カテゴリー
ウェルネスツーリズム 神社仏閣

“京の伊勢”と呼ばれる社:日向大神宮が紡ぐ天照大神の神話

はじめに

日向大神宮【ひむかいだいじんぐう】は、「京の伊勢」とも称される神社で、京都市山科区に位置する。内宮(上ノ本宮)と外宮(下ノ本宮)に分かれ、異なる主祭神が祀られている。

内宮上ノ本宮)では、主祭神として次の4柱の神々(女神)が祀られている。

  • 天照大御神【あまてらすおおみかみ】
    • 日本神話における太陽神であり、最高神
    • 神話「天岩戸」で有名な神
    • 伊勢神宮(内宮)の主祭神
  • 多紀理毘賣命【たきりびめのみこと】
    • 宗像三女神の一柱
    • 海の神、航海安全や漁業の守護神
    • 宗像大社(沖津宮)の主祭神
  • 市寸島比賣命【いちきしまひめのみこと】
    • 宗像三女神の一柱
    • 芸術や学問の神
    • 弁財天と同一視されることもある
    • 宗像大社(辺津宮)の主祭神
  • 多岐都比賣命【たぎつひめのみこと】
    • 宗像三女神の一柱
    • 水の神
    • 川や滝の流れを司る神であり、清浄な水を守る
    • 宗像大社(中津宮)の主祭神

外宮下ノ本宮)では、主祭神として次の2柱の神々(男神)が祀られている。

  • 天津彦火瓊瓊杵尊【あまつひこほのににぎのみこと】
    • 天照大御神の孫
    • 神話「天孫降臨」で高千穂峰に降臨した神
    • 三種の神器と共に天皇の系譜をもたらした神
    • 高千穂神社の主祭神
  • 天之御中主神【あめのみなかぬしのかみ】
    • 神話「天地開闢」で最初に現れた神
    • 天祖神社の主祭神
目次
はじめに
日向大神宮
あとがき

日向大神宮

日向大神宮【ひむかいだいじんぐう】は、京都市山科区にある神社で、「京の伊勢」とも称される。

日向大神宮は、第23代顕宗天皇の治世(485~487年頃)に、筑紫の日向国(現在の宮崎県)にある高千穂峰の神蹟を勧請して(神霊を移して)創建されたと伝えられている。高千穂峰は、天照大御神の孫の瓊瓊杵尊が降臨した霊峰と伝わる場所である。

その後、天智天皇が神田を寄進し、神域の山を日御山【ひのみやま】と名付けたと伝わっている。

応仁の乱で社殿が焼失し、一時祭祀が途絶えたが、江戸時代初期に篤志家・松坂村の松井藤左衛門によって旧社地に再建されたという。後陽成天皇により「内宮」と「外宮」の御宸筆の勅額を賜り、徳川家康によって社領が戻され、新たに神領が加増されたという歴史がある。

明治時代の近代社格制度で村社となり、太平洋戦争後は、村社を始めとする京都市内の一部の社とともに神社本庁ではなく神社本教に包括された。現在、日向大神宮は「交通祈願の神社」としても有名である。

日向大神宮には、内宮上ノ本宮)と外宮下ノ本宮)があり、伊勢神宮と同じように外宮・内宮の順で参拝できる。

内宮は、天照大御神を中心に女性の神々が祀られており、地面と水平にカットされた千木【ちぎ】と偶数の鰹木【かつおぎ】が特徴の神殿になっている。

外宮には、男性の神々が祀られており、地面と垂直にカットされた千木と奇数の鰹木が特徴の神殿になっている。

境内には「天の岩戸」と呼ばれる洞窟もあり、厄除けや開運のパワースポットとして知られている。この洞窟をくぐり抜けることで、厄が払われ運気が上昇すると言われている。神話の世界を感じられるスポットと言えるかも知れない。

また、境内には、伊勢神宮を遥拝できる「伊勢神宮遥拝所」もあり、京都にいながら伊勢参りと同じご利益を得ることができるとされている。

名 称日向大神宮外宮
所在地京都市山科区
日ノ岡一切経谷町29
TEL075-761-6639
駐車場あり(無料)
Link日向大神宮

あとがき

日向大神宮の境内には、ヒノキやスギの老樹が繁茂しているという。また、榊(サカキ)が御神木になっている可能性も高い。残念ながら、日向大神宮の御神木に関する具体的な情報(樹木の種類、樹齢、樹高、幹周り)は一切、不明である。ならば、実際に参拝して自分の目で確認するしかあるまい。


【関連記事】
日本神話の扉をひらく古社:天祖神社が語るはじまりの物語
日本神話のはじまりを辿る旅:大元神社で感じる神々の気配
天津神が住む高天原への入り口へ:神話が息づく高天彦神社で出会う古代の記憶
神話「国産み」の舞台へ:自凝神社で辿る日本列島の始まり
イザナギとイザナミが降り立った聖地:自凝島神社でたどる日本列島のはじまり
国産み・神産みの二神を祀る伊弉諾神宮で感じる神話の源流
宗像三女神が守る航海の聖地:宗像大社に息づく神話の記憶
蘇りの聖地へ:神話が息づく熊野本宮大社で知る再生の物語
神々が降り立つ祈りの地:熊野速玉大社で辿る神話の始まり
那智瀧に導かれて:熊野那智大社で出会う自然崇拝の世界
苔むす石灯籠と異界の参道に神の気配:上色見熊野座神社で出会う神話の世界
雷神と笛吹の伝説が響く社:葛木坐火雷神社(笛吹神社)で出会う神話の世界
賀茂氏の神話にふれられる社:高鴨神社でたどる祖神の記憶
賀茂の氏神に出会う京都の杜:上賀茂・下鴨神社でたどる玉依姫命の神話と伝説
賀茂一族の源流を訪ねて:鴨都波神社でたどる神話の記憶
天岩戸神話の舞台:天岩戸神社で出会う神話の核心と伝承
天照大御神を祀る神宮へ:伊勢神宮が導く神話と信仰の世界
神話の剣が祀られる聖地へ:熱田神宮で辿る草薙神剣の伝説
光と闇を司る神々の社:日御碕神社で辿る神話と伝説の風景
八岐大蛇退治のその後へ:須我神社で始まる神話の新たな章
櫛名田比売命と須佐之男命の恋の舞台:八重垣神社の由緒
須佐之男命の御魂が鎮まる社:須佐神社でたどる神話の終章
厄除けと再生の神を祀る社:八坂神社の神話と信仰の歴史
素戔嗚尊を祀るもうひとつの聖地:出雲大社・素鵞社の神秘
神話「因幡の白兎」が導くご縁の社:白兎神社の神秘と伝承
神々が集う神話の聖地へ:出雲大社で辿る“縁”と神話の核心
神話と美の力が宿る社:玉作湯神社で出会う“願い石”の神秘
本殿なき神の社へ:大神神社が語る古代神話と祈りのかたち
海の神に出会う神話の社:美保神社でたどる恵比寿様の物語
布都御魂剣に宿る神威:石上神宮で辿る武の神の神話と伝説
白鹿に導かれし四柱の神々の社:春日大社が語る神話と信仰
天孫降臨の聖地へ:高千穂神社がつむぐ神話と信仰の物語
海に浮かぶ神域:青島神社がつむぐ山幸彦と豊玉姫の物語
神話の海幸彦を祀る山の社:潮嶽神社が語る兄弟神話の真実
神話の誕生譚が息づく洞窟の社:鵜戸神宮でたどる命の物語
神代と現世をつなぐ社:宝満宮竈門神社で紡ぐ玉依姫の物語
八幡信仰のはじまりへ:宇佐神宮が紡ぐ神話と歴史の交差点
武神が鎮まる東国の聖地:鹿島神宮で辿る武甕槌大神の神話
国譲り神話で活躍の神:香取神宮で出会う経津主大神の物語
神話の敗者が祀られる社:諏訪大社で辿る建御名方神の物語
神道祭祀のはじまりへ:枚岡神社がつむぐ天児屋根命の物語
天岩戸神話の舞台裏へ:天太玉命神社が語る神事と創造の力
神戸のまちに息づく神話:事代主神を祀る長田神社の魅力
山と海をつなぐ神話の社:三嶋大社で辿る信仰と再興の物語
山と海と戦の神を祀る聖地へ:大山祇神社で辿る信仰の源流
酒と命をつかさどる神々の社:梅宮大社で出会う神話の恵み
霊峰を仰ぐ神話の聖地:富士山本宮浅間大社で出会う木花咲耶姫の祈りのかたち
霊峰登拝の玄関口:北口本宮冨士浅間神社でつむぐ木花咲耶姫の神話と富士信仰
海の神を祀る浪速の古社:住吉大社でたどる住吉三神の神話
道をひらく神に出会う社:椿大神社が紡ぐ猿田彦大神の神話
伊勢に鎮まる道開きの神:猿田彦神社がつむぐ神話と導き
酒と水の神を祀る京都の古社:松尾大社が紡ぐ水と命の神話
伊邪那岐・伊邪那美を祀る聖地:多賀大社で辿る神話の源流
スサノオを祀る出雲国一宮:熊野大社がつむぐ神話の鼓動
神話の英雄を祀る武蔵国総鎮守:氷川神社が導く信仰の継承
近江国一宮に宿る英雄神:建部大社がつむぐ日本武尊の物語
天孫降臨の舞台へ:霧島神宮がつむぐ天界と地上を結ぶ物語
日本建国の地に鎮まる神宮:橿原神宮が紡ぐ神武天皇の神話
武運と国家の守護神を祀る社:石清水八幡宮が紡ぐ応神天皇の神話と八幡神信仰
千本鳥居の先の朱の社:伏見稲荷大社で出会う宇迦之御魂神
【古事記版日本神話】天地創造からヤマタノオロチ退治までの物語
【古事記版日本神話】大国主神の誕生から天孫ニニギの降臨までの物語
【古事記版日本神話】天孫ニニギとその御子・海幸彦と山幸彦の物語
【日本書紀版日本神話】天地創造からヤマタノオロチ退治までの物語
【日本書紀版日本神話】大国主神の登場から天孫ニニギ降臨までの物語
【日本書紀版日本神話】天孫ニニギとその御子・海幸彦と山幸彦の物語