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【伊賀の国】芭蕉の故郷・伊賀市で開催の「芭蕉祭」

はじめに

伊賀の国」は、かつての日本の地方行政区分で、現在の三重県西部、上野盆地一帯に該当する令制国の一つであり、東海道に属していた。「伊賀」は、現在でも三重県の伊賀地方を指す呼称として使われており、伊賀市と名張市を中心に構成されている。伊賀は、伊賀流忍者の発祥地として知られ、伊賀焼(陶器・炻器)や伊賀組紐の産地としても有名である。

伊賀市は松尾芭蕉の生まれ故郷として有名である。稀代の俳諧師である芭蕉翁は、俳聖と称され、旅に生きて旅に死んだ「漂泊の詩人」と言えるかも知れない。

芭蕉翁が亡くなったのは、元禄7年(1694年)10月12日(旧暦)で、臨終の地は大阪の御堂筋であったとされる。享年51歳とされていいる。その翌年から伊賀市では毎年、芭蕉翁の忌日(10月12日)に、芭蕉翁の遺徳を慕う者たちが集まって時雨忌【しぐれき】を営んできたという。

この時雨忌の名の由来は、一説には芭蕉翁が好んで用いた季語の一つに「時雨」があるからだと言われている。確かに、下記のような名句が残されている。

  • 初しぐれ猿も小蓑をほしげ也
  • 時雨るゝや田のあらかぶの黒むほど

芭蕉翁が亡くなったのは旧暦の10月12日で、新暦では11月28日に相当する。時雨は晩秋から初冬にかけて不意に降ってくる冷たい「にわか雨」のことを指す。芭蕉の忌日が時雨の季節にあたることも「時雨忌」の名の由来になったとも言われている。

時雨忌は、芭蕉翁が亡くなった時期と、芭蕉翁自身が「時雨」を好んで詠んだことに由来していることに違いはあるまい。

この時雨忌は、昭和22年(1947年)から「芭蕉祭」に変更になったという。その理由は、わが国の詩歌史上に「俳諧」という庶民詩を確立した芭蕉翁の偉業と文学的功績を顕彰するためであったとされる。

芭蕉祭は、式典をはじめ各種行事が伊賀市にある上野公園を中心に市内各地で催され、伊賀の「秋の風物詩」となっている。

芭蕉祭は、今年(2024年)で78回目を迎えたというが、私が芭蕉祭に参加したのは今回が初めてである。本稿はそのときの印象を記したものである。

目次
はじめに
芭蕉祭式典
墓前式典
芭蕉祭記念講演会
全国俳句大会
芭蕉翁記念館・特別展
ニュートロ芭蕉祭(芭蕉翁生誕380年記念事業)
あとがき

芭蕉祭式典

芭蕉祭式典は、10月12日午前9時25分から、上野公園にある俳聖殿の前で開催される。

名 称芭蕉祭式典
会 場上野公園俳聖殿前
Link12230_2024_F (basho-bp.jp)

墓前式典

墓前式典は、10月12日に下記の場所で、芭蕉翁銅像への献花や献菓などが行われる。

  • 愛染院故郷塚:午前8時30分~
  • 上野市駅前芭蕉翁銅像:午前9時10分~
  • 旧上野市庁舎前芭蕉翁文学碑「自然」:午前9時20分~
名 称墓前式典
会 場愛染院故郷塚
上野市駅前芭蕉翁銅像
旧上野市庁舎前芭蕉翁文学碑「自然」
Link12230_2024_F (basho-bp.jp)

芭蕉祭記念講演会

芭蕉祭記念講演会は、10月11日午後1時30分からハイトピア伊賀5階多目的大研修室で開催される。

聴講は無料であるが、事前予約が必要である(TEL 22-9679)。

名 称芭蕉祭記念講演会
会 場ハイトピア伊賀5階多目的大研修室
所在地三重県伊賀市上野丸之内500
Link12230_2024_F (basho-bp.jp)

全国俳句大会

全国俳句大会は、10月12日午後1時30分からハイトピア伊賀5階の多目的大研修室で開催される。

予め課題(テーマ)が与えられているものと思っていたが、課題は当日に発表される。そのため参加者は会場で頭を捻ることになる。

名 称芭蕉祭記念講演会
会 場ハイトピア伊賀5階多目的大研修室
所在地三重県伊賀市上野丸之内500
Link12230_2024_F (basho-bp.jp)

芭蕉翁記念館・特別展

芭蕉祭を記念して、芭蕉翁記念館では例年、特別展が開催されている。2024年は芭蕉翁生誕380年の記念すべき年であるため、それを記念した特別展では、ふるさと伊賀での芭蕉の姿が紹介されている。特に、芭蕉と、芭蕉を俳諧の世界に導いた藤堂新七郎家との関係がわかる「藤堂新七郎家系図」などの貴重な資料が展示されている。

また、初公開となる珍夕宛の芭蕉書簡も展示されている。芭蕉翁はとても筆まめであったことが知られており、彼の手紙には、日常のこと、旅の道筋、作品のことなど、多彩な内容が書かれている。これらの手紙から芭蕉の人生や人となりに触れることができる。この展示では、芭蕉の晩年の俳諧に対する考え方を伝えていると言われる「風雅三等の文」と呼ばれる有名な芭蕉の手紙も公開されている。

名 称芭蕉翁記念館・特別展
会 場芭蕉翁記念館
入館料10月12日は入館無料
Link12230_2024_F (basho-bp.jp)

ニュートロ芭蕉祭
(芭蕉翁生誕380年記念事業)

2024年は、松尾芭蕉の生誕380年に当たるため、それ記念して懐かしい風景を再現するとともに、新しい企画を盛りこんだ「ニューでレトロ」(=ニュートロ)な芭蕉祭が開催されることになっており、今年はどのような芭蕉祭になるのか楽しみであった。

伊賀上野城・天守前の特設ステージでは音楽やパフォーマンス(書道)が披露された。

なかでも音楽とパフォーマンス(書道)のコラボは見応えがあって、訪れていた多くの見物人を楽しませてくれた。

ビンゴゲームで楽しんだ後は、芭蕉翁に届くようにと願いを込めて、集まった皆でバルーンリリースをすることになった。

雲一つない青空の下、放たれた風船が芭蕉翁に届きますように!

最後は、「ニュートロ芭蕉祭」を盛り上げてくれた人気キャラクターのご挨拶!彼らは、ご当地キャラクターと、近隣都市から応援に来てくれた人気キャラクターらしい。私は知らなかったが。


あとがき

芭蕉祭の主なイベントに参加することは、芭蕉翁の功績に触れ、その作品を深く理解するための重要な機会となる。普段は俳句とは無縁の私ではあるが、この日ばかりはわずか17文字の俳句の素晴らしさに感嘆するばかりであった。今さらであるが、わずか17文字の中に情景(風景)と心情を表現する文化芸術は世界広しと言えども日本だけである。日本の文学の最高傑作と言っても良いかも知れない。

近年、俳句は「Haiku」として海外でも愛好家が増加傾向にあるのは誇らしいことである。芭蕉祭式典でも何名かの海外の人が詠んだHaikuが顕彰されていたのは私にとっては驚きであり、俳句の浸透が海外にも広がっていることを知る機会にもなったのは印象的な出来事である。


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