投稿者: takaaki.nishioka

  • 山陰海岸国立公園を歩く──玄武洞の柱状節理と海岸段丘をめぐる旅

    目次
    はじめに
    玄武洞公園を歩く
    玄武洞・青龍洞の柱状節理
    白虎洞・朱雀洞の柱状節理
    玄武洞公園の静けさ
    今子浦海岸をめぐる
    かえる島の奇岩
    今子浦海岸の海岸段丘
    但馬海岸を歩く
    香住海岸・但馬御火浦の断崖美
    海岸段丘が連なる風景
    山陰海岸の東側を歩く
    浜詰海岸(夕日ヶ浦)
    日和山海岸
    鳥取砂丘
    砂の美術館
    名湯に癒される海辺の時間
    城崎温泉
    湯村温泉
    山陰海岸ジオパークの魅力
    旅のまとめ
    あとがき

    はじめに

    山陰海岸国立公園は、京都府京丹後市の網野海岸から、兵庫県北部の但馬御火浦を経て、鳥取県の鳥取砂丘に至るまで、約75kmにわたる日本海沿岸を中心に指定された国立公園である。 海食崖、海岸段丘、砂丘、リアス式海岸など、多様な地形が連続して現れる日本でも稀有な海岸景観を持つ。

    但馬海岸──断崖と入り江が連なるリアス式海岸

    但馬海岸は、豊岡市気比から香住海岸を経て、新温泉町居組に至るまでの約50kmに及ぶ岩礁海岸である。 山地がそのまま海へ落ち込むため平地が少なく、岬と入り江が複雑に入り組んだ典型的なリアス式沈降海岸となっている。 断崖、洞窟、洞門、奇岩が連続し、荒々しい日本海の波が長い年月をかけて刻んだ造形美が随所に見られる。

    山陰海岸ジオパーク──地形が語る大地の物語

    この一帯は「山陰海岸ジオパーク」として世界ジオパークにも認定されており、地形・地質の価値が国際的に評価されている。 なかでも玄武洞公園は圧巻で、柱状節理が整然と並ぶ玄武洞・青龍洞などの岩壁は、火山活動と地殻変動がつくり出した大地のダイナミズムを雄弁に物語っている。 海岸段丘が連なる但馬海岸や、今子浦海岸の「かえる島」など、海と地形が織りなす多彩な景観は、歩くほどにその奥深さが感じられる。

    名湯が点在する海辺の国立公園

    山陰海岸国立公園内には、城崎温泉と湯村温泉という二つの名湯がある。 城崎温泉は七つの外湯めぐりで知られ、湯村温泉は高温の源泉「荒湯」が象徴的である。 いずれも兵庫県を代表する温泉地であり、海岸景観と温泉文化が近接する山陰海岸ならではの魅力を形づくっている。


    玄武洞公園を歩く

    ──柱状節理が語る大地の物語

    玄武洞・青龍洞の柱状節理

    玄武洞公園に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、整然と並んだ六角形の岩柱である。 玄武洞・青龍洞の柱状節理は、約160万年前の火山活動によって流れ出した溶岩が冷却する過程で生まれたものだ。溶岩が冷える際に収縮し、規則正しい割れ目が生じ、それが縦に積み重なって巨大な岩壁となった。

    玄武洞公園玄武洞

    岩柱はまるで人工物のように整然としているが、すべて自然がつくり出した造形である。 岩壁の一部は地殻変動によって傾き、垂直に立ち上がる柱状節理とは異なる表情を見せる。大地が動いた痕跡がそのまま残されており、地球の営みを目の前で見ているような迫力がある。

    玄武洞公園青龍洞

    玄武洞(国の天然記念物)は、公園の中心にある最も大きな洞窟であり、玄武岩のみごとなを柱状節理を観察することができる。玄武洞の前に立つと、岩壁の高さと規則性に圧倒される。 自然の造形美とは、時に人の想像を超えるものだとあらためて感じさせられる。

    玄武洞公園玄武洞(左側)
    玄武洞公園玄武洞(右側)

    玄武洞の玄武岩は、マグマが冷却される際に体積が小さくなることでできる割れ目(節理)が顕著であるために切り出しやすかったらしい。そのため人々が採掘し、その採掘跡が洞窟として残ったものが玄武洞の成り立ちとされる。

    玄武岩の柱状節理によって、洞窟内では亀甲状の天井や五角から八角の石柱がみられるという。江戸時代後期の幕府の儒学者であった柴野栗山がこの地を訪れた際、伝説上の動物である玄武の姿に見えることから「玄武洞」と名付けたと伝わる。また「玄武岩」の名称は、地質学者・小藤文次郎博士(東京大学)が岩石の日本名を制定する際に、玄武洞の名に因んで命名(1884年)したという。つまり、玄武洞は玄武岩発祥の地といえるかも知れない。

    さらに、1931年には松山基範博士(京都大学)が、玄武洞の玄武岩の磁性の方向が南を向くことを発見し、現在の地磁気(地球の自転により生じる磁場)と反対の向きを指していることから、地球の自転が反転した時期があるという説を発表し、地球科学分野で国際的に支持されたという。

    玄武洞公園・水面に映った青龍洞の美しい柱状節理

    青龍洞(国の天然記念物)の高さは、33 mに及ぶ。ここでは15 mにも及ぶ長くて美しい柱状節理が観察できる。私は青龍洞の柱状節理が最も好きである。本当に美しい柱状節理である。

    玄武洞公園青龍洞

    白虎洞・朱雀洞の柱状節理

    玄武洞公園の奥に進むと、白虎洞と朱雀洞が静かに並んでいる。
    玄武洞や青龍洞ほど大規模ではないが、柱状節理の造形がたいへん美しく、岩壁の表情をじっくり味わうには最適の場所である。

    白虎洞──整然と並ぶ柱状節理の端正な美

    白虎洞は、比較的均整のとれた柱状節理が特徴で、 六角形の岩柱が縦に積み重なる姿は、まるで自然がつくった石の書棚のようである。 岩柱の太さがそろっているため、全体に端正な印象があり、 光の当たり方によって岩肌が柔らかく輝く。

    洞の前に立つと、岩壁の静けさが周囲の木々のざわめきと対照的で、 自然の造形美をゆっくりと味わえる。 玄武洞の迫力とは異なる、落ち着いた美しさが魅力である。

    白虎洞は、水平方向に伸びた柱状節理と、その断面を間近に観察することができる。青龍洞垂直方向に伸びた柱状節理とは明らかに異なることが分かる。

    玄武洞公園白虎洞

    洞の前に立つと、岩壁の静けさが周囲の木々のざわめきと対照的で、 自然の造形美をゆっくりと味わえる。 玄武洞の迫力とは異なる、落ち着いた美しさが魅力である。

    玄武洞公園白虎洞

    白虎洞は、水平方向に伸びた柱状節理と、その断面を間近に観察することができる。青龍洞垂直方向に伸びた柱状節理とは明らかに異なることが分かる。


    朱雀洞──地殻変動が刻んだ岩壁の傾斜

    朱雀洞は、柱状節理が大きく傾いている点が特徴である。 これは、溶岩が冷えて柱状節理が形成された後、 地殻変動によって岩体が押し上げられ、傾斜したものと考えられている。

    玄武洞公園南朱雀洞

    岩柱が斜めに走る姿は、玄武洞公園の中でも特に動きを感じさせる造形で、 大地が長い時間をかけて変動してきた痕跡がそのまま残されている。 岩壁の前に立つと、自然の力が静かに、しかし確かに働いてきたことが伝わってくる。

    玄武洞公園北朱雀洞

    南朱雀洞では垂直方向の柱状節理を間近に観察でき北朱雀洞では垂直方向の柱状節理が上部に向かって徐々に水平方向に変化して行く様子を観察することができる


    玄武洞公園の静けさ

    玄武洞公園は、 国の天然記念物に指定されている玄武洞のほか、青龍洞白虎洞南朱雀洞北朱雀洞の洞窟が公園として整備されたものである。 周辺地域一帯は、1963年に山陰海岸国立公園となって現在に至る。

    玄武洞川沿いの散策路は静かで、岩壁の迫力とは対照的に穏やかな時間が流れている。 川面には木々の影が揺れ、風が通り抜けるたびに葉がやさしく音を立てる。岩壁の前に立つと、自然の力強さと静けさが同時に感じられ、心がゆっくりと落ち着いていく。

    玄武洞公園は、ただ「見る」だけでなく、「歩く」ことでその魅力が深まる場所である。 岩壁の表情は角度によって変わり、光の当たり方によっても違った姿を見せる。 歩くほどに、柱状節理の奥深さが静かに伝わってくる。

    名称玄武洞公園
    所在地兵庫県豊岡市赤石1347
    Link玄武洞公園-山陰海岸国立公園
    玄武洞公園 – 城崎温泉観光

    今子浦海岸をめぐる

    ──かえる島と海岸段丘の風景

    かえる島の奇岩

    今子浦海岸に立つと、沖合にぽつんと浮かぶ「かえる島」が目に入る。 波と風が長い年月をかけて岩を削り、まるでカエルが海を見つめているような形になった奇岩である。 そのユニークな姿は、訪れる人々の心を和ませ、海岸の風景に柔らかなアクセントを添えている。

    かえる島かえる岩

    かえる島は単なる奇岩ではなく、海岸段丘の一部として形成された地形の名残でもある。 海が刻んだ造形が、偶然にも愛らしい姿となって残った。自然の遊び心を感じさせる風景である。

    かえる岩

    かえる島は昔から祈願岩として様々な願いを叶えてきたらしい。昔、北前船で航海に出た男たちが無事香住に帰る(かえる)ことを祈願したのが始まりといわれている。それ以来、「何かをかえる」と言った願いある時このかえる島に祈願するようになったと言われている。例えば、無くしたものが手元に返る、自分の性格を変えるなど、いろいろな「かえる」を叶えてくれるという。

    かえる岩

    私は何も知らずにただその姿形に魅せられて立ち寄っただけであった。事前学習をしていなかったことを反省している。

    名 称かえる島・今子浦海岸
    所在地兵庫県香美町香住区境634
    駐車場あり(無料)
    Linkかえる島/香美町観光

    今子浦海岸の海岸段丘

    今子浦海岸周辺には、海岸段丘が広がっている。 段丘は、かつての海岸線が隆起し、波によって削られた地形が階段状に残ったものである。 海岸段丘は、山陰海岸の地形の特徴を象徴する存在であり、海と大地の歴史を静かに語っている。

    海岸段丘の上に立つと、海が遠くまで広がり、波がゆっくりと寄せては返す。 段丘の縁に立つと、海と空の境界が曖昧になり、静かな時間が流れていく。 玄武洞の柱状節理とは異なる「海がつくった地形の美しさ」がここにはある。


    但馬海岸を歩く

    ──断崖と入り江が連なるリアス式海岸

    香住海岸・但馬御火浦の断崖美

    但馬海岸は、山地がそのまま海へ落ち込むリアス式海岸である。 香住海岸【かすみかいがん】や但馬御火浦【たじまみほのうら】御火浦では、断崖が連なり、洞門や奇岩が次々と現れる。 日本海の荒々しい波が岩肌に打ち寄せ、白い飛沫が舞い上がる光景は、自然の力強さを感じさせる。

    洞門の中を波が通り抜ける音、岩壁に反響する風の音──。 海岸線を歩くと、自然が刻んだ造形美が次々と現れ、歩くたびに新しい表情に出会える。 玄武洞の規則正しい岩柱とは対照的に、こちらは「海が削った不規則な造形」が魅力である。


    香住海岸は、香住湾を中心とする岩礁が続く海岸線を指し、国の名勝となっている海岸である。東部には城山半島と黒島、白石島などの島々があり、西部には香住浜、鎧の袖や松ヶ崎、蜂ノ巣島、鷹ノ巣島、但馬松島などの無数の海食崖、海蝕洞や奇岩による景勝地が連なっている。西端の伊笹崎が但馬御火浦との境界にあたる。

    海岸線は火山岩と水成岩に富む新第三紀の北但層群および堆積岩と火成岩の節理に富む照来層群から成るという。この地層の地質違いによる侵食速度の差から複雑な海食崖が連続する絶景を造形したと言われている。このことが海食崖が多い山陰海岸のなかでも特に複雑な変化に富んだ区域とされる所以である。

    また、香住海岸は夕陽が綺麗な場所としても知られている。特に春から初秋にかけての時期に日本海に沈む姿は圧巻であると言われている。私も是非、自分の目で夕陽を眺めてみたいものだ。

    名 称香住海岸
    所在地香美町香住区 海岸一帯
    駐車場あり(無料)
    Link香住海岸の夕陽

    鎧の袖【よろいのそで】は、香住海岸の東部に位置する、高さが65 m、幅が200 m、傾斜角が70度という大海食崖である。海面から聳える、流紋岩~デイサイトと凝灰岩の柱状節理と板状節理の断崖は、約1,000万~300万年前の火山活動によって形成されたと推定されており、国の天然記念物にも指定されている。

    鎧の袖の周辺には、西の崖にクジャク洞門、前面の海上に同じ柱状節理と板状節理の鷹の巣島(インディアン島)や蜂の巣島などの無数の奇岩や洞門が連なっている。  

    名 称鎧の袖
    所在地香美町香住区下浜(鎧)
    Link鎧の袖
    香住海岸周辺
    海のみどころ

    但馬御火浦は、香住海岸西端の伊笹岬から浜坂海岸東端の観音山の間の約8kmにわたる岩礁の海岸線を指す。日本海の荒波によって浸食された断崖絶壁や海食洞、柱状節理の岩脈や岩礁が連続する景勝地となっている。国の名勝および天然記念物にも指定されている。

    なかでも世界最大級の海食洞である釣鐘洞門は特に有名である。釣鐘洞門以外にも旭洞門(鋸岬)、鬼門崎、龍宮洞門、通天洞門、十字洞門、下荒洞門、三尾ノ松島や三尾大島などの観光スポットが但馬御火浦にはたくさんある。


    釣鐘洞門は、但馬御火浦にある、世界最大級の海食洞で、国の天然記念物にも指定されている。

    洞門は2箇所あって洞内で繋がっており、その中心部は名前の由来となっている「釣鐘の内部」のような形状をしているとされる。その内部空間は最高部の高さが32m、直径が30m、広さが320m2、水深が10mもあると言われている。洞内にはイワツバメやコウモリが生息しているらしい。  

    名 称釣鐘洞門
    所在地兵庫県香美町余部
    Link但馬御火浦
    釣鐘洞門

    旭洞門【あさひどうもん】は、但馬御火浦の東部に位置する全長約600mの海に細長く突き出た鋸岬の中央を東西に貫通する海食洞である。洞門の大きさは、幅6m、高さ8mである。東と西とで地面の高さが異なるようではあるが。洞門の地面の海面高は約4mであると言われている。

    5月20日頃から1週間の期間だけ洞門越しに日の出を鑑賞することができ、その景色が非常に素晴らしいことから「旭洞門」と名付けられたとされる。是非、写真に撮りたいものである。

    名 称旭洞門
    所在地兵庫県新温泉町三尾
    Link鋸岬・旭洞門

    海岸段丘が連なる風景

    但馬海岸には、海岸段丘が連続している場所が多い。 山地が隆起し、波が削り、長い年月をかけて階段状の地形が形成された。 段丘の上から海を眺めると、海岸線が複雑に入り組み、海と大地が織りなす立体的な風景が広がる。

    段丘の上を歩くと、海の表情がゆっくりと変わり、遠くの岬が柔らかい影を落とす。 荒々しい断崖の風景とは異なる、静けさを感じさせる場所である。


    山陰海岸の東側を歩く

    ──砂丘と海岸美が広がる風景

    浜詰海岸夕日ヶ浦──日本海に沈む夕日の名所

    京丹後市の浜詰海岸【はまづめかいがん】は、「夕日ヶ浦」の名で知られる夕日の名所である。 砂浜が広く、海と空の境界がゆるやかに溶け合うような柔らかな風景が広がる。 夕暮れ時になると、太陽がゆっくりと日本海へ沈み、海面が金色から朱色へと変化していく。 その光のグラデーションは、山陰海岸の荒々しい断崖とは対照的で、静かで穏やかな時間を感じさせる。

    特に、春~夏にかけて、水平線に沈む夕日は、海面と奇岩のシルエットを美しく演出するという。

    波の音が一定のリズムで耳に届き、砂浜を歩くと足裏に心地よい感触が残る。 旅の途中でふと立ち寄ると、心がゆっくりと整っていくような場所である。

    夕日ヶ浦海岸の近くには夕日ヶ浦温泉がある。1980年に新しく掘削された温泉で、名前の由来は、温泉を掘った砂丘地より眺めた夕日が絶景であったことから名付けられたという。その最初の源泉は老朽化したために、2006年に新たに源泉を掘削し、より良い泉質の温泉が湧出したという。泉質は、低張性弱アルカリ高温泉で、いわゆる「美人の湯」であるだけでなく、疲労回復・神経痛・リウマチ性疾患などに適応しているという。是非、その湯に浸かり、夕日も眺めたいものである。

    名 称浜詰海岸(夕日ヶ浦)
    所在地京丹後市網野町浜詰
    Link夕日ヶ浦「京丹後ナビ」
    夕日ヶ浦海岸|夕日ヶ浦

    日和山海岸──海食崖と展望の名所

    日和山海岸【ひよりやまかいがん】は、鳥取県北栄町から鳥取市にかけて続く海岸線で、海食崖や奇岩が点在する山陰海岸らしい風景が広がる。 断崖の上から海を見下ろすと、波が岩肌に打ち寄せ、白い飛沫が舞い上がる。 海食作用によって削られた岩壁は、長い年月をかけて自然が刻んだ造形美であり、但馬海岸の断崖美と連続する地形の特徴がよく現れている。

    展望台からは日本海が広く開け、海と空がひとつにつながるような雄大な景色が楽しめる。 風が強い日には、波の音が力強く響き、自然の迫力を感じることができる。

    入り組んだ海岸線には、海蝕作用によっての奇岩が連続する。また、日和山海岸では晩秋の早朝に深い霧に包まれ、その霧が吹き荒れる様子(「けあらし」と呼ぶ)が観察できるという。

    円山川河口近くの日和山遊園と呼ばれるエリアには、海岸線を敷地とする城崎マリンワールドがあり、多くの観光客が訪れる。

    名 称日和山海岸
    所在地兵庫県豊岡市瀬戸日和山海岸
    兵庫県豊岡市瀬戸1090(城崎マリンワールド)
    Link日和山海岸 – 城崎温泉観光
    城崎マリンワールド

    鳥取砂丘──日本最大級の海岸砂丘

    鳥取砂丘は、日本最大級の海岸砂丘であり、山陰海岸国立公園を象徴する景観のひとつである。 この南北2.4km、東西16kmに広がる海岸砂丘は、山陰海岸国立公園の特別保護地区に指定されており、昭和30年(1955年)には国の天然記念物に指定されている。

    風が砂を運び、波が海岸線を削り、長い年月をかけて形成された砂丘は、まるで砂の海が広がっているかのような壮大な風景を見せる。

    砂丘の上に立つと、風が砂を細かく揺らし、足元に柔らかな感触が伝わる。 海岸段丘や断崖の風景とはまったく異なる「砂の地形の物語」がここにはある。 夕暮れ時には、砂丘が淡い橙色に染まり、静かな時間が流れていく。

    起伏の大きさを象徴する「馬の背」は、高さ約47mの砂の壁となって立ちはだかる。できるだけ傾斜の緩やかな所を選んで登ることにするが、それでも登るのが結構、大変である。「馬の背」に登ると日本海を見渡すことができる。

    日本海の風が作り出す風紋は大変美しいと言われている。風紋は風の強さと時間の経過によってその形状を変えるという。風紋の写真を撮るには早朝に砂丘に来る必要がありそうだ。

    雲が多くて残念ながら夕陽を見ることはできなかったが、鳥取砂丘は印象に残る想い出を私たちに残したのは確かな事実だ。

    名 称鳥取砂丘
    所在地鳥取市福部町湯山
    駐車場あり(無料)
    Link鳥取砂丘|鳥取市観光

    砂の美術館──砂で描かれる芸術

    鳥取砂丘の隣にある砂の美術館は、世界の芸術家が砂像を制作するユニークな美術館である。 砂という儚い素材でつくられた巨大な彫刻は、光の当たり方によって表情を変え、見るたびに新しい魅力を感じさせる。

    自然がつくった砂丘と、人がつくった砂像──。 二つの「砂の造形」が並ぶことで、旅に深みが生まれる。 山陰海岸の地形の多様性を、芸術という別の角度から味わえる場所である。

    砂の美術館」の詳細はこちらから

    名 称鳥取砂丘・砂の美術館
    所在地鳥取市福部町湯山2083-17
    駐車場あり(無料)
    Link砂の美術館

    名湯に癒される海辺の時間

    ──城崎温泉と湯村温泉

    城崎温泉──外湯めぐりが楽しめる温泉街

    城崎温泉は、有馬温泉、湯村温泉とともに兵庫県を代表する温泉地で、七つの外湯めぐりで知られる。柳並木が続く川沿いの風景は静かで、浴衣姿の人々がそぞろ歩きを楽しむ姿が印象的だ。 温泉街の落ち着いた雰囲気は、山陰海岸の荒々しい断崖や砂丘の風景を歩いたあとに訪れると、心をそっと癒してくれる。

    それぞれの外湯には個性があり、湯の温度や雰囲気が異なる。 湯に浸かりながら旅の疲れをゆっくりとほどく時間は、旅の締めくくりにふさわしい。

    城崎ロープウェイが運行されており、城崎温泉郷の守護寺とされている温泉寺や、展望台がある大師山の山頂付近へも容易に行ける。

    城崎温泉」の詳細はこちらから

    名 称城崎温泉
    所在地豊岡市城崎町湯島
    Link城崎温泉観光協会

    湯村温泉──高温の源泉「荒湯」が象徴

    湯村温泉は、98度の高温の源泉「荒湯」が象徴的な温泉地である。 湯けむりが立ち上る温泉街は、どこか懐かしい雰囲気が漂い、ゆったりとした時間が流れている。 但馬海岸の荒々しい海岸美とは対照的な、柔らかい温泉の風景がここにはある。

    温泉街を歩くと、湯の香りがほのかに漂い、川沿いの足湯で旅の疲れを癒すこともできる。 山陰海岸の自然を歩いたあとに訪れると、心身が静かに整っていくような感覚がある。

    湯村温泉は、吉永小百合主演のNHKドラマ『夢千代日記』(1981年に放送)のロケ地としても知られている。その風情が全国に知られるようになって以来「夢千代の里」と称している。

    湯村温泉」の詳細はこちらから

    名 称湯村温泉
    所在地兵庫県新温泉町大字湯
    Link湯村温泉 – 湯けむり荒湯

    山陰海岸ジオパークの魅力

    ──地形が語る大地の歴史

    山陰海岸ジオパークは、火山活動・地殻変動・海食作用など、さまざまな自然の力がつくり出した地形が連続している地域である。 玄武洞の柱状節理は火山の物語を語り、今子浦や但馬海岸の海岸段丘は海の営みを伝える。 異なる地形が近接して存在することが、この地域の大きな特徴である。

    地形を「見る」だけでなく、「歩く」ことでその意味が深まる。 岩壁の迫力、段丘の静けさ、断崖の荒々しさ──。 それぞれの風景が、大地の長い歴史を静かに語りかけてくる。

    山陰海岸を歩く旅は、自然の多様性と奥深さを感じる時間であり、地形の物語を味わう旅でもある。


    旅のまとめ

    山陰海岸国立公園を歩いてみると、この地域がいかに多様な地形の宝庫であるかをあらためて実感させられる。 玄武洞公園では、火山の営みがつくり出した柱状節理が圧倒的な存在感を放ち、岩壁の規則性と大地のダイナミズムが静かに語りかけてきた。 今子浦海岸では、海が刻んだ海岸段丘と、風と波が偶然つくり出した「かえる島」の奇岩が、自然の遊び心と地形の奥深さを感じさせてくれた。

    但馬海岸に足を運べば、断崖・洞門・奇岩が連続し、日本海の荒々しい波が岩肌に打ち寄せる迫力ある風景が広がる。 一方で、浜詰海岸(夕日ヶ浦)や日和山海岸では、砂浜や海食崖が柔らかな光に包まれ、海と空がゆるやかにつながる穏やかな時間が流れていた。 そして鳥取砂丘では、砂が風に揺れ、砂丘の起伏が静かに広がる壮大な景観が目の前に現れ、山陰海岸の地形の多様性を象徴する風景に出会うことができた。

    火山がつくった岩の造形、海が削った断崖と段丘、風が運んだ砂丘──。 それぞれの地形はまったく異なる表情を持ちながら、ひとつの海岸線の中で連続している。 この「多様性の連続性」こそが、山陰海岸国立公園の最大の魅力であり、歩くほどにその奥深さが静かに心に染み込んでいく。

    旅の途中で立ち寄った城崎温泉や湯村温泉では、湯けむりの静けさが体をほぐし、荒々しい海岸美を歩いたあとの心をそっと癒してくれた。 自然の迫力と温泉のやさしさ──その対比が、山陰海岸の旅をより豊かなものにしてくれる。

    今回の旅で歩いた場所は、山陰海岸のほんの一部にすぎない。まだ訪ねていない景勝地は数多く残されており、次の旅ではそれらの風景をひとつずつ丁寧に歩いてみたいと思う。大地の歴史が刻まれた海岸線を、これからもゆっくりと味わいながら旅を続けていきたい。


    あとがき

    山陰海岸国立公園の景勝地は、これまでかなり訪ねたつもりでいた。しかし今回あらためて調べてみると、実際にはごく一部しか歩けていなかったことに気付き、少なからず愕然とした。 近くまで行きながら気付かずに通過していた場所がいくつもあり、思い返せば「もったいない旅」を何度も繰り返していたことになる。これが率直な感想である。

    旅は、ただぼんやりと時間を過ごす旅を除けば、やはり事前準備が大切だと痛感させられる。行き先だけでなく、周辺の景勝地や地形の特徴を少しでも知っておくことで、旅の密度は大きく変わる。 事前学習をしておけば、目の前の風景の意味がより深く理解でき、満足感も確かなものとなるはずである。

    まだ訪ねていない景勝地は数多く残されている。次の機会には、これらの場所を一つひとつ丁寧に歩き、山陰海岸の多様な地形と風景をじっくり味わってみたい。 その際には、今回の反省を活かし、しっかりと事前学習をしてから旅に出るつもりである。


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