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酒と水の神を祀る京都の古社:松尾大社が紡ぐ水と命の神話

はじめに

松尾大社【まつのおたいしゃ/まつおたいしゃ】は、主祭神として下記の2柱の神を祀っている神社で、京都市西京区嵐山宮町に位置する。

  • 大山咋神【おおやまぐいのかみ】
    • 大年神【おおとしのかみ】の子
    • 大年神は須佐之男命の子であるから、須佐之男命の孫
    • 比叡山の神
    • 日吉大社(東本宮)の主祭神
  • 中津島姫命【なかつしまひめのみこと】
    • 別名、市杵島姫命【いちきしまひめのみこと】
    • 天照大御神と須佐之男命との「誓約」で生まれた宗像三女神のうちの一柱
    • 航海安全や交通安全の神
    • 宗像大社(辺津宮)の主祭神

大山咋神と中津島姫命が松尾大社で一緒に祀られている理由は、歴史的な背景と信仰の融合にあるとされる。

松尾大社は、元々は松尾山の山霊を祀る神社として始まり、5世紀頃に渡来系氏族の秦氏がこの地に住み着き、彼らの氏神として大山咋神を祀るようになったという。その後、701年に秦忌寸都理が勅命を受けて社殿を建て、磐座の神をこの地に遷し、筑紫の宗像大社から中部大神(中津島姫命)を迎えて合祀したことが始まりとされる。

中津島姫命が松尾大社で祀られている理由は、宗像三女神の中でも、特に航海安全や交通安全の神としての役割が強調されているためと考えられている。市杵島姫命の神格が松尾大社の信仰と合致するため、合祀されるようになったと考えられている。

目次
はじめに
松尾大社
あとがき

松尾大社

松尾大社【まつのおたいしゃ/まつおたいしゃ】は、大山咋神【おおやまぐいのかみ】と中津島姫命【なかつしまひめのみこと】を主祭神として祀る神社であり、松尾山を神体山する。

松尾大社は、元来は松尾山に残る磐座での祭祀に始まるとされている。701年に創建され、平安時代から都の守り神として崇敬されてきたという。

松尾大社は、「酒造りの神」としても信仰されており、全国の醸造家からの信仰が篤い神社で知られる。境内には多くの奉納酒樽が並び、お酒にまつわる資料館もある。

室町時代に造営されたという本殿は、全国でも類例の少ない「両流造」で、国の重要文化財に指定されている。

社殿や庭園など、歴史的な建造物や文化財が多く残されている。特に、昭和の名作庭家と称された重森三玲氏が手がけた松風苑という3つの庭園(上古の庭・曲水の庭・蓬莱の庭)があり、美しい日本庭園を楽しむことができる。開館時間は、毎日9:00~16:00である。

松尾大社では、が神の使いとして崇められている。これは、大山咋神が太古の時代に山城丹波の国を拓くために保津川を遡る際、急流では鯉に、緩やかな流れでは亀に乗って進まれたという伝説に由来している。亀は不老長寿の象徴としても大切にされている。

境内には「亀の井」という名水があり、この水を使ってお酒を仕込むと腐らないとされている。この「亀の井」の奥に位置するのがパワースポットの「霊亀の滝」がある。

境内には撫でると幸運を招くとされる「幸運の撫で亀」と「幸運の撫で鯉」の石像があるので、参拝の折には、是非、優しく撫でてみよう。

名 称松尾大社
所在地京都市西京区嵐山宮町3
TEL075-871-5016
駐車場あり(無料)
Link松尾大社

あとがき

名水「亀の井」の周辺に生えているクスノキの大木は、松尾大社の御神木と考えられているようだ。クスノキは、幹周りが約8m、高さが約40mにもなる長寿の樹木であるから神聖なものの象徴として大切にされて当然であろう。

実は、松尾大社には「相生の松」と呼ばれる御神木が存在する。この松は、雌雄の二本の松が根元で一つになっていることから「相生の松」と呼ばれ、夫婦和合や恋愛成就の象徴とされた。樹齢は約350年と推定されていた。過去形になっているのは、この御神木は、1956年と1957年にそれぞれ天寿を全うしてしまっているからである。しかしながら、この「相生の松」は、現在も覆屋【おおいや】の中で保存されているため、その姿を見ることができる。

覆屋とは、貴重な文化財や史跡を風雨から保護するために、その外側を覆うように建てられた建物のことである。覆屋のおかげで、私たち参拝者は、かつての姿を垣間見ることができるのは有難い。「相生の松」は、現在でも御神木としての役割も果たしており、多くの参拝者がそのご利益を求めて訪れる。

しかしながら、現存していないのはやはり残念というしかない。


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