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  • 大池寺を歩く──丈六釈迦如来坐像と小堀遠州の蓬莱庭園

    目次
    はじめに
    大池寺の由緒
    丈六釈迦如来坐像
    小堀遠州の蓬莱庭園
    境内と周辺の風景
    あとがき



    はじめに

    甲賀の里に静かに佇む大池寺【だいちじ】。 ここには、甲賀三大仏のひとつである丈六釈迦如来坐像が安置され、その堂々たる姿は、堂内に入った瞬間に訪れる者の心を深く揺さぶる。

    さらに境内には、 江戸初期の名作庭家・小堀遠州が手がけた蓬莱庭園が広がり、 仏の荘厳さと庭の静けさが重なり合う、 甲賀でも屈指の美の空間が生まれている。

    大池寺を歩くという体験は、 仏の慈悲と遠州の美学が、 ゆっくりと心に染み込んでいく旅でもある。


    大池寺の由緒

    ──甲賀の里に息づく古寺の歴史

    大池寺は、滋賀県甲賀市水口町に位置する臨済宗妙心寺派の古寺で、 甲賀の山里らしい穏やかな風景に包まれている。寺の歴史は古く、 地域の祈りを静かに受け止めてきた場所として、 長く人々に親しまれてきた。この寺を特別な存在にしているのが、 堂内に安置される丈六釈迦如来坐像と、 小堀遠州が作庭した蓬莱庭園である。

    大池寺の山号は龍護山で、御本尊は釈迦如来である。

    創建については、天平年間(729年~784年)に行基がこの地を訪れた際に、農民のために「」の字の形に4つの池を掘り、灌漑用水を作ったと伝わる。そして、その中央に法相宗の「邯鄲山青蓮寺」を建立して、自分で彫った釈迦如来坐像を安置したとされる。その後に子院を8ヶ寺持つ七堂伽藍を備える天台宗の寺院となった。

    鎌倉時代になり、聖一国師の孫弟子である無才智翁禅師が入寺して臨済宗の寺院に改宗することになる。

    戦国時代の天正5年(1577年)、織田信長と六角承禎との合戦に巻き込まれて伽藍はことごとく焼失したが、御本尊の釈迦如来坐像はからくも焼け残ったという。しかしながら、約90年間もの間は粗末な草庵に安置され、風雨にさらされたという。

    寛文7年(1667年)、京都妙心寺の丈巌慈航禅師が来訪して草庵の釈迦如来坐像を見て、寺の再興のためにこの草庵に住むことを決意する。そして寛文9年(1669年)には寺名を「邯鄲山青蓮寺」から行基が作った大きな池に因んで「龍護山大池寺」に改名し、臨済宗妙心寺派の寺院となった。

    寛文10年(1670年)、当地の地頭である織田正信(信長の甥)が大池寺の開基(出資者)となり、多くの寄進を行って仏殿と庫裡が完成した。こうしたことから大池寺の寺紋は織田木瓜【おだもっこう】(織田家の家紋)となっている。この再興時には、後水尾天皇や伊達宗房(仙台藩第5代藩主伊達吉村の父)らも寄進を行っているという。

    近代に入り、長らく住持が不在の時期があったため庫裏が崩壊するなどしていたが、昭和12年(1937年)に龍巌月泉が住持となって復興に当たったという。


    丈六釈迦如来坐像

    ──甲賀三大仏の圧倒的な存在感

    大池寺の御本尊である釈迦如来坐像は、「一刀三礼の釈迦丈六坐像」として知られ、像高約2.4mの丈六仏である。「甲賀三大仏」の一つとされている。

    本堂内に入ると、 その圧倒的な存在感に思わず息を呑む。そのお姿は、ただ大きいだけではなく、「人々を導く仏」としての慈悲と威厳を感じさせる。甲賀の里で、これほどの大仏に出会えること自体が驚きであり、大池寺が長く信仰を集めてきた理由が自然と伝わってくる。


    小堀遠州の蓬莱庭園

    ──静けさと美学が結ぶ庭の世界

    大池寺のもう一つの魅力が、江戸初期の名作庭家・小堀遠州【こぼりえんしゅう】による蓬莱庭園【ほうらいていえん】と呼ばれる枯山水庭園がある。庭は、 蓬莱思想──「不老長寿の理想郷」──を表現したものとされている。

    江戸時代の寛永11年(1634年)、江戸幕府3代将軍徳川家光が上洛するのに際して、この草庵の近くにが水口城が築城されることになった。そして小堀遠州(江戸時代の大名、茶人、建築家、作庭家、書家)が作事奉行を務めることになったという。小堀遠州は水口城の完成を祝して蓬莱庭園と呼ばれる枯山水の庭園をこの草庵に作庭したという。

    この小堀遠州が作庭したとされる鑑賞式枯山水庭園「蓬莱庭園」は今では甲賀市指定の名勝となっている。

    蓬莱庭園の特徴は、サツキの大刈り込みが素晴らしい鑑賞式枯山水庭園であることである。幽雅で、流麗な美しさを持つ庭園である。書院に座って眺める庭園の風景は、まるで絵画を観ているかのような美しさである。

    サツキの大刈り込みは、宝船や七福神を象徴するように配置されており、訪れる私たちに安らぎと美しさを与えてくれる。サツキの大刈り込みで表現した「宝船」や「大海原」は実に見事と言わざるを得ない。

    秋には後方のモミジが紅葉して見事であるが、サツキが開花する5月下旬から6月中旬頃の景色も是非見てみたいものである。

    大池寺と蓬莱庭園は、歴史と自然の美しさが融合した魅力的なスポットであることに間違いはない。

    大池寺には蓬莱庭園の他にも枯山水の庭園がある。大池寺の枯山水の特徴は、石組みの代わりにサツキの刈込みが用いられていることである。

    庭木にも特徴的な剪定がなされており、実に見応えがある庭であると感心させられた。個人の庭ではなかなかこうはいかない。

    庭を眺めていると、 遠州の美学が静かに息づいていることが伝わり、 仏の荘厳さとは異なる「静けさの美」が心に広がる。


    境内と周辺の風景

    ──山里の自然に寄り添う寺の佇まい

    大池寺の境内は、 甲賀の山里らしい穏やかな自然に包まれている。庭園の静けさと、 丈六仏の荘厳さが重なり、大池寺の風景は心に深く残る。

    大池寺の周辺は、行基が作ったという池を中心とした「名坂大池寺自然公園」として整備されている。

    名 称大池寺
    所在地甲賀市水口町名坂1168
    電 話0748-62-0396
    拝観時間午前9時~午後5時
    拝観料大人400円
    駐車場あり(無料)
    Link大池寺│蓬莱庭園

    あとがき

    大池寺を歩いていると、 丈六釈迦如来の慈悲と、 遠州庭園の静けさが、 ゆっくりと心に染み込んでくる。仏と庭が響き合う空間は、ただ美しいだけではなく、「心が整う時間」を自然と生み出してくれる。大仏の前に立ち、 庭園を眺める── その二つの体験が重なることで、 大池寺の魅力はより深く感じられる。

    大池寺は、 丈六釈迦如来坐像の荘厳さと、 小堀遠州の蓬莱庭園の静けさが響き合う、 甲賀の里を象徴する古刹である。仏と庭の両方に身を委ねる時間は、旅の途中でふと立ち止まり、心を整えるための大切なひとときとなる。大池寺は、まさにそんな場所である。




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