はじめに
知床【しれとこ】国立公園は、北海道最東北端に位置する知床半島にある国立公園である。知床半島中央部から知床岬までの周辺海域が指定区域になっている。
一方、阿寒摩周【あかんましゅう】国立公園は、北海道道東エリアに位置し、阿寒湖・屈斜路湖・摩周湖の3つのカルデラ湖および周辺の山岳部を指定地域とする国立公園である。国立公園内のほぼ9割以上が自然保護地域(手つかずの未開発地域)として保全されている。
釧路湿原【くしろしつげん】国立公園は、北海道東部に位置する国内最大の釧路湿原を中心とする国立公園である。タンチョウなどの水鳥はじめ、多くの野生動物の生息地となっている。
北海道は日本の国土の22%にもなる広大な大地であり、大自然が残されている魅力的な観光地である。その広大さゆえ、移動に時間がかかるので一度に周遊することは容易ではない。したがって、自ずといくつかのエリアに分けて訪れることになる。
一般に、北海道は大きく4つのエリアに分けて紹介されることが多い。その一般的区分とは、道央・道南・道北・道東の4区分である。それぞれのエリアでは特徴が異なるので、北海道の旅は飽きることがない。
本稿で紹介するのは、道東エリアに属する地域の旅である。北海道の雄大な大自然が感じられるスポットが多く、美しい景色を堪能することができる大満足の旅になるはずである。
<目次> はじめに 知床国立公園 知床五湖 オシンコシンの滝 カムイワッカ湯の滝 フレペの滝 知床峠 プユニ岬 夕陽台 天狗岩 阿寒摩周国立公園 屈斜路湖・見幌峠 摩周湖 阿寒湖 オンネトー 双湖台展望台 釧路湿原国立公園 くしろ湿原ノロッコ号 釧路市湿原展望台 コッタロ湿原展望台 塘路湖 あとがき |
知床国立公園
知床半島【しれとこはんとう】は、北海道の東北端に位置し、オホーツク海に向かって細長く伸びる半島である。
日本に残された最後の原生地域ともいわれ、険しい連峰と奥深い原生林、さらには海蝕崖による豪壮な海岸風景などの景観が見事であり、観光地化が進んでいる。
一方で、原生的で多様な生態系が一地域にまとまっているのが特徴であり、自然保護と観光とのバランスを慎重に考えなければならない場所でもある。
知床は、2005年にユネスコの世界自然遺産に登録され、注目が集まっている。その世界遺産の中心にあるのが知床五湖であるといえよう。
知床五湖を楽しむには、高架木道と地上遊歩道の2つのルートがある。高架木道は全長800mで、雄大な知床五湖を気軽に体験することができる。一方、地上遊歩道は全長3㎞と1.6㎞のコースがあり、ヒグマの活動時期など時期によって利用方法が異なる。
知床には「知床八景」と呼ばれる下記のような景勝地がある。
- 知床五湖
- オシンコシンの滝
- カムイワッカの滝
- フレペの滝
- 知床峠
- プユニ岬
- 夕陽台
- オロンコ岩
知床五湖
知床五湖は、知床半島の背骨を形作っている知床連山と呼ばれる山々の麓に位置する。知床連山とは、羅臼岳(1661m)、斜里岳(1547m)、海別岳(1419m)、硫黄山(1562m)など1400m~1600m級の山々である。
知床五湖(北海道斜里町)は、知床連山を背景に原生林の中にある5つの湖である(一湖から五湖までの名前がつく)。自然豊かな世界自然遺産・知床を象徴する景勝地として知られている。
知床連山や原生林を水面に映す風景は見飽きることはない。多くの野生動物の生息地でもあり、ヒグマの爪痕など知床の自然の豊かさを実感できる場所でもある。
知床五湖には高架木道と地上遊歩道があるが、一湖以外の湖を観るなら地上遊歩道を通らなければならない。ヒグマの出没情報があれば立入禁止になるのでヒグマ次第・運次第だ。
知床半島は、人口よりもヒグマの生息数の方が多いと言われている。私は幸か不幸か、ヒグマに遭遇することはなかった。
知床五湖の眺めは「知床八景」の1つに選ばれている。
名 称 | 知床五湖 |
所在地 | 北海道斜里郡斜里町岩尾別 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 知床五湖|知床斜里町観光協会 |
オシンコシンの滝
オシンコシンの滝の眺めは「知床八景」の1つに選ばれている。
オシンコシンの滝は、落差が50mもある立派な滝である。途中から流れが二手に分かれているので「双美の滝」とも呼ばれているらしい。
私はここで手を滑らせ、買い替えたばかりのカメラを壊してしまうところだった。それを偶然にも救ってくれたのが妻であった。
それ以来、カメラを新しく買い替えるたびに妻はこの話を持ち出してくる。この体験により私が妻に頭が上がらなくなったのは残念ながら紛れもない事実である。
見る方向によって表情を変える不思議な滝である。源流はどこなのだろうか? まるで天から流れ落ちてくるような感じだ。
名 称 | オシンコシンの滝 |
所在地 | 北海道斜里郡斜里町宇登呂東国有林内 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | オシンコシンの滝|知床斜里町観光協会 |
カムイワッカ湯の滝
カムイワッカ湯の滝は、滝壺が温泉の滝である。知床硫黄山の中腹から涌き出る温泉が川に流れ込んでいる。
沢登りのように、上流に向かって滑りやすい川の中を一の滝まで歩いていく。毎年のように滑落事故も起きてるようなので注意を怠ってはいけない。
カムイワッカ湯の滝の下流にはカムイワッカの滝(落差32m)があるという。オホーツク海に流れ込む滝で、この滝に通ずる道はないので、滝を見るには知床半島の遊覧船を利用するしかないらしい。観光客に人気なのはカムイワッカ湯の滝の方である。
カムイワッカの滝の眺めは「知床八景」の1つに選ばれている。
名 称 | カムイワッカ湯の滝 |
所在地 | 北海道斜里郡斜里町遠音別村岩尾別 |
Link | カムイワッカ湯の滝 – 知床自然センター |
フレペの滝
フレペの滝の眺めは「知床八景」の1つに選ばれている。
知床半島・宇登呂岬の宇登呂灯台直下を流れ落ちるフレペの滝は、地元では「乙女の涙」の愛称で呼ばれるという。
名 称 | フレペの滝 |
所在地 | 北海道斜里郡斜里町遠音別村字岩宇別 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | フレペの滝|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
知床峠
知床峠【しれとことうげ】(標高738m)は、北海道の羅臼町と斜里町の境にある国道334号に位置する峠である。
国道334号は、知床半島を横切っており、知床横断道路とも呼ばれる。羅臼と斜里を繋ぐ重要な道路で、道東の広域観光道路としても利用されている。
知床峠には駐車場が整備されていて、ビューポイントになっている。知床峠からの眺めは「知床八景」の1つに選ばれている。この場所からは、羅臼岳やハイマツの樹海、知床の原生林を見渡すことができる。天候が良ければ北方領土の国後島も望むことができる。
周辺は世界有数のヒグマの生息地でもある。私たちはヒグマには遭遇しなかったが、野生のエゾシカに出会うことができた。
名 称 | 知床峠 |
所在地 | 北海道目梨郡羅臼町と斜里郡斜里町の境 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 知床峠|知床斜里町観光協会 |
プユニ岬
プユニ岬は、オホーツク海に面する岬で、知床半島北岸のウトロから国道334号で知床自然センター(遠音別村字岩宇別531番地)へ向かう途中の上り坂に位置する絶景と夕陽の名所と言われる。プユニ岬からの眺めは「知床八景」の1つに選ばれている。
オホーツクの海岸線やウトロ港が一望できる場所で、私は見たことがないが、冬はオホーツク海でも一番最初に流氷を見ることができるポイントでもあるという。
名 称 | 知床半島・プユニ岬 |
所在地 | 北海道斜里郡斜里町大字遠音別村字岩尾別 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | プユニ岬|知床斜里町観光協会【公式サイト】 |
夕陽台
夕陽台は、知床の観光拠点の一つであるウトロの市街地から約1kmほど離れた高台にあり、「知床八景」の一つに選ばれている場所である。ウトロ温泉街にも近い。
名 称 | 夕陽台 |
所在地 | 北海道斜里郡斜里町ウトロ香川 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 夕陽台|知床斜里町観光協会 |
天狗岩
天狗岩は、天狗の鼻が天を向いているように見えるところから名付けられたという。私には「天狗の鼻」に見えないが、天狗自体に会ったことがないので分からないのは当然かも知れない。
羅臼から相泊方面に向かって海岸沿いの道をドライブしていると右手に見える不思議な形の岩である。長い年月をかけて荒波が削り出した「芸術作品」の一つであることには間違いない。
名称 | 天狗岩 |
所在地 | 目梨郡羅臼町海岸町 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 天狗岩|知床の町 羅臼町【公式サイト】 |
阿寒摩周国立公園
屈斜路湖、摩周湖、阿寒湖などの雄大なカルデラ湖を中心に、雄阿寒岳・雌阿寒岳などがそびえ、湖と火山に太古の森林が加わった原始的景観を誇る国立公園である。
屈斜路湖
屈斜路湖【くっしゃろこ】は、湖岸距離が約57㎞、面積約79㎢である。湖の中央付近には中島がある。この中島は周囲が12㎞の無人島で、淡水湖内では日本で一番大きい島とされている。
屈斜路湖を一望するには、美幌峠【びほろとうげ】や津別峠【つべつとうげ】がオススメである。
屈斜路湖を一望する場所としては、美幌峠が一番であると私は思う。
名 称 | 屈斜路湖 |
所在地 | 北海道川上郡弟子屈町屈斜路 |
駐車場 | あり(無料)美幌峠駐車場 |
Link | 屈斜路湖|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
美幌峠
美幌峠は、屈斜路湖が望める峠として有名である。展望台(標高525m)から望む屈斜路湖は、樹木の緑と青空のコントラストが見事で、「絶景」と表現するしかない。
名 称 | 美幌峠 |
所在地 | 北海道弟子屈町屈斜路 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 美幌峠 | 弟子屈なび |
摩周湖
摩周湖【ましゅうこ】は、湖岸距離が約20㎞、面積約19㎢のカルデラ湖である。湖水の透明度が高いことで有名で、世界一の透明度を誇り「神秘の湖」といわれる。また、霧に包まれることが多く、「霧の摩周湖」とも呼ばれている。
摩周湖のビュースポットには、摩周第一展望台、摩周第三展望台および裏摩周展望台があるが、一番人気は摩周第一展望台であるかも知れない。その理由は、美しい湖面と共に摩周岳やカムイシュ島などが展望できるからである。
名 称 | 摩周湖 |
所在地 | 北海道川上郡弟子屈町弟子屈原野 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 摩周湖|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
阿寒湖
阿寒湖【あかんこ】は、湖岸距離は約30㎞、面積13.28㎢のカルデラ湖である。
阿寒湖を楽しむには阿寒観光船を利用すると良いかも知れない。
阿寒湖は、マリモが生息する国内唯一の湖としても有名である。そのため阿寒湖のマリモは、特別天然記念物に指定されている。研究によれば球状のマリモが群生するのは非常に珍しい現象であるという。
阿寒湖で球状のマリモが見られるのは、偶然の自然現象が重なって創り出された奇跡であるという。
阿寒湖畔には温泉街があるので、温泉に浸ることができる。
名 称 | 阿寒湖 |
所在地 | 北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 阿寒湖|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
オンネトー
阿寒湖の東側に位置する雌阿寒岳の西山麓にはオンネトーという湖がある。名前の由来は、アイヌ語で「年老いた沼」あるいは「大きな沼」を意味するという。
オンネトーは、阿寒摩周国立公園の最西端に位置し、雌阿寒岳の麓にある湖岸距離が約2.5kmの美しい湖である。
オンネトーは、雌阿寒岳の噴火により西麓の螺湾川【らわんがわ】の流れが止められてできた堰止湖【せきとめこ】である。
天候や見る角度によって湖の色が変わる神秘的な湖で、私の好きな湖である。季節などによって湖の色が変化することから五色沼とも呼ばれているらしい。
湖畔周辺には原生林の間に整備された散策路があり、大自然を満喫できるのもこの湖を気に入っている点である。
天気の良い日には、ここでゆっくりと時間を過ごしたい。
名 称 | オンネトー |
所在地 | 北海道足寄郡足寄町茂足寄 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | オンネトー|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
双湖台展望台
阿寒横断道路(国道241号)区間の大半は阿寒摩周国立公園の原生林が広がる山岳地域の中にある。途中、ペンケトーとパンケトーの二つの湖を展望できる双湖台展望台がある。
名 称 | 双湖台展望台 |
所在地 | 北海道釧路市阿寒町双湖台 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 双湖台 | 釧路・阿寒湖観光公式サイト |
釧路湿原国立公園
釧路湿原は、釧路川とその支流を抱く日本最大の湿原で、その広大さは東京の都心がすっぽりと入ってしまうほどだという。
市街地に接して広がる湿原を主体とした点が珍しく、世界でもまれな公園と言われる。湿原の大半はヨシ草原とハンノキ林などからなる、いわゆる低層湿原で、蛇行する河川とあいまって広大な水平的な景観が特徴的である。
特別天然記念物のタンチョウなどの貴重な動植物が生息し、生育地でもある。そのため、湿原の主要部は「ラムサール条約」の登録湿地に指定され、国際的にも高く評価されている。
ラムサール条約の正式和名は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」と言い、イランの都市・ラムサールで開催された国際会議で採択された条約であるため、通称「ラムサール条約」と呼ばれている。生物多様性保全に関する地球規模の条約としては最も早く採択された国際条約であるとされる。
くしろ湿原ノロッコ号
くしろ湿原ノロッコ号は、釧路湿原の観光列車として活躍している。運行事業者はJR北海道である。
釧路湿原国立公園内を流れる釧路川には一級河川には珍しくダムもなく、緩やかな流れであるためカヌーが楽しめるという。
カヌーを楽しんでいた人たち
穏やかな流れの釧路川
車では行くことのできない釧路湿原の風景を楽しむにはノロッコ号に乗るべし!
川沿いはより一層湿原に近いので野生動物、例えばタンチョウやエゾシカなどに出会える機会が多くなる。
名 称 | くしろ湿原ノロッコ号 |
所在地 | 釧路駅 |
Link | 2023年「くしろ湿原ノロッコ号」 | 観光列車なび |
釧路市湿原展望台
釧路市湿原展望台の周辺には遊歩道が整備されており、野鳥や植物の観察が楽しめる。
約700種の植物、39種の哺乳類、4種の両生類、5種の爬虫類、38種の魚類、200種の鳥類、さらに少なくとも1,150種の昆虫が生息しているといわれている。
特別天然記念物に指定されているタンチョウの生息地にもなっている。野生生物の宝庫であり、後世に残さねばならない。
名 称 | 釧路湿原・釧路市湿原展望台 |
所在地 | 北海道釧路市北斗6-11 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 釧路市湿原展望台 |
コッタロ湿原展望台
コッタロ湿原展望台は、釧路湿原にある5つの展望台のうちの一つである。他の4つの展望台は、細岡展望台、北斗展望地、釧路市湿原展望台およびサルボ・サルルン展望台である。それぞれ異なった湿原風景が楽しめるという。
個人的には、コッタロ湿原展望台からの眺めが好きである。
特別天然記念物に指定のタンチョウも見ることができた。
湿原は多くの野生生物の貴重な生息地となっているようだ。この展望台から眺めるコッタロ湿原の風景を私は大変気に入った。
名 称 | 釧路湿原・コッタロ湿原展望台 |
所在地 | 北海道川上郡標茶町コッタロ |
駐車場 | あり(無料) |
Link | コッタロ湿原展望台【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
塘路湖
塘路湖【とうろこ】は、北海道東部の標茶町にある淡水湖で、釧路湿原国立公園に含まれる。
名 称 | 塘路湖 |
所在地 | 北海道川上郡標茶町塘路原野沼ノ上 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 釧路湿原・塘路湖とその周辺|行政情報|標茶町HP |
あとがき
北海道は広大であるので、自分の思い通りに点在する景勝地を巡るにはどうしても車を利用しないと不便である。北海道の道を愛車で走行したいという気持ちはあるが、神戸から車で行くには北海道は遠すぎる。仕方なく空路で北海道に行き、空港でレンタカーを借りることになる。北海道の道路は広くて、カーブも少ないので慣れないレンタカーでも走りやすい。北海道の大地をまっすぐに延びる道路をドライブしたことが昨日のことにように良き想い出として残る。
知床国立公園、阿寒摩周国立公園および釧路湿原国立公園内の景勝地を巡った旅は北海道の旅のなかでも特に強く記憶に残っている。それは本州とは違う北海道の大自然が色濃く残る場所であるからに違いない。見幌峠やオンネトーのように何度訪れても感動する景勝地が含まれる国立公園への旅は最高である。