(2023年11月13日更新)
はじめに
室生赤目青山【むろうあかめあおやま】国定公園は、三重・奈良の両県にまたがる山間部が指定地域の国定公園である。
室生寺周辺の室生高原、赤目四十八滝や香落渓といった山峡部を中心とした赤目渓谷、そして青山高原及び高見山地を包括した自然公園である。
これらのエリアでは単に山岳的景観だけでなく、文化的景観も観られる。その理由は、古代文化発生の地である奈良盆地に接しており、さらに伊勢の神宮に到る交通の要所にあったためである。
宇陀市にある室生寺はその典型である。ほかにも奈良県側では墨坂神社、宗祐寺、仏隆寺などがある。三重県側では、石造の灯籠(文化財指定)で有名な延寿院、北畠神社や真福院などが知られている。
本稿では、赤目四十八滝をはじめ、香落渓・曾爾高原や青山高原の魅力ついても私の思いを書いてみたいと思う。
<目次> はじめに 室生エリア 室生寺 曾爾高原 倶留尊山 曾爾三山(鎧岳・兜岳・屏風岩) 赤目エリア 香落渓 青蓮寺湖(青蓮寺ダム湖) 赤目四十八滝 不動滝(赤目五瀑) 千手滝(赤目五瀑) 布曳滝(赤目五瀑) 荷担滝(赤目五瀑) 琵琶滝(赤目五瀑) 巌窟滝 青山エリア 青山高原 青山高原ウインドファーム メナード青山リゾート あとがき |
室生寺
室生寺【むろうじ】は、奈良県宇陀市室生に位置する、真言宗室生寺派の大本山の寺院である。山号は宀一山【べんいちさん】または檉生山【むろうさん】で、御本尊は如意輪観音である。
天武天皇の勅願によって、役の行者【えんのぎょうじゃ】と呼ばれる修験道の祖、小角【おづぬ】がこの室生の地に初めて寺を建立したと伝わる。
奈良時代末期、山部親王(後の桓武天皇)の延寿祈祷をきっかけに、興福寺の高僧・賢璟【けんけい】が勅命を受けて、弟子の修圓が平安遷都まもなくの頃に堂塔伽藍を建立したという。
その後、弘法大師・空海の弟子であった真泰が真言密教を携えて入山し、灌頂堂や御影堂等が整えられた。真泰は修圓とも親交が深かったと伝わっている。
弘法大師・空海が開山した高野山金剛峯寺は、昔は女人禁制の聖地であり、女性の参詣は許されていなかった。一方、室生寺は真言宗室生寺派大本山とされ、高野山金剛峯寺とは異なり、古から女性の参詣が許されていた。そのため室生寺は「女人高野」と呼ばれるようになったと言われている。
仁王門
室生寺にある現在の仁王門は、昭和40年(1965年)11月に再建されたものである。室生寺の仁王門は江戸時代中期の元禄年間(1688年~1704年)に焼失し、その後長らく再建されていなかったらしい。
室生寺の仁王門は重層(二階建て)の楼門で、三間一戸【さんげんいっこ】八脚門【はっきゃくもん】(本柱四本の前後に控え柱四本が建つ門)の造りで、屋根は檜皮葺【ひわだぶき】である。
仁王門には勿論、仁王像(金剛力士像)が安置されている。仁王門は、仏教・寺院を守護する金剛力士像を安置する門であり、二神一対で、口を開いた阿形【あぎょう】(右側)は怒りの表情を表し、口を閉じた吽形【うんぎょう】(左側)は怒りを内に秘めた表情を表しているものが多いと言われている。
阿形は、左手に仏敵を退散させる武器である金剛杵【こんごうしよ】を持ち、一喝するように口を開けている。一方、吽形は右手の指を開き、怒気を帯びて口を結んでいる。
金堂
仁王門を通り過ごし、鎧坂の石段を一段一段登っていくと、屋根が柿葺【こけらぶき】の寄棟造りの金堂が次第に見えてくる。石段を登りきると金堂の全貌が見える前庭に出る。
懸け造りの高床正面一間通りは、江戸時代に付加されたという礼堂【らいどう】(本尊を安置する正堂の前に建てられた礼拝のためのお堂)で、この部分が無かった時代には、堂内の仏像の姿が外からも拝むことができたという。
特別拝観中の金堂には、中尊 釈迦如来立像、薬師如来立像、文殊菩薩立像、十二神将立像が安置されていた(撮影不可)。
弥勒堂
弥勒堂【みろくどう】は金堂【こんどう】の前庭左手(西側)に位置する三間四方のお堂である。僧・修圓が興福寺に創設した伝法院を室生寺に移設したと伝えられている。
鎌倉時代の「宀一山図」【べんいちさんず】には「伝法院」と堂名が記されており、元は南向きであったのを室町時代に東向きに改修され、江戸時代初期にも改造されているという。
内部の四本柱の中に須弥壇【しゅみだん】を据え、厨子に収められた弥勒菩薩像を安置している。
本堂(灌頂堂)
本堂(灌頂堂)は、金堂からさらに石段を登ったところに位置する。この本堂は真言密教で最も大切な法儀である灌頂【かんじょう】を修するためのお堂で、寺院の中心である。
鎌倉時代後期の延慶元年(1308年)の建立と伝えられ、五間四方入母屋造りの大きな堂である。国宝に指定されている。和様【わよう】と呼ばれる従来からの寺院建築様式と大仏様【だいぶつよう】と呼ばれる寺院建築様式の折衷建築様式を示していると言われているが、私にはその違いが分からない。
本堂の内陣中央の厨子には如意輪観音坐像が安置されている。この如意輪観音坐像は、平安時代の作と伝えられ、重要文化財に指定されている。
如意輪観音坐像の両脇には両界曼荼羅(金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅)が配置されている。
五重塔
本堂の西側、奥之院への参道を兼ねる急な石段の最上段の広場に五重塔が建っている。
この五重塔は、平安時代初期の延暦19年(800年)頃に造られたもので、法隆寺の五重塔に次ぐ古塔であるという。この五重塔の高さは16m、一層目の一辺が2.5mほどで、屋外に立つ五重塔としては国内最小であるらしい。檜皮葺【ひわだぶき】の屋根が樹林に包まれて格別の風情を醸し出している。この五重塔は国宝にも指定されている。
平成10年(1998年)の台風によって境内の杉が倒れた影響で損壊したが、現在は見事に修復されている。
奥之院・御影堂
五重塔の左脇を通りすぎて、一旦下り、急な石段を登り切ると奥之院がある。
(振り返るとかなりの急坂であった)
奥の院には弘法大師・空海像を祀る御影堂【みえどう】(大師堂ともいう)がある。御影堂は、板葺き二段屋根の宝形造りで、屋根の頂には露盤宝珠が据えられている。
この御影堂は、各地にある大師堂の中でも最古のお堂の一つであると言われている。
御影堂の隣の絶壁の前には舞台が組まれ、その上に常燈堂(位牌堂)が建っている。御影堂を拝むための礼堂であったらしい。
(絶壁の前に組まれた舞台造り)
弘法大師・空海は、承和2年(835年)3月21日に入定【にゅうじょう】されているが、室生寺では毎年4月21日(旧暦の3月21日)に、法会『正御影供』【しょうみえく】を執り行っているという。
名 称 | 室生寺 |
所在地 | 奈良県宇陀市室生78 |
駐車場 | あり(有料:600円)、 室生寺前駐車場(さかや):500円 |
Link | 女人高野 室生寺 (murouji.or.jp) |
曽爾高原
曽爾高原【そにこうげん】は、奈良県東北端の曽爾村に位置し、日本三百名山の一つ倶留尊山【くろそやま】(標高1,037m)の麓に広がる約40haの草原である。
曽爾高原の標高は約700mで、倶留尊山と亀山【かめやま】(標高849m)の西斜面から麓に広がっており、そこには「お亀池」と呼ばれる湿地帯もある。
ススキは曽爾高原全体に生育しているが、お亀池周辺に特に群生している。
亀山峠からの眺望を求めて曽爾高原を春から秋にかけてハイキングを楽しむ人が多い。
曽爾高原は、お亀池の周辺を中心にススキの群生地であり、関西有数のススキの名所として知られる。
特に夕暮れ時のススキが美しいことでも有名である。
ススキが見頃となる10~11月の夕暮れ時に夕陽を浴びて黄金色に輝くススキは、確かに一度見ると忘れられない美しさである。
この景色を一目観ようと全国各地から多くの観光客が訪れる。
名 称 | 曽爾高原 |
所在地 | 奈良県宇陀郡曽爾村太良路 |
Link | 曽爾村・曽爾高原の温泉「お亀の湯」 |
倶留尊山
倶留尊山【くるそやま】は、この地域の最高峰(標高1,037m)で、室生火山群に属する塊状火山である。奈良県と三重県の県境上に位置する。
倶留尊山は南北に山稜を延ばし、三重県側(東面)は急峻な柱状節理が露出、山麓の池の平高原ではのどかな山村風景が広がる。一方、奈良県側(北西面)には広々とした裾野があり、ススキの群生で知られる曽爾高原【そにこうげん】がある。
一般的な登山コースは、その曽爾高原の亀池のそばを通り、亀山峠(標高800m)に登り、稜線を北上し二本ボソ(イワシの口)を経て山頂に至るというものである。
亀山峠から山頂までは約1時間のコースタイムである。尚、二本ボソから先の頂上部は私有地であり、環境整備のための協力金(入山料として500円)を徴収している。
倶留尊山の名の由来は、山の北西面を流れる滝川の上流に祀られている「くるその石仏」であると言われている。 「くるそ」とは「拘留孫仏」【くるそんぶつ】(賢劫【けんごう】の時に出現する千仏の第一仏)のことである。
倶留尊山は南北に山稜を延ばし、その東面には三ツ岩から二本ボソ(イワシの口)まで切り立った岩壁を連ねる。反対に北西面は緩やかなスロープとなって山麓へ裾を広げている。
倶留尊山の山頂は樹木の成長とともに眺望は良くないが、亀山峠から二本ボソ(イワシの口)にかけての稜線には樹木がなく、室生や三重の山々を一望することができる。
そして二本ボソから山頂を経て三ツ岩までは切り立った岩壁が連なる。
名 称 | 倶留尊山 |
所在地 | 三重県津市美杉町太郎生 |
Link | 倶留尊山|津市観光協会公式サイト |
曾爾三山
曽爾三山【そにさんざん】とは鎧岳、兜岳、屏風岩を合わせた総称で、国の天然記念物に指定されている。奈良県曽爾村の自然美を総称して「奥香落」と呼ぶ。その主なものは室生大山群の代表的な地質・山岳景観で、特に奇勝と称すべきは屏風岩、兜岳、鎧岳である。
鎧岳
鎧岳(標高894m)は鎧の腹巻を正面から眺めた形から、その名がついたと言われている。
兜岳
兜岳(標高920m)は兜の針金に似ていることから名がついたと言われている。
屏風岩
屏風岩は北東から南西にかけて約2km、高さ約200mに及ぶ壮大な柱状節理による断崖である。
香落渓
香落渓【かおちだに】は、三重県名張市にある渓谷で、木津川水系の名張川の支流である青蓮寺川の上流域に位置する、長さ8kmにも及ぶ渓谷である。室生赤目青山国定公園の一部に指定されている地域であり、その景観は一見の価値がある。
青蓮寺川に沿って造られた県道81号線を走っていると柱状節理による斧で刻んだような壮大な断崖が聳え立っている場所がある。屏風岩、天狗柱岩、鬼面岩、鹿落岩などと名づけられた奇岩群が目に飛び込んでくる。
これらは1500万年前に起こった火山の噴火によって堆積した安山岩が幾年もの歳月を掛けて侵食され続けたことで形作られたものである。奇岩群の他に茶屋滝や抹揚淵などの名所もある。
香落渓一帯は野生動物と植生の宝庫でもあり、室生赤目青山国定公園の指定区域となっている。秋には山が紅葉で色づくことから多くの観光客で賑わう。
名 称 | 香落渓 |
Link | 香落渓 | 観光スポット | 観光三重 |
青蓮寺湖(青蓮寺ダム湖)
青蓮寺ダム【しょうれんじダム】は、三重県名張市青蓮寺に位置し、名張川の支流である青蓮寺川に造られたダムで、そのダム湖は青蓮寺湖【しょうれんじこ】と呼ばれている。青蓮寺湖は、室生赤目青山国定公園の一部に指定されている地域であり、その景観は一見の価値がある。
青蓮寺ダムの型式はアーチ式コンクリートダムであり、高さは82 mもある。
青蓮寺湖は、ブラックバス釣りでも知られるが、周囲を山に囲まれた風光明媚な場所である。春(3月下旬~4月上旬)は桜、秋(11月上旬~下旬)は紅葉が湖面に映える。青蓮寺湖の美しい湖畔はサイクリングにも最適である。適度なアップダウンがあるので、日頃のトレーニング不足を補うのにちょうど良い。赤色に塗装された弁天橋を渡りながら眺める景色は格別である。
ダム湖・青蓮寺湖付近一帯は室生赤目青山国定公園に指定されている地域も多く、青蓮寺川上流には紅葉の名所として知られる香落渓があり、山を越えると赤目四十八滝もある。
名 称 | 青蓮寺ダム・青蓮寺湖(ダム湖) |
所在地 | 三重県名張市中知山1-166 |
Link | 青蓮寺ダム管理所-水資源機構 木津川ダム総合管理所 青蓮寺・香落渓 – 三重 なばりの観光ガイド |
赤目四十八滝
赤目四十八滝【あかめしじゅうはちたき】は、三重県名張市赤目町を流れる滝川の渓谷(赤目四十八滝渓谷)にある、一連の滝の総称であって、名のある大きな滝が48滝もあるわけではない。
この地は古より山岳信仰の聖地であり、地元には「滝参り」という呼び方が今も残る。奈良時代には修験道の開祖である役行者(役小角)の修行場にもなったと伝わる。地名「赤目」の由来は、役行者が修行中に赤い目の牛に乗った不動明王に出会ったとの伝承によるものとされる。
渓谷の周辺地域は野生動物と植生の宝庫である。特に渓谷は、世界最大級の両生類の一つといわれるオオサンショウウオの棲息地として知られ、滝への入り口付近には飼育・展示施設の日本サンショウウオセンターが設置されている。
滝のある渓谷は約4kmにわたって続き、四季折々の景観が楽しめるハイキングコースとなっている。紅葉の名所としても知られているので、特に秋には多くの観光客が訪れて、賑わいを見せる。
また、伊賀忍者の祖と言われる百地三太夫【ももちさんだゆう】が修行の場としてこの地を選び、多くの忍者を輩出したとも伝えられている。そのため、夏場には忍者にちなんだイベントも開催されている。
名 称 | 赤目四十八滝 |
所在地 | 三重県名張市赤目町長坂671-1 |
駐車場 | あり(有料) |
Link | 忍者修行の里 赤目四十八滝 |
赤目四十八滝のうち比較的大きくて、見所とされる5つの滝を、赤目五瀑【あかめ ごばく】と呼ぶ。勿論、「赤目五瀑」以外にも名がついた滝がいくつもある。中には落差が数メートルしかないので、本当に滝と呼べるのだろうかと思ったり、気をつけないと見落としてしまうものすらある。入山口から順に現われる滝を紹介してみよう。同時に名前が付いた岩石や渕についても紹介したい。
行者滝
行者滝【ぎょうじゃだき】は、落差が3mの滝で、岩を挟んでふたつに別れて流れ落ちる滝で、赤目四十八滝では最初に現れる滝である。標識がなければ見落としてしまうような滝である。
修験者の祖と言われる役の行者【えんのぎょうじゃ】にちなんだ名が付けられている。
霊蛇滝
霊蛇滝【れいじゃだき】は、落差が6mの滝である。滝自体の美しさにもまして碧く澄んだ滝つぼが美しい滝である。滝つぼの深さは約7mもある。
名の由来は、白蛇が岩をよじ登る趣があり、滝の流れの中に顔を出す岩が竜の爪痕を連想させることから名付けられたという。
不動滝
不動滝【ふどうだき】は、落差15mの滝で、不動明王にちなんで名付けられた滝である。
「滝参り」はこの滝への参拝を意味する。明治中期以前はこの滝より奥は深山幽谷の原生林で、修験者だけが立ち入ることを許されていた聖地だったという。
不動滝は、最初に姿を見せる赤目五瀑の一つである。
乙女滝
乙女滝【おとめだき】は、落差が3mの分かりづらい小さな滝である。さらに分かりづらいが、滝の中に深さ1mくらいの滝壺があるという。
水量によっては、なまめかわしいほどの姿に見えることから乙女滝と名付けられたという。
八畳岩
渓流の中に、ひときわ大きな岩が転がっていて、広さが八畳敷ほどあるので、八畳岩【はちじょういわ】と呼ばれている。
弘法大師・空海が修行をした時、たくさんの天童がこの上で舞楽したという伝説があり、「天童舞台石」という名も付いている。
千手滝
千手滝【せんじゅだき】は、落差15mの滝である。名の由来には、岩を伝って千手のように落水するところから命名されたとする説と、千手観音に因むとする説の二つがある。
黒い岩肌を流れ落ちる滝の白い水しぶきと深緑色の滝つぼ、そして近くのイロハモミジの木が絵画のように調和して見事な景観を作ると言われている。秋の紅葉時に訪れると良いだろう。私が訪れた日は紅葉の見頃時期には少し早かったようだ。
千手滝は、二番目に姿を見せる赤目五瀑の一つである。
布曳滝
布曳滝【ぬのびきだき】は、落差30mの滝で、一条の布を掛けたように見えるところから名付けられたという。
「布引滝」と呼ばれる滝は全国にあるが、30mの高さから流れ落ちるこの滝はその代表格であるとも言われている。
布曳滝は、三番目に姿を見せる赤目五瀑の一つである。
竜ヶ壺
竜ヶ壺【りゅうがつぼ】は、落差が2mの滝である。布曳滝【ぬのびきだき】のすぐ上流に位置する滝である。
水の力が岩盤を石臼のように掘り抜いて、底無しと言われるほど深い滝壺になっている。写真では分かりづらいが、確かに恐怖を感じさせるくらいに深そうだ。この滝壺には決して落ちたくないものである。
この滝壺には竜が棲むという伝説があり、それにちなんで竜ヶ壺と名付けられたという。
斧が渕
渕の形が斧に似ているので、斧が渕【おのがぶち】の名が付いているらしいが、近くからではその形は分かりづらい。しかし、渕は深そうである。
渕は、鏡のように澄み、両側の崖の上にはカエデの枝が張りだしていて美しい景観を見せている
陰陽滝
陰陽滝【いんようだき】は、落差が7mの滝である。「陽」とは滝の流れを指していて、岩石に沿って斜めに20mほど流れている。
一方、滝つぼは「陰」をあらわしている。滝つぼの真ん中に岩の頭が突き出ている様子は奇観である。滝全体と滝壺を一枚の写真として撮影できないのは残念である。
百畳岩
茶店のある前の河原には一枚岩の大きな岩盤が広がっている。百畳敷ほどの広さがあるので、百畳岩【ひゃくじょういわ】と呼ばれている。
この辺りの紅葉は比較的早いようだ。休息するにも眺めが良い。紅葉は、日光が当たればさらに美しく輝いて見える。
七色岩
百畳岩の近くの渓流の中に大きな転石がある。その小さな島のような岩の上に、マツ・モミ・カエデ・サクラ・アカギ・ウメモドキ・ツツジの7種類の植物が自生しているので七色岩【なないろいわ】と名付けられたという。
姉妹滝
姉妹滝【しまいだき】は、落差が3mの滝である。七色岩を眺めて渓流を登ると見えてくる。
姉妹滝は、大小ふたつにわかれて落ちる滝である。右側を姉滝、左側を妹滝と呼ぶ。
柿窪滝
柿窪滝【かきくぼだき】は、落差が5mの滝である。岩盤を丸く掘り抜いたような滝壺が特徴的で美しい。
清流を枝とすれば、滝壺が柿の実のように見えたので、この名前が付いたという。
笄滝
笄滝【こうがいだき】は、落差が2mの滝である。滝の名の由来は、巨岩にはさまれて落ちる滝の形が笄【こうがい】に似ているからであるという。笄とは日本髪に刺す飾りのことである。
笄滝の滝壺は横渕【よこぶち】と呼ばれる。滝壺は、長さ5m、幅15m、深さが10mもある。横に長いので「横渕」と呼ばれている。
赤目四十八滝の中で唯一、滝(「笄滝」)と滝壺(「横渕」)にそれぞれ別の名前が付けられている。
雨降滝
雨降滝【あめふりだき】は、落差が10mの滝である。
この滝は渓流ではなく、遊歩道の左手の崖(右手は渓流)の上に見える滝である。
岩を伝って雨が降るように飛沫が落ちてくるので名付けられた。
天候にもよるが、虹が見えることもあるという。
骸骨滝
骸骨滝【がいこつだき】は、落差が2mの滝である。
渓流にかかる小さな滝であるが、落ち口に骸骨に似た岩が横たわっているために名付けられたという。
斜滝
斜滝【ななめだき】は、落差が2mの小さな滝である。
川の流れが斜めに変わって落ちている滝である。
正面から見ると、山も岩も木も斜めに見えて奇妙な景色であるという。
荷担滝
荷担滝【にないだき】は、落差が8mの滝である。荷担滝は四番目に姿を現す赤目五瀑の一つである。
滝の中央に位置する大岩を挟んで流れが二手に分かれる様子が、荷物を綺麗に振り分けて担っているように見えることから、「担いの滝」あるいは「荷担い滝」と名づけられたという。
滝を高所から眺めるとすぐ上にも深さ約10mほどの滝壺とそこに流れ落ちる滝があり、三滝二渕になっている。
荷担滝は、四季を通じて渓谷随一の景観であり、赤目四十八滝を代表する景観であるとされている。
夫婦滝
夫婦滝【めおとだき】は、落差が3mの滝である。荷坦滝の上流で、二つの渓流が合流する付近に位置する。夫婦滝は本流ではなく、右側の支流「山椒谷川」にかかる滝である。本流の滝ではないので、標識がないと見落としてしまう。
流れ出る場所は二か所に分かれているが、途中で一つに合わさって滝つぼに注ぐことから夫婦滝の名前が付いたという。
雛壇滝
雛壇滝【ひなだんだき】は、落差が2mの滝である。一面の岩が幾段にもなっていて、その上を清流が流れている。
まるで雛壇のように見えるところからこのような名が付いたという。増水時には幾段もの白い滝の流れが見られ、美しい滝になるという。
琴滝
琴滝【ことだき】は、落差が3mの小さな滝である。
静かに耳をすませて聞くと、滝の音がまるで琴の音が深山にこだましているように聞こえたことから、この名が付いたという。
琵琶滝
琵琶滝【びわだき】は、落差15mの滝で、赤目五瀑の最後に姿を見せる滝である。
滝と滝壺を合わせた形状が楽器の琵琶【びわ】に似ていることから名付けられたという。
巌窟滝
巌窟滝【がんくつだき】は、落差が7mの滝で、赤目四十八滝の最奥に位置する。
滝の中腹に深い石穴があるので巌窟滝と呼ばれている。 滝壺は小さく、深さは3mほどであるという。
青山高原
青山高原【あおやまこうげん】は、津市と伊賀市の境に位置する笠取山から南北約15kmに渡って広がる高原である。
標高756mにある三角点は、伊勢湾を一望できる絶景スポットの一つとなっている。
また、山頂付近は風力発電基地にもなっていて、89基の風車が建ち並ぶ様子は迫力満点である。何十年ぶりかで青山高原を訪ねて、風車の数が増えていることに率直に驚いた。ススキの群生地の数よりも風車の数の方が多いのではないかと思う。
青山高原公園線と東海自然遊歩道が整備されているのでアクセスも良く、春はアセビやツツジの群生、秋はススキの白い穂が風に揺れてハイキングを楽しむには最適の場所である。
特に、9月下旬~10月下旬頃はススキの穂と迫力満点の風車とを一緒に写真に収められるのが嬉しい。遊歩道をゆっくりと散策するもよいし、ベストアングルを探して高原を歩き回るのもよい。
青山高原は、星空が綺麗に見れる場所としても知られている。
名 称 | 青山高原三角点駐車場 |
所在地 | 三重県伊賀市勝地1852-63 |
Link | 青山高原|津市観光協会公式サイト レッ津ゴー旅ガイド 青山高原|観る・体験する|津市観光協会公式サイト 青山高原〜風わたる南伊賀〜 – 青山観光振興会・青山高原周辺の施設と観光 |
青山高原ウインドファーム
青山高原ウインドファームは、風力発電事業及び電力の供給を行う企業で、青山高原に位置する集合型風力発電所の名称である。青山高原に所有する風力発電機は全部で60基もあり、最大出力は95,000kWで、日本の風力発電所の中では最大である。
所有する風力発電機は次のとおりである。
- JFEエンジニアリング製風力発電機(20基)
ローター直径:50.5m、タワー高さ:50m、出力:750kW - 日立製作所製風力発電機(40基)
ローター直径:80m、タワー高さ:65.4m、出力:2000kW
名 称 | 青山高原ウインドファーム |
Link | 株式会社 青山高原ウインドファーム(公式HP) |
青山高原には、青山高原ウインドファーム(60基)のほかにも次のような発電用風車が存在するので、あわせて89基もある。
- ウインドパーク久居榊原(2基)
- ウインドパーク美里(8基)
- ウインドパーク笠取(19基)
メナード青山リゾート
メナード青山リゾートは、伊賀市と津市の境にある布引峠付近に位置する、日本メナード化粧品が所有するリゾート施設である。室生赤目青山国定公園の一部になっている。
名 称 | メナード青山リゾート |
所在地 | 三重県伊賀市霧生2356 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | <公式>メナード青山リゾート|三重県伊賀市青山高原 |
あとがき
赤目四十八滝は、私が今、シニア生活の拠点にしている名張市にある景勝地である。近くてハイキングには最適な場所であるので何度も行っているし、写真も沢山撮っていたつもりであった。しかし、撮った写真の大半が娘達の「どアップ」の人物写真となっていて子育て時代の写真ばかりであった。本ブログには適さないので、新たに写真撮影だけを目的に赤目四十八滝に行ってみた。本稿を書くのに際して名の付けられた滝の写真をしっかりと撮影したつもりであったが、今一つ迫力に欠けている写真が目立つ。滝の写真撮影は難しいことを痛感させられた。やはり三脚を用いて、シャッタースピードを遅くしてみる試みも必要がありそうだ。迫力のある滝の写真が撮れるよう腕をあげたいものである。