はじめに
サクラ(桜)も良いが、ウメ(梅)もまた良い。桜に先駆けて春の訪れを告げる梅の開花は、なんとも愛おしいものだ。サクラと違ってウメには香もある。花の色と香りの調和(ハーモニー)が素晴らしい!
ウメの花は、一般的にサクラよりも花期が長いので見逃しが少ないように思う。しかし、その安心感が災いとなるある。結局、満開の見頃を見過ごしてしまうこともある。あるいは早くに行きすぎて、ほとんど蕾状態のウメを見て帰宅したことも何度かある。
サクラよりも少しマシな程度で、結局は見頃の日時に合わせて観梅の日程を組むことは実際には容易ではなかった。それはサラリーマンだったときの話で、リタイアした今なら満開時期に行けるような気がして開花シーズンの到来が待ち遠しい。
<目次> はじめに 兵庫県の観梅名所 綾部山梅林 御津自然観察公園(世界の梅公園) 岡本梅林公園 京都府の観梅名所 青谷梅林 城南宮 梅宮大社 奈良県の観梅名所 月ヶ瀬梅林 三重県の観梅名所 結城神社 和歌山県の観梅名所 南部梅林 全国の観梅名所 天神様と梅の花 観梅名所百選がない! 行ってみたい全国の観梅名所(62選) あとがき |
兵庫県の観梅名所
綾部山梅林
綾部山梅林【あやべやまばいりん】(たつの市御津町黒崎)は、綾部山(標高144.5 m)の丘陵地(24 ha)に広がり、山頂部一帯が梅林で、しかも南側が播磨灘(瀬戸内海東部の海域)に面していることもあって「海の見える梅林」として有名である。
山頂付近の梅林からは眼下に瀬戸内海が広がり、瀬戸の島々も一望できる綾部山梅林は、西日本有数の梅林である。梅の正確な植栽本数は公表されていないが、「一目二万本」ともいわれているのでそれ相当の本数が栽培されているはずだ。
例年の見頃は2月下旬から3月上旬が満開になるというが、私が訪れた年は例年より開花が遅かったようだ。梅林全体を覆う満開の梅を観ることができず残念であった。
しかし、頂上付近には色鮮やかな紅白の梅が咲いているところもあり十分に楽しむことができた。
綾部山梅林は、「玉英(ぎょくえい)」という品種を中心に栽培している生産梅林であるが、2月上旬~3月中旬は、観梅のために観光客に開放される(2月祭日~3月祭日 )。期間中は梅干や梅ジャムなど梅の加工品をはじめ枝垂れ梅の苗木の販売も行われていた。
近年は麓の休耕田を利用して菜の花を栽培していて、梅とほぼ同時期に広大な菜の花畑が広がる。また、観光梅林の「世界の梅公園」も近くにある。開花の頃には梅の香りが風にただよい、綾部山付近一帯が一年で最も美しい季節を迎える。
名 称 | 綾部山梅林 |
所在地 | 兵庫県たつの市御津町黒崎 |
Link | たつの市/綾部山梅林【公式サイト】 |
御津自然観察公園
(世界の梅公園)
御津自然観察公園は、別名で「世界の梅公園」とも呼ばれ、日本・中国・台湾・韓国などの世界のウメ(梅)約315品種、約1,250本が植栽された梅林公園である。
公園内には、 異国情緒あふれる 中国風建築物である「尋梅館」、「唐梅閣」や「来鶴軒」などが点在している。 それら建造物がアクセントとなり、梅林とも調和して風光明媚な公園を形作っている。
名 称 | 御津自然観察公園(別名、世界の梅公園) |
所在地 | 兵庫県たつの市御津町黒崎1858-4 |
Link | たつの市/世界の梅公園【公式サイト】 |
岡本梅林公園
岡本梅林公園は、昔に比べて規模が小さくなってしまっているが、整備がしっかりとされている公園である。
植栽されている花梅の品種も豊富で、各梅樹には名札がついているので勉強にもなる。
現在では小規模となってしまった岡本梅林公園は、大正末期まで西摂津の梅の名所として、「梅は岡本、桜は吉野、蜜柑紀の国、栗丹波」と謳われていたという。
全国一の梅の名所であったのだろうが、今はその面影をみることができないので本当に残念である。
現在の岡本梅林公園は、よく整備されて市民の憩いの場になっている。私も以前飼っていた柴犬の散歩でいつもお世話になった。勿論、毎年、観梅も堪能させて頂いた。
花梅の品種も多いので(41品種)、早咲きから遅咲きまで長期間楽しむことができる。
但し、駐車場がないので、遠方からの人は阪急電車の岡本駅から坂道を歩くことになる。それが唯一の難点ではある。しかしながら、「梅まつり」の日以外は人出も少なく、お勧めの観梅名所だと私は思っている。
名 称 | 岡本梅林公園 |
所在地 | 兵庫県神戸市東灘区岡本 |
Link | 岡本梅林公園【地域のコミュニティサイト】 |
京都府の観梅名所
青谷梅林
青谷梅林【あおだにばいりん】京都府城陽市にある梅林で、日本で唯一の「城州白」という品種の生産地である。
青谷梅林(京都府城陽市)は、青谷川の清流に沿うなだらかな丘陵一帯にある。梅林の面積は約20haで、老樹古木を含んで約1万本の梅が植栽されているという。
青谷梅林の梅の実は、大粒で肉ばなれがよいため昔から梅干しや梅酒用に愛用されている。それは全国的には珍しい高級品種の城州白【じょうしゅうはく】という梅を生産しているからである。城州白はフルーティーな甘い香りが漂う品種だという。
青谷梅林の主な梅の種類は、城州白以外では白加賀、青軸、鶯宿、玉栄、雲龍などが知られている。青谷梅林は、古くから観梅の名勝地としても親しまれてきたが、観光だけではなくその果実からいろんな製品を作るために栽培されている「生産梅林」である。
例年2月下旬~3月下旬、青谷梅林では「梅まつり」が開催され、期間中は自由に見学できる。白梅が中心の梅林で、ほんのりと甘い香りが梅林に漂う。
名 称 | 青谷梅林 |
所在地 | 京都府城陽市 |
Link | 城陽市観光協会公式ホームページ |
城南宮
城南宮の境内には多くの枝垂れ梅が植栽されており、季節になると見事な花を付ける。
私は、ここの枝垂れ梅の満開の様相を初めて観たとき、すごく感動したのを覚えている。梅ながら「桃源郷」とはこんなのではないかと思ってしまったものだ。
名 称 | 城南宮 |
所在地 | 京都府京都市伏見区中島鳥羽離宮町 |
Link | 城南宮【公式サイト】 |
梅宮大社
梅宮大社は、カキツバタの名所らしいが、多くの梅の木が植栽されていた。
名 称 | 梅宮大社 |
所在地 | 京都府京都市右京区梅津フケノ川町 |
Link | 梅宮大社【公式サイト】 |
奈良県の観梅名所
月ヶ瀬梅林
月ヶ瀬梅林は、「月ヶ瀬梅渓」とも呼ばれる梅の名勝地である。
五月川の両岸に約1万本の梅樹が立ち並び、開花のシーズンには多く人々が散策に訪れる。
広大な敷地なので込み合うこともなく十分に散策を楽しめる。草餅も美味しい!
名 称 | 月ヶ瀬梅林 |
所在地 | 奈良県奈良市月ヶ瀬尾山 |
Link | 名勝 月ヶ瀬梅林 | 奈良市観光協会サイト |
三重県の観梅名所
結城神社
結城神社【ゆうきじんじゃ】は、鎌倉時代末期から南北朝時代に活躍した武将・結城宗広を祀っている神社である。
結城宗広は、後醍醐天皇の「建武の中興」に貢献して、一時は奥州方面の統治を任されて活躍したものの、足利尊氏率いる足利軍に攻められたために、既に都落ちしていた後醍醐天皇を追って吉野へと向かった。そして、南朝勢力の再起を掛けて奥州へと向かう途中に海上で遭難し、立ち往生した地で病死したと伝わる。
結城神社が鎮座する地は、地元では古くから「結城の森」と伝えられ、結城塚や結城明神を祀って、崇めてきた場所である。
結城神社の境内には約380本の梅が植えられおり、そのうちの約300本を枝垂れ梅が占めているのが、結城神社を梅の名所にしている理由であるかも知れない。とにかく全国的にも有数の枝垂れ梅の名所として有名な観光スポットになっている。
枝垂れ梅約300本のほか、10種類80本の梅の木も、例年、2月中旬頃から開花し、3月中旬まで楽しむことができるという。
結城神社の境内には「結城の錦紅梅」と呼ばれる樹齢300年超の梅の老木が植えられている。この梅の木は、結城神社では最も樹齢が高い老木である。名の由来は、御祭神の結城宗広公が後醍醐天皇に忠義を尽くして建武の中興の大業を達成し、錦を飾ったという故事に因んでものだという。
名 称 | 結城神社 |
所在地 | 三重県津市藤方2341 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 結城神社|津市観光協会公式サイト 結城神社の梅 | 観光三重 |
和歌山県の観梅名所
南部梅林
私が今最も興味をもって行きたいと思っているのは、南部梅林【みなべばいりん】である。『「一目百万、香り十里」との呼び声高い南部梅林は、日本最大級の広さを誇りながらも、その一帯が梅花の香りに包まれるほど美しく薫る南部随一の名所 』と紹介されている。
南部梅林に植栽されている梅の木の数は実のところ不明らしい。数が多すぎて数えることができないのかも知れない。南部梅林のある和歌山県みなべ町は、実梅の代表品種である南高梅の発祥の地として知られており、青梅と梅干しの生産量が共に日本一でもある。
したがって、南部梅林にも南高梅(白色一重の花弁をつける)を中心に多くの実梅が植栽されていることだろう。
特殊な品種の花梅を期待することはできないが、南部川河岸の丘陵地に梅林が続く風景を是非見てみたい。
名 称 | 南部梅林 |
所在地 | 和歌山県日高郡みなべ町晩稲 |
Link | 南部梅林-梅の里観梅協会【公式サイト】 |
全国の観梅名所
天神様と梅の花
東風吹かば にほひをこせよ 梅の花
主なしとて 春を忘るな
この有名な和歌は、菅原道真が無実の罪を着せられて太宰府へ左遷される前に、大事にしていた梅の木を前にして語り掛けるように詠んだ歌として知られている。
清廉潔白な人柄だったと伝わる道真は 赴任してからわずか2年後、京に戻ることなく、太宰府で一生を終えることになった。
太宰府には天満宮(太宰府天満宮)が建てられて、学問の神様・天神様として多くの人の信仰を集めている。
道真を慕って京都から飛んできたとされる「ご神木の飛梅」をはじめ、約6,000本の梅が咲く「梅の名所」となっている。
残念ながら、私はまだ梅の季節に太宰府天満宮を参拝したことがない。普段でも参拝客が多いのでシーズン中の混雑は想像を絶するかも知れない。
一方、京都には北野天満宮が建立され、この天満宮も梅の名所になっている。
やはり天神様と梅は切り離せない関係にある。境内には道真ゆかりの梅50品種、約1,500本が植栽されている。
シーズン中の混雑は予想どおりであり、もっとゆっくりと観梅を楽しみたかったが、それは無理な相談というものだ。ブログで見せられる写真すらない。
「観梅名所百選」がない!
日本各地にはどのような梅の名所があるのだろうかと思って調べてみたが、いわゆる「観梅名所百選」みたいなリストがない。
「百選」好きな日本人には珍しい現象ではないかと思った。でも、実は百ヶ所もないのかもしれない。そう思い、実際に数えてみようとしたが、そのリストもない。
リストがないなら自分で作ってみるしかないので作成したのが下記のリストである。あくまでも個人的な好みでリストに入れただけなので、特に厳格な選定基準があるわけではない。
このリストに載っていないのは単に私が知らないだけである。他意はない。そのことを最初に断わっておきたい。
行ってみたい全国の観梅名所(62選)
名称 | 所在地 | 特記事項 |
---|---|---|
平岡公園 | 札幌市 | 札幌市で貴重な観梅所 |
狩勝高原梅園 | 新得町 | 約1,200本以上の豊後梅 |
壮瞥公園 | 壮瞥町 | 約300本の梅と洞爺湖 |
津軽フラワーセンター | 五所川原市 | 紅白約2,000本の梅 |
湯田川温泉 梅林公園 | 鶴岡市 | 紅白約300本の梅 |
梅林寺 | いわき市 | 10品種、約170本の梅 |
花見山公園 | 福島市 | 紅白約300本の梅 |
秋間梅林 | 安中市 | 紅白約35,000本の梅 |
偕楽園 | 水戸市 | 約100品種、3,000本 |
西渓園 | 足利市 | 約1,200本の梅を栽培 |
成田山公園 | 成田市 | 紅白約500本の梅 |
越生梅林 | 越生町 | 1,000本以上、老木も |
郷土の森博物館 | 府中市 | 約60品種、1,100本の梅 |
湯島天満宮 | 東京都文京区 | 約800本(8割が白梅) |
浜離宮恩賜庭園 | 東京都中央区 | 菜の花畑と梅約130本 |
六義園 | 東京都文京区 | 回遊式築山泉水庭園 |
昭和記念公園 | 立川・昭島市 | 約80品種、230本の梅 |
信州伊那梅苑 | 箕輪町 | 約7,000本の梅 |
不老園 | 甲府市 | 約30品種の梅 |
曽我梅林 | 小田原市 | 約35,000本と富士山 |
熱海梅園 | 熱海市 | 60品種・469本の梅 |
豊岡梅園 | 磐田市 | 約3,000本の白梅中心 |
岩本山公園 | 富士市 | 30品種389本と富士山 |
佐布里池梅林 | 知多市 | 早咲き・遅咲きの梅 |
梅林公園 | 岐阜市 | 約50品種、1,300本の梅 |
いなべ市農業公園 | いなべ市 | 100品種、4,000本の梅 |
豪農の館 内山邸 | 富山市 | 紅白約60本と立山連峰 |
兼六園 | 金沢市 | 約20品種、約200本 |
石山寺 | 大津市 | 約40品種、3つの梅園 |
叶 匠壽庵 寿長生の郷 | 大津市 | 4品種、約1000本の梅 |
北野天満宮 | 京都市 | 約50品種、約1500本 |
二条城・梅林 | 京都市 | 源平咲きなど130本 |
城南宮 | 京都市 | 紅白150本の枝垂れ梅 |
梅宮大社 | 京都市 | 約35品種、約550本 |
青谷梅林 | 城陽市 | 約6品種、約1万本の梅 |
大阪城公園 | 大阪市 | 100品種以上、1,270本 |
金熊寺梅林 | 泉南市 | 約2,000本の梅 |
綾部山梅林 | たつの市 | 紅白約2万本の梅 |
世界の梅公園 | たつの市 | 約315品種の世界の梅 |
岡本梅林公園 | 神戸市 | 41品種、195本 |
広田梅林 | 南あわじ市 | 11品種、約450本の梅 |
月ヶ瀬梅渓 | 奈良市 | 観梅の名勝、約1万本 |
賀名生梅林 | 五條市 | 約2万本「梅の雲海」 |
南部梅林 | みなべ町 | 日本最大級、約8万本 |
結城神社 | 津市 | 枝垂れ梅が400本中300本 |
吉備津神社 | 岡山市 | 古社境内の梅林 |
後楽園 | 岡山市 | 紅白約100本の梅 |
神代梅の里公園 | 津山市 | 14品種、約2,000本の梅 |
冠山総合公園 | 光市 | 約100品種、約2,000本 |
満汐梅林 | 三原市 | 約1,000本、山頂の梅林 |
美郷の梅 | 吉野川市 | 紅白約16,000本の梅 |
阿川梅の里 | 神山町 | 3品種、約16,000本 |
栗林公園 | 高松市 | 回遊式庭園、170本 |
七折梅園 | 砥部町 | 紅白約16,000本の梅 |
南楽園 | 宇和島市 | 15品種、約160本の梅 |
太宰府天満宮 | 太宰府市 | 紅白約6,000本の梅 |
谷川梅林 | 八女市 | 約30,000本の白梅 |
牛尾梅林 | 小城市 | 牛尾神社周辺の栽培梅 |
石橋文化センター | 久留米市 | 紅白約140本の梅 |
おおくぼ台梅園 | 日田市 | 約6,000本の梅 |
好隣梅 | 宮崎市 | 670本の梅 |
藤川天神 | 薩摩川内市 | 梅300本、「臥龍梅」 |
太字は行ったことがあるお勧めの観梅名所
あとがき
今回数えた「観梅名所」は62か所で100か所には全く届かなかった。しかし、私にとっては62か所でも十分過ぎる数である。
「さくら名所」の数と違って観梅名所の数が少ないように感じるが、それは単に私が知らないだけのことだろう。
兵庫県たつの市には綾部山梅林と御津自然観察公園(世界の梅公園)がある。神戸市にも岡本梅林公園があって、いずれも梅の名所として知られている。これらの観梅名所が、比較的近くにあるおかげで、以前は毎年のように足を運ぶことができていた。ここ数年はコロナ禍のため梅の開花を観ることができていない。梅の花の香りが懐かしい。
ようやくコロナ禍から社会が解放された今、ウメの開花が待ち遠しい。観梅にはどこに行こうかを悩むのもまた楽しいものだ。
【参考資料】
たつの市/綾部山梅林【公式サイト】 |
綾部山梅林 | たつの市観光協会 御津支部【公式サイト】 |
たつの市/世界の梅公園【公式サイト】 |
世界の梅公園 | たつの市観光協会 御津支部【公式サイト】 |
岡本梅林公園【地域のコミュニティサイト】 |
城陽市観光協会公式ホームページ |
城陽市史跡、社寺、名所紹介<城陽市観光協会> |
青谷梅林~京都府観光連盟公式サイト |
城南宮【公式サイト】 |
梅宮大社【公式サイト】 |
名勝 月ヶ瀬梅林 | 奈良市観光協会サイト |
美景「梅林の郷」 | 月ヶ瀬観光協会 |
結城神社|津市観光協会公式サイト |
結城神社の梅 | 観光三重 |
太宰府天満宮【公式サイト】 |
北野天満宮【公式サイト】 |
南部梅林-梅の里観梅協会【公式サイト】 |
各地の観梅名所公式サイト又は観光案内サイト |