はじめに
神戸から日帰りでススキの穂を観に行ける場所の一つに、砥峰高原【とのみねこうげん】がある。 今回、私は初めてこの地を訪れたが、目の前に広がる雄大な高原の広さにまず圧倒された。
砥峰高原は、映画や大河ドラマのロケ地として知られている。 実際に歩いてみると、起伏に富んだ地形と一面に広がるススキ原の美しさが、ロケ地として選ばれる理由を自然と納得させてくれる。 秋風に揺れるススキの穂が、光を受けてきらめく様子は、まさに季節の贈り物であった。
私たちが到着した頃には駐車場はほぼ満車であったが、広大な高原では人が密集することはなく、他の観光客と距離を保ちながら、のびのびと散策を楽しむことができた。マスクを外し、秋風をそのまま頬に受けながら歩けたことも嬉しい体験である。
そして、砥峰高原の散策に温泉を組み合わせるなら、帰路に「かさがた温泉」へ立ち寄る旅プランは最適だろう。 露天風呂で歩き疲れた身体を癒し、湯上がりには喫茶や食事でひと息つく――そんな流れが自然に組み立てられる。「かさがた温泉」へは、中国自動車道・福崎ICから車で約20分とアクセスも良く、 砥峰高原と合わせれば、まさにスパツーリズムの趣にかなった旅となる。
砥峰高原
砥峰高原【とのみねこうげん】は、兵庫県のほぼ中央に位置する神河町に広がる標高約800〜900mの高原である。秋になると一面にススキの穂が揺れる関西屈指のススキ原として知られている。
約90ヘクタールにも及ぶ広大な草原は、西日本有数のスケールを誇る。ススキ原に風が吹くたびに銀色の波が走り、訪れる者を静かな感動で包み込む。


起伏に富んだ地形は、歩くたびに視界が開けたり閉じたりし、ススキ原の奥行きと高原の広がりを立体的に感じさせてくれる。

この雄大な景観は、映画『ノルウェイの森』や『燃えよ剣』、大河ドラマ『平清盛』や『軍師官兵衛』などのロケ地として選ばれたことでも知られ、実際に歩いてみると、自然のスケールが映像作品を支えてきた理由がよくわかる。

遊歩道は整備されており、ゆっくりと散策しながら高原の風を感じることができる。晴れた日には、空の青さとススキの銀色が美しいコントラストを描き、夕暮れ時には穂先が黄金色に染まり、静かな余韻を残す。

9月下旬~11月上旬頃にはススキの穂が眼前に広がり、圧巻の風景を楽しむことができる。天候が良ければもっと綺麗であろう。神戸を出発したときは晴れていたし、天気予報も晴れることになっていたが、山の天気は変わりやすいということか。残念ながら、陽光に照らされないとススキの穂も銀色に輝くことはできない。

春から夏にかけては新緑が広がり、秋はススキ、冬は雪景色と、季節ごとにまったく違う表情を見せるのも砥峰高原の魅力である。自然の中を歩き、風の音に耳を澄ませるだけで、心がゆっくりと整っていく。

広大な砥峰高原は観光客同士が蜜になることはなく、快適な散策を楽しむことができた。

砥峰高原の散策コースには東屋や展望台が設けられている。

この日の展望台付近は風が強くて非常に寒かった。標高が高いからであろう。早々に下山して眼下に見えるススキの野原を散策することにした。

砥峰高原は、ただ“ススキを見る場所”ではなく、自然の大きさと静けさに身を委ねる時間そのものを味わう場所である。
| 名 称 | 砥峰高原 |
| 所在地 | 神崎郡神河町川上801 |
| Link | 砥峰高原 | 兵庫県神河町 |
かさがた温泉
──せせらぎの湯
かさがた温泉は、兵庫県神崎郡市川町にある静かな山あいの温泉地で、笠形山【かさがたやま】(標高939m)の麓に湧く自然豊かな湯処として親しまれている。周囲を里山の緑に囲まれ、訪れる者をやわらかな静けさで迎えてくれる温泉である。

天然温泉の泉質は弱アルカリ性で、肌あたりがやさしく、湯上がりにはしっとりとした感触が残る。露天風呂からは四季折々の山の景色が望め、春は新緑、夏は深い緑、秋は紅葉、冬は澄んだ空気と、 どの季節に訪れても自然の表情が湯浴みの時間を豊かにしてくれる。
温泉施設「せせらぎの湯」の館内には休憩スペースや食事処もあり、散策後の身体をゆっくりと整えるのに最適である。 特に、砥峰高原からの帰路に立ち寄る旅人にとっては、 歩き疲れた足を癒し、心を落ち着かせる“締めの一湯”としてちょうどよい距離感にある。
食事処以外にも足湯喫茶、思い出博物館、陶芸教室などもある。思い出博物館には、昭和の懐かしい生活用品、世界の蝶やカメラが展示されている。
中国自動車道・福崎ICから車で約20分とアクセスも良く、 高原散策と温泉を組み合わせたスパツーリズムの旅にぴったりの温泉地である。
かさがた温泉は、 自然の静けさと素朴な湯のぬくもりに身を委ねる、心ほどける温泉時間 を味わえる場所である。
| 名 称 | かさがた温泉・せせらぎの湯 |
| 所在地 | 市川町上牛尾半瀬2073-12 |
| Link | かさがた温泉せせらぎの湯 かさがた温泉せせらぎの湯 |
◆ あとがき
私たちが砥峰高原に行った日はあいにくの曇天で、気温もあまり上がらず、展望台付近は風も強くて寒かった。だから展望台付近では長居ができずに早々に降りてきたものである。
もし好天に恵まれたのならどんなにか楽しい散策を経験できただろうか。天気予報が当たらなかったことに八つ当たりしたい気持ちを抑えて、折角来たのだからと散策できる場所は一通り行ってみることにした。
ススキは雑草ではあるが、人に踏まれると枯れてしまうデリケートな一面を持つ直物である。だから砥峰高原ではススキの群生地を守ることと観光を両立させるために、板敷の遊歩道を設置して観光客が遊歩道以外に立ち入らないようにしてススキの群生地を保全していた。おかげで秋の風物詩とも言えるススキの穂の群生を間近で見ることができた。
再訪する時には好天の日にしたいと思うが、山の天気は変わりやすいので如何ともしがたい。