◆ はじめに
禅昌寺【ぜんしょうじ】は、岐阜県下呂市に位置する臨済宗妙心寺派の別格寺班で、寺格は十刹に列せられる名刹である。山号は龍澤山【りょうたくざん】と称する。
創建は享禄元年(1528年)または天文元年(1532年)と伝わり、飛騨国益田郡萩原郷の桜洞城主・三木直頼が、同族とされる杲天宗恵を創建に据え、大雄山円通寺の住持・明叔慶浚大和尚を開山として建立したとされる。
創建地については、桜洞城近辺と現在地の中呂の二説があるが、天文23年(1554年)には後奈良天皇より「十刹」の綸旨を賜ったと伝わり、まさに「天下の名刹」と呼ぶにふさわしい格式を備えている。
境内には、見事な庭園「萬歳洞【ばんざいどう】」をはじめ、勅使門、雪舟筆と伝わる「大達磨像」、樹齢1300年を超えるとされる大杉など、多くの見どころが点在する。
本稿では、この禅昌寺の歴史と風雅に満ちた魅力を、ゆっくりと紹介していきたい。
禅昌寺

禅昌寺【ぜんしょうじ】は、臨済宗妙心寺派の別格寺班(禅寺)で、山号は龍澤山【りょうたくざん】と称する。御本尊は釈迦如来、観世音菩薩、薬師如来の三尊である。

禅昌寺の前身である「大雄山圓通寺」の創建は、1528年または1532年と伝えられており、いずれも今から約500年前頃となる古刹である。禅昌寺への寺号変更は1648年~1652年頃と言われている。

平安時代の創建であるため、建築物は中国宋朝の様式を伝えており、「天下の名刹」として威容を誇っている。

大広間には雪舟筆の大達磨像「八方にらみ達磨」の掛け軸が飾られている。

雪舟筆「八方にらみ達磨」(大達磨像)
庭園「萬歳洞」
禅昌寺の境内には金森宗和が造園したと伝わる名勝指定の池泉鑑賞式庭園「萬歳洞」【ばんざいどう】もある。

金森宗和は、飛騨高山の出身の人で、桃山時代から江戸時代初期の武将・茶人で、大原三千院の庭園「聚碧園」や金閣寺の茶室「夕佳亭」には金森宗和の趣向が反映されているらしく、京都の文化に大きな影響を与えた人物であると伝えられている。

樹齢1300年超の大スギ
境内の端(観音堂の裏手)には樹齢1300年超の大スギ(国指定の天然記念物)が生育している。

この禅昌寺大スギは、樹高が約45m、幹周りが約9mもある巨樹である。樹齢が1300余りと言われてもピンとこないが、悠久の年月をこの地で過ごしてきたことに畏敬の念を抱いてしまう。



以上のようにごく一部を紹介しただけであるが、禅昌寺は見所満載の寺院であると言えよう。
| 名 称 | 禅昌寺 |
| 所在地 | 下呂市萩原町中呂1089 |
| 拝観料 | 300円 |
| 拝観時間 | 8:30~16:00 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 禅昌寺|下呂温泉観光協会 |
◆ あとがき
禅昌寺には今回が初めての参拝であったが、古刹・名刹の名にふさわしい素晴らしい寺院であることを実感した。室町時代から続く趣深い古寺であり、その長い歴史が境内の随所から静かに伝わってくる。なかでも、金森宗和の作庭と伝わる名勝・池泉鑑賞式庭園「萬歳洞」は、深い余韻を残す魅力のひとつである。機会があれば、四季折々に移ろう庭園の表情をぜひ見てみたいと思う。
また、雪舟筆と伝わる「大達磨像」が一般公開されており、その迫力ある表情と存在感は一見の価値がある。さらに、樹齢1300年を超えるとされる大杉の圧倒的な佇まいは、訪れる人の心を静かに揺さぶるだろう。
このように禅昌寺には多くの魅力があるが、その感じ方は訪れる人それぞれで異なるに違いない。むしろ、異なるからこそ旅は豊かになるのだと私は思う。ぜひ禅昌寺を訪れ、ご自身の感性でその魅力を味わっていただきたい。
こうして振り返ると、禅昌寺で過ごした静寂と調和に満ちた時間は、心の奥に澄んだ余韻を残す、忘れがたい旅となった。 禅昌寺のほど近くには下呂温泉があり、この二つを組み合わせた旅は、まさにスパツーリズムが大切にする“心身の調律”そのものだと感じる。静かな寺院の気と温泉のぬくもりが重なり合い、旅が日常をそっと整えてくれることを改めて思い出させてくれた。