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【伊賀の国】ミエゾウの足跡化石のレプリカに会える大山田せせらぎ運動公園

はじめに

伊賀の国」は、かつての日本の地方行政区分で、現在の三重県西部、上野盆地一帯に該当する令制国の一つであり、東海道に属していた。「伊賀」は、現在でも三重県の伊賀地方を指す呼称として使われており、伊賀市と名張市を中心に構成されている。伊賀は、伊賀流忍者の発祥地として知られ、伊賀焼(陶器・炻器)や伊賀組紐の産地としても有名である。

私が「ミエゾウ」と呼ばれる古代ゾウの存在を知ったのは、植木神社に参拝した帰り際に、偶然「大山田せせらぎ運動公園」に立ち寄ったのがきっかけである。

大山田せせらぎ運動公園の芝生広場の真ん中にミエゾウの足跡化石のレプリカ(複製品)が展示(?)されていたのには率直に驚いたものである。

この公園の周辺は、今から約350万年前には古琵琶湖(大山田湖)と呼ばれる湖沼があった場所とされ、現在の琵琶湖の形成の始まりとなった場所であるとされる。

当時生息していたゾウやワニが水を飲みに来た時にできた足跡が化石となって残ったものらしいが、足跡化石は公園を造成する際に偶然(幸運にも)発見され、その複製品を公園内に設置することになった経緯を知ることができた。

足跡化石(レプリカ)には立ち入って触れることもできる。案内板も設置されていて勉強もできたし、太古のゾウ・ミエゾウには興味をそそられることになった。本稿ではそんな私の幸運を共有したいと思う。

目次
はじめに
ミエゾウとは
ミエゾウの足跡の化石発見
大山田せせらぎ運動公園
あとがき

ミエゾウとは

ミエゾウは、今から約300万年前から400万年前に日本列島の九州から関東方面にかけて生息していたと推定されている古代ゾウのことである。

ミエゾウの学名は、Stegodon miensis(ステゴドン・ミエンシス)である。この学名は、初めて化石が発見された場所である三重県に由来する。最初に化石が発見された場所は三重県中部に位置する河芸郡明村【あきらむら】(現在の津市北西端地域で一部は亀山市に所属する)である。

ミエゾウは、体長が約8m、体高が約4mもある巨大ゾウであったと推定されており、マンモスやナウマンゾウなどよりもはるかに大きかったと推定されている。

日本国内で見つかった哺乳類の中では最大級のゾウであり、中国で発見されたコウガゾウとは同種あるいは近縁とされている。

ミエゾウの化石は、その後、三重県内の十数か所で発掘されているが、全身骨格はまだ発見されていないという。

しかしながら、2014年に開館した三重県総合博物館では、日本各地で見つかったミエゾウの化石を収集して、全身骨格(複製標本)を展示しているらしい。このミエゾウの全身骨格の展示物は、三重県総合博物館のシンボルにもなっているという。

ミエゾウの化石は「三重県の化石」に選定されているらしいが、三重県のみならず、日本の古生物学において非常に重要な存在であると言えるかも知れない。


ミエゾウの足跡化石の発見

昭和45年(1970年)、三重県で最初に発見されたミエゾウの化石は、臼歯のついた大きなゾウの左下顎骨【かがくこつ】であったらしく、その後も三重県内(亀山市・鈴鹿市・伊賀市・桑名市)ではミエゾウの化石が相次いで発見されている。

そのようなミエゾウの化石の中に、足跡化石がある。足跡化石とは、生物(今回の場合は、ミエゾウ)がやわらかい砂や泥で覆われた地表を歩いて足跡を残し、その足跡がなくなる前に足跡の上を土砂が覆い、地層の中に保存されたものを指す。

これらの足跡は、地層がその上に積み重なっていき、やがて堅い岩石となって長い年月が経っても地球上に残される。なかには一億年以上の時間がたっても砂や泥は石化し、板のように重なった砂や泥の地層を一枚一枚はがしていけば、太古の生物の足跡が姿を現わすこともあるという。

足跡化石は、その足跡をつけた種類の同定を行なうのが主な目的であったらしいが、今日では足跡化石は多彩な情報を含むことが知られている。

例えば、体高や体長の想定、歩行や歩行速度の推定をはじめ、歩き方が内股か外股か、あるいはほかに歩き方の癖があるかどうか、個体が他の個体に対しどう反応したか、群れがどのような行動をとったかなどを明確に示してくれるという。

つまり足跡化石は、対象生物の行動の記録を示す動かぬ証拠となり得る貴重な化石であるということだ。足跡化石の発見は、古生物学における重要な貢献をしていると言っても過言ではない。

そんな貴重なミエゾウの足跡化石が、2009年に三重県鈴鹿市の御幣川で発見されたのを皮切りに、三重県伊賀市大山田の服部川河床からも多くのミエゾウの足跡化石が発見されたという。

当時の三重県は今よりもかなり暖かかったらしく、亜熱帯から暖帯性の植物やワニの化石も同じ場所から見つかっているという。

太古の昔、ミエゾウは古琵琶湖や東海湖のほとりの水辺で群れをなして暮らしていたと考えられており、これらの足跡化石は、ミエゾウがその地域に生息していた証拠となっているという。


大山田せせらぎ運動公園

大山田せせらぎ運動公園は、三重県伊賀市の服部川河川敷に位置する親水公園である。

太古の昔、この公園の周辺は古琵琶湖(大山田湖)と呼ばれ、琵琶湖の形成が始まった場所とされている。

公園内には、この地から発見された約350万年前のゾウやワニの足跡化石が復元(レプリカ)されて芝生広場の真ん中に展示されている。

暖かな陽気の日には自然と歴史を楽しむことができる場所として、小さな子どものいる家族連れや園児の遠足などに利用されているのかも知れない。

勿論、大人が一人で訪れても静かでのんびりと過ごすには良いところである。古代ゾウのミエゾウや巨大ワニを空想しながら。

名 称大山田せせらぎ運動公園
所在地三重県伊賀市平田
駐車場あり(無料)
Linkせせらぎ運動公園 – 伊賀上野観光協会

あとがき

大山田せせらぎ運動公園に偶然に立ち寄ったことが、私がミエゾウの存在を知るきっかけであった。ミエゾウと呼ばれる古代ゾウが太古の昔に現在の三重県をはじめ全国(実際は九州から関東方面)に生息していたかと思うと痛快である。

温暖化が叫ばれている現代ではあるが、今よりもさらに暖かった時代があったかと思うと、地球の歴史から考えたら一種の長い周期の一つと考えられなくもない。つまり温暖化が進んだ後にはやがて氷河期が来ないと誰が断定できようか。人類でそんなに長く生きた証人はいないのだから。ミエゾウの足跡化石の方が余程、証拠としての価値があると言えそうだ。


【参考資料】
ミエゾウ – Wikipedia
三重県総合博物館 ミエゾウ(Stegodon miensis)の臼歯
三重県総合博物館 ミエゾウ(Stegodon miensis)の臼歯(その2)
せせらぎ運動公園 – 伊賀上野観光協会

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