はじめに
和歌山県立近代美術館は、1963年に和歌山城内に「和歌山県立美術館」として開館したが、1970年に和歌山県民文化会館の1階に移転し、「和歌山県立近代美術館」として再開館していた。そして、1994年に建築家・黒川紀章設計の現建物に新築移転したという歴史がある。
和歌山県立近代美術館は、約13,000点のコレクションを収蔵しており、特に近代・現代版画のコレクションは国内屈指の規模を誇るという。和歌山県にゆかりのある芸術家の作品を中心に、パブロ・ピカソやオディロン・ルドンなどの海外の重要作家の作品も展示されている。
和歌山県立近代美術館は、和歌山城公園内に位置する美術館であるため、和歌山城の天守閣を間近に望む美しい環境に位置し、公共建築百選にも選ばれている。周辺環境に恵まれた美術館と言えるだろう。
和歌山県立近代美術館
和歌山県立近代美術館の見どころと言えば、まず第一に豊富なコレクションである。
- 豊富なコレクション
- 約13,000点のコレクションを収蔵
- 特に近代・現代版画のコレクションは国内屈指の規模
- コレクションは和歌山県ゆかりの芸術家の作品が中心
- 海外の重要作家(パブロ・ピカソやオディロン・ルドンなど)の作品も展示
常設展示のほか、企画展やイベントも定期的に開催されており、常に新しい魅力を発見できる。展覧会やワークショップ、実習など、幅広い世代が親しめる企画が豊富であるという。
収蔵されているコレクションや展示物以外で、特筆すべき点はこの建築物の美しさである。
- 建築物の美しさ
- 有名な建築家の黒川紀章による設計
- 建物の正面には巨大な灯籠が建ち並び、特徴的な庇(ひさし)を数多く設けるなど、近代的な中にも日本の伝統を感じさせるデザインが魅力的
- 和歌山城の天守を間近に望む美しい環境に立地する
さらに、和歌山県立近代美術館を魅力的なものにしているのは、美術館の周辺環境である。
- 美術館の周辺環境
このように、和歌山県立近代美術館は美術作品の鑑賞だけでなく、建築物や周辺環境も楽しめるスポットである。
名 称 | 和歌山県立近代美術館 |
所在地 | 和歌山県和歌山市吹上1丁目4-14 |
開館時間 | 9:30~17:00(入場は16:30まで) |
休館日 | 月曜日(祝日の場合は翌平日) |
観覧料 | 常設展は一般350円、大学生240円 企画展や特別展は展示内容によって異なる 65歳以上のシニアは無料! |
駐車場 | あり(有料)隣接する和歌山県立博物館の地下 美術館・博物館の利用者は2時間まで無料 |
Link | 和歌山県立近代美術館 |
あとがき
南画【なんが】とは、中国の南宗画に由来し、日本で独自に発展した絵画様式のことを指す。特に江戸時代中期以降に知識人や武士の間で人気を博したとされ、文人同士の交流の中で生まれた作品が多いことから「文人画」とも呼ばれている。この時代に活躍した著名な画家としては、池大雅や与謝蕪村らがいる。
南画には、絵と詩や書が一体となった作品が多く見られる。詩の世界を絵画化し、それにふさわしい書体で表現することで、全体の調和が図られているのだという。
このように、南画は絵画だけでなく詩や書といった他の芸術と融合し、総合的な美を追求する点が魅力的である。つまり、絵の技術だけでなく、画家の内面や精神が重視されている。優れた絵画は優れた精神や人格によって生み出されるという考え方が根底にあるのが南画の真骨頂であるとされる。
南画は、自然の風景や隠者の生活を描くことが多く、観る者に静謐な美しさと心の安らぎを与える。たまにはそんな南画の作品を鑑賞して、その深い精神性と美しさを感じてみたいものである。
和歌山観光で立ち寄った和歌山県立近代美術館では、幸いにも南画の特別展が開催されており、私は迷うことなくこの南画展「仙境(SENKYO)のチケットを購入した。
そもそもどうして和歌山の地で、南画展が開催されているかと言うと、和歌山は山と水に恵まれた地であり、しばしば中国の古典に登場する仙境【せんきょう】(伝説的な場所で、仙人が住むとされる理想郷)に例えられ、江戸時代から文人画家たちの描く南画の主題となってきた。それは、近代においても、数多くの文人画家が和歌山をテーマにした作品を描き続けており、和歌山はいわば「南画の聖地」という位置づけになっているからだという。
この特別展では、江戸時代における和歌山に始まり、明治時代から戦前期(昭和時代前半)までの関西を中心とした南画の歩みが分かるような展示になっていた。つまり、江戸時代に活躍した和歌山出身の文人画家の紹介にはじまり、明治時代から戦前期における関西を中心とした南画の動向が分かるようになったいた。
紀州三大文人画家とされる祇園南海【ぎおんなんかい】、桑山玉洲【くわやまぎょくしゅう】、野呂介石【のろかいせき】らの代表作も紹介されていた。
関西を代表する作家たちの優れた作品の数々を鑑賞することによって南画の世界に生じたダイナミズムを少しは分かった気分に浸ることができた。そんな小難しいことを言わなくとも、南画から溢れるその深い精神性と美しさを素直に感じることができたのは事実である。