はじめに
集落【しゅうらく】とは、人が住む家屋の集合した状態の場所のことを指す地理的な概念である。集落を人間関係の社会的、文化的統合状態に基づく地域社会の一種として社会学的にとらえた場合、村落にあたるものとほぼ重複するという。(引用:ウィキペディア)
日本各地には「集落」と呼ばれる観光名所が点在する。そんな集落の特徴の一つは家屋の「屋根」や「外壁」の統一性かも知れない。私が訪ねた「観光地的集落」のなかで、最もインパクトが大きかったのは合掌造りの集落である。
その合掌造りの集落というのは、言わずと知れた、1995年に「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録された白川郷と五箇山の集落である。
これらの文化的・歴史的に重要な集落について、私の目から見た集落の印象について記載してみたいと思う。
白川郷
白川郷は、「合掌造り集落」として昔から有名であり、現在も大小100棟余りの合掌造りの家屋が残り、そこで人々の生活が営まれている。
日本の原風景である農村文化・生活・暮らしを感じることができる素晴らしい場所である。
日本の原風景ともいうべき美しい景観が評価されて、1976年に重要伝統的建造物群保存地区として選定された。
さらに1995年には五箇山(富山県)と共に「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録された。
明善寺の本堂の柱や梁【はり】は欅材【けやきざい】で、その伐採に着手したのが1806年で、20年近い歳月を経た1827年に建築されたといわれている。本堂と鐘楼門の間にある大きなイチイの木は、本堂の建設に際し記念樹として植樹されたものであると伝わる。
明善寺の鐘楼門はおよそ220年前(1801年)に建築されたものでかなり古い建築物である。屋根は茅葺きであるが、一階に板庇【ひさし】をつけた珍しい建築物であるとされる。梵鐘【ぼんしょう】は戦後に作られた二代目らしい。初代は第二次世界大戦中に供出されたと言われている。
最初、私は合掌造りの民家を二階建ての住宅だと思っていたが、よく見てみると、4階建てになっている民家が多いことに気付いた。最上階の屋根裏は面積から考えて居住スペースではないかも知れないが造りとしては4階建てに相当すると考えて間違いはなさそうだ。
食事処や喫茶店も合掌造りの民家の家屋を利用をしており、周囲の景観に違和感を与えていない。
一方でこのような合掌造りの家屋を維持していくのは大変であろうと推察する。屋根ふき用の萱の確保一つをとっても容易ではないだろう。
一般観光客が白川郷の集落を見学に訪れる際に渡るであろう吊橋がある。私は高い所が苦手なので、このような吊橋はできることなら渡りたくないが、この橋を渡らないと見学できないので仕方なく渡ることにした。
白川郷は合掌集落として非常に有名なのでかなり観光地化されている。私たちが訪れた日も多くの観光客に出会った。
私は観光客のいない田園風景をゆっくりと眺めていたい方であるが、それは現代においては贅沢な望みというものだろうか。
名 称 | 白川郷 |
所在地 | 岐阜県大野郡白川村荻町地区 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 白川郷観光協会【公式サイト】 和田家 合掌家屋 | 白川郷観光情報【公式サイト】 神田家 | 白川郷観光協会【公式サイト】 |
五箇山菅沼集落
五箇山菅沼集落には現在9戸の合掌造り家屋が残っているという。
合掌造り家屋は、日本有数の豪雪地帯という自然環境に耐える住まいとしての役割と養蚕や塩硝作りという生活の糧となる仕事場としての役割を同時にかつ合理的に達成しているとされる。
合掌造り家屋は、見た目以上に合理的で頑強な構造で裏打ちされた居住性の高い空間を満たしているのかも知れない。
合掌造りの家屋と田んぼのある風景はずっと眺めていたくなるほど癒される。
幸運にも一軒の合掌造り家屋の茅葺き屋根の葺き替え工事中の写真を撮ることができた。通常の瓦屋根よりも費用と時間が掛かることが容易に推察できる。後世に是非残していってもらいたい。
農機具などを入れておくのであろう物置小屋も茅葺屋根であるのはちょっと嬉しい気持ちになった。
名 称 | 五箇山菅沼集落 |
所在地 | 富山県南砺市菅沼地区 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 世界遺産 五箇山菅沼合掌造り集落【公式サイト】 |
五箇山相倉集落
五箇山相倉集落は、五箇山の歴史的風景を今に残す集落で、現在も人々が生活を営んでおり、世界的にも珍しい「人が住まう世界遺産」であるという。
合掌造り家屋を利用した資料館や民宿も充実している。
勝手にシャッターを押してもよいのだろうかと一瞬躊躇してしまうほどに生活感のある立派な合掌造りの家屋が多く存在する。
緑の林の中に建つ合掌造りの家屋がある風景も私は好きである。
豪雪地域に属するので冬は白銀の世界になるのであろうが、夏は緑の田畑の中に合掌造りの家屋が点在する風景を眺めることができる。私はこのような風景が好きである。思わずシャッターを押していた。
名 称 | 五箇山相倉集落 |
所在地 | 富山県南砺市相倉地区 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 相倉合掌造り集落|世界遺産五箇山【公式サイト】 相倉合掌造り保存財団トップ【公式サイト】 |
天狗の足跡
古くから五箇山相倉集落の北側に聳える大きく尖がった大岩(ヤノクラ)には多くの天狗が住んでいたという天狗伝説が残っている。人が決して登れない急峻の崖の上には人には見えない穴があり、そこから大岩の中に入ると天狗の御殿があったという。
「天狗の足跡」は、相倉集落が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された際に環境物件の一つとして評価されている。
数百年も昔、五箇山相倉集落の上にあるヤノクラから天狗が跨いだ時につけた足跡という伝説が残る石が「天狗の足跡」で、凹みの深さは2~3 cmもあるという。人間技でつけることができるとは到底考えられない不思議な代物だという。
集落の伝承では天狗はヤノクラから川向かいの「島の山」まで二跨ぎで渡る事が出来たとされ、ある時に天狗が一回転して、この岩に片足を付いて、さらに一回転して「島の山」に飛んでいったと伝えられている。
名称 | 天狗の足跡 |
所在地 | 富山県南砺市相倉418 |
Link | 天狗の足跡(南砺市)【公式サイト】 |
村上家住宅
「村上家住宅」は、五箇山地方の民家のうち、古い時代の形式を改造されずに残している合掌造りの建造物で、国指定重要文化財になっている。
天正年間(1573~1592年)に建設されたと伝えられており、戦国時代の武家造りから書院造りに移行する過渡期の様子を示しているという。多くの古風かつ古式の遺構が残こされているのは全国にその類を見ないとされている貴重な建物である。
私たちは五箇山菅沼集落から五箇山相倉集落に向かう国道156号線を走行中に、偶然に妻が気付き、立ち寄ることができた。
名 称 | 村上家住宅 |
所在地 | 富山県南砺市上梨742 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 国指定重要文化財 村上家|五箇山合掌造り |
あとがき
白山白川郷ホワイトロード(旧白山スーパー林道)は、白山・加賀温泉郷(石川県)と白川郷(岐阜県)を結ぶ白山国立公園内のドライブルートとして有名である。
しかし、私のような高所が苦手なドライバーにとっては長くて辛い道路であった。登りよりも下りが怖い。本能的にセンターライン側を走行している自分に気づき、対向車に注意してキープレフトに努めようとするが長くは続かない。ドライブを楽しむ余裕は全くなかった。白川郷の集落の一部が峠から見えたときの安堵の記憶が写真を見ると今でもよみがえってくる。
今回の旅の目的は、白川郷や五箇山の合掌集落を訪れ、自分の目で世界遺産に登録された日本の誇るべき文化的・歴史的な集落を見て、その価値を学ぶことであった。そして、その目的は十分に達せられたと自分では勝手に思っている。
元々は妻のアイデアに便乗した形ではあるが、私の方が合掌造りの家屋に興味を持ってしまった感がある。妻に感謝である。
【参考資料】
白川郷観光協会【公式サイト】 |
和田家 合掌家屋 | 白川郷観光情報【公式サイト】 |
神田家 | 白川郷観光協会【公式サイト】 |
世界遺産 五箇山菅沼合掌造り集落【公式サイト】 |
相倉合掌造り集落|世界遺産五箇山【公式サイト】 |
相倉合掌造り保存財団トップ【公式サイト】 |
天狗の足跡(南砺市)【公式サイト】 |