はじめに
2025年春、日本が世界の注目を集める一大イベント――大阪・関西万博が「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、190以上の国・機関が参加して開催され、早いもので6カ月の会期も終盤を迎えている。
開催前のマスコミによるネガティブ報道とは裏腹に、多くの人々が訪れ、盛況が続いている。人気パビリオンには酷暑の中、長蛇の列が長く伸び、なかなか入館できない。事前予約もなかなか当選しないので、並ぶ必要のない万博を目指していたのではないのかと愚痴の一つも言いたくなる。それが人情というものである。
しかし、人気パビリオンだけが万博の見所ではない。見方を変えれば、万博の魅力が体感できる。つまり、180を超える参加国や機関が出展しているわけであるから、私たちが普段、耳にすることが少ない、あるいはどこにある国かさえも知らない国々も参加・出展してくれているので、万博はそんな国々について学べる機会でもある。
彼らの国のパビリオンやブースでは、国の歴史や暮らしぶりが紹介され、伝統的な衣装、文化財や特産品が所狭しと展示されているので、彼らについて学ぼうとすれば、非常にコスパの高い旅となる。
2025年の大阪・関西万博では、世界各国の有名パビリオンだけでなく、テーマ館や共創型展示も大きな見どころである。その中でも、未来社会の「共創」を体感できるのがコモンズ館である。
コモンズ館は、大阪・関西万博において約80の国や地域が共同で出展する展示館であり、異文化交流を体験できる場となっている。
海外の国々が展示しているコモンズ館には、A館~D館・F館の5つのパビリオンがあり、それぞれ異なるテーマや参加国、展示内容が用意されている。例えば、各国の民族衣装や楽器を体験したり、特産品の試食や試飲ができるブースもある。
コモンズ館は「異文化フェス」のような雰囲気を持ち、訪れる私たち気楽に楽しめるアクティビティが豊富である。
コモンズ館は、大阪・関西万博の中でも普段聞き慣れない国々の異文化交流を体験できる重要なエリアとなっている。多様な国の展示を一度に楽しむことができるため、万博を訪れる際にはぜひ立ち寄りたいスポットと言える。有名パビリオンで長時間列をなして待つくらいならコモンズ館を優先すべきであろう。
<目次> はじめに コモンズ館とは コモンズA館で展示の国々 コモンズA館の注目ブース コモンズB館で展示の国々 コモンズB館の注目ブース コモンズC館で展示の国々 コモンズC館の注目ブース コモンズD館で展示の国々 コモンズD館の注目ブース コモンズF館で展示の国々 コモンズF館の注目ブース あとがき |
コモンズ館とは
コモンズ館とは、複数の国が合同で出展するパビリオンのことを指す。海外の国々が展示ブースに使っているコモンズ館は、A館~D館とF館に分かれていて、それぞれに個性豊かな展示が凝縮している。
普段あまり知られていない国々の文化、工芸、グルメが一堂に会する。普段、私たちがあまり知らない世界の文化に触れながら、少し変わってはいるが、美味しいものを食べて、ちょっとした冒険気分を味わえるという最高のスポットである。まさに「ミニ世界旅行」気分を味わえるエリアであると言って良い。
コモンズ館は、実は、大阪・関西万博の中でも知る人ぞ知る「宝箱」のような存在である。私の妻のように、スタンプラリーを楽しんでいる人は意外に多い。スタンプ押し場は、そんな人々で列を作っている。
海外パビリオンや国内パビリオンだけが決して万博の見学対象ではない。コモンズ館は基本的に予約不要で、比較的並ばずに入場できる。是非、コモンズ館で「まだ見ぬ世界」と出会って、私たち自身の知的好奇心を刺激して貰いたい!
コモンズA館で展示の国々
コモンズA館には、アジア・アフリカ・ヨーロッパ・太平洋諸国などから29カ国が参加している。それぞれの国が小さな展示スペースを持っていて、文化体験やグルメ、お土産が楽しめるような展示が所狭しと並んでいる。
参加国のリストはこちら:
- イエメン
- ウガンダ
- エスワティニ
- ガーナ
- 北マケドニア
- ギニアビサウ
- キルギス
- グレナダ
- ケニア
- コソボ
- コモロ
- サモア
- スリナム
- スリランカ
- セーシェル
- セントクリストファー・ネービス
- セントルシア
- ソロモン諸島
- トリニダード・トバゴ
- トンガ
- バヌアツ
- パプアニューギニア
- パラオ
- バルバドス
- ブルンジ
- ボリビア
- マラウイ
- モーリシャス
- ルワンダ
コモンズA館は、じっくり回るとより楽しくなる。どのブースも個性たっぷりであり、ちょっとした発見があって非常に楽しい!
気になる国の展示を見つけたら、是非、スタッフさんに話しかけてみるのも良い。彼ら/彼女らとの会話もまるで旅気分を味わうような錯覚を覚えるから万博ならではの楽しみ方だと思う。
コモンズA館の注目ブース
- ブルンジ共和国
- ブルンジのカフェが特に人気!
- カヌレパフェとブルンジコーヒーが話題沸騰!
- カヌレパフェのもちもち食感と香ばしさが絶妙
- コーヒーとのペアリングも最高!
- 甘さ控えめで香り高く、コーヒー好きにはたまらないかも
- イエメン共和国
- イエメンの値引き交渉体験は、まるで市場のバザール気分!
- 掘り出し物を是非、探してほしい
- 値引き交渉OKのアクセサリー販売が人気で、交渉が成功すればちょっと誇らしい気持ちになるかも
- キルギス共和国
- 遊牧民の暮らしを再現した展示がユニーク!
- 靴を脱いでくつろげるスペースもあって、まったりできる
- ハチミツの試食も人気!
- トリニダード・トバゴ共和国
- 希望者はスティールドラムの演奏体験ができる
- 音を鳴らすだけでも南国気分に!
- 衣装展示も写真撮影に人気!
- 南国の陽気な雰囲気が楽しめる
- セントルシア共和国
- カラフルな雑貨や布製品が並んでて、見てるだけで楽しい!
- お土産探しにもぴったりブース
- セーシェル共和国
- 美しい海の写真展示が癒し系!
- リゾート気分になれる
- 海洋保護の話も聞けて学べる
- ボリビア共和国
- アンデスの伝統工芸が並ぶ
- カラフルな色使いが鮮やか!
- 織物や小物(雑貨)が目を引く
- お土産にもおすすめ!
- パプアニューギニア
- 民族衣装の展示が迫力満点!
- 顔のペイントや羽飾りが印象的!
- 民族文化の奥深さを感じられる
- サモア共和国
- 伝統舞踊の映像が流れている
- リズムに合わせて思わず体が動く
- ケニア共和国
- 動物モチーフの雑貨がかわいい
- アフリカンアートの魅力が凝縮
- スリランカ民主社会主義共和国
- 紅茶の香りが漂う癒しの空間
- 紅茶の販売や試飲ができて、リラックスタイムにぴったり
コモンズB館で展示の国々
コモンズB館には、アフリカ・中南米・オセアニアなどから24カ国が参加している。
参加国のリストはこちら:
- エチオピア
- ガイアナ
- ガンビア
- コートジボワール
- ザンビア
- シエラレオネ
- ジブチ
- ジャマイカ
- ジンバブエ
- セントビンセントおよびグレナディーン諸島
- ソマリア
- タンザニア
- 中央アフリカ共和国
- ツバル
- ドミニカ共和国
- ナウル
- ハイチ
- パラグアイ
- 東ティモール
- フィジー
- ベナン
- ミクロネシア
- モーリタニア
- レソト
それぞれの国が伝統文化やグルメ、楽器体験などを通して、五感で楽しめる展示をしてくれている。
コモンズB館の注目ブース
- ジャマイカ
- ボブ・マーリーとウサイン・ボルトの等身大パネルと記念撮影
- ボブスレー展示で「クール・ランニング」気分も味わえる!
- レゲエの音楽が流れる陽気な雰囲気が最高
- ジンバブエ
- VR体験でヴィクトリア・フォールズの滝をバーチャル観光
- 約5分の映像で、まるで現地にいるような感覚に!
- ドミニカ共和国
- ラリマー展示
- 透き通る青が美しい宝石
- 現地でしか採れない希少な逸品
- モーリタニア
- 実物大ラクダ像は写真映え抜群!
- 砂漠の暮らしをリアルに体感できる展示もある
- コートジボワール
- チョコレート仮面
- カカオ100%の手作り仮面はアートと食の融合
- ツバル
- ツバルの美しい海の風景写真が大きく展示されていて、まるで南太平洋にいるような気分になる!
- 気候変動へのメッセージ
- 海面上昇の影響を受ける国としての現実を静かに伝えている
- 「消えゆく国」の存在を強く印象づけている
- 他のブースがにぎやかな中、ツバルのブースは静かに立ち止まって考える空間と言える
コモンズC館で展示の国々
コモンズC館には、中東・東欧・バルカン半島などから12カ国が参加している。
参加国のリストはこちら:
- イスラエル
- ガボン
- サンマリノ
- パナマ
- ウルグアイ
- グアテマラ
- スロバキア
- モンテネグロ
- クロアチア
- スロベニア
- ウクライナ
- パレスチナ
それぞれの国が、歴史・文化・自然・社会課題などをテーマにした展示をしている。静かで、派手さはないが、深く心に残る展示も多い。ちょっと足を止めて、じっくり見てみると、世界のいろんな物語が見えてくるのが良い。
コモンズC館の注目ブース
- ウクライナ
- 「NOT FOR SALE」と書かれたブルーのオブジェが印象的
- 戦時下の現実を伝える展示で、バーコードを読み取ると現地映像が見られる
- 静かながら強いメッセージ性があり、心に残る
- イスラエル
- エルサレムの要塞の石に触れられる体験ができる
- メッセージを送れるインタラクティブな展示もある
- クロアチア
- 傾斜のある通路で標高の違いを体感できる展示
- 透明なパイプに触れると音が鳴る仕掛けもある!
- 気候や自然を五感で感じられるユニークな空間を体験できる
- グアテマラ
- コーヒーの香りが漂う癒しの空間
- タイミングが合えば試飲もできるらしいが、長い行列ができている
- サンマリノ
- 知ることの価値に焦点を当てた展示が印象的
- 歴史や文化をじっくり紹介していて、静かに感動できる
- パレスチナ
- 歴史と文化に触れる展示
- 伝統工芸や民族衣装が展示
- 繊細な刺繍や色使いが美しい
- 社会的メッセージのある空間
- 紛争や平和への願いをテーマにした、強いメッセージ性がある
- 知ることが平和への第一歩ということが感じられて、考えさせられる内容の展示である
- 歴史と文化に触れる展示
コモンズD館で展示の国々
コモンズD館には、アフリカ・中南米・アジアなどから25カ国が参加している。
参加国のリストはこちら:
- アンティグア・バーブーダ
- カメルーン共和国
- ギニア共和国
- キューバ共和国
- コンゴ民主共和国
- サントメ・プリンシペ民主共和国
- スーダン共和国
- 赤道ギニア共和国
- タジキスタン共和国
- トーゴ共和国
- ナイジェリア連邦共和国
- パキスタン・イスラム共和国
- ブータン王国
- ブルキナファソ
- ベリーズ
- ホンジュラス共和国
- マーシャル諸島共和国
- マダガスカル共和国
- マリ共和国
- 南スーダン共和国
- モルドバ共和国
- モンゴル
- ラオス人民民主共和国
- リベリア共和国
それぞれのブースでは、伝統衣装、民芸品、天然石、雑貨、グルメが楽しめ、まるでこれらの国の路地裏マーケットを歩いているかの気分を味わえる。実に、万博の良さを体現しているブースが多いのが特徴的である。
コモンズD館の注目ブース
- パキスタン
- 床一面に敷き詰められた岩塩が圧巻!まるで天然のインテリアだ!
- 84種類のミネラルを含む岩塩は、実際に触れることもでき、パワースポット感ある!
- タジキスタン
- 美しい青の天然石・ラピスラズリがずらりと展示されている!
- 小さなアクセサリーから大きな彫刻まで天然石愛好家のための空間
- モンゴル
- 羊やラクダのぬいぐるみが人気!ふわふわな素材で癒されるはず
- マグネットやキーホルダーなどのお土産選びも楽しみに加わる
- ブータン
- 手織りストールや民族衣装が展示
- 落ち着いた華やかさを演出
- ルチルクォーツの販売もあり、接客が温かいと評判になっている!
- 南スーダン
- 猫モチーフの雑貨が大人気!
- 値引き交渉もOKで、市場気分が味わえるのもナイス!
- ラオス
- オシャレなピンバッジやコーヒーの試飲が楽しめる
- 雑貨好きやカフェ好きにはたまらないブースであるかも知れない
- マーシャル諸島
- 一点ものの手編み工芸品が並ぶ!
- 南国の風を感じる優しいデザインが魅力的である
- モルドバ
- 糸で描かれた刺繍アートが美しい
- 手工芸品の繊細さに感動する!
コモンズF館で展示の国々
コモンズF館には、アジアやユーラシア地域から3カ国が参加している。
参加国のリストはこちら:
- カザフスタン
- アルメニア
- ブルネイ
これらの3カ国が共同で展示していて、館内はツアー形式のブースから癒し系の空間まで、個性的で、バラエティ豊かな展示で、派手さはないけれども深く知る楽しさがあるので人気を集めている。
コモンズF館の注目ブース
- カザフスタン
- ツアー形式の本格派展示
- 約20人ずつ15分間のガイド付きで体験できる
- 実物大の移動式住居「ユルト」の中でで映像鑑賞
- 医療テクノロジーの展示もある
- 心臓を24時間動かしたままで保存できる装置などが紹介されている
- アルメニア
- 小規模ながらICT教育やテクノロジー産業の進化を紹介している
- 模型展示があり、子ども連れにも人気である
- スタッフの説明が丁寧で、歴史や文化への理解が深まる
- ブルネイ
- 木の香りが漂う癒し空間
- 3面スクリーンで自然や人々の暮らしを映像で紹介している
- ソファに座って鑑賞できるから、休憩したい時にはぴったりかも
あとがき
コモンズ館は、大阪・関西万博の中でも最も開かれたスペースと言える。国籍や世代を超えて、誰もが未来づくりに参加できる場となっている。
展示を眺めるだけでなく、スタッフと対話し、自ら体験し、提案しても構わない――そんな能動的な体験を是非、コモンズ館で叶えてみてほしい。
特に、発展途上国の展示は、「足りないからこそ生まれる創造力」「地域に根ざした共創」「文化と技術の融合」といった、未来社会に必要な視点を私たちに教えてくれる。
発展途上国では、限られた資源を最大限に活かす工夫が日常に根付いている。これは、未来社会におけるサステナブルな暮らしのモデルになるはずである。
例えば、バングラデシュのマイクロファイナンスは、少額融資で女性の起業を支援しているそうだ。経済的自立と地域活性化を同時に実現するというアイデアは素晴らしいと思う。
私たちの未来社会は、きっと「現場の知恵」から生まれるのだろうと思う。コモンズ館は、こうした「現場の知恵」と出会える貴重な場にもなる。
資源やインフラが限られた環境だからこそ、発展途上国では「創造的で持続可能な解決策」が生まれている。
スマートフォンやモバイルネットワークの普及により、発展途上国でも教育・医療・金融のアクセスが劇的に改善されているようだ。
例えば、ケニアでは、携帯電話による送金・決済システム(M-PESA)があり、銀行口座を持たない人々の経済参加を促進しているという。また、タンザニアでは、地方の子どもたちがタブレット(教育アプリ)で学習しており、これが教育格差の是正に貢献しているという。これらの例は、テクノロジーの民主化、誰も取り残さないICTの活用と言って良い。
先進国が見落としがちな未来社会の構築に役立つヒントやローカルからグローバルへ広がる共創モデルなどは、こうした発展途上国の知恵や創意工夫の中で見い出すことができるのではないかとさえ思ってしまう。かつての日本がそうであったように活力のある発展途上国の人々の笑顔は眩しく感じられる。
気候変動、貧困、教育格差など、世界共通の課題に対して、発展途上国から生まれた地に足のついた解決策が今、注目されている。
発展途上国の現場と先進国の技術が融合し、持続可能なソリューションを共に開発するといった、国際連携型の共創チャレンジについて学ぶことができたのも大阪・関西万博のおかげである。