◆ はじめに
下栗の里は、長野県飯田市上村に位置する美しい山里である。南アルプスから伸びる尾根に拓かれた高地にあり、標高は800〜1100m。最大斜度38度の急斜面に民家や畑が寄り添うように並び、つづら折りの坂道が走る独特の景観が広がっている。
その美しさから「日本のチロル」とも称され、かつて宅配便会社のテレビCMにも登場した。2009年には「にほんの里100選」に選ばれたことでも知られている。

下栗の里から車で約30分ほどの場所にあるのが、旧木沢小学校である。長野県飯田市南信濃木沢に位置し、今も昔ながらの木造校舎が残されている。
現在は資料館やイベントスペースとして活用され、地域の歴史と文化を伝える場となっている。訪れる人々にどこか懐かしさを呼び起こす、不思議な温もりを持つ場所でもある。

本稿では、妻に誘われて訪ねた「下栗の里」と「旧木沢小学校」で出会った、懐かしい日本の原風景について記していきたい。
下栗の里・展望台
下栗の里は、長野県飯田市上村遠山郷に位置し、「日本のチロル」と称されることもある美しい集落として有名である。

最大斜度38度の急斜面に民家や畑が寄り添うように存在しており、その間を縫うようにつづら折りの坂道が走る独特の風景は絶景とされている。一度見たら忘れることのできない絶景とされ、「にほんの里100選」にも選ばれているほどである。

この天空の秘境「下栗の里」の絶景を求めて多くの観光客が訪れる場所がある。そこは「天空の里ビューポイント」と呼ばれるおおぎびら展望台である。
その展望台へ行くには下栗の里の駐車場から遊歩道を20分ほど歩く必要があが、この展望台からは下栗の里を上から眺めることができ、圧巻の絶景を写真に撮ることができる。

下栗の里には、伝統野菜や伝統文化が豊富に存在する。特に「下栗芋」と呼ばれる小粒のジャガイモが有名である。下栗芋を竹串に刺し、エゴマ味噌などを塗って炭火で炙った「いも田楽」は長野県の「選択無形民俗文化財」に指定されているという。

そのほかには、ソバ、ヒエ、キビ、アワなどの雑穀、豆、お茶などの多くの作物が栽培されているようだ。これらの食材がこの地域特有の食文化を育んでいるのだろう。

また、「下栗の霜月祭り」などの伝統的な祭りも行われている。このように下栗の里は、自然と共生する人々の暮らしや伝統、食文化を体験できる場所でもある。訪れる人々に深い印象を与えるに違いない。そのため、自然を愛する人々にとって、訪れる価値のある場所であると言えよう。

唯一の難点と言えば、下栗の里へは車でしか訪れることができない点である。交通の便があまり良くないことだけは心得ておく必要がある。尤も不便だからこそ一度は行ってみる価値があると言えなくもない。
| 名 称 | 下栗の里(食事処はんば亭) |
| 所在地 | 飯田市上村1250−1 |
| TEL | 0260-36-1005 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 下栗の里 長野県公式観光 下栗の里の展望台で撮影 |
旧木沢小学校・資料館
下栗の里付近にある旧木沢小学校は、昔ながらの木造二階建て校舎で、昭和7年(1932年)に建てられ、平成12年(2000年)に廃校となっている。

廃校後の旧小学校校舎は、地域の資料館として再オープンし、現在では住民手作りの展示施設(資料館)や交流拠点として活用されている。

旧木沢小学校の資料館では、各教室で下記のような様々な展示を見ることができる。
- 山の資料館(2年生教室)
南アルプスに関する資料を展示 - 山の図書室(図書室)
小学校の旧蔵書や寄贈本など4千冊以上が閲覧できる - 林鉄資料館(4年生教室)
森林鉄道の資料を展示 - 祭りの資料館(5年生教室)
木沢地区の「霜月祭り」を紹介

このように地域の資料館である旧木沢小学校には、この地域の歴史と文化をよく伝えており、訪れる人々に深い印象を与える。

旧木沢小学校には、在りし日の「教室の風景」が残されていてノスタルジックな雰囲気を強く感じることができる。

かつてはこの旧木沢小学校に「ねこ校長」と呼ばれていた老齢の猫(たかね)が赴任(?)していたようであるが、今は逝去していて会うことができない。

皆から慕われていたことが容易に推察される「ねこ校長・たかね」の写真が旧校舎の廊下に多数展示されていた。
| 名 称 | 旧木沢小学校 |
| 所在地 | 飯田市南信濃木沢811 |
| TEL | 0260-34-1071 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 旧木沢小学校木造校舎資料館 |
◆ あとがき
長野県飯田市にある「下栗の里」は、その美しい景観がヨーロッパのチロル地方を思わせることから、「日本のチロル」と呼ばれることがある。実際にその風景を目にすると、その呼び名に深く納得させられる。
最大斜度38度の急斜面に民家や畑が張り付くように並び、つづら折りの道が山肌を縫うように走る──この独特の景観は、訪れる者に強い印象を残す。一方で、この地で暮らす方々のご苦労を思うと、自然豊かなこの山里が「限界集落」とならず、未来へ受け継がれてほしいと願わずにはいられない。
標高800〜1,000mに位置し、「しらびそ高原」にも近い下栗の里は、「天空の村」とも称される。谷間に雲海が広がる朝には、まるで空に浮かぶ大地のような幻想的な光景が現れ、思わず息をのむほどであるという。
下栗の里を歩くと、大自然と人々の暮らしが溶け合った、どこか懐かしい原風景に出会ったような、不思議な感傷が胸に広がる。
一方、全国に点在する木造校舎の中でも、下栗の里の近くにある「旧木沢小学校」は、特にノスタルジックな魅力を湛えている。今も当時の姿を残す校舎は、資料館やイベントスペースとして活用され、地域の歴史と文化を静かに伝えている。訪れる人々に、懐かしさと温もりを感じさせてくれる場所である。
「下栗の里」と「旧木沢小学校」への旅は、妻の発案がなければ、きっと訪れることはなかっただろう。私を誘ってくれた妻に、心から感謝したい。
「下栗の里」と「旧木沢小学校」の周辺には、遠山温泉郷のほか、奥天竜不動温泉や天龍峡温泉なども車で1時間圏内に点在している。こうした山里で感じた静けさと、人の営みの温もりは、スパツーリズムが大切にする“心身の調律”そのものであり、この旅が私たちの日常をそっと整えてくれたことを、今あらためて深く実感している。