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平家落人伝説が残る上北山村と下北山村そして北山村への旅

はじめに

奈良県と和歌山県の境界に広がる深い山に囲まれた人里には、源平合戦に敗れた平家の落人たちが身を潜めたという伝説が今も静かに息づいている。

奈良県の上北山村下北山村、そして和歌山県の北山村には平家落人伝説が残されている。そんな歴史の残響と自然の美しさが織りなす、幻想的な時間を味わえるこれらの村々を巡る旅を紹介したい。

目次
はじめに
竹ノ平の記憶が残る霧に包まれた山麓の隠れ里・上北山村
上北山村の平家ゆかりの寺院
景徳寺
宝泉寺
林泉寺
瀧川寺
平家落人伝説が残る神秘的な滝と渓谷
下北山村の平家ゆかりの寺院
正法寺
瀧巖寺
小仲坊
平家ゆかりの下北山村夏祭り
下北山村歴史民俗資料館
筏流しと平家落人伝説が残る北山村
北山村の平家ゆかりの寺院
見福寺
宝蔵寺
東光寺
平家ゆかりの柱松祭り
あとがき

竹ノ平の記憶が残る霧に包まれた山麓の隠れ里・上北山村

奈良県の上北山村の奥地には、かつては「竹ノ平集落」と呼ばれ、平家の落人が隠れ住んだという伝説が残る集落があったという。

昔は人知れず暮らしていたとされる人里は、現在では廃村となり、苔むした石垣や朽ちた家屋だけが残る。目を閉じて耳を澄ませば、静かに過去の歴史を語りかけてくるようだ。

近くにある大台ヶ原では、霧に包まれた原生林が幻想的な雰囲気を醸し出し、まるで時を超えて平家の記憶に触れているような気分にさせてくれる。

上北山村内には平家ゆかりの寺院もあって、文化や祭りにその記憶が息づいているとされる。


上北山村の平家ゆかりの寺院

上北山村には平家ゆかりの寺院として、景徳寺宝泉寺林泉寺および瀧川寺がが知られている。

景徳寺

景徳寺【けいとくじ】は、平家の一門がこの地に逃れ、創建したとされる禅寺である。ご本尊は平家伝来の薬師如来像であるとされる。

平家の末裔が開いたとされる村の中心にあり、古文書や仏像などがその歴史の証となっている。

この寺は、村の精神的な中心地とされ、静かな境内に歴史の重みが漂っている。毎年1月には弓矢祭の舞台にもなる。

この祭りは、平家の一門が再興を願って練武を行ったことに由来していて、奈良県指定の無形民俗文化財にもなっているという。

静かな境内に立つと、往時の面影が感じられる。

名 称景徳寺
所在地奈良県上北山村河合136
駐車場あり
アクセスバス停川合から徒歩圏内
Link

宝泉寺

宝泉寺【ほうせんじ】は、鎌倉時代に制作されたという梵鐘が残されている。この梵鐘は、奈良県指定文化財でもあり、全国的にも貴重な遺品であるらしい。

静かな山里に佇む、平家の落人への祈りが今も息づく場所となっている。

名 称宝泉寺
所在地奈良県上北山村西原285
駐車場あり
アクセス
Link

林泉寺

林泉寺【りんせんじ】は、白川地区にある禅寺(曹洞宗)で、平家の末裔が守ってきたとされる寺院である。

山間の静かな山里にたたずむこの寺は、訪れる人も少なく、まさに「隠れ里」のような雰囲気を醸し出し、「癒しの空間」と言ってよい。山間の静けさと、素朴な佇まいが魅力の寺である。

名 称林泉寺
所在地奈良県上北山村白川214-44
駐車場あり
アクセス
Link

瀧川寺

瀧川寺【りゅうせんじ】は、南北朝時代に南朝の後亀山天皇の玄孫・北山宮(自天王)が神器を持って潜匿された場所とされ、最期を迎えた地でもある。

境内には宮内庁が管理する御陵もあり、歴史ファンにはたまらないスポットとなっているようである。

村人たちが御首と神器を守り、寺に手厚く埋葬したという伝承が残されている。

名 称瀧川寺
所在地奈良県上北山村小橡228
駐車場あり
アクセス
Link

平家落人伝説が残る神秘的な滝と渓谷

下北山村では、前鬼川渓谷不動七重の滝など、神秘的な自然が広がっている。下北山村に行く機会があるなら、前鬼渓谷や池原ダムの自然も一緒に楽しむことを勧めたい。

不動七重の滝は、前鬼への道中に現れる神秘的な滝である。水の音が心を浄化してくれるような感覚になる。

地元では、これらの場所に平家の落人が身を潜めていたという話が語り継がれている。滝の音がまるで彼らの話声のように感じられたのは不思議な体験である。

村の住人に聞いたところでは、伝説は口伝で残っていて、祭りや地名にもその痕跡があるそうである。


下北山村の平家ゆかりの寺院

下北山村には平家ゆかりの寺院として、正法寺瀧巖寺および小仲坊が知られている。

正法寺

正法寺【しょうぼうじ】は、下北山村の中心部に位置する曹洞宗の寺院で、「下北山村の歴史のシンボル」とされる寺であるという。

この寺は、かつて「恵日院」と呼ばれ、大塔宮護良親王が潜伏した祈願所でもあったという。村の歴史を象徴する寺院で、地元の人々の生活に深く根付いている寺であると言えよう。

地元の人々の信仰を集めていて、平家の末裔が守ってきたとも伝えられている。

名 称正法寺
所在地奈良県下北山村寺垣内
駐車場あり
アクセス下北山村役場から徒歩圏内
Link正法寺の歴史| 下北山村

瀧巖寺

瀧巖寺【りゅうがんじ】は、下桑原地区にある静けさが残る曹洞宗の寺院である。

この寺にも平家の落人がこの地に根を下ろしたという伝承が残こされている。

静かな山里に佇む平家の落人伝説と、歴史ある建物が、周囲の自然が調和して癒しの空間となっている。

名 称瀧巖寺
所在地奈良県下北山村下桑原255
駐車場あり
アクセスバス停下桑原から徒歩1分
Link

小仲坊

小仲坊【おなかぼう】は、修験道の聖地「前鬼」にある寺院で、平家の落人が修行者として暮らしたという伝承が残されている。確かに山深い場所に位置し、まさに「隠れ里」の雰囲気がある。

修験道の祖・役行者が開いたとされる場所で、1300年の歴史を持つ「大峯奥駈道」の起点となっている。「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産に登録された聖地でもある。

鬼の夫婦(前鬼と後鬼)が住み着いたという伝説も残る。その鬼の末裔・五鬼助家が守る秘境の寺院としても知られている。宿泊も可能(要予約)で、修験者の歴史と自然の神秘を体感できる。

そんな小仲坊は、釈迦ヶ岳への登山口にもなっていて、霊山の霊気と歴史が交差する場所であり、まさに「聖地の中の聖地」として、登山者にも人気のスポットになっているという。

名 称小仲坊
所在地奈良県下北山村前鬼30
駐車場前鬼林道のゲート前に
駐車スペースあり
アクセス駐車スペースから
徒歩で約30分
Link前鬼山小仲坊 | きなりと

平家ゆかりの下北山村夏祭り

下北山村夏祭りは、毎年8月15日に開催される下北山村の一大イベントである。

初盆供養の意味も込められていて、平家の霊を慰める「追善供養花火」や「メッセージ花火」が打ち上げられるという。

約700発の花火が夜空を彩り、村の人々の祈りが空に広がる瞬間は感動的であるらしい。

ステージイベントや屋台もあって、村の文化が凝縮したお祭りになっているという。是非、機会を作って見物してみたいものである。


下北山村歴史民俗資料館

下北山村歴史民俗資料館は、昭和62年(1987年)に開館した資料館で、大正時代の病院建築を活用した文化遺産でもあるという。

下北山村の歴史・民俗・林業・農業などの資料が展示されていて、平家伝説に関する展示もあるという。

下北山村の伝説は、静かな山々の中で今も生きてる感じがする。

名 称下北山村歴史民俗資料館
所在地奈良県下北山村上桑原391
駐車場あり
開館日毎週木曜日(祝日は休館)
時間:13時~16時
Link下北山村歴史民俗資料館

筏流しと平家落人伝説が残る北山村

和歌山県の北山村は、日本で唯一の「飛び地の村」として知られている。そして、この村には平家の落人伝説も残っている。

源平の戦い、特に「壇ノ浦の戦い」で敗れた平家の武士たちが、紀伊半島の秘境である北山村に逃げ込んだという伝承が残されている。

江戸時代の地誌『紀伊続風土記』にも「壇ノ浦の戦い」後に逃れてきた平家の武士たちがこの地に住み着いたという記録が残されているという。

北山川周辺沿いには、平家の落人たちが舟で逃れ、村にたどり着いたという伝説が残こされている。

昔から良質の杉に恵まれ林業で栄え、伐採された木材の輸送は川を利用して筏によって木材集積地の新宮まで運ばれていまたという。

村の名物「筏流し体験」では、川を下りながら、まるで歴史の流れに身を委ねているような感覚に浸れる。

北山村の奥地には、平家の末裔がひっそりと暮らしていたとされる集落が点在しているとされる。地元の人々の間では、平家由来の苗字や風習が現代においても伝えられているらしい。


北山村の平家ゆかりの寺院

北山村にも静かな山里にたたずむ寺院がいくつかあって、平家の落人伝説と結びついていると伝えられている。

なかでも、見福寺宝蔵寺および東光寺がよく知られている寺院である。

これらの寺院は、村の人々の信仰を集めていて、雑念を洗い落とす場所としても知られているという。

見福

見福寺【けんぷくじ】は、北山村の中心部(下尾井地区)にあって、地域の歴史と深く関わってる寺院とされている。

曹洞宗のお寺で、境内の西南には約600年前の宝篋印塔【ほうきょういんとう】が残っている。この宝篋印塔は、平家の落人たちの供養塔とも言われている。歴史の重みを感じながら、静かに手を合わせたくなる場所である。

名 称見福寺
所在地和歌山県北山村下尾井437
駐車場あり
アクセス国道169号線を利用し、
道の駅おくとろから約5分
Link北山村のお寺巡り
見福寺 | 北山村観光協会

宝蔵寺

宝蔵寺【ほうぞうじ】は、北山村の山あいにひっそりと佇むお寺である。

平家の落人たちがこの地に逃れ、心の拠り所としたと伝えられている。

境内は素朴で静か、まるで時が止まったような空間である。瞑想や心を整えるのにぴったりな場所と言えるだろう。

名 称宝蔵寺
所在地和歌山県北山村大沼45
駐車場あり
アクセス道の駅おくとろから
国道169号を東へ進む
Link北山村のお寺巡り

東光寺

東光寺【とうこうじ】は、竹原地区にある曹洞宗の寺院で、山号は吉詳山と称する。

ご本尊は薬師如来で、江戸時代前期に再建され、国指定の有形文化財である本堂と山門が見どころである。

欅(ケヤキ)を使った内陣や、地方色豊かな建築様式も見どころである。このお寺も、平家の落人が信仰を寄せた場所とされている。

名 称東光寺
所在地和歌山県北山村竹原296
駐車場あり
アクセス宝蔵寺からさらに
国道169号を東へ進む
Link北山村のお寺巡り

平家ゆかりの柱松祭り

柱松【はしらまつ】祭りは、毎年8月中旬に行われる、北山村の伝統的な夏祭りである。

高さ20メートルの柱の上に麦藁で編んだ「カゴ巣」を設置し、たいまつの火を投げ入れて花火を点火するという。運動会の玉入れ競技ならぬ、「火の玉入れ」みたいなダイナミックな儀式である!

火柱が立ち上がると、先祖の霊が昇っていく姿とされ、平家の霊を慰める意味も込められているという。

そして、点火の合図で盆踊りが始まり、地元の節回しと方言による唄に合わせて踊る姿は、まさに「伝承の舞」と呼ぶに相応しい!

この祭りは、見てるだけでも心が震えるだろうし、参加するとまるで歴史の一部になった気分になるはずである。機会を見つけて、是非、一度は見物してみたいものである。


あとがき

上北山村、下北山村(ともに奈良県)、そして北山村(和歌山県・飛び地)は、平家の落人伝説とともに生きる村々であることが理解できた。

どの村も、険しい山々に囲まれていて、まさに「隠れ里」という感じがする。平家の落人伝説が残っている場所と言われれば、素直に信じてしまう雰囲気が十分にある。空気までちょっと神秘的に感じてしまうから不思議である。

今回の旅で感じたのは、平家落人伝説がただの伝承ではなく、土地の文化や人々の暮らしと心に深く根ざしているということである。

深い山々に守られたこれらの村々は、静かだけど力強く、歴史の記憶を今に伝えてくれている。

都会の喧騒から離れて心を澄ませたいなら、是非これらの「隠れ里」を訪れてみることをお薦めしたい。

水のように静かで、しかしながら、確かに流れている時間が、きっとあなたの心も包み込んでくれるはずである。

もっと深掘りしたいのなら、現地の郷土資料館や神社を訪ねてみるのもおすすめである。


【参考資料】

観光/上北山村
下北山村公式ホームページ
北山村マップ・施設紹介 | 和歌山県 北山村の暮らし

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