はじめに
耶馬日田英彦山【やばひたひこさん】国定公園は、九州北東部に位置し、大分・福岡・熊本の3県にまたがる国定公園である。耶馬渓【やばけい】、日田盆地【ひたぼんち】および英彦山【ひこさん】が指定区域となっている。
耶馬日田英彦山国定公園への旅は、いったいどんな旅になるだろうか? 耶馬渓があるからきっと素晴らしい旅になるはずだ。期待せざるを得ない。
<目次> はじめに 耶馬渓 本耶馬渓 競秀峰 青の洞門 耶馬渓橋 羅漢寺 耶馬溪ダム記念公園 溪石園 深耶馬渓 一目八景 裏耶馬渓 奥耶馬渓 猿飛千壺峡 西椎谷の景 西椎谷の滝 東椎谷の滝 福貴野の滝 東奥山七福神 龍門の滝 日田 日田盆地・豆田町 万年山 慈恩の滝 英彦山 求菩提山 あとがき |
耶馬渓
耶馬渓【やばけい】は、大分県中津市にある山国川の上・中流域及びその支流域を中心とした渓谷である。寒霞渓(香川県・小豆島)と妙義山(群馬県)と並び日本三大奇勝として知られ、競秀峰などを見所とする国内有数の渓谷である。また、その上流には異なる景観を誇る深耶馬渓、裏耶馬渓、奥耶馬渓などがあり、古来耶馬十渓が知られてきた。名勝にも指定されている。
本耶馬渓
本耶馬渓【ほんやばけい】は、競秀峰や青の洞門を中心とする山国川上流一帯を指す。
競秀峰
競秀峰【きょうしゅうほう】は、本耶馬渓を代表する名勝で、奇岩群が約1kmに渡って屏風を建て並べたように連なる様は見事である。
名 称 | 本耶馬渓・競秀峰 |
所在地 | 大分県中津市本耶馬渓町曽木 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 競秀峰 競秀峰 | 大分県中津市 |
青の洞門
青の洞門【あおのどうもん】は、競秀峰の裾に位置する、洞門(トンネル)である。全長は約342mで、そのうちトンネル部分は約144mである。大分県の史跡に指定されている。
青の洞門は羅漢寺の禅海和尚が、参拝客が難所を渡る際に命を落とさないよう、ノミ一本で掘り抜いたトンネルで、菊池寛が『恩讐の彼方に』を上梓したことで、全国的に有名となった。
現在は車道拡幅工事により当時の痕跡は歩行者用通路の一部にノミの痕跡が認められる程度となっている。隧道を通らずに難所であった崖側を通るルートが今も残されている。
名 称 | 本耶馬渓・青の洞門 |
所在地 | 中津市本耶馬渓町樋田・曽木 |
駐車場 | なし |
Link | 青の洞門 | 大分県中津市 |
耶馬渓橋
耶馬渓橋【やばけいばし】は、山国川に架かる石造アーチ橋で、「青の洞門」より500mほど下流に位置する。全長116m、日本最長の石造アーチ橋である。
8連アーチが渓谷の景観と調和していると評価され、国の重要文化財に指定されている。
名 称 | 本耶馬渓・耶馬渓橋 |
所在地 | 大分県中津市本耶馬渓町樋田・曽木 |
駐車場 | なし |
Link | 耶馬渓橋(オランダ橋) 耶馬渓橋 | 大分県中津市 |
羅漢寺
羅漢寺【らかんじ】は、本耶馬渓に位置する曹洞宗の寺院で、山号は耆闍崛山【ぎじゃくっせん】と称する。本尊は釈迦如来で、日本国内の羅漢寺の総本山であるという。
羅漢寺は、羅漢山の中腹に建立されている。羅漢寺ではリフトで登ることができるが、このリフトが少々古く、高所が苦手な私には刺激が強すぎた。帰路は徒歩で下山すれば良かったと思ったほどである。
羅漢山の岩壁には無数の洞窟があり、山門や本堂もその中に埋め込まれるように建築されている。一見の価値があるだけに、写真撮影が許可されないのは残念であった。
洞窟の中には3,700体以上の石仏が安置されている。中でも無漏窟【むろくつ】の五百羅漢は日本最古のものであるとされる。無漏窟の釈迦三尊像、五百羅漢像などの石仏群は国の重要文化財に指定されている。
名 称 | 羅漢寺 |
所在地 | 大分県中津市本耶馬渓町跡田1519番地 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 羅漢寺 羅漢寺 | 大分県中津市 |
耶馬溪ダム記念公園・溪石園
溪石園【けいせきえん】は、耶馬溪ダムの完成記念に造られた広さ2万平方メートルの池泉回遊式の日本庭園である。
名 称 | 耶馬溪ダム記念公園・溪石園 |
所在地 | 大分県中津市耶馬溪町大字大島2286-1 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 耶馬溪ダム記念公園「溪石園」 |
深耶馬渓
深耶馬渓【しんやばけい】は、山国川支流山移川支流に位置する渓谷である。海望嶺、仙人ヶ岩、嘯猿山、夫婦岩、群猿山、烏帽子岩、雄鹿長尾嶺および鷲の巣山の8つの景色が一度に眺望できることから名付けられた「一目八景」が観光スポットとして有名である。耶馬渓と言えば、通常、深耶馬渓のことを指す。
一目八景
名 称 | 深耶馬渓・一目八景 |
所在地 | 大分県中津市耶馬溪町大字深耶馬 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 一目八景(深耶馬の景) | 大分県中津市 |
裏耶馬渓
裏耶馬渓【うらやばけい】は、玖珠町との境界に位置する、金吉川上流の渓谷である。浸食を受けた岩壁が屏風のように屹立する景観が素晴らしいという。
名称 | 裏耶馬渓 |
Link | 裏耶馬渓 – 大分県ホームページ |
奥耶馬渓
奥耶馬渓【おくやばけい】は、山国川上流に位置する渓谷で、猿飛千壺峡【さるとびせんつぼきょう】が有名である。耶馬渓猿飛の甌穴群は天然記念物に指定されている。
猿飛千壺峡
名 称 | 猿飛千壺峡 |
所在地 | 大分県中津市山国町草本 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 猿飛千壺峡 猿飛千壺峡 | 大分県中津市 |
西椎谷の景
名 称 | 西椎谷の景 |
所在地 | 大分県宇佐市院内町西椎屋 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 西椎屋の景「宇佐のマチュピチュ」/宇佐市 |
西椎谷の滝
西椎屋の滝【にししいやのたき】は、大分県玖珠町の宇佐市院内町との境界付近に位置する、落差83mの豪瀑である。「西椎屋の滝の景」として耶馬渓六十六景の一つに数えられている。
東椎屋の滝、福貴野の滝とともに「宇佐の三滝」と呼ばれ、「日本の滝百選」にも選ばれている。
名 称 | 西椎谷の滝 |
所在地 | 大分県玖珠郡玖珠町日出生 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 西椎屋の滝|宇佐市観光協会 |
東椎谷の滝
東椎屋の滝【ひがししいやのたき】は、大分県宇佐市安心院町に位置する、落差85mの美しい滝で、「九州華厳」の別名を有する。「東椎屋の滝の景」として耶馬渓六十六景の一つに数えられている。
西椎屋の滝、福貴野の滝とともに「宇佐の三滝」と呼ばれ、「日本の滝百選」にも選ばれている。
名 称 | 東椎谷の滝 |
所在地 | 宇佐市安心院町東椎屋875-2 |
駐車場 | あり(有料) |
Link | 東椎屋の滝 ~九州華厳~/宇佐市 |
福貴野の滝
福貴野の滝【ふきののたき】は、大分県宇佐市安心院町福貴野に位置する、落差約65mの滝である。「福貴野の滝の景」として耶馬渓六十六景の一つに数えられている。
西椎屋の滝、東椎屋の滝とともに「宇佐の三滝」と呼ばれている。落差は三滝の中では最も低いが、流量では劣らない名瀑である。「日本の滝百選」に選ばれていないのが不思議である。個人的には三滝の中で最も好きな滝である。アクセスが比較的容易であるのも嬉しい。
名 称 | 福貴野の滝 |
所在地 | 大分県宇佐市安心院町福貴野 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 福貴野の滝展望台/宇佐市 |
東奥山七福神
国道387号線を玖珠町から院内町方面に向って走っていると道路左前方に現れるのが「東奥山七福神」と呼ばれる大岩である。ちょうど七つあることから「七福神」の名がついている。
この近くには岩肌が露出した風光明媚な場所が多く、目を楽しましてくれる。ドライブコースとしては最高である。
名 称 | 東奥山七福神 |
所在地 | 大分県玖珠郡玖珠町大字日出生 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 谷河内の景(東奥山七福神)/玖珠町 |
龍門の滝
龍門の滝【りゅうもんのたき】は、大分県九重町を流れる松木川にある、中間に滝壷がある二段落としの滝である。落差は26mほどしかないが、幅は40mもある。
鎌倉時代に宋から渡来した高僧蘭渓道隆【らんけいどうりゅう】禅師が、中国・黄河上流の龍門に似ていることから、この滝を「龍門の滝」と命名し、この地に竜門寺を建立したと伝わる。
名 称 | 龍門の滝 |
所在地 | 大分県玖珠郡九重町松木龍門 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 宝泉寺・龍門エリア | 九重町 |
日田
日田は江戸時代には天領として林業が推奨され、杉の美林で知られるほか、水郷でも知られる、また中津江村区域の鯛生金山【たいおきんざん】など金鉱山跡地で知られる。
国定公園の指定区域は日田盆地と、その東方の玖珠盆地の界隈と大山川上流一帯である。代表的な景勝地としては溶岩台地の万年山がある。
日田盆地・豆田町
日田盆地【ひたぼんち】は、大分県と福岡県の県境近くの内陸部に位置し、周囲を1,000m級の山々に囲まれた盆地である。
盆地の中心部は筑後川の上流域に位置し、そこを三隈川が流れている。九重連山や阿蘇山系を源流とする玖珠川や大山川をはじめとして、花月川、高瀬川、串川などの多くの支流が、この盆地で三隈川に合流する。そのため日田盆地の河川は上流域にあるものの、水量が豊かで河岸も広いことが特徴的である。河川の多さから日田盆地は「水郷」【すいきょう】と呼ばれる。
名 称 | 日田盆地・豆田町 |
所在地 | 日田市豆田町地区 |
Link | 大分県日田市マップ | 日田盆地 |
万年山
万年山【はねやま】(標高1,140m)は玖珠町に位置し、下万年【しもはね】と上万年【かみはね】に分かれる珍しい2段メサで「玖珠二重メサ」として知られる。「メサ」とは差別侵食によって形成されたテーブル状の台地のことで「卓状台地」(mesa)とも呼ばれる。
メサが侵食されてできたビュートと呼ばれる地形の典型例である伐株山【きりかぶさん】(標高685.5m)とともに玖珠町のシンボル的な存在である。
頂上付近は5月から6月にかけてミヤマキリシマが頂上一面に咲き、他県からの登山者にも人気が高いという。
名 称 | 万年山【はねやま】 |
所在地 | 大分県玖珠郡玖珠町万年山 |
Link | 万年(はね)山 | 大分県の観光情報公式サイト |
慈恩の滝
慈恩の滝【じおんのたき】は、万年山【はねやま】を源流とする山浦川と玖珠川が合流する場所に位置する、二段の滝である。
水量も多い豪瀑で、落差も約30m(上段20m、下段10m)あり名瀑と言ってよい。
名 称 | 慈恩の滝 |
所在地 | 玖珠町山浦618 日田市天瀬町杉河内1546-2 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 慈恩の滝 | 大分県の観光情報公式サイト |
英彦山
英彦山【ひこさん】には、北岳・中岳・南岳の3つの峰があり、最高点は南岳(標高1,199m)である。英彦山には現在も手付かずの自然林が残されている。
英彦山は古くから修験道の聖地であり、英彦山神宮が鎮座している。英彦山は、羽黒山(山形県)と大峰山(奈良県)と並んで「日本三大修験山」の一つと言われ、英彦山神宮の神体山になっている山である。
鬼杉は、福岡県最大級の巨木で、
樹齢は1,200年以上とされる。
幹の周囲は約12.4m、高さは上部が落雷で欠損しているものの、約38mもあるという。
御祭神は次の3柱で、英彦山の北岳・中岳・南岳を神格化し各峰に1柱をあてている。
北岳
- 正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命【まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと】 (主祭神;天照大御神の御子)
南岳
- 伊耶那岐命【いざなぎのみこと】(配神)
中岳
- 伊耶那美命【いざなみのみこと】(配神)
名 称 | 英彦山・英彦山神宮 |
所在地 | 福岡県田川郡添田町大字英彦山1 |
Link | 英彦山神宮|福岡県添田町 |
求菩提山
求菩提山【くぼてさん】(標高782m)は、麓の豊前市のシンボル的な山であり、かつては英彦山や犬ヶ岳と共に修験道の山だったと言われている。
山頂には国玉神社上宮があり、神社に至る850段の石段は「鬼のあぶみ」とも呼ばれ、山中を荒らし回っていた鬼が求菩提権現との誓約により一晩で築いたという伝説が残る。
山頂付近では修験道に関係する「求菩提五窟」と称される普賢窟・多聞窟・岩洞窟などの遺跡が存在しており、国宝や重要文化財に指定されたものもある。さらには史跡名勝天然記念物に指定されたものもある。
名 称 | 求菩提山・求菩提資料館 |
所在地 | 福岡県豊前市大字鳥井畑247 |
Link | kubote-historical-museum.com/index.html 豊前市公式HP/求菩提山 |
あとがき
耶馬日田英彦山国定公園への旅は、山水画のように美しい耶馬渓の風景をはじめ、私が好きな滝にも出会える名瀑ツアーのような素晴らしいものとなった。まるで大自然が創り出した芸術品を鑑賞する旅になったと思う。