はじめに
尾瀬【おぜ】国立公園は、福島・栃木・群馬・新潟の4県にまたがる国立公園である。尾瀬地域に会津駒ヶ岳、田代山、帝釈山などの周辺地域を編入する形で指定された自然公園である。
なかでも燧ヶ岳と至仏山で東西を挟まれた尾瀬ヶ原は、尾瀬国立公園の中核を担っている。私も尾瀬ヶ原には何度か行った経験がある。そして燧ヶ岳や至仏山には学生時代に登った経験もある。
本稿では、尾瀬ヶ原の散策を中心に燧ヶ岳や至仏山への登山について記載したいと思う。
会津駒ヶ岳
会津駒ヶ岳【あいづこまがだけ】(標高2,133m)は、会津駒または「駒ヶ岳」と呼ばれ、親しまれている山である。古くから信仰の対象の山であり、周辺の地域には駒嶽神社が鎮座する。
頂上とその稜線は草原のようになっていて、山頂から北北西の中門岳方面への稜線には池塘が多く、高山植物も多い。
名 称 | 会津駒ヶ岳 |
所在地 | 福島県南会津郡檜枝岐村 |
Link | 会津駒ヶ岳|ヤマレコ |
田代山湿原
田代山湿原【たしろやましつげん】は、帝釈山脈にある田代山(標高1971m)のなだらかな頂上部に広がる湿原である。
湿原は遷移が進んでおり、泥炭の堆積のため、池塘は「弘法沼」だけで、ほとんどが草原になっている。湿原には木道が整備されている。
名 称 | 田代山湿原 |
所在地 | 福島県南会津郡南会津町 |
Link | 田代山・帝釈山コース|ふくしま尾瀬 |
帝釈山
帝釈山【たいしゃくさん】(標高2060m)は、帝釈山脈の中央に位置する山である。
山頂からは、東に那須岳、南に女峰山【にょほうさん】、男体山【なんたいさん】、日光白根山【にっこうしらねさん】、西に至仏山【しぶつさん】、燧ヶ岳【ひうちがだけ】、北西に会津駒ヶ岳を見渡すことができる。
名 称 | 帝釈山 |
所在地 | 福島県南会津郡南会津町、檜枝岐村、 栃木県日光市の境界 |
Link | 田代山・帝釈山コース|ふくしま尾瀬 |
三条の滝
三条の滝【さんじょうのたき】とは、尾瀬を源流とし、尾瀬ヶ原から流れ落ちる只見川【ただみがわ】の上流にある滝である。
落差100m、幅30mの直瀑であり、規模としては日本最大級であるとされる。滝壷までは降りる事はできないが、展望台が設置されているので、滝の全容を見る事ができるようだ。
名 称 | 三条の滝 |
所在地 | 福島県南会津郡檜枝岐村燧ケ岳 三条ノ滝 |
Link | 三条の滝|【公式】にいがた観光ナビ |
尾瀬沼
尾瀬沼【おぜぬま】は、尾瀬の標高1660mの場所にある湖沼である。尾瀬ヶ原よりも240m程も標高が高い所に位置する。
尾瀬沼は、燧ヶ岳の噴火で沼尻川が堰き止められてできた堰止湖と考えられている。
名 称 | 尾瀬沼 |
所在地 | 群馬県利根郡片品村 福島県南会津郡檜枝岐村 |
Link | 尾瀬沼往復コース|ふくしま尾瀬 |
尾瀬ヶ原
尾瀬ヶ原【おぜがはら】は、福島・新潟・群馬の3県にまたがる高地にある盆地状の日本最大級の山地湿原である。湿原の四方は至仏山、燧ヶ岳、景鶴山、中原山などの2000m級の山々で囲まれている。
尾瀬ヶ原は、燧ヶ岳の噴火で沼尻川が堰き止められた後に、土砂が周囲から流入して形成された湿原であると考えられている。
尾瀬ヶ原ではミズバショウ、ミズゴケやカタシャジクモ(藻類)など湿原特有の貴重な植物群落が見られる。また、世界的にも珍しい、ナガバノモウセンゴケ(食虫植物)の大群落もある。
名 称 | 尾瀬ヶ原 |
所在地 | 福島県南会津郡檜枝岐村 新潟県魚沼市 群馬県利根郡片品村 |
Link | 尾瀬ヶ原 -徹底解説- ハイキングガイド【公式】 尾瀬ハイキング基本情報│クラブツーリズム 尾瀬の大自然 – 尾瀬檜枝岐温泉観光協会 |
至仏山
至仏山【しぶつさん】(標高2,228m)は、尾瀬ヶ原の南西に位置する山である。尾瀬ヶ原一帯を眼下に見下ろすことができる。
名 称 | 至仏山 |
所在地 | 群馬県みなかみ町 群馬県片品村 |
Link | 至仏山|YAMA HACK[ヤマハック] |
燧ヶ岳
燧ヶ岳【ひうちがたけ】(標高2,356m)は、尾瀬ヶ原の北東に位置する火山である。森林に覆われているため、頂上に近づくまで眺望はほとんどない。
南東の山麓には尾瀬沼がある。約8,000年前頃に山体崩壊を起こして尾瀬沼ができたと考えられている。
名 称 | 燧ヶ岳 |
所在地 | 南会津郡檜枝岐村 |
Link | 燧ヶ岳|尾瀬を代表する雄峰-ヤマレコ |
大江湿原
大江湿原【おおえしつげん】は、尾瀬沼の北東に位置する湿原で、尾瀬では尾瀬ヶ原に次ぐ大きさを誇る。尾瀬沼が少しずつ湿原化したものと考えられており、湿原化していく様子が窺える。
名 称 | 大江湿原 |
Link | 尾瀬を歩く,沼山峠~大江湿原~尾瀬沼 |
アヤメ平
アヤメ平【アヤメだいら】は、尾瀬ヶ原の南側に位置し、鳩待峠と富士見峠を結ぶ登山道の北側のなだらかな斜面にある湿地である。付近の最高地点(標高1969m)に近く、標高が高いために眺望が良く、燧ケ岳や至仏山などの山々がよく見渡せるという。
名 称 | アヤメ平 |
所在地 | 群馬県利根郡片品村 |
Link | 尾瀬を歩く,アヤメ平 アヤメ平の回復作業|尾瀬とTEPCO|東京電力 アヤメ平 | 尾瀬小屋 |
あとがき
尾瀬と言えばミズバショウ(水芭蕉)である。自然の宝庫である尾瀬、特に尾瀬ヶ原は日本を代表する高地の湿原帯であり、ミズバショウやミズゴケなどの湿原特有の貴重な植物群落が見られる場所となっている。
「夏がくれば 思い出す はるかな尾瀬 遠い空」の歌詞で始まる『夏の思い出』という歌は、小学校か中学校のどちらかはすっかり忘れてしまったが、音楽の教科書に掲載されていたのは覚えている。この歌詞のなかにも「水芭蕉」が登場するので、尾瀬=ミズバショウというイメージがついてしまったのであろう。
初めて尾瀬ヶ原に行った際には、湿原を埋め尽くすようにミズバショウが群生している風景を想像していたが、実際はそうではなかったことに少し落胆した想い出が私にはある。
ミズバショウは湿原のどこにでもあるわけではなく、湿原のなかで水がしっかりと溜まっている場所に生育している。その理由はミズバショウの増え方にある。つまり、種を水の流れで運び、その流れが弱まった場所で芽を出すという特徴があるからである。
もしミズバショウが離れた湿原で見られたのであれば、それは雨で増水した際に種が流されて発芽したものであろう。いずれにせよミズバショウは水辺でないと見ることができない。
そして、ミズバショウの見頃は5月下旬から6月上旬頃のごく限られた季節である。先述の『夏の思い出』の歌詞のとおりに夏(一般的には7~8月を指す)に尾瀬に行ってもミズバショウの開花には間に合わない。全くもって、遅すぎるということである(経験者談)。
ミズバショウの白い花弁に見えるものは、実は「がく」と呼ばれる葉が変形したもので、中心部にある棒状のものに付く黄色の一つ一つが本来の花弁ある。白い「がく」は、花弁を守り、虫を誘うために花弁を目立たせる役割をしていると考えられる。
花期が過ぎると葉が大きく生長して、なかには1m以上の大物に生長するので、最初に見た時には一体何物かと驚いてしまう。
この大きな葉がバナナ(芭蕉)の葉に似ていることが、名前の由来とされる。水辺に生息する芭蕉で「水芭蕉(ミズバショウ)」とは確かに理に適った名前の付け方であると思うが、「がく」の形状から名付けられたらもっとチャーミングな名前になったのではないかとつい思ってしまう。それほどに開花期のミズバショウは可憐であり、私の大好きな植物の一つである。