岩国城を歩く──錦帯橋の先に聳える天空の城と吉川広家の記憶

目次
はじめに
岩国城
吉川広家
あとがき

はじめに

錦帯橋を渡り、ゆるやかに流れる錦川を振り返ると、 その先の山上に、岩国城の天守が静かに姿を見せる。まるで空へと浮かび上がるように佇むその姿は、“天空の城”という呼び名にふさわしい気高さを湛えている。

岩国城を築いたのは、毛利家の重臣として知られる吉川広家。 関ヶ原の戦い後、毛利家存続のために奔走し、この岩国の地を治めることとなった広家の歩みは、華やかな戦国の表舞台とは異なる、静かな覚悟と誠実さに満ちている。

山上へ向かうロープウェイに揺られながら、眼下に広がる城下町と錦帯橋を眺めていると、広家がこの地に託した思いや、 岩国城が見守ってきた長い時間の流れが、ゆっくりと胸に染み込んでくる。

本稿では、錦帯橋から岩国城へと歩きながら、 天空の城が語る風景と、吉川広家の記憶をたどってみたい。


岩国城

岩国城【いわくにじょう】は、吉川広家が慶長13年(1608年)に築いた連郭式山城で、山口県岩国市に位置する歴史的な城である。

関ヶ原の戦いに敗れた毛利輝元は領地を大幅に削減され、広島城から萩城に移封された。吉川広家も慶長6年(1601年)に米子城から岩国に赴任し、岩国城の築城を開始した。麓には平時の居館となる「土居」、山上には戦時の城「横山城」が築かれた。築城には8年の歳月がかかり、慶長13年(1608年)に完成したという。

ところが、完成からわずか7年後の元和元年(1615年)、徳川幕府の一国一城令により横山城が破却され、廃城となったという。その後、麓の土居は岩国領の陣屋として存続したという。

現在の天守は、昭和37年(1962年)に再建されたもので、桃山風南蛮造りの三層四階の構造である。天守からは、吉香公園、城下町、錦帯橋、岩国市内一面、瀬戸内海の島々や四国、宮島までが一望できる。

また、天守内には錦帯橋の精密模型や武具、甲冑などが展示されている。岩国城は、その歴史的背景と美しい景観から多くの人々に愛されている。

岩国城の天守は、珍しい「桃山風南蛮造り」という建築様式を採用している。上の階が下の階よりも大きく張り出す独特の構造が特徴的である。

天守からの眺望は絶景で、観光客の人気も高い。天守からは、錦帯橋や岩国市内、瀬戸内海の島々、さらには四国や宮島まで一望できる。

天守内には、刀剣や甲冑、武具などが展示されている。特に「八間星兜二枚胴具足」や「肥前国忠吉」などの名刀を見ることができる。

岩国城の麓には吉香公園が広がり、緑豊かな環境でのんびりと過ごすことができる。

また、錦帯橋は1673年に架けられた木造の五連アーチ橋で、その美しい景観は岩国城とともに訪れる価値がある。

名 称岩国城
所在地山口県岩国市横山3丁目
TEL0827-41-1477
駐車場あり(有料)
Link岩国城 | 岩国観光振興課

吉川広家

吉川広家【きっかわ ひろいえ】は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将で、毛利元就の孫である。

1561年に生まれ、幼名は才寿丸【さいじゅまる】と言った。わずか9歳で初陣を果たし、父の吉川元春と共に戦場を駆け巡ったと伝えられている。父と兄の急死により、吉川家の家督を継ぎ、毛利家の家臣として、豊臣秀吉に仕え、後に徳川家康とも接触し、毛利家の存続に尽力した人物である。

関ヶ原の戦いでは、西軍の総大将である毛利輝元に従ったが、実際には徳川家康と内通し、毛利家の存続を図っている。

関ヶ原の戦いの後は、周防国の岩国領の初代領主となり、毛利家を支え続け、1625年に亡くなっている。


あとがき

山上の天守を後にし、再び錦帯橋へと戻る道すがら、岩国城が静かに山の上から城下を見守っている姿が目に入る。その佇まいは、吉川広家がこの地に築いた秩序と、城下の人々の暮らしを守ろうとした静かな意志を、今も伝えているようだ。

錦帯橋の美しいアーチと、山上の天守が織りなす景観は、ただの観光名所ではなく、岩国という土地が歩んできた歴史そのものが形となった風景 である。 広家の慎ましくも確かな治世は、この城と橋の静けさの中に、そっと息づいている。

歩き終えたとき、胸に残るのは、山城が語る歴史の重みと、その奥にある“人の記憶”への静かな敬意だ。

岩国城を歩く時間は、吉川広家の足跡に触れながら、自分自身の歩みをそっと見つめ直すひとときでもある。


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