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【神話に登場する神の社】春日大社

はじめに

春日大社【かすがたいしゃ】の主祭神は、下記の4柱の神であり、総称して春日神【かすがのかみ】と呼ばれる。

  • 武甕槌命【たけみかづちのみこと】 
  • 経津主命【ふつぬしのみこと】
  • 天児屋根命【あめのこやねのみこと】
  • 天美津玉照比売【あめのみつたまてるひめ】

武甕槌命【たけみかづちのみこと】は、日本神話における最強の武神の一柱として描かれている。多くの神話に登場するが、その中でも特に有名なのが「国譲り」の物語である。

武甕槌命は、天照大御神によって葦原中国【あしはらのなかつくに】を平定するために経津主命と共に出雲国へ派遣された。そのときに武甕槌命は剣を逆さに立て、その上にあぐらをかいて座り、大国主大神(出雲大社の主祭神)に国を譲るように迫ったという。その際に使用された剣は、石上神社(奈良県)で御神体として祀られている布都御魂剣【ふつのみたまのつるぎ】である。この霊剣は、後に神武天皇に授けられ、彼の東征を助けることにもなる。

大国主大神は、最初は抵抗したが、最終的には武甕槌命の力に屈し、国を譲ることを決意したという。このように武甕槌命は、葦原中国平定(国譲り)の際に登場して、活躍する神として描かれている。

武甕槌命は、雷神、剣神、武神として信仰され、時に鹿島神宮(茨城県)の主祭神として、多くの戦国武将をはじめ、多くの人々に崇拝されてきたという歴史がある。鹿島神宮にも布都御魂剣と称する巨大な直刀が伝わっている。但し、こちらの剣は奈良時代末期から平安時代初期に制作されたものであるらしい。


経津主命【ふつぬしのみこと】も日本神話では強力な剣神・武神として描かれ、武甕槌命と共に「国譲り」神話で重要な役割を果たしている。出雲国での彼らの行為は、神々の力と権威を示す象徴的なものである。

経津主命は、剣の神格を持つ神として知られており、彼の名前の「フツ」は、刀剣で物が切られる様子を表しているとされる。つまり、刀剣の威力を神格化した神とされている。香取神宮(千葉県)の主祭神であり、香取大明神とも呼ばれる。

経津主命と武甕槌命は、共に「国譲り」神話で重要な役割を果たした。つまり協力して、国を平定し、葦原中国を天照大御神の支配下に置くことに成功した。このため、この二神はしばしば対で扱われることが多く、相互に密接な関係を持っている。

経津主命は千葉県の香取神宮(千葉県)で、武甕槌命は茨城県の鹿島神宮(茨城県)でそれぞれ祀られている。これらの神社は、利根川を挟んで相対するように位置しており、両神の関係をまるで象徴しているかのようである。


天児屋根命【あめのこやねのみこと】は、中臣氏および藤原氏の祖神(氏神)として知られている。特に祝詞【のりと】の神として崇拝され、神事や祭祀において重要な役割を果たした。

天照大御神が天岩戸に隠れた際には、天児屋根命は、岩戸の前で祝詞を唱え、天照大御神を誘い出す儀式を行ったとされる。

また、天児屋根命は、天孫降臨の際にも、瓊瓊杵尊【ににぎのみこと】に随伴して葦原中国に降り立ち、この地で祭祀を司り、中臣氏の祖先(氏神)になったとの伝承がある。

天児屋根命は、言霊の神、祝詞の神として信仰されており、特に国家安泰や学業成就、出世開運のご利益があるとされている。天児屋根命を祀る主な神社には、春日大社(奈良市)の他には枚岡神社(大阪府東大阪市)などが知られている。


天美津玉照比売命は、天児屋根命の妻である。夫神である天児屋根命をよく支える内助の功が多く伝えられており、良妻賢母の象徴とされている。平和や愛の神として信仰されている。

ご利益としては、子孫繁栄、家庭幸福、良妻賢母などがあり、家族の安寧を願う人々に崇拝されているという。

天美津玉照比売命を祀る主な神社には、春日大社(奈良市)の他には枚岡神社(大阪府東大阪市)などが知られている。

目次
はじめに
春日大社
浅茅ヶ原園地
鷺池・浮見堂
あとがき

春日大社

春日大社【かすがたいしゃ】は、奈良県奈良市春日野町にある神社で、全国に約1,000社ある春日神社の総本社である。

春日神社の主祭神は次の4柱の神であり、各神殿で祀られている。この神々を総称して春日神【かすがのかみ】と呼ぶ。

  • 武甕槌命 (第一殿)
  • 経津主命(第二殿)
  • 天児屋根命(第三殿)
  • 天美津玉照比売(第四殿)

春日大社は、奈良時代の神護景雲2年(768年)に称徳天皇の勅命により、平城京の守護と国民の繁栄を祈願するために創建されたという。

当時の左大臣であった藤原永手が、神山である御蓋山【みかさやま】の麓に4柱の神々を祀る神殿を造営したのが始まりらしい。中臣氏や藤原氏の氏神(天児屋根命)が祀られた神社でもあり、藤原氏の隆盛とともに春日大社も大いに繁栄し、平安時代初期には官祭が行われるほどになったという。

春日大社は、鹿を神使【しんし】とし、境内には多くの鹿がいる。これは、主祭神の武甕槌命【タケミカヅチノミコト】が白鹿に乗ってきたという伝承に由来している。春日大社は、鹿が自由に歩き回る神聖な空間で、奈良公園全体で約1,380頭の鹿が生息していると言われている。

春日大社の西側に位置する御蓋山(標高283m)は、古くから神聖な山として崇められており、春日大社の神体山とされている。山頂には本宮神社浮雲宮)があり、武甕槌命が祀られている。

御蓋山の一部の原始林は、「春日山原始林」として、その豊かな自然が保護されている。この原始林は、平安時代から狩猟や伐採が禁止されており、現在もそのままの姿で残されている。このため、御蓋山周辺は貴重な生態系が維持されている。

春日大社は、ユネスコの世界遺産「古都奈良の文化財」の構成資産の一つとして登録されている。

名 称春日大社
所在地奈良県奈良市春日野町160
Link春日大社 (kasugataisha.or.jp)

浅茅ヶ原園地

浅茅ヶ原園地【あさじがはらえんち】は、春日大社への参道の南側に位置する丘陵地一帯を指す。変化に富んだ地形で、円窓亭(重要文化財)や片岡梅林があるほかに、 鷺池【さぎいけ】の浮見堂【うきみどう】が人気の観光スポットとなっている。

鷺池・浮見堂

浮見堂は、鷺池に浮かぶ六角形のお堂である。檜皮葺きの浮見堂が鷺池の水面に映る姿は恰好の撮影スポットとなっている。

名 称浅茅ヶ原園地鷺池・浮見堂
所在地奈良県奈良市高畑町
Link奈良公園について/奈良県公式HP

あとがき

春日大社と鹿島神宮とは深い関係にあるという。その理由は、元々は鹿島神宮の主祭神であった武甕槌命【たけみかづちのみこと】を、奈良時代に平城京が造営される際、藤原氏が氏神として武甕槌命を鹿島神宮から迎え入れ、春日大社を創建したことにより始まった関係である。このため、春日大社の神鹿は、武甕槌命が白鹿に乗って奈良にやって来たという伝承に基づいている。

また、積田神社【せきたじんじゃ】(三重県名張市)は、武甕槌命鹿島神宮から春日大社へと遷幸する途中に立ち寄った宮とされている。そのため積田神社は、「南都春日大社奥宮」と呼ばれるようになり、「神柿」と呼ばれる伝説も残されている。

春日大社と積田神社の関係は、歴史的な遷幸の過程で形成されたものであり、両社ともに武甕槌命を祀る神社として深い縁があるということである。

ところで、春日大社の直会殿【なおらいでん】に隣接するような場所には、「社頭の大杉」と呼ばれる御神木があるらしい。私は気が付かなかったが、この御神木は、樹齢約800~1000年と推定されている杉の巨樹で、幹周り8.7m、高さ25mもあるという。次に春日大社を参拝する際には、是非、この御神木も忘れずに見てみたいと思う。


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