はじめに
金剛三昧院【こんごうさんまいいん】は、高野山にある高野山真言宗の別格本山の寺院で、鎌倉時代に創建された歴史ある寺院である。
金剛三昧院は、1211年に北条政子の発願により、源頼朝の菩提を弔うために「禅定院」として創建されたという。そして、1219年に源実朝の菩提を弔うために禅定院を改築し、「金剛三昧院」と改称したという。
初代住職には、臨済宗の開祖である栄西が招かれたという。1223年には北条政子が多宝塔など多くの堂塔を建立し、金剛三昧院は将軍家(鎌倉幕府)の菩提寺として信仰されてきた。
金剛三昧院
金剛三昧院の御本尊は、愛染明王【あいぜんみょうおう】で、本堂に安置されている。
愛染明王は、愛欲を生きるエネルギーに変換する仏として信仰されている。恋愛成就や縁結びのご利益がある仏として様々な縁を結んでくれるといわれている。
愛染明王への信仰は、平安時代から鎌倉時代にかけて広まり、現在も多くの参拝者が訪れている。
金剛三昧院の多宝塔は、北条政子が源頼朝の逝去に伴い創建した禅定院の規模を拡大し、金剛三昧院と改めたときに造営することになったものである。
建立当時の朱色がほのかに残り、それが裳階【もこし】上の白い円形部分と絶妙なコントラストを創り出している。背後の杉木立とも調和して素晴らしい景観を呈する。
多宝塔の建立は貞応2年(1223年)と伝えられ、高野山で現存する建造物の中では最も古いものである。また、日本で2番目に古い多宝塔であるとされる。
この多宝塔は檜皮葺の塔で、高さは約15m、屋根の一辺は約9 mである。多宝塔の内部には須弥壇が設けられ、その前には秘仏・五智如来像【ごちにょらいぞう】(仏師運慶作・重要文化財)が安置されている。この多宝塔は国宝に指定されている。
経蔵も1223年に北条政子の寄進により建立されたもので、校倉造の建築様式である。東大寺の正倉院と同様の保存状態を誇っており、国の重要文化財に指定されている。
経蔵の内部には弘法大師空海が記した文献や重要文化財の絵画が収蔵されているという。
四社明神社は、1552年に建立され、御祭神として丹生明神(胎蔵界大日如来)、高野明神(金剛界大日如来)、気比明神(千手観音)、丹生御息(文殊菩薩)が祀られている。これらの神々は、それぞれ異なる仏教の象徴を持ち、多様なご利益をもたらすとされている。
この社は、一間社春日造という伝統的な建築様式で建てられており、その美しい造りは見どころとなっている。
本堂に隣接する護摩堂では、不動明王像が御本尊として祀られており、毎月28日に護摩行が行われているという。
金剛三昧院には、国宝の多宝塔や重要文化財の経蔵、客殿などがあり、これらは創建当時の姿を現在に伝えている。
金剛三昧院は、多宝塔(国宝)をはじめ経蔵(重要文化財)や四所明神社など数々の歴史的文化財を擁しており、高野山が世界遺産として登録される際、根幹となる寺院として重要な役割を果たしたという。
名 称 | 金剛三昧院 |
所在地 | 和歌山県高野山高野山425 |
TEL | 0736-56-3838 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 世界遺産 高野山 金剛三昧院 |
あとがき
金剛三昧院は、2022年度のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に登場した尼将軍と呼ばれた北条政子が夫の源頼朝と息子の実朝の菩提を弔うために建立した寺院である。
金剛三味院は、私の実家や親類が法事をするときには必ずお世話になっているお寺さんなので、私はこの寺院に参拝する機会は高野山にある他の寺院に比べればはるかに多いと思う。
しかしながら、率直に言えば、高野山がユネスコの世界遺産に指定を受ける際に金剛三昧院が含まれていることを知るまでは金剛三昧院が凄い寺院であるとは認識していなかった。法事でお世話になる少し古びたお寺ぐらいにしか実のところ思っていなかったのである。無知というのは恥ずかしいと共に実に恐ろしい。
法事で参拝することのメリットは本堂の内部を詳しく案内して貰えることである。御本尊の愛染明王像や、源頼朝と北条政子の並んで安置された大きな位牌だけしか印象に残っていないが、参拝の際には他の文化財にも関心を持ちたいと思う。
金剛三昧院の六本杉(別名:毘張杉)は、樹齢約400年と推定されている。この六本杉の傍で願い事をすれば叶うと信じられている御神木である。
この杉の木は、根元の部分では3本の木であるが、上に行くと6本に分かれているため「六本杉」と呼ばれている。
残念ながら樹高や幹周りについての情報はないが、巨樹と言ってよいほど巨大である。