はじめに
三重県と奈良県の境に広がる大台ケ原はユネスコエコパークにも登録された自然の宝庫である。
日出ヶ岳(標高1,695m)は、大台ヶ原の最高峰であり、初心者でも楽しめる整備された登山道が魅力となっている。

初心者や雨天の日に断然おすすめであるのは、東大台コース(約9 km;所要時間:3〜4時間)である。
標高1,695mの日出ヶ岳の頂上からの眺めは、雨でも幻想的である。正木峠や正木ヶ原は、雨天の日には立ち枯れの森と霧が織りなす風景がまるで幻想的な雰囲気を醸し出す。但し、断崖絶景ポイントで人気の大蛇嵓【だいじゃぐら】は、雨の日は滑りやすいので、足元により一層の注意を要する。
また、大台ケ原は関西屈指の紅葉スポットでもある。秋の紅葉シーズンになると山全体が赤色や黄色、橙色に染まり、まるで絵画のような風景が広がる。
色とりどりの紅葉に包まれた大台ヶ原の絶景は訪れる私たちの心を優しく癒してくれる。
大台ケ原の例年の紅葉の見頃は、9月下旬~10月中旬である。標高が高いため、平地よりも早く色づき始める。朝晩は冷え込むので、防寒対策はしっかりと準備する必要がある。早朝の雲海狙いなら、夜明け前の出発がおすすめである。
日出ヶ岳から望むパノラマ
大台ケ原の最高峰である日出ヶ岳(標高1,695m)は、まずは訪れたい絶景スポットである。
特に秋の紅葉シーズンは、山頂の展望台から朝焼けに染まる紅葉の海と、遠く熊野灘まで見渡せる絶景が広がる。赤色や黄色に染まった山々が幾重にも重なり、大自然が描いた水彩画のようである。
日出ヶ岳は展望が開ける場所であるが、雨の日は雲海や霧の中に浮かぶ木々が幻想的に見える。運が良ければ、雲の切れ間から光が差し込む「天使のはしご」も見られるかも知れない。
大台ケ原で味わえる絶景体験——朝焼け×紅葉×雲海
日出ヶ岳に早朝に登れば、雲海と紅葉のコラボレーションに出会えるかも知れない。眼下に雲海が広がり、朝焼けの空と紅葉が溶け合う幻想的な風景は筆舌では表現できない。
正木峠・正木ヶ原の幻想世界
正木峠や正木ヶ原【まさきがはら】では、立ち枯れの木々と色づいた森が織りなす幻想的な風景が楽しめる。紅葉に染まった森と白い木々のコントラストが美しい。
霧がかかると、まるで異世界に迷い込んだような静けさに包まれる。写真愛好家やアウトドア派のハイカーにはたまらないスポットとなるはずである。
特に、雨の日は霧が立ちこめて、正木ヶ原の倒木や苔むした木々がまるで異世界のようになる。立ち枯れの木々と苔むした地面が霧と雨でまるで水墨画のような世界に変わる。登山道の木道が続く風景は、構図も選びやすく、人気の撮影ポイントとなる。
雨の多い大台ヶ原では、静けさの中で自然と向き合える霧に包まれた原生林を楽しみの一つに加えない手はない。
牛石ヶ原では、広がる草原と神武天皇像が迎えてくれる。
自然とふれあうトレッキング
整備された登山道は初心者にも優しく、紅葉を眺めながらのんびり歩けるのが魅力である。
大蛇嵓【だいじゃぐら】は、約800mの断崖絶壁の上にあり、大蛇の背に乗ったようなスリルが味わえることから名付けられた。大蛇嵓から一望できる紅葉の渓谷が圧巻であるが、断崖絶壁からの絶景はスリル満点でもあるので要注意!
また、大蛇嵓からは中の滝(落差250m)を遠望できる。断崖から見下ろす滝と紅葉のコラボは圧巻である!圧倒的スケールの滝であり、人を寄せつけない神秘的な存在感が魅力的である。
雨の日の大蛇嵓は人が少なくて、絶景ポイントを独り占めできるかも知れない。雨の日は霧が立ちこめて、眼下の谷が見え隠れする神秘的な一枚が撮影できるかも知れない。但し、足元は滑りやすいから、傘よりもレインウェアの着用がおすすめである。
大台ヶ原ビジターセンター
大台ヶ原ビジターセンターは、国道169号線から分かれて山頂に向かう大台ヶ原ドライブウェイの終点(駐車場)の近くに位置しているため、日出ヶ岳の山頂にも近い。ビジターセンターのすぐ横には東大台コースの登山口がある。
大台ヶ原ビジターセンター(開館時間:9:00~17:00)は、吉野熊野国立公園の自然を学べる拠点施設となっている。そのため、展示コーナーでは大台ケ原の自然(動物や植物)、地形、気候について学ぶことができる。
勿論、登山前の情報収集ができる。最新の天候や登山道の状況をスタッフに聞けるから、安全な登山ルート選びに最適である。地図(登山・ハイキングのルートマップ)も貰える。
雨天で雨宿りするだけではもったいない。外に出られなくても、森の秘密をじっくりと学習することもできる。
館内はベンチもあって、雨音を聞きながらほっと一息をつくのも良い。自販機もあるし、トイレも清潔で安心である。雨の日には外の景色が霧に包まれて幻想的になるので、ビジターセンターでのんびり過ごすのも贅沢な時間かも知れない。
ビジターセンターの横から東大台コースがスタートできるから、雨が弱まったらすぐに出発できるのも便利である。
尚、大台ヶ原ビジターセンターは毎年11月下旬~4月下旬は閉館である。また道路(大台ヶ原ドライブウェイ)も通行止め(冬季閉鎖)になるので要注意!
名 称 | 大台ヶ原ビジターセンター |
所在地 | 奈良県上北山村小橡660-1 |
駐車場 | あり(無料) |
アクセス | 国道169号線から 大台ヶ原ドライブウェイへ |
Link | 大台ヶ原ビジターセンター |
あとがき
秋の紅葉シーズンの大台ケ原は、ただの紅葉スポットだけではない。五感で味わう自然のドラマが、訪れる私たちの心をそっと潤してくれる場所でもある。
紅葉を眺めながらのお弁当タイムや、森の香りに包まれる休憩は、心も体もリフレッシュできる贅沢な時間である。
運が良ければ、鹿(シカ)や野鳥にも出会えるかも知れない。尤も熊(クマ)との遭遇は勘弁して頂きたい。
秋の大台ケ原は、自然が奏でる色彩のシンフォニーとでも言えるかも知れない。日常の喧騒を離れて、紅葉に包まれながら、心と体をリセットする旅に出かけてみるのも悪くない。
大台ヶ原は、日本でもトップクラスに雨が多い場所である。屋久島と並んで「日本で最も雨の多い地帯」とされていて、特に台風シーズンには太平洋からの湿った風が山にぶつかって、たっぷりの雨を降らせることがある。そのため、「一年に366日雨が降る山」なんて冗談まじりに言われることもあるくらいである。
しかしながら、そのおかげで、苔や原生林がしっとりと美しく保たれてるし、霧や雨がつくり出す幻想的な風景は、晴れの日とはまた違った魅力がある。
実は、大台ヶ原は「苔の宝庫」と呼ばれ、約600種以上の苔が確認されていて、その種類は屋久島を超えるとも言われてる。雨の日には苔が水分をたっぷり吸って、色鮮やかにふっくら膨らむのでまるで森の絨毯みたいになる。大台ケ原でよく目にすることができる苔には次のような種類がある。
- セイタカスギゴケ
- 明るい場所が好きな苔
- 雨の日は特に元気である
- イワダレゴケ
- 岩肌にしっとり張り付いて、雨でつやつやになる
- ハチハイゴケ
- 西大台の原生林に多い
- 雨の日は緑が濃くて美しい
雨の日の大台ケ原の森は、静かで、香りも濃くて、まるで時間がゆっくり流れているようだ。苔を楽しみながら大台ケ原の原生林の中を歩くという贅沢なハイキングを大いに楽しみたい。