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ウェルネスツーリズム スパツーリズム

スパツーリズムの中核的役割を担う温泉地・温泉旅館

はじめに

最近、耳にする機会が増えて来たウェルネスツーリズムとは、心身の健康増進や精神的幸福を目的とした旅行形態のことである。

ウェルネスツーリズムの対象には、温泉、スパ、旅館、ヘルシー食、ヨガ、自然体験、キャンプ、禅などが挙げられている。

ウェルネスツーリズムがスパツーリズム【Spa Tourism】と同義語として扱われている理由は、現在世界中で行われているウェルネスツーリズムの約半数(47%)はスパツーリズムであるという統計があることからも容易に理解できる。

スパ(SPA)とは「心、身体、魂の再生を促進するための様々なプロフェッショナルサービスを通じてトータルな心身の調和に専念する施設」と定義されている。

スパツーリズムの起源のひとつには、紀元前、古代ローマの戦士達の傷や病気の治療に効果的な温泉入浴(スパ)、郊外に展開した公衆浴場への旅に遡ることができる。

日本でも温泉湯治への旅は古くから知られており、清少納言の枕草子にも記載されているほどであり、貴族を中心に病気の治癒、療養に温泉湯治を用いていたことは明らかでである。

そして江戸時代に入ると神社仏閣への参詣、名所巡りと湯治をセットにした娯楽観光へ転化していき庶民へと広がっていったとされる。

このようにスパツーリズムの方が国内外で歴史が長いように思う。そして現代のスパツーリズムは、旅先でのスパ、ヨガやフィットネス、レクリエーションなどを通してリフレッシュし、より健康に、より美しく、より豊かな人生を送るために、明日への活力を養う旅へと発展してきたと言えるのだろう。

温泉自体の効果には薬理効果に加え、物理効果がある。一方、温泉郷には転地効果があるという。心身が疲れてきたときには勿論のこと、そうでないときにも温泉に入りたいとつい思ってしまうのは私だけではあるまい。私は遠く離れた温泉地で温泉に入るのが大好きである。それは勿論、転地効果を期待してことである。

本稿は、温泉の効用、何故遠くの温泉地に行くことが如何にスパツーリズムにとって相応しいものであるかの理由を明確に知り、理解できた私自身の忘備録でもある。


<目次>
  • はじめに
  • 温泉とは
  • 療養泉の泉質分類
  • 療養泉の特徴
  • 療養泉の泉質の違いによる効用(適用症)
  • 療養泉の代表的温泉地
  • 温泉の物理効果とは
    • 温熱効果
    • 水圧効果
    • 浮力効果
  • 温泉地の転地効果とは
  • 温泉旅館の役割
  • あとがき

温泉とは

温泉は、昭和23年(1948年)に制定された「温泉法」により、地中から湧出する温水(25℃以上)で、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)などの物質を有するものと定義されている。

療養泉とは、温泉のうち、特に治療の目的に供しうるもので、源泉から採取されるときの温度が25℃以上で、下記の表に示した物質をいずれか一つ以上を含むものと定義されている。

物質名含有量(1kg中)
溶存物質(ガス性のものを除く)総量1 000mg以上
遊離二酸化炭素(CO21 000mg以上
総鉄イオン(Fe2++ Fe3+20mg以上
水素イオン(H+1mg以上
よう化物イオン(I10mg以上
総硫黄(S)〔HS+S2O32-+H2S
に対応するもの〕
2mg以上
ラドン(Rn)30×10-10キュリー以上
(8.25マッへ単位以上)
療養泉の定義(環境省)

療養泉の泉質分類

温泉の泉質は、温泉に含まれている化学成分の種類とその含有量によって決められ、環境省によって10種類に分類されている。

従来の「旧泉質名」に替わって、現在では「新泉質名」が使用されている。例えば、単純温泉のうち液性がpH8.5以上のものを「アルカリ性単純温泉」と呼ぶようになった。

掲示用新泉質名旧泉質名新泉質名
単純温泉単純温泉単純温泉
アルカリ性単純温泉
塩化物泉食塩泉
含塩化土類-食塩泉
含土類-食塩泉
ナトリウム-塩化物泉
ナトリウム・マグネシウム-塩化物泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
炭酸水素塩泉重炭酸土類泉
重曹泉
カルシウム(・マグネシウム)-炭酸水素塩泉
ナトリウム-炭酸水素塩泉
硫酸塩泉硫酸塩泉
正苦味泉
芒硝泉
石膏泉
硫酸塩泉
マグネシウム-硫酸塩泉
ナトリウム-硫酸塩泉
カルシウム-硫酸塩泉
二酸化炭素泉単純炭酸泉単純二酸化炭素泉
含鉄泉鉄泉
炭酸鉄泉
緑礬泉
鉄泉
鉄(Ⅱ)-炭酸水素塩泉
鉄(Ⅱ)-硫酸塩泉
酸性泉単純酸性泉単純酸性泉
含よう素泉含ヨウ素-食塩泉含よう素-ナトリウム-塩化物泉
硫黄泉硫黄泉
硫化水素泉
硫黄泉
硫黄泉(硫化水素型)
放射能泉放射能泉単純弱放射能泉
単純放射能泉
含弱放射能-○-○泉
含放射能-○-○泉
新旧泉質名対照表
環境省(2-1_p_1.pdf

療養泉の特徴

温泉には、含まれている化学成分や、温度、液性(pH)、色、匂い、味、肌触りなど様々な特徴がある。

掲示用新泉質名特徴
単純温泉肌ざわりがやさしい
多くは無色無臭で刺激が少ない
子供から高齢者まで入りやすい
塩化物泉無色無臭
口にすると塩辛さを感じる
肌に成分が残り汗の蒸発を防ぐ
保温効果が高く湯冷めしにくい
炭酸水素塩泉肌の角質や毛穴の汚れを取り除く
美肌の湯」とも呼ばれ女性に人気の高い
入浴時に清涼感を感じる(夏場にもおすすめ)
独特な薬臭や金気臭がすることもある
硫酸塩泉保温効果が高く湯冷めしにくい
陽イオンの種類により焦げたような独特な匂い
湯上りは肌が乾燥するため、保湿を行う
二酸化炭素泉入浴すると肌に気泡が付着
二酸化炭素泉は日本では珍しい泉質
炭酸ガスにより血行不良の改善が期待できる
体が温まりやすい効果がある
含鉄泉茶褐色な湯の色と鉄の匂いが特徴
湧き出たばかりの含鉄泉は無色透明
空気に触れると鉄分が酸化して湯の色が変わる
貧血や月経障害、更年期障害にも効果が期待
「婦人の湯」とも呼ばれることがある
酸性泉殺菌効果のある
入浴をすると肌がピリピリとした刺激を感じる
刺激があるため長時間の入浴は避ける
あがり湯やシャワーで体を流して出る
酸性度が高いため、少し刺激臭がする
含よう素泉茶褐色~黄色みがかった色と薬臭が特徴
強い殺菌作用と酸化力がある
飲むことで高コレステロール血症への効能が期待
甲状腺機能亢進症の人は摂取を避け、入浴も注意
硫黄泉硫化水素を含むとたまごが腐ったような独特の匂い
殺菌効果が高く肌への刺激もある
あがり湯やシャワーで体を流してから出る
放射能泉放射能泉に含まれるラドンはごく微量
体内に入ってもすぐに放出されるため心配はない
放射能泉には免疫力をあげる効果がある
「万病の湯」とも呼ばれている
新旧泉質名対照表
環境省(2-1_p_1.pdf

療養泉の泉質による適用症

療養泉は、含まれている化学成分や、温度、液性(pH)、色、匂い、味、肌触りなど違いによって異なる効能効果を示す。

温泉の成分を皮膚から吸収することにより得られる効果は、効能成分(泉質)により異なる。

単純温泉以外の泉質の温泉には「泉質別適応症」という効能が認められている。

勿論、単純温泉にも「一般適応症」という温泉に共通した効能が認められている。一般適応症というのは、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、健康増進などである。

新泉質名主な適用症
単純温泉関節痛、不眠症、うつ状態、自律神経不安定症など
塩化物泉関節痛、うつ状態、きりきず、末梢循環障害、
冷え性、皮膚乾燥症など
炭酸水素塩泉関節痛、きりきず、末梢循環障害、冷え性、
皮膚乾燥症など
硫酸塩泉関節痛、うつ状態、きりきず、末梢樹幹障害、
冷え性、皮膚乾燥症など
二酸化炭素泉関節痛、冷え性、自律神経不安定症、きりきずなど
含鉄泉関節痛、鉄欠乏性貧血症(飲用)など
酸性泉関節痛、アトピー性皮膚炎、尋常性汗乾癬、
耐糖能異常(糖尿病)、皮膚化膿症など
含よう素泉関節痛、高コレステロール血症(飲用)など
硫黄泉関節痛、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、
表皮化膿症、抹消循環障害(硫化水素型のみ)など
放射能泉関節痛、関節リウマチ、高尿酸血症(痛風)、
強直性脊椎炎など
新旧泉質名対照表
環境省(2-1_p_1.pdf

療養泉の代表的温泉地

日本には多くの療養泉があり、歴史・文化の違いによって特徴のある温泉地が形成されている。

新泉質名代表的温泉地
単純温泉箱根温泉(神奈川県)、鬼怒川温泉(栃木県)、
伊香保温泉(群馬県)、下呂温泉(岐阜県)、
都幾川温泉(埼玉県)、白馬八方温泉(長野県)、
鹿教湯温泉(長野県)、石和温泉(山梨県)、
宇奈月温泉(富山県)、道後温泉(愛媛県)、
由布院温泉(大分県)
塩化物泉湯河原温泉(神奈川県)、熱海温泉(静岡県)、
伊東温泉(静岡県)、奥飛騨温泉(岐阜県)、
不老不死温泉(青森県)、夏油温泉(岩手県)、
肘折温泉(山形県)、和倉温泉(石川県)、
片山津温泉(石川県)、城崎温泉(兵庫県)、
白浜温泉(和歌山県)、指宿温泉(鹿児島県)
炭酸水素塩泉支笏湖温泉(北海道)、塩原温泉(栃木県)、
小谷温泉(長野県)、赤倉温泉(新潟県)、
養老渓谷温泉(千葉県)、東鳴子温泉(宮城県)、
星野温泉(長野県)、小川温泉(長野県)、
白峰温泉(石川県)、龍神温泉(和歌山県)、
川湯温泉(和歌山県)、嬉野温泉(佐賀県)、
別府温泉(大分県)、妙見温泉(鹿児島県)
硫酸塩泉蔦温泉(青森県)、遠刈田温泉(宮城県)、
塩原温泉(栃木県)、水上温泉(群馬)、
赤倉温泉(新潟県)、四万温泉(群馬県)、
法師温泉(群馬県)、山中温泉(石川県)、
箱根強羅温泉(神奈川県)、河津温泉(静岡県)、
西山温泉(山梨県)、天城湯ヶ島温泉(静岡県)、
黒川温泉(熊本県)
二酸化炭素泉肘折温泉郷の黄金【こがね】温泉(山形県)、
みちのく温泉(青森県)、玉川温泉(秋田県)、
大塩温泉(福島県)、中子沢温泉(新潟県)、
稲子温泉(長野県)、増富温泉(山梨県)、
湯屋温泉(岐阜県)、吉川温泉(兵庫県)、
長湯温泉(大分県)
含鉄泉鳴子温泉(宮城県)、火打崎温泉(山形県)、
土浦温泉(茨城県)、五色温泉(群馬県)、
加賀井温泉(長野県)、長良川温泉(岐阜県)、
有馬温泉(兵庫県)、雲仙温泉(長崎県)、
鉄輪温泉(大分県)、塚原温泉(大分県)
酸性泉酸ヶ湯温泉(青森県)、玉川温泉(秋田県)、
後生掛温泉(秋田県)、須川温泉(岩手県)、
蔵王温泉(山形県)、岳温泉(福島県)、
草津温泉(群馬県)、万座温泉(群馬県)、
大涌谷温泉(神奈川県)、明礬温泉(大分県)
含よう素泉新屋温泉(秋田県)、大潟温泉(秋田県)、
聖龍温泉(新潟県)、西方の湯(新潟県)、
新津温泉(新潟県)、大手町温泉(東京都)、
前野原温泉(東京都)、青堀温泉(千葉県)、
白子温泉(千葉県)
硫黄泉登別温泉(北海道)、鶴の湯温泉(秋田県)、
高湯温泉(福島県)、万座温泉(群馬県)、
日光湯元温泉(栃木県)、塩原温泉(栃木県)、
秩父温泉(埼玉県)、芦ノ湯温泉(神奈川県)、
白骨温泉(長野県)、熊の湯温泉(長野県)、
昼神温泉(長野県)、吹上温泉(鹿児島県)
箱根温泉郷の小涌谷温泉(神奈川県)
放射能泉村杉温泉(新潟県)、栃尾又温泉(新潟県)、
増富温泉(山梨県)、名栗温泉(埼玉県)、
奈女沢温泉(群馬県)、恵那温泉(岐阜県)、
太山寺温泉(兵庫県)、三朝温泉(鳥取県)
新旧泉質名対照表
環境省(2-1_p_1.pdf

温泉の物理効果とは

温泉の効果には薬理効果に加え、物理効果と転地効果がある。温泉の物理効果というのは、温熱効果水圧効果及び浮力効果のことをいう。

温熱効果

温泉に入ると血行がよくなることにより多くの効能が得られる。つまり、体が温まると抹消血管が広がり、新陳代謝も高まる。そうすると体内の不要物の排泄を促す。例えば、乳酸という疲労物質が排泄されると疲労回復に繋がる。

また、熱い温泉(42℃以上)に入ると、緊張・興奮を司る交感神経が優位に立つので、しっかりと目が覚めた状態となる。

逆に、ぬるめの温泉(37~40℃)に入ると、気持ちを鎮める働きをする副交感神経が優位に立つので、落ち着いたリラックス気分になる。

このように気温よりも高いお湯の温度が体に負担をかけるものの、気持ち良さからくるリフレッシュ効果も望めるという。


水圧効果

体表面にかかる静水圧によって全身に圧力がかかり、内臓が刺激されるので、内臓運動に繋がる。いわゆる内臓へのマッサージ効果が期待できる。尚、肩まで湯につかった時には、体の表面積全体ではおよそ500~1000Kgの水圧がかかる計算になるという。

入浴すると、水圧で血管が細くなり、血液が心臓に向かって押し上げる効果(ポンプアップ効果)がある。その結果、下肢の静脈の流れが良くなり、血液やリンパ液の循環も活発になっていく。

全身浴ではこの水圧により心臓への負担が大きいが、半身浴や足浴では静水圧が減少するので、心臓への負担が少なくなる。


浮力効果

温泉に首まで浸かると、浮力が働くので体重は約10分の1になり、体を自由に動かせるようになる。そうすると、体が軽くなった感覚により筋肉が緩み、脳波はα波となり、リラックスした状態になりやすい。

また、手足を早く動かすと、水の抵抗力が加わり筋力の強化になる。これを利用して筋力の弱った人や運動機能の低下した人のリハビリテーションにも利用される。


温泉地の転地効果とは

転地効果というのは一種の心理効果のことである。日常生活を離れ、自然環境に恵まれた温泉地に行くと五感に刺激を受けるので内分泌系や自律神経のスイッチが入り、活性化する。そのためにストレスが解消され、精神疲労が癒される。そして免疫力を向上させる効果が発揮される。

自然環境に恵まれた温泉地では、澄んだ空気、森林浴によるリラックス効果、避暑によるさわやかさなどが期待できる。

転地効果は、日常から離れた環境に行くことによる気分転換によるところが大きいため、5~6日間で最も活発になり、1ヶ月を過ぎると薄れるという研究結果もあるらしい。

温泉地には滞在することが望ましいが、たとえ1泊2日の小旅行であっても気分転換にはなるので、転地効果は期待できるはずである。

転地効果の観点からすると、海が見える温泉は転地効果が高いと言われている。確かに海を見ているだけでも癒されるという人は多いはずである。

また、標高300~800mの森林の多い高原地帯が転地効果に良いともいわれている。確かに空気が澄んでいて、気持ちが良さそうだ。温泉宿の近くで散歩がてらに森林浴もできるだろう。

海岸近くの温泉地や、山・高原の温泉地といった環境の異なる温泉めぐりをするのが転地効果を得るためには効果的であるかも知れない。

転地効果は温泉の泉質には関係がなく、温泉地の所在地に関係がある。遠く離れた温泉地に足を運んだ際に得られる効果であると言える。温泉地に住んでいる人が、毎日、同じ温泉に浸かったいた場合には転地効果は期待できない。その場合の温泉効果は薬理効果と物理効果だけである。

以上のことから、温泉自体が有する温泉効果(薬理効果と物理効果)と温泉地の立地が有する転地効果を組み合わせることでスパツーリズムの最大効果が得られるはずである。ここに、わざわざ遠出をしてまで温泉に浸ることの意味を見出せるのである。


温泉旅館の役割

温泉旅館は、従来は良質な温泉施設(露天風呂や大浴場など)とご当地の名物料理や料理長自慢の推奨料理を提供するだけで十分な満足を旅行者に与えていたかも知れない。

しかしながら、スパツーリズムを目的とした旅行者に対してはさらに付加価値をもたらすようなサービスの提供が求められるようになるだろう。

具体的には、より管理の行き届いたサウナ、ヨガやフィットネスができる施設の併設あるいは外部施設との提携、マッサージや美容・エステなどのサービス提供、さらには健康食の選択肢も追加メニューに入れる必要があるかも知れない。またワーケションがしやすいような客室や個室の提供も差別化に繋がるだろう。

このような設備やサービスを提供しようとなるとコストもかかるだろうが、提供するサービスが費用対効果で顧客の満足が得られるなら顧客は喜んで付加価値に対して出費するだろう。それは旅館経営においても決してマイナスではないはずである。

日本におけるスパツーリズムにおいては、温泉旅館がその中核を担うことは疑いようがない。むしろそうであって頂きたいというのが私の願いである。


あとがき

私がまだサラリーマン生活を続けていた頃、休暇をとって妻と温泉旅行をしたと話すとある友人からは神戸近郊の有馬温泉でなくわざわざ遠くの温泉地に行く意味があるのか、疲れるだけではないのかと問われたことがあった。

そのときは明確にその理由を答えることができず、「妻との旅行だから温泉だけが目的でない」とあいまいな返答をしてごまかしていたものである。

しかし今なら友人からの問いに明確に答えられそうだ。私が遠出して温泉地に行くのは、スパツーリズムの効果を最大限に発揮させるためである。つまりは薬理効果と物理効果という温泉自体が有する温泉効果と、温泉地の立地自体が有する転地効果の「ハイブリッド効果」を得るための欲張りスパツーリズムであると。


温泉の効用を表す言葉に「温泉の三養」というのがある。休養・保養・療養の三つを指す。疲労を回復させる「休養」、健康を保持し病気を予防する「保養」、病気の治療をする「療養」は、いずれも魅力的な温泉の効用である。

そして温泉地の近郊には多くの観光名所もある。たまには日常の生活から離れてスパツーリズムを楽しむことで、心身共にリフレッシュすれば、仕事も日々の生活にも活気を取り戻せるはずである。私はそう信じてリタイア後のシニア生活をも過ごしたいと思っている。


【参考資料】
環境省:温泉の定義
温泉療養のイ・ロ・ハ(環境省)
温泉の泉質のいろいろ | 日本温泉協会
温泉及び温泉地の効果 | 日本温泉協会
【純温泉コラム】温泉に転地効果はあるのか? | 純温泉協会
温泉ソムリエ
温泉ソムリエの癒しガイド|「単純温泉の特徴」