はじめに
油日神社【あぶらひじんじゃ】は、滋賀県甲賀市甲賀町油日にある神社で、主祭神として油日大神【あぶらひのおおかみ】を祀っている。油日岳を神体山とし、山頂には罔象女神【みずはのめのかみ】を祀る岳神社がある。
油日大神は、勝軍神として武士の崇敬を受け、また「油の火の神」としても信仰されている。中世には甲賀武士の崇敬を集め、「甲賀の総社」として広く信仰されたという。
また、油日大神は「万有始動の根元神」として、諸事繁栄発展の大本を司る神とされており、古来より「諸願成就の神」として、多くの人々から信仰を集めている。
油日神社
油日神社【あぶらひじんじゃ】は、甲賀市甲賀町油日にある神社で、主祭神の油日大神【あぶらひのおおかみ】を祀っている。
油日大神は勝軍神として武士の崇敬を受け、社名から「油の火の神」としても信仰された。油日岳を神体山とする。油日岳の山頂には罔象女神【みつはのめのかみ】を祀る岳神社がある。
創建については、用明天皇または天武天皇の時代の創建と伝えられる。油日岳の山頂に「油の火のような光」とともに油日神が降臨したことから「油日」の名がついたと伝えられる。
また、聖徳太子が社殿を建立し、油日大明神を祀ったとの伝承もある。
長い歴史をもち、「甲賀の総社」として信仰され、中世には甲賀武士が軍神として崇め、信仰してきた。尚、主祭神は、油日大神であるが、罔象女神【みつはのめのかみ】(東相殿)と猿田彦神【さるたひこのかみ】(西相殿)が合祀されている。
神殿は、本殿・拝殿・楼門が一直線にならび、左右を廻廊でかこむように建てられている。これは、中世の建築様式で建てられているという。本殿・拝殿・楼門は、いずれも重要文化財になっている。
油日神社には推定樹齢が約750年と言われるコウヤマキ(高野槇)が本殿横に生育している。幹周りが6.5mで、樹高が約35mもある巨樹である。
この油日神社の高野槇は、その巨大さが全国的にも珍しいことから滋賀県指定の天然記念物となっている。
名 称 | 油日神社 |
所在地 | 滋賀県甲賀市甲賀町油日1042 |
電 話 | 0748-88-2106 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 油日神社公式ホームページ |
あとがき
油日神社は、油日岳を神体山としており、その山頂には罔象女神【みずはのめのかみ】を祀る岳神社がある。
罔象女神は、日本神話に登場する「水の神様」で、美しい乙女の姿をしており、特に水源や井戸、灌漑用水を象徴する神として信仰されている。
記紀に記された日本神話の「神産み」において、伊邪那美命【いざなみのみこと】が火の神である火之迦具土神【ひのかぐつちのかみ】を生んだ際に、陰部を焼かれて苦しんで漏らした尿から生まれたとされているのが水の神・罔象女神である。
罔象女神には、子宝、安産、祈雨、止雨、商売繁盛、治水などのご利益があるとされ、罔象女神を祀る神社は全国にいくつかある。例えば、有名な神社では、下記のような神社が挙げられる。
- 赤川神社(山形県鶴岡市)
- 止止井神社(岩手県奥州市)
- 金蛇水神社(宮城県岩沼市)
- 敷島神社(埼玉県志木市)
- 曾屋神社(神奈川県秦野市)
- 大井神社(静岡県島田市)
- 雨宮坐日吉神社(長野県千曲市)
- 大滝神社(福井県越前市)
- 丹生川上神社中社(奈良県吉野郡)
- 建水分神社(大阪府南河内郡)
- 金立神社(佐賀県佐賀市)
油日神社の主祭神である油日大神は、「油の火の神」でもある。一方、罔象女神は「水の神」である。この二柱の神がそれぞれ油日神社と油日岳(岳神社)に祀られている。
油日大神と罔象女神が、それぞれ異なる場所に祀られることで、火と水という対照的な要素が調和し、地域全体の繁栄と安全を祈願する信仰が形成されていると考えられている。
このような信仰の背景には、古代からの自然崇拝や神仏習合の影響があると考えられている。日本古来の伝統というか、何とも哲学的でもあり、私は好きである。決して、油と水だから別々に分離しているわけではない!