはいえ、同じ日に無理に両方を見なくてもよいはずなのに──気がつけば、私は毎回同じ行動を繰り返している。もちろん、自分の意思ではなく、助手席の妻のささやきによって、である。
妻は昔から「点と点」、つまり観光スポットそのものにしか興味がない。その点と点をどう結ぶかは、いつも私の役割だ。 ところが最近は車載ナビに頼りきりで、事前にルートを調べることもなくなってしまった。その結果、行きあたりばったりの旅になることが増えている。
「これではいけない」と反省する一方で、そんな無計画な旅も悪くないと思ってしまう自分がいる。先の展開が読める旅は、どこか味気ない。むしろ、シニアの旅こそ少し肩の力を抜き、予定に縛られない“ゆらぎ”を楽しむべきではないか──そんな考えすら浮かんでくる。
今はまだ試行錯誤の途中だが、これまでの旅を振り返りながら、シニアがもっと自由に、もっと楽しく旅をするためのヒントを探していきたい。