◆ はじめに
生石高原は、関西でも屈指のススキの群生地として知られている。 随分と昔、若い頃に一度訪れたことがあり、「ススキの穂を観に行くならどこが良いか」と考えた時、 真っ先に脳裏に浮かんだのがこの生石高原であった。
一方、しみず温泉は決してメジャーではないが、 真言密教の聖地・高野山にも比較的近い、和歌山県有田川町清水(旧清水町)にある山あいの静かな一軒宿である。今から10年ほど前にリニューアルされた宿泊施設には、美しい山並みや眼下に広がる有田川を望む展望デッキが併設されており、自然の中でゆっくりと心を整えるには最適の温泉地である。なお、有田川の源流は高野山に発している。
京阪神方面から生石高原へ向かう場合、 阪和自動車道の海南東IC・海南IC、あるいは有田ICからアクセスすることが多い。 ただし、より安全にドライブを楽しみたいのであれば、有田ICを起点にする方が無難だろう。海南東IC・海南ICから向かうルートには、山林の中を抜ける狭い道路が続く区間があるためである。
生石高原は日帰りでも訪れることは可能だが、高原をゆっくりと散策し、その余韻を味わう旅とするなら、帰路にしみず温泉へ立ち寄るプランが自然で心地よい。生石高原からしみず温泉へは、県道184号を経て国道480号に入れば約16kmほどの道程で到着できる。
生石高原のススキ原と、しみず温泉の静かな湯を組み合わせた旅は、 まさにスパツーリズムの趣にかなう“癒しの旅” と言えるだろう。 私は、この組み合わせは十分に“あり”だと思っている。
生石高原
生石高原【おいしこうげん】は、和歌山県有田川町と紀美野町の境にある生石ヶ峰(標高870m)の山頂付近に広がっている草原である。

関西でも屈指のススキの名所として知られ、秋になると一面に銀色の穂が揺れ、風が吹くたびに草原全体が波のようにうねる壮大な景観をつくり出す。

高原の中心には生石ヶ峰がそびえ、晴天の日には山頂から和泉山脈や淡路島などを望むことができる。山頂からの360度の眺望は、筆舌に尽くしがたいほど素晴らしい。

生石高原は、四季折々の草花に彩られ、特に秋はススキの名所として有名である。遊歩道も整備されており、ゆっくりと歩きながら草原の広がりや風の音を楽しむことができる。

生石高原のなだらかな山肌にはススキの群落が大海原のように広がり、その光景は関西随一と言われる。

ススキは、9月中旬から開花し始め、9月下旬から10月下旬頃にかけては綿毛をつけた銀色のススキが広がる。

晴れた日には空の青さとススキの銀色が美しいコントラストを描き、夕暮れ時には穂先が黄金色に染まり、静かな余韻を残す。

山の斜面にせり出した「火上げ岩」は大人気の撮影スポットであり、インスタ映え抜群とSNSで話題になっている場所でもある。

高所が苦手な私には絶対に立てない場所でもある。写真を撮るだけでもハラハラドキドキで心拍数が高まっているのを実感する。

ススキの穂には「枯れすすき」に向かうネガティブなイメージを抱いており若い頃は好きになれなかった。しかし、美しいものは美しいと素直に認めることの方がどれほど素晴らしいことか。偏見を排して、自分の目で確認できる事実を積み重ね、真実を知るを努力を続けていきたいとススキの穂を眺めながら思った。
しみず温泉
しみず温泉は、和歌山県有田川町清水(旧清水町)の山あいに佇む、静かな一軒宿の温泉地である。真言密教の聖地・高野山にもほど近く、周囲を深い山並みに囲まれたこの温泉は、訪れる者をやわらかな静けさで迎えてくれる。
2013年6月にリニューアルオープンした滞在型宿泊施設「あさぎり」は、しみず温泉に併設されており、地産地消の食材を提供するレストランや展望デッキは癒しの旅をサポートする。展望デッキから美しい山並みや眼下を流れる有田川を眺めるのも良い。

しみず温泉の泉質は、ナトリウム塩化物炭酸水素泉であるので、いわゆる「美肌の湯」である。やわらかく肌あたりが良い湯で、生石高原で歩き疲れた身体を静かに癒してくれる。
泉温は27.1℃と比較的低温であるため、加温されて使用される。きりきず、やけど、慢性皮膚病、胃腸病、婦人病などに適用があり、飲用すると慢性便秘に効能があるとされる。派手さはないが、素朴で落ち着いた雰囲気が魅力で、旅の締めくくりにふさわしい“ほっとする温泉時間”を味わえる。

しみず温泉近郊の有名な観光スポットの数は、率直に言ってそれほど多くはない。しかし、同じ清水地区にある「あらぎ島」は有田川町のシンボル的な存在であり、その独特の景観は和歌山県で唯一「日本の棚田百選」に選ばれた場所である。国の重要文化的景観にも選定されているので是非、水田の季節に訪れたい。

また、有田川の二川ダム湖に架かる朱色の吊り橋、蔵王橋(全長約160m、高さ不明)は、スリル満点で私には渡れない。米国の俳優、ザック・エフロンは渡ることができたと紹介されている。

さらには、有田川と四村川の合流地点にある粟生の巌【あおのいわお】は、パワースポットとして知られている。粟生の巌は、高さ25m、基底部の周囲が100mという巨岩で岩倉神社の御神体である。岩倉神社は、神亀4年(727年)に粟生の巌に勧進して聖武天皇大社明神と称し、奉祀したことに始まるとされている。

上記3つの絶景スポットは、いずれも国道480号線沿いにあるのでアクセスも容易である。しみず温泉と生石高原を組み合わせたスパツーリズムの旅のオプションになると思う。
| 名 称 | しみず温泉 |
| 所在地 | 有田郡有田川町清水1225-1 |
| 駐車場 | あり |
| Link | しみず温泉健康館/有田川町 ふるさと有田川 しみず温泉 健康館 しみず温泉 あさぎり |
◆ あとがき
生石高原を訪れた日は珍しく好天に恵まれ、ススキの穂を撮影するにはまさに絶好の日和であった。ススキの穂は、陽光の当たり方によって銀色に輝いたり、夕日に照らされて黄金色に染まったりと、実に多彩な表情を見せてくれる。その変化の豊かさは、写真の被写体としても非常に魅力的で、いつまでも眺めていたくなるほどである。
率直に言えば、若い頃の私はススキの穂に特別な関心を持っていたわけではなかった。それがこんなにも美しく、心を惹きつける存在であることを知ったのは、シニアになってからのことである。 年齢を重ねたからこそ気づける美しさがあるのだと、改めて感じさせられた。
また、しみず温泉についても詳しくは知らなかったが、調べてみると自然に寄り添う魅力的な温泉であることが分かった。世の中には、まだまだ私の知らない場所や文化が数多くあり、その一つひとつに触れるたびに、新たな発見が私の好奇心を静かに満たしてくれる。
人生の後半に差しかかった今、「枯れすすき」になるまでの間、 陽光を受けて輝くススキの穂のように、私自身ももう少し光をまとって歩いていきたい―― 生石高原を妻とゆっくり散策しながら、ふとそんな思いが胸に浮かんだ一日であった。
【参考資料】
| きみのめぐりコンシェルジュ@紀美野町観光協会 |
| ホーム/有田川町 |
| しみず温泉健康館/有田川町 |
| ふるさと有田川<有田川町ふるさと開発公社> |
| しみず温泉 健康館 | 和歌山県温泉協会公式HP |
| しみず温泉 あさぎり – 有田川町観光協会 |
| あらぎ島/有田川町 (aridagawa.lg.jp) |
| 蔵王橋/有田川町 (aridagawa.lg.jp) |
| 粟生の巌 – 有田川町観光協会 (aridagawa-kanko.jp) |