(2024年11月11日更新)
はじめに
昔は日本の至るところに田園風景が広がっていたように思うが、開発されて都市化するか、あるいは過疎化のために日本の原風景ともいうべき里山や耕作地が少なくなっているように思う。
田園風景に限らず昔の日本では当たり前の風景が気付かないままにその姿を消そうとしている。その一つが私の好きな水車であるが、水車小屋の数は激減しているという。
水車と水車小屋の牧歌的な景観は、日本の田園風景によくなじむというが全く同感である。旅先で水車と水車小屋を見つけると思わずシャッターを押しているが、残すべきは写真ではなく実物の方である。かつての日本の原風景のようなイメージを持つ水車を後世にも残して頂きたいという思いが強くある。
<目次> はじめに 忍野八海付近の水車【山梨県】 伊賀街道・子延の水車【三重県】 高天彦神社の高天水車【奈良県】 能登川大水車【滋賀県】 永沢寺・花菖蒲園の水車【兵庫県】 播磨屋本店の水車【兵庫県】 ざいごうどん 本家 わら家の水車【香川県】 道の駅 ゆすはらの水車【高知県】 島原・清流亭の水車【長崎県】 黒川温泉・旅館「夢竜胆」の水車【熊本県】 高千穂峡の水車小屋【宮崎県】 あとがき |
忍野八海付近の水車
忍野八海【おしのはっかい】は、山梨県忍野村にある8か所の湧泉群を指す。富士山などからの伏流水を水源とし、忍野村のこのあたりで地下水が湧きだしたものとされている。観光名所の一つとなっていて、多くの観光客で賑わう。
この忍野八海の周辺を散策している際に、偶然、水車を見つけて思わずシャッターを押していたのが、上の写真である。おそらく店舗のモニュメントとして移設されてきたものだと思うが、水車はこの辺りでも珍しいのではないだろうか。周辺で撮影できたのはこの水車だけであった。
名 称 | 忍野八海 |
所在地 | 山梨県南都留郡忍野村 |
Link | 忍野八海 | 忍野村公式観光HP |
伊賀街道・子延の水車
地元では伊賀街道と呼ばれる三重県伊賀市を通る国道163号を車で走っていた時に偶然にも子延【ねのび】地区で立派な水車を見つけた。
この水車は、伊賀市子延地区の住民ボランティアの皆さんのお手製の水車であるという。
かつて(明治の末頃)子延地区には精米用の水車が五か所にあり、里人の食生活を支えていたという。
その昔を再現しようと平成6年(1994年)に子延地区のボランティアが水車を作り、「さるびの温泉」に設置していたが、残念ながら老築化のために現在は撤去されている。
それで子延地区のボランティアが再度、作り上げた水車が伊賀街道(国道163号線)沿いの子延地区に設置されているという。
名 称 | 伊賀街道・子延の水車 |
所在地 | 三重県伊賀市子延地区(国道163号沿い) 国道163号と「さるびの温泉」に通じる道の交差点付近 |
駐車場 | なし |
高天彦神社の高天水車
高皇産霊神【たかみむすひのかみ】を主祭神として祀る高天彦神社【たかまひこじんじゃ】には高天水車【たかますいしゃ】と呼ばれる水車が設置されている。
高天水車は空からの天水によってゆっくりと回転している。回転速度は、1回転するのに7秒間を要するように設計されているという。
1日は24時間であるから、秒に換算すると86,400秒となり、7秒で除すると12342.8571となる。つまり、12342.8571回廻っていることになる。そしてこれらの数字には9・6・0が存在しないことから、皆に「9(苦)6(労が)0(無い)=苦労が無い」よう願いが込められているのだという。よく思いついたものだと感心すると共に感謝である!
名 称 | 高天彦神社 |
所在地 | 奈良県御所市北窪158 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 高天彦神社 | 御所市 |
能登川大水車
能登川水車【のとがわすいしゃ】は、伊庭内湖に面したのどかな田園風景の中にある。この能登川水車の直径は13 mもあり、関西一を誇る大きさであるという。
能登川の北西部は琵琶湖に面していて、湧き水が流れる水路も多く、非常に水に恵まれた土地であったため、かつては水車が小屋や家に併設され、精米や製粉に利用されてきたという。
その歴史は古く、約190年前に遡るという。明治時代には39基もの水車が存在したが、電気の普及や生活様式の変化で昭和36年(1961年)を最後に水車の姿は消えてしまったらしい。
平成3年(1991年)に旧能登川町がふるさと創生事業の一環で能登川のシンボルとしてこの巨大水車を作ったという。現在の巨大水車は二代目であるようだ。
近くには初代の巨大水車の軸が飾られている。この軸は平成3年(1991年)から平成16年(2004年)まで稼働していたという。軸だけで直径2m、重さは5トンという巨大なものである。
名 称 | 能登川大水車 |
所在地 | 滋賀県東近江市伊庭町1269 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 能登川水車とカヌーランド(伊庭内湖) | 滋賀県観光情報 |
永沢寺・花菖蒲園の水車
永沢寺・花菖蒲園は、兵庫県でも有名なハナショウブ園である。広大な敷地のなかに非常に多くの種類のハナショウブを栽培していて見頃の時期には芽を楽しませてくれる。
私は、この花菖蒲園の中に置かれている水車がことの他お気に入りの一つになっている。しかし、残念ながら回転しているのを見たことがない。いつ動かしているのだろうか。気になる!
名 称 | 永沢寺・花菖蒲園 |
所在地 | 兵庫県三田市永沢寺 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 三田・永沢寺/花しょうぶ園 |
播磨屋本店の水車
播磨屋本店【はりまやほんてん】は、米菓、いわゆる「おかき」の製造販売会社である。神戸市内にも直売店「神戸元町店」があって、「播磨焼」はじめさまざまな種類のおかきが販売している。私もおかきが大好物である。
朝来市を旅していて、国道312号沿いに「播磨屋本店」の看板を見つけて立ち寄ったところ、ここは「生野本店」であった。
生野本店は、全棟が萱葺きの建物で、最初見たときはかつての庄屋の大きな古民家を移築してきたのかと思ったほどの立派なもので、それだけでも心がワクワクしたのを覚えている。
そして、その敷地内で水車と水車小屋を見つけた。風情があって良いと思ったので、すぐに写真を撮らせてもらった。
名 称 | 播磨屋本店(生野本店) |
所在地 | 兵庫県朝来市生野町円山字京田30 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 【全国直売店】日本一おかき処 播磨屋本店 |
ざいごうどん本家 わら家の水車
香川県高松市屋島中町に「四国村」【しこくむら】という日本の古建築(特に江戸時代から明治時代の民家を中心とする)をテーマとする博物館がある。この博物館の入口付近に「ざいごうどん 本家 わら家」という、非常に美味しいうどんを提供してくれる飲食店がある。
このうどん屋さん「わら家」の庭に水車と水車小屋が設置されていたので、食事前に写真を撮らしてもらった。元々ここにあったものではなく、どこかから移設されたものであると思うが、傷んだ水車の部分が修繕されているのが目につく。やはり水車の保全は大変なのだと思う。
名 称 | ざいごうどん 本家 わら家 |
所在地 | 香川県高松市屋島中町91番地 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 讃岐屋島 ざいごうどん本家 わら家 公式サイト |
道の駅 ゆすはらの水車
雲の上の温泉(高知県梼原町)の施設の一つに「道の駅 ゆすはら」という地元のゆすはら町産の新鮮野菜や人気のスイーツなど特産品を販売する市場がある。雲の上ホテル別館・マルシェユスハラを目指して行けば、隣にあるのですぐ分かるはずだ。
その「道の駅 ゆすはら」の隣にあるのが、写真のような水車と水車小屋である。休憩所も萱葺屋根なら、水車小屋も萱葺であり、なんとも情緒あふれる景観を創り出していた。
私はこのような景色が好みであり、いろんなアングルの写真を撮らせてもらった。
このような「水車のある風景」は、言葉では表現できない、癒しがある。私のようなシニア世代にはきっと懐かしさに近い特別な感情を呼び戻すようなインパクトがある。いつまでも滞在したいような気にさせてくれるような特別な空間(場所)であった。
名 称 | 道の駅 ゆすはら・水車小屋 |
所在地 | 高知県梼原町 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 雲の上のホテル | 雲の上グループ 高知【公式】 |
島原・清流亭の水車
長崎県島原市を観光していた際、観光情報を得ようと「清流亭」と名付けられた観光交流センターに立ち寄った。
そこで見つけたのが「湧水のオブジェの水車」である。「インスタ映えの人気スポット」ということらしいが、写真を撮っていたのは私だけであった。
島原には多くの湧水スポットがあって、至る所に池や用水路がある。そして何故か鯉【コイ】が元気に泳いでおり、島原市内は「鯉の泳ぐまち」のキャッチコピーで観光を盛り上げていた。
名 称 | 島原清流亭・湧水のオブジェの水車 |
所在地 | 長崎県島原市新町2丁目 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 清流亭(観光交流センター)|島原観光情報サイト |
黒川温泉「夢竜胆」の水車
黒川温泉は、私が大好きな温泉の一つである。そして黒川温泉街の入口近くに「夢竜胆」【ゆめりんどう】という人気の旅館がある。この木造の和風旅館には、立派な日本庭園がある。
その庭園のなかに、私は水車を見つけ、写真を撮らせてもらった。旅館のすぐそばを流れる田の原川の心地よいせせらぎと、庭でゆっくり回る水車が妙に調和しているように思えた。
名 称 | 黒川温泉・旅館「夢竜胆」 |
所在地 | 熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6430-1 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 黒川温泉 夢龍胆 / 別館 花泊まり |
高千穂峡の水車小屋
高千穂峡【たかちほきょう】の正式名称は、五箇瀬川峡谷【ごかせがわきょうこく】であるように、高千穂峡は宮崎県北部を流れる五ヶ瀬川の峡谷である。宮崎県高千穂町に位置するために、高千穂峡と称されることが一般的であるようだ。高千穂峡は、祖母傾国定公園の指定区域内にあり、国の名勝や天然記念物にも指定されている。
そんな高千穂峡で水車小屋を偶然に見つけることができた。今は使用されていないようだが、なかなか風情のある水車小屋ではないだろうか。取り壊さずにこのまま保存してもらいたいものだ。
名 称 | 高千穂峡 |
所在地 | 宮崎県西臼杵郡高千穂町大字三田井 |
Link | 高千穂峡(高千穂町) 【公式】宮崎市観光サイト |
あとがき
私は水車や水車小屋を見つけるとついシャッターを押してしまうが、最近は旅先で水車を撮影する機会がすっかり減っている。それは私が田園風景とは縁のない場所を訪れているということだろうか。それとも水車・水車小屋そのものが姿を消していっているためであろうか。前者であればよいのだが、現実は後者であるような気がしてならない。
加齢とともに健康で遠出ができる人生も残り少なくなって来た。今後はもう少し日本の原風景ともいうべき田園風景を積極的に観るために出かける旅を増やしたいと思っている。