はじめに
岐阜県の中津川市と恵那市には、裏木曽県立自然公園、胞山【えなさん】県立自然公園および恵那峡県立自然公園といった岐阜県が設定した自然公園がある。
裏木曽県立自然公園は、古くからよく保存されてきた地域で、木曽ヒノキを中心とした優良木が多い。これらの森林美を持つ山々に加え、清流の渓谷には幾つかの滝が懸かり、マイナスイオンが一杯にあふれ出す素晴らしい景観となっている。
胞山県立自然公園は、富士見台、恵那山、根の上という、いわゆる恵那三山を中心とした自然公園である。亜高山性樹林や灌木、チシマザサに覆われた山岳景観に加え、高原と湖が一体となった自然景観が見られることで知られている。
恵那峡県立自然公園は、木曽川に迫る自然の断崖絶壁、屹立する奇岩、峡湖周辺の山林とともに、コバルトブルーの湖水がかもし出す絶景を観ることができる自然公園である。私のお気に入りの自然公園と言ってもよい。
小秀出山
小秀山【こひでやま】(標高1,982m)は、岐阜県と長野県にまたがる阿寺山地【あてらさんち】の最高峰の山である。小秀山自体は、中津川市(岐阜県)と王滝村(長野県)にまたがる。山域は岐阜県の「裏木曽県立自然公園」の指定区域となっている。
小秀山の山頂近くには「烏帽子岩」や「鎧岩」などと呼ばれる巨石が点在し、山頂から南西へ約1.5km先には「兜岩」と呼ばれる巨石のピークもある。
小秀山の山頂はなだらかな高原状となっていて、展望がひらけている。山頂からは北側に木曽御嶽山の大きな山容を望むことができる。また、東側には中央アルプスの山々、そして中央アルプス越しに南アルプスを望むことができる。さらには西側に白山も見える。
名 称 | 小秀山【こひでやま】 |
所在地 | 岐阜県中津川市、長野県木曽郡王滝村 |
Link | 県立自然公園 – 岐阜県公式HP(環境生活政策課) 小秀山に登山! – Take me to the … |
付知峡
付知峡【つけちきょう】は、岐阜県中津川市付知町にある峡谷である。木曽川の支流である付知川【つけちがわ】の源流域に位置し、裏木曽県立自然公園の指定区域に含まれる。
付知川は、「青川」と呼ばれるほど透明度の高い清流で知られ、木曽御嶽山の南麓に源流がある一級河川である。
付知峡一帯は手付かずの原生林が残されており、紅葉の名所としても知られるが、春にはシャクナゲ・ヤマザクラ・ツツジ・ヤマブキなどの花が咲き、花の名所としても名高いという。
名 称 | 付知峡 |
所在地 | 岐阜県中津川市付知町1区下浦地内 |
Link | 付知峡|岐阜県観光公式サイト 「岐阜の旅ガイド」 |
不動渓谷
付知峡【つけちきょう】における観光スポットは、奇岩が重なりあって大渓谷をつくる不動渓谷である。そこには不動滝、観音滝仙樽の滝などと名付けられた滝があり、滝好きにはたまらないスポットとなっている。
周辺は不動公園として整備されており、滝への遊歩道も整備されている。不動公園奥にはBeGreen日和立というキャンプ場があり、夏季は多くの観光客で賑わうという。
名 称 | 不動渓谷滝群 |
所在地 | 岐阜県中津川市付知町下浦(不動公園内) |
Link | 不動渓谷滝群 – 岐阜県公式ホームページ |
渡合温泉
渡合温泉【どあいおんせん】は、岐阜県中津川市加子母の付知峡に位置する一軒宿の温泉である。冬季(12月~翌年3月)は積雪のため、季節営業(4月~11月)している。電気が来ていないので、灯りは日中は自家発電で供給し、夜間(午後10時以降)はランプ(ランタン)を使用している。
源泉の発見は明治時代と言われている。泉質は、アルカリ炭酸泉である。源泉の温度は10.5℃と低い冷泉であるため、加温して利用される。浴槽は下から沸かす五右衛門風呂で、燃料には高野槙を使用しているという。入浴時間は制限されているようだ(午前7時から午後8半まで)。
名 称 | 渡合温泉 |
所在地 | 岐阜県中津川市加子母渡合 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 【公式】ランプの宿 渡合温泉旅館 – 付知峡の秘湯 |
夕森渓谷
夕森渓谷【ゆうもりけいこく】は、標高700mの岐阜県中津川市川上【かわうえ】に位置し、木曽川の支流である川上川【かわうえがわ】にある渓谷である。裏木曽県立自然公園の指定区域に含まれる。
遊歩道が整備されており、「竜神の滝」「忘鱗の滝」「銅穴の滝」「アゼ滝」「一つ滝」の5つの滝を見ることができる。
名 称 | 夕森渓谷 |
所在地 | 岐阜県中津川市川上 |
Link | 夕森渓谷(夕森公園)|岐阜県観光公式サイト 夕森渓谷 – 岐阜県公式ホームページ(恵那県事務所) |
夕森公園
夕森公園【ゆうもりこうえん】は、夕森渓谷に整備された公園である。遊歩道が整備されており、竜神の滝・忘鱗の滝・銅穴の滝・アゼ滝・一つ滝の滝巡りのハイキングが楽しめる。
遊歩道に沿って約1万5千本のモミジが植栽されており、紅葉の名所にもなっている。11月初旬には紅葉狩りイベントの「夕森渓谷のもみじ」が開催されている。
名 称 | 夕森公園 |
所在地 | 岐阜県中津川市川上1057-4 |
Link | 夕森渓谷(夕森公園)|岐阜県観光公式サイト |
根の上高原
根の上高原【ねのうえこうげん】は、岐阜県中津川市と恵那市にまたがる高原(標高約900m)であり、胞山県立自然公園の指定区域に含まれる。根の上高原は紅葉の名所として知られている。
高原には、保古山(標高930m)と、根の上湖【ねのうえこ】・保古の湖【ほこのこ】と呼ばれる2つの湖があり、「保古の湖」湖畔が景勝地となっている。これらの湖は灌漑用の人造湖であり、2つの湖は導水路で繋がっている。
名 称 | 根の上高原 |
所在地 | 岐阜県中津川市・恵那市 |
Link | 根の上高原公式ホームページ – 根の上高原 |
保古の湖
保古の湖【ほこのこ】は、根の上高原(標高約900m)にある人造湖である。湖の周囲約5kmで、最大水深は16mとされる。
春から秋にかけては、釣りやカヌー、キャンプや湖畔の散策が楽しめる。一方、冬季(11月1日~2月28日) は湖面が凍結するため、その氷を割ってワカサギ釣り(有料)ができるという。
湖畔には国民宿舎恵那山荘などの宿泊施設があるほか、根の上高原保古の湖キャンプ場のバンガローやロッジなどがある。
名 称 | 保古の湖 |
所在地 | 岐阜県中津川市茄子川 |
Link | 保古の湖【岐阜県恵那市観光サイト】恵那市観光協会 |
恵那山
恵那山【えなさん】(標高2,191m)は、中央アルプス(木曽山脈)の最南端に位置する山である。胞山県立自然公園の指定区域にも含まれている。
残念ながら山頂の展望台は、周囲にトウヒやコメツガなどの背が高い針葉樹林があるため、展望はあまり良くない。
しかし、登山道沿い、特に恵那山頂避難小屋の裏の岩場からは、北アルプス、木曽御嶽山、中央アルプス、南アルプス、富士山などの展望が得られるという。
北東にある富士見台高原の真下を、中央自動車道の恵那山トンネルが通っている。
名 称 | 恵那山 |
所在地 | 長野県下伊那郡阿智村・岐阜県中津川市 |
Link | 恵那山 | 日本百名山.net |
富士見台高原
富士見台高原(標高1,739m)は、恵那山の北東に位置する、中央アルプス(木曽山脈)上のゆるやかな起伏の高原である。胞山県立自然公園の指定区域にも含まれている。
高原の中腹まで車で行けるので、体力不足のシニアには助かる。屈指の紅葉の名所(例年の見頃は10月上旬~下旬)としても知られている。
高原の広さは約1,000haもあり、高原の一面をクマザサ(熊笹)が覆っていて樹木がほとんどない。そのため恵那山、北アルプス、南アルプスや中央アルプスの山々を見渡すことができる。
高原の名称が「富士見台」となっているが、残念ながら富士山は見えないようだ。
名 称 | 富士見台高原 |
所在地 | 岐阜県中津川市神坂 |
Link | 富士見台高原|岐阜県観光公式サイト 萬岳荘公式ホームページ|恵那山|富士見台高原 |
神坂峠
神坂峠【みさかとうげ】(標高1,569m)は、中央アルプス(木曾山脈)南部の主稜線上の富士見台高原と恵那山の鞍部に位置する峠である。胞山県立自然公園の指定区域に含まれている。
岐阜県側からは林道大谷霧ヶ原線で峠までの車両乗入れは可能である。一方、長野県側の峰越林道は崩落の危険があり、一般車両の通行が禁止されている。
神坂峠は、かつて東山道が通る交通の要所であり、難所であった峠である。その険しい道程から東山道第一の難所として知られ、荒ぶる神の坐す峠として「神の御坂」と呼ばれたという。
名 称 | 神坂峠 |
所在地 | 岐阜県中津川市、長野県下伊那郡阿智村 |
Link | 神坂峠遺跡 文化遺産オンライン (nii.ac.jp) 神坂峠(長野県・岐阜県)<峠と旅> |
恵那峡
恵那峡【えなきょう】は、木曽川中流域の渓谷で、大井ダムの上流域に位置する約10kmの区間をいう。
恵那峡一帯は奇岩が多いことで知られており、屏風岩、軍艦岩、獅子岩、鏡岩などと名付けられた奇岩が存在する。それらの見物を目的とした観光遊覧船が周航している。
恵那峡は、自然の造形物(奇岩や原生林)と人工物(ダム湖)の融合によって誕生した素晴らしい景勝地となっている。
恵那峡は、中央アルプス国定公園には指定されていないが、恵那峡県立自然公園の中心的存在である。
名 称 | 恵那峡【えなきょう】 |
所在地 | 岐阜県恵那市大井町恵那峡 |
Link | 恵那峡|岐阜県観光公式サイト 「岐阜の旅ガイド」 |
千畳敷岩
恵那峡には「千畳敷岩」と呼ばれる頂部が広く平な一枚岩がある。本当に千畳もの広さがあるわけではないが、かなり広いのは確かである。千畳敷岩は少し高台にあるので、そこから眼下に恵那峡を眺めることができる。
国指定の天然記念物である傘岩【かさいし】は、千畳敷岩の近くに位置する。
名 称 | 千畳敷岩 |
所在地 | 岐阜県恵那市大井町 恵那峡 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 千畳敷岩(恵那市) |
傘岩
傘岩【かさいし】は、恵那峡近辺にある奇岩で、国指定の天然記念物である。その名前のとおりキノコの傘の形をしており、上側がキノコの傘で、下側が茎(柄)のようにくびれている。
傘岩自体は黒雲母花崗岩からなり、雨水による浸食や風化などによって現在のような特異な形状になったと考えられている。
傘岩の高さは約4.5mで、最も広い傘の部分の直径が約3.2m(周囲約10m)もあるのに対し、最も狭い茎(柄)に相当する部分はわずか直径約70cm(周囲約2.2m)しかないのは驚きだ。まさしく奇岩と言ってよい。
名 称 | 傘岩 |
所在地 | 岐阜県恵那市大井町 恵那峡 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 国指定天然記念物「傘岩」【岐阜県恵那市観光サイト】 |
あとがき
自然公園と言えば国立公園や国定公園をすぐに思い浮かべるが、各都道府県が指定する県立自然公園にも素晴らしいものがある。
本稿で記載した岐阜県が指定する裏木曽県立自然公園、胞山県立自然公園および恵那峡県立自然公園は、岐阜県の中津川市と恵那市に位置する自然公園であり、近いうちに訪ねてみたいと思っている旅の候補地である。この目で確認でき次第、本稿をupdateしたいと思う。